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87 魔力と魂と世界の法則と?

①ワーカーホリック

②マッドサイエンティスト

③スライムウェイブ

「では皆さん。まずは、情報の統一、共有化から始めましょう」


   世界樹さんの中心部。そこに造られた広場にて、主要種族に招集をかけた。


  「基本的な事を君たちに聞きたい。質問その一、“魔力”とは何か?」

  「「「?」」」


 この世界の生き物にとって、魔力とは空気みたいなものですからね。普段の生活の中で、空気とは何か? なんて、学者でも無ければ疑問にも思わないでしょう。


  「魔力は、魔法の発動に使われる…力?」

  「うんうん」


 この世界で生まれたものは、魂で繋がっている。

 そして、迷宮から生まれた子達は、迷宮の核であるコアさんと繋がっている。さらに、コアさんは世界と繋がっている、でなければ世界の記憶を覗けたりしないでしょう。

 ならば、コアさんを通じてこの子達は世界と繋がっていることになる。だからこそ、短時間でこれ程の成長を可能とした。

   肉体的、精神的成長はまだ納得できるが、知識面でこんなに早く成長するのがおかしいのだ、知識を提供する者なんて居なかったのだから。


 では、この子達の知識はどれ程のものか? 世界の知識から、基本的なことを知ることはできたかもしれない。だけど、そもそもその知識は正しい事なのか?


  「質問その二、その魔力は何処から生まれている?」

  「魂からです」

  「じゃぁ、その魂はどうやって魔力を生みだしている?」

  「え?」

  「勝手に出るんじゃ?」


  魂とは、生物の核であり、魔力の生産工場みたいなもの。では、魂はどうやって魔力を生み出している?


 この世界において、魔力は全ての物質、エネルギーに変換することができる存在。この世界の根幹そのもの。

 そこまで詳しいわけでは無いですけど、俺が居た世界の法則、質量保存の法則やエネルギー保存の法則を無視した存在。確かに異世界ならその法則が適応させなくてもおかしくない。

 …が、本当にそうか? 俺達が感知する方法が無いだけで、全く当てはまらないと言い切れるのか?


 その疑問の切っ掛けをもたらしたのは、ダンジョンの機能だった。

 DPを大量に使うが、魔力からだけでも【生産】が可能、使うDPは魔力を加工する際に使われるだけで、魔力だけでも魔物を生むことができる。魔力の溜まり場から生まれることを考えれば、魔力から魔石を持つ魔物が生まれるのは、間違いではないのでしょう。


 また、魔石が有ろうが無かろうが、生物からDPが得られることに変わりはない。そして、物を壊してもDPは得られない事から、生き物、魂があるモノからDPが得られると思われる。


 だとしたら、魔石と魂が全く同じ役割を果たしているのではないか? 魔石が魔力からできているのならば、魂もまた、魔力でできている?


  「---て、事で。実験してみようと思います!」


  今この世界の常識とされて居る、“魔力は魂から生み出されている”。まず、この常識から確認してみることにする。


 その為に、準備したのがこちら。


  【抗魔石(コウマセキ)

 マグナ大陸にのみに存在する特殊な鉱石。一切の魔力を通さず、硬く脆い。


 タラントの保管庫にも使われている、無色透明の鉱石。その性質は魔力を一切通さない事。これを使い、密封容器を作製した。

 この、コアさんからの情報が間違いでは無ければ、これを使った箱の中では、意図的に魔力枯渇、いや真空状態が作れることになる……マグナ大陸って何処だろ?


 この箱を複数用意します。そこに、外から捕らえた弱い魔物、その魔物と同レベルの魔石、魔物でない小動物を固定した状態で設置し、比較対象に何も入っていないものも用意します……魔石のない動物が居たことに、ちょっと驚いた。可愛くないけど。

  箱の出入口は二重構造になっているので、出し入れで魔力が侵入することは無い。


  「で、この中に、この子達に入ってもらいます。プルさん、お願い致します!」

  (ごーごーごー!)


  名称:魔食粘液(マナイーター)

  氏名:

  分類:半虚現体

  種族:粘液族

 LV: 1 / 10

  HP:20  / 20

  SP:20  / 20

  MP:10  / 4000

 筋力:5

 耐久:5

 体力:5

 俊敏:5

 器用:5

 思考:5

 魔力:1000

 適応率:90(Max100)

 変異率:90(Max100)

 スキル<分裂LV1><融合LV1><吸収LV1><魔力操作LV3><包魔LV1><魔力成長LV1><鑑定LV3>

  称号:<全の一>


 この子達は、魔力だけを食べる特殊な粘液スライム。この子達に箱の中の魔力を全て吸い取ってもらう。もし、魂が何もない所から魔力を生み出しているなら、吸い尽くしたりはできない筈だ。


 この箱は魔力を通さないので、コアさんでも外から観察ができない。その為、<分裂>の際に<鑑定>も取得させている。プルさんのスキル<群体>の一部なので、箱から出ればプルさんを通して意思疎通も完璧だ。


 何もないところは、すぐに吸い尽くした。

 他については、空間内の魔力は吸い尽くし、魔物、生物のMPも無くなる。だが、魔石の中の魔力はまだ残っている為、そのまま魔力を吸収し続けてもらう。


  数分後、まず魔石の魔力が尽きた。


  「……魔石自体は残るのか?」

  「中身は空っぽの様で、あ……崩れて消えた」

  「やっぱり、消えるんですね」


 魔石内の魔力が尽きたと言うことは、生き物の方もそろそろでしょうかね? 一旦、魔力の吸収を止めてもらう。


  (……MP回復しな~い)


  魔物、生物共々回復する気配が無い。魔食粘液(マナイーター)に魂に干渉する能力はないので、魔力を吸収し続けただけで、魂からの魔力生産が止まった事になる。


  「少なくとも、魂が魔力を無制限に生産することはできない様ですね」

  「マジか……」


 しばらく様子を見てみましたが、回復が再開される兆しはない。サンプルを残し、数体の個体のMPを全て吸ってもらう。


  (……? まだ吸える~?)


