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89 世界樹さんのお仕事

①魔力とは?

②魂とは?

③常識と真実

 私が目覚めてから、数日が経つなの。目覚めた当初はまだ痛くて、苦しくて、気持ち悪くて、毎日が嫌で嫌で仕方が無かったなの。

 だけど、それもすぐに無くなって、毒もすぐに消えたなの。


「いただきます」

「いただきますなの!」


 それもこれも、この人種が来てからなの。


 最初は朧気ながらも、私がダンジョンに成ってしまった時は、とても悲しかったなの。

 自然のバランスを保つ世界樹が、壊れた場所に生まれるダンジョンに成って仕舞うなんて、屈辱以外の何ものでもないなの。


 でも、今はそんな事どうでも良くなってしまっているなの。

 新しいお友達も沢山できて、どんどん大きく、世界に私が広がって行く、毎日が楽しいなの! 

 こんなに一日が楽しくて、明日が待ち遠しいなんて、初めての感覚なの。


 それに、人種の営みも悪くないなの。お風呂も気持ち良いし、最近は食事も味が分かる様になって、ますます好きになってきたなの。

 ……人種は一日に、何度も食べていた気がするなの。なのにあいつ等は、崇めるばかりで何もして来ない上、意味の分からないお供えみたいなモノも一日一回だけ……あの糞エルフ共、見つけたらチリも残さず、消滅させるなの。


「どうかしました?」

「なんでもないなの」


 人種は大っ嫌いなの。でも、この人種は嫌いじゃないなの、助けてくれたし、面白い奴なの。

 たまに怒る時が有るけど、理由を説明してくれるし、私が知らない事や、面白い考え方も教えてくれるなの! ……反論できない時が有るのが、ちょっとムカつくけど、それ位許してやるなの、うん!


「ごちそう様なの!」

「ごちそう様でした」


 この人種は、普段は迷宮を弄っているか、私の中に居るかだから、何処にいるかなんて何時でも分かるなの。朝の報告を確認しているから、その間に私も、私のやるべき事をするなの!


 人としての感覚を切り、本来の感覚に戻る。そうすれば、私の魔力が届く範囲、私の根がある近くの事は、魔物や動植物の位置、魔力の濃度に属性に至るまで、殆どなんでも分かるなの!


 最初に生まれた子達、あの人種と一緒に名付けた迷宮の魔物が、思い思いに過ごして居るのが分かるなの。

 なのなの? 縄張りができて居るなの? 名付きの子達が頂点に、生態系ができ始めているなの。やっぱり、名前があった方が強いなの?


 う~~~~~ん、領域内は、特に問題は見られないなの。属性も安定しているし、魔力濃度もほぼ均一、淀んでいるところも見られない、魔物も増えたり減ったりを繰り返して、魔力と共に命が巡っている、良い事なの!

 沢山沢山、生まれて死んで、大地に、世界に巡り回るなの! そして私の元に戻ってきて、更に生まれてくるなの!


 確認と調整の為に魔力を放出すると、外に出した魔力はそのままで再利用できないし、魔力量が増えて属性の方が薄くなるなの。でも、ここでは魔力結晶のお陰で、いろんな属性の魔力に成るから、魔力濃度のバランスを取る必要が無いのは楽なの。お陰で、わたしも気軽に世界を見る事ができるなの。

 精霊族の子達が、適度に属性の偏りを整えてくれているし、妖精族が増えて、細かい淀みも散らしてくれる様になったから……あれ? 私、仕事が無いなの?

 いや、いやいやいや、そんな事ないなの。魔力の提供だってしているし! 後は、その……そう! お風呂だって、私が居るからあれだけ良いもの? ができているなの! それで、えっと………


「うわーーーん! モフモフ~! モコモコ~!」

「キュミ!?」

「ム~~~?」


 何故かとっても悲しくなったので、森に寝そべっているモフモフに、依り代状態で飛び込む。むへ~~~、これこれ~~~なの。


「びっくりしたー」

「どた~~~?」

「なんでもないなの。黙って、モフられろなの~~~♪」

「あい~~~zzz」


 包み込むような温かさ、滑る様な滑らかな触り心地、全てを受け入れるがの如く衝撃を吸収する柔らかさ! 

