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前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配  作者: ma-no
02 カーボエルテ国 ハミナの町

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016 初級ダンジョン2


 初級者ダンジョンに潜って順調に進んでいたタピオとイロナであったが、モンスターが弱すぎて二人のHPは一切減らない。武器も使わず、蹴りの一発で吹き飛んでいた。


「これがモンスターだと……」


 イロナはしゃがみこんで、ぴょんぴょん迫って来ていたスライムを見つめる。


「子供や老人なんかは足に絡み付かれて溶かされるらしいから、危険なモンスターではあるぞ」

「こんなのがな~……あ!」


 スライムは、イロナの人差し指でプニプニされて、「パンッ」と弾け飛んでしまった。


「あはは。イロナは攻撃力がありすぎるから、触れただけで終わりか」

「むう……弱すぎる。こんなの、経験値の足しにもならんだろう」

「初級ダンジョンだからな。さっさとクリアしてしまおう」


 タピオは地面に吸収されたスライムの辺りに残った欠片を拾うが、これにもイロナは質問があるようだ。


「主殿はずっと何かを拾っているが、何をしているのだ?」

「これ? 魔石だけど……そうか。こんなに小さな魔石は初めて見たのか」

「ちっさ!」


 タピオが小指の爪ぐらいの大きさの魔石をイロナの目の前に持って行くと、またしても驚かせてしまったようだ。


「まぁ二束三文だけど、塵も積もればってヤツだ。町では必要物資だからな」


 ほとんどの町は、この魔石をマジックアイテムのエネルギー源として、光や炎、水を作り出しているので、若手冒険者からしたら小遣い稼ぎとしては十分な稼ぎになる。


「ここへ来て、文化の違いに驚かされてばかりだ」

「あはは。なんだか箱入り娘みたいな言い方だな。初級でも、楽しめてくれてよかったよ」


 タピオは笑いながら言っているが、内心は心底ホッとしている。こんな弱いモンスターだらけでは、戦闘狂のイロナがいつ爆発するかわからないので、文化の違いに驚いていることで助かっているのだ。


 それからも弱いモンスターが向かって来ても蹴散らし、偶然見付けた宝箱から薬草が出て来ても笑って進み、地下10階ダンジョンボスの部屋に辿り着いた。


「あっと言う間だったな。そんなに行き止まりにも行かなかったが、主殿はこのダンジョンに潜ったことがあるのか?」

「ないぞ。でも、他の町のダンジョンには何度も潜っているから、傾向みたいのがなんとなくわかるんだ」

「勘か……そういうのは大事だな」

「さてと。ちょうど空いてるみたいだし、ちゃっちゃとやりますか~」


 イロナに褒められたタピオは、気を良くしてダンジョンボスの扉を開く。


「おお! アレは見たことが……いや、色が違うか」


 ダンジョンボスは、スライムキング。大きなスライムなら見たことがあるイロナであったが、少し違っていたようだ。


「アレはキングだな。イロナが知っているのは、ロード辺りじゃないか?」

「たぶんそれだ」

「キングは、その下の位置するモンスターだ」

「そんなのがいたのか……ちょっと、我がやってみていいか?」

「いいぞ」


 タピオも楽勝で倒せる相手なので快く譲り、イロナ対スライムキングの戦闘が始まる。


 イロナは腰の剣を抜くこともせずに無防備に近付くので、スライムキングはぴょんっと体当たり。イロナはさっと避けて横に回ると、手の平で撫でていた。


「ふむ……感触は似たようなものか」


 どうやらイロナは、初めて見るモンスターに興味があって調べているようだ。

 しかしその撫でられ方で、スライムキングのHPはグングン削られて行く。なのでスライムキングは一度距離を取り、助走を付けてからのタックル。

 これもイロナの出した片手に止められて自爆。勢いを付けたがために、HPの半分を持って行かれることになる。


 いちおうダンジョンボスであるスライムキングはそこそこ知能があるので、物理攻撃が効かないのならばと、風魔法で対応。ゼロ距離から風の刃を飛ばそうとしたが、イロナに急に体を回されて、明後日の方向に撃たされていた。


「あ……もう少し撫でようとしていたのに……」


 残念ながら、無理矢理向きを変えられたスライムキングは、イロナの少し力が入っただけの方向転換で、残りのHPはゼロ。

 プシューっと空気が抜ける風船のように、地面にへたりこんだのであった。



「お疲れさん」

「まったく疲れていないぞ」


 スライムキングを倒したイロナに、普通に声を掛けたタピオであったが嫌みと受け取られたようだ。


「そう睨むなよ。ただの挨拶だ。それより残念そうにしていたけど、どうしたんだ?」

「スライムを揉むのは、我の趣味みたいな物なのだ。いつもはもっと長く揉めたのに……弱すぎる」

「ま、ロードが出るのは上級からだし、そこまで待ってくれ」


 イロナの趣味がよくわからないタピオはそれだけ言うと、魔石とドロップアイテムを拾う。


「銅の剣か……ドロップアイテムもたいした物が出ないのだな」

「だいたい薬草5枚程度だし、まだ運がいいほうだ。さてと、地上に帰ろうか」



 こうして初級ダンジョンはモンスターの攻撃を一切受けず、楽勝でクリアする二人であった。

 ただし、イロナの腕組みで、タピオのHPはちょっと減っていたけど……


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