 MPが0になった状態から、更に吸収を続ける。そして……吸収した全ての個体が、死亡した。


  「この結果をどう見ますか?」

  「……魔力(MP)が回復しない状態が、そもそもおかしいのですが。魔力が尽きただけで、現体の魔物と生物が死亡することは無いと思われます」

  「魔力が完全に無くなると、生きて居られない?」

  「魔石が崩れるから?」

  「でも、魔石の無い生き物も死んだよ?」

  「……! 主様、DPは回収されたのでしょうか?」

  「されていないね~」


 ダンジョン内で生き物を殺害すれば、その生き物の強さによってDPが回収される。だが、今回に限り、生物からDPを回収することができなかった。


  「……魔力が完全に無くなった個体からは、DP……エネルギーを取得できない?」

  「主様! 観察用の個体を殺害して、DPを回収できるか確認して見ても!?」

  「そうですね、試してみましょうか。ついでに、魔力がある状態だと、この状態が改善されるかも見てみましょう」


 生きているサンプル数体と、ついでに死体も密閉空間から取り出す。死体を外に出しても、DPが回収されることは無かった。箱の中だから、回収できなかったわけでは無い様ですね。


  「では、殺すのはこれで良いですかね?」

  「ちょっと待って下さい。まず、箱から出さない状態でやってみましょう。外に出したことで、何か影響が出ているかもしれません」

  「箱から出さずに、殺せるのですか?」

  「透明だから見難いかも知れないけど、上に魔抗石の杭が付いているので、それを使いましょう」

  「……あ、あった」


 生き物が固定されている丁度真上。そこに、円錐状の魔抗石が固定されているので、魔食粘液マナイーターに留め金を外してもらう。魔抗石の杭は真っ直ぐ下に落ちていき、下に居た魔物と生物の頭部を粉砕した。


  「……回収されない?」

  「開けてみましょう」


 密封状態で殺害しても、DPが回収されない可能性がある為、魔抗石の箱を開封する。


  ~侵入者を撃退しました。1 DPを取得しました~

  ~侵入者を撃退しました。1 DPを取得しました~


  「「「……」」」

  「……あ~~~、どういう事?」

  「魔力を吸い尽くした状態だと、DPは回収できない」

  「DPは魔力って事?」

  「取得できるDPも減っている」

  「……じゃぁ、魂は魔力でできている?」

  「では、魔力に曝された個体を処理してみましょう」


   比較の為に、箱から取り出した個体を一度に数体、一定時間ごとに処理していく。


  ~侵入者を撃退しました。2 DPを取得しました~

  ~侵入者を撃退しました。1 DPを取得しました~


  ~侵入者を撃退しました。5 DPを取得しました~

  ~侵入者を撃退しました。1 DPを取得しました~


  ~侵入者を撃退しました。8 DPを取得しました~

  ~侵入者を撃退しました。1 DPを取得しました~


  ~侵入者を撃退しました。11 DPを取得しました~

  ~侵入者を撃退しました。1 DPを取得しました~


 結果、時間が経つにつれDPの平均回収量が上昇。密封状態の方は変わることが無かった。更に観察していると、MPの回復が再開され、それ以降DPの回収量が上昇することは無かった。つまり、魔力は魂から生まれているのではなく、魂から外に出ているだけになる。さらに言うと、魔力を吸収し溜めておくことができると思われる。まぁ、密封状態でDPの元が漏れ出さなかった時点で、性質は魔力に近いのは間違いないでしょう。


 その結果を見て皆、唖然としている。この結果が正しければ、この子達の常識はこの世界に流布されているものであり、絶対の真理ではないことになる。


  「これは、常識を捨てて考えていく必要がありそうですね~」


 魂は、魔力を吸収して魔力を放出している。そして、魔力を吸収する際、DPとなる他のモノに変換している可能性がある。では何に変換しているか? 


  「俺が思うに、魂では無いでしょうか?」


 これって、魂の代謝なんじゃないかと思うんですよ。

 魔力を吸収し、魂に変換。不要になった、又は劣化した部分を排出し、それが魔力(MP)の回復に繋がり、更に余った分をダンジョンが<回収>している。


 魂から不要となった部分、排泄物だとしても元は魂な訳ですから、ダンジョンが<回収>できても不思議じゃない。効率は大分劣るみたいですが……あれですかね? 魂であることが重要なのか? 元素が同じだろうが、性質が異なる物質もありますし、え~と、同素体だったかな? それに近い考え方でしょうか。


 DPを魔力に直接変換した時と、魔力(MP)が空になった個体が吸収した魔力量を比較した時、吸収した魔力量以上にDP取得量が上昇した所を見るに、間違いないと思うんですよね~。


迷宮主のメモ帳:魂(DP)


生物が持つ核。


外部から吸収した魔力を元にし、劣化した部分を排泄する。排出された劣化物は、魔力として体内を巡り、最終的に体外に排出される。(魔力の自動回復)

魔力が減っていない場合は、そのまま体外に排出される。(ダンジョンはそれを回収している)

魔力が変質したモノだが、DPエネルギーとして見た場合、その効率は魔力の比ではない。


"魂が大きい程、スキルを多く保持でき、能力の成長幅が広くなる。(最大レベル)

密度が濃い程、スキル成長が速く、能力が高くなる。(現在レベル)"


魔物が持つ魔石が、ほぼ同じ役割をしている。


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