 最ッッッ高~~~なの! こんな生き物、ここにしか居ないなの! 


「ドゥヘヘヘヘヘ~~~」


 これを味わうだけでも、人型に成った価値はあるなの。癒されるなの~~~……


 ―――


「……ハ!?」

「うぉ!?」

「ム~~~? おき?」


 仕舞ったなの。あまりに気持ち良すぎて、眠って仕舞ったなの。最近、依り代状態も慣れてきたのか、無意識状態でも維持できるようになったせいなの。


「おはよー、世界樹様。もう、お昼だよ~」

「なのなの」


 太陽は真上、暖かい日差しが全身を照らすなの……ここは、良い所なの。私は、今のここが大好きなの!


 近くだと、東の森の方は全然ダメなの。前まで、あそこと同じような所に居たなんて考えると、嫌になってくるなの。

 あそこは、魔力が淀んでいるし属性も闇が殆ど、どうしたらあんなダメダメな状態になるなの。意図的に弄らないと、流石にあそこまで狂ったりしないなの。自然の浄化作用が、全く作用して無いなの。

 ……ま、もうどうでも良いことなの。全部壊して、全部作り直すなの。あんなの一から調節し直すなんて、やってられないなの。


 でも、なんでこんな状態になったのかは、知っといた方が良いかななの? 無知は……嫌なの。死ぬのは……怖いなの。


「どう思うなの?」

「調べられるなら、その方が良いと思う」

「以下同~~~」


 根は既に伸びているなの。森を、山を、その先の平原まで、全てを覗いて調べるなの!


「勝手にやっても良いのかな?」

説教せっきょ?」


 ……その前に相談なの。うん、違うなの、あいつも報連相は大切だって言ってたなの。

 勝手にやって、何か言われるのが嫌なわけじゃないなの、怖い訳じゃないなの、本当なの!!


 ………………ブルル


 ―――


 あ、居たなの。また、蜘蛛(タラント)達のところに居るなの。依り代をつくり、人型を取る。


「なの」

「おや、どうかしましたか、世界樹さん」

「……ちょ、ちょっと相談なの」

「世界樹さんからとは、珍しいですね。何でしょうか?」


 何でか分からないけど、この人種の前だと安心するなの。私を助けてくれた人種、きっと私の敵にはならないなの。

 なのに、何で……それ以上に怖いなの? 


「? どうかしましたか?」


 この人種は、迷宮と一緒に私と繋がっているなの。敵になんてなる筈がないなの。でも、もし、この人種が敵に成ったら? ……弱いなの、私の依り代だけでも、簡単に勝てるなの。なのに何で……勝てる気がしないなの? 私は何よりも、この人種が怖いなの。


「……何でもナファ?」

「そんな顔していたら、説得力無いですよ?」


 いきなり頭をなでられたなの。そんなに変な顔をしていたなの? ……表情というものは、まだ良く分からないなの。だけど、この手は、嫌いじゃないなの。とっても、落ち着くなの。


「……なの。ちょっと試したいことが有るなの」

「ほうほう、いったいなんでしょうか?」

「なのなの! あのね、東の森の―――」


 確かな事は、この人種は私にはないモノをもっているなの。きっと私が求める、最高の結末に連れて行ってくれるなの。

迷宮主のメモ帳:魔術


魔力を特定の形で循環・維持させることで、魔法と同じ現象を引き起こす技術の事。


術式に直接魔力を流し発動させる《流入式》

円の内側に術式を組み、円内に魔力を流し発動させる《循環式》

他にも有るが、この二つが主流。


世界樹の迷宮では、魔術を使う場合には主に《循環式》を採用している。(《流入式》を使うなら、魔法で良い)

また、この原理を使って作られた道具を、魔道具と言う。


77.1話参照

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