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88 神の領域

①魔力とは?

②魂とは?

③常識と真実

 

 他者や空気中にある魔力を操作するのは、かなり難しいが、自分の体内に存在する魔力は、慣れれば容易に操作できる…らしい。自分の魂からできた魔力、元自分の一部ならば、操作しやすいのでしょうね。

 魂が肉体、魔力は血液、脳からの信号が魔法を発動させるための思考と考えれば、イメージしやすいでしょうか?


 魂とは魔力の塊であり、魔力の元が生物の核である魂からの流出物なら、その魂からの信号に反応しても不自然じゃない。

 そして、魔力の結晶体である魔物が持つ魔石。先ほどの結果から見ても、魂と同じ役割をしていたとしても、何らおかしくないでしょう。


「―――と、仮定してみたんですが、如何でしょう?」

「「「……」」」


 そして魔術とは、式内に魔力が流れることで、生物の放つ思考を疑似的に再現すること。ならば、逆に現象から術式を導き出すことができてもおかしくはないはず!


「ど、どうやって?」

「そこが問題ですよね~」


 魔力は思考に反応する。つまり思考で魔力に干渉できる……脳波コントロール的な感じか?


 魔力に思考を乗せると魔法が発動する、これは恐らく正しい。なら、思考が視覚化できれば、それが術式になる? 


 魔法が発動するところに、魔法でなく、魔力に乗せた思考が視覚化できる様にできれば?


 視覚化……魔力に反応する、目に見えるモノ……魔石、魔力結晶?

 魂なんてエネルギーの塊を利用するのは、ダンジョンでも無ければ難しい。だが、魔石なら目に見えて、触れて、安定している。これを利用しない手はない。


 問題は、現象やエネルギーを視覚化する方法……いろいろありますね~。


「……片っ端から、試してみましょうか」


 ―――


 簡単にできる事からやって行きましょう。


 用意するのは、魔力結晶の粉末と、魔力をよく通す蜘蛛(タラント)達の糸でできた布。

 ピンと張った布の上に粉末を散布し、そこに魔法を発動する要領で、魔力を流してみる。布の上に砂を置いた上で声を掛けると、音の振動が形になる様に、変化が現れないかな?


「魔石は使わないので?」

「魔石は、スキルとかいろいろ混ざり物がありそうですからね。まずは、品質が均一に近い、魔力結晶でやってみましょう」


 蜘蛛(タラント)が代表し、魔力を流す事になった。てか、他種族に譲ろうとしなかった。このマッドサイエンティスト共め……。


「……行きます」


 結果が分かりやすいとの事で、火の魔法を試してみる事になった。結果は……


「……? 反応なーーー」


 - ボン! - 


「ギャーーーー!!??」


 …失敗。反応が見られる前に、発火した。

 何度か試したが、結果は同じ。魔法が発動してしまったのか、魔力に使用した素材が耐えられなかったのかは不明だが、これで結果を観測するのは難しいと判断された。


 次!


 今度は、平らな魔抗石の板と、魔力をよく通す蜘蛛(タラント)達の糸、そして魔力結晶の粉末を用意します。

 魔抗石の板に糸を真円に配置、対角線上にも糸を伸ばして配置する。そして、円の中に魔力結晶の粉末を、均一に散布する。ここに左右の糸から、魔法を発動する要領で魔力を流す。

 前回は不安定な布の上(魔力的にも)で行ったのが、失敗の原因かもしれないので、【魔抗石】の板の上で行う。確かに、魔力を良く通すので、周りの魔力に影響されてもおかしくなかったですね。しかしこれで、魔力が送られるのは、糸からのみになる。魔術を執行する時に近い状態のはず!


 魔石や魔力が思考に反応するなら、電磁石の磁界の様に反応しないかな?


「ま、また燃えたりしない?」

「魔力結晶の量は、さっきと変わらない」

「燃えても、さっきと同じ規模……今度は離れているから大丈夫」


 今回は糸から魔力を流すので、安全の為少し長めに、離れて実行する。結果は……


 ― …………………ジジ -


「「「おぉ!?」」」


 ― ボン!! ―


「「「ギャーーーーー!!??」」」


 ……失敗? けど、発火する前に粉末が動いた姿を、複数の者が観測している。そのせいなのかは分からないが、先ほどより発火の規模が大きくなった。

 ……前回の発火は、素材が負荷に耐えられなくて起こったもので、今回は、多少なりとも魔法が発動して仕舞ったせいで、規模が大きくなったのかな?


 次!


 魔力が流れるのに、負荷が掛かるのであれば、その負荷を分散してやればいい!

 魔抗石でできた円筒の器を用意し、両側に穴をあけて糸を設置、隙間をなくすため、硬化する糸の元で密封接着する。その中に水を張り、粉末を投入し準備完了。

 水の中なら、粉末も移動しやすいでしょうし、余計な魔力は水の方に分散する……はず。

 豆電球みたいに、焼き切れたりしないよね?


「だ、大丈夫だよね?今度こそ燃えないよね!?」

「水があるし大丈夫! ……多分ボソ

「今度は、吹っ飛ぶかもね?」


 不穏な事を言いながらも、魔力を流す蜘蛛(タラント)達。結果は……


「……あれ?」

「爆発しないね?」

「分散して、魔量の量が足りない?」

「もっと強く流してみる?」

「それじゃ、分散させた意味なくない?」


 うーん、粉末は……底に沈んだままですか。なら、粉末を動かしてみるか? すぐに沈むでしょうけど、その間に反応があるかもしれない。


「……マジで?」

「弾けない?」

「さぁ?」

「……誰が動かすの?」

「「「……」」」


「「「……最初はグー! じゃんけん、ホイ! あいこで、ホイ! あいこ―――」」」

「「「―――ホイ! ホイ! ホイ!」」」

「「よっしゃーーー!!!」」

「うえーーーー!!??」


 ようやく決定した模様。あ、あの子最初に焼けた子だ。てか君達(タラント)、頑丈な子に頼むとかしないのね?


「へー、へー、へーーー(深呼吸)……いきます!!」

「がんばれ~」


 覚悟を決めて動かしに行った蜘蛛(タラント)に対して、周りの子達による、無責任な応援が送られる。結果は……


「……うぉ!!??」


 爆発する様子も無く、水中で揺れ動く粉末を眺めていた生贄(タラント)が、驚愕の声を上げる。それを聞き、周りの子達も集まり、中を覗き込む。

 そこには火の術式、十字の形に魔力結晶の粉末が集まっている様子が見て取れた。


「「「き、き、き……キターーーーーーーーーー!!!!」」」

 ―――










 セキュリティーレベル10、禁則事項の発生を確認

 発生個所の特定開始……特定完了


【世界樹の迷宮】のコアへ接続開始


 世界の記憶(ワールドレコード)観覧履歴を確認

 セキュリティー違反……形跡ナシ

 情報改竄……形跡ナシ


 迷宮記録(ダンジョンレコード)を確認

 セキュリティー違反……形跡ナシ

 情報改竄……形跡ナシ


 審査完了。不正行為は確認されませんでした。


 ~称号、<神域ヲ覗ク者>を授与します~




「………やってくれたね」


迷宮主のメモ帳:魔法


魂から放たれる意思に、魔力が反応し起こる現象。あらゆる物質や反応、現象を生み出すことが可能。


自身の魂から生み出された魔力が親和性が高く、意思に反応しやすい。反面、体外に放出された魔力は、すぐさま霧散し、自身の支配圏から逸脱する。(定点発動とかは無理そう)


基本、自身が支配できる範囲の魔力を、安定した状態や物質に変換し放つ事で、遠距離攻撃を可能とする。

魔法で作られた物質は、極端に不安定であり、すぐに魔力に戻って仕舞う。その為、資源として利用することは難しい。


スキルの中には、<魔力操作><魔力掌握><魔力支配>等、魔力制御の制度や範囲を広げ、自身の魔力以外の魔力を支配圏に置くことが可能になるものが存在する。

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[一言] まさかの禁忌。何やってんだマスター達。
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