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85 世界樹の趣味

①朝食

②ドラゴンステーキ

③お肉事情


「……」ニコニコ

「……」ニコニコ

(プルプル)ダラダラ

「世界樹さん、これは…何ですか?」

「よく聞いてくれたなの! これは、領域内に生えている植物と、毒持ちの子達の毒を集めて作った最高傑作なの! 一度解き放たれたら、空気中に霧散、一息でも吸い込めば一気に全身に行き渡る即効性と、安全面を考慮して、数分もしたら空気中の薬の薬効は消える安全設計なの! 一番課題だったのは、薬効の指向性を持たせられなかったことなの。それも、外に生えてた薬草を使ってやっと完成したなの!」

「つまり、これは…一言で言うと?」

「人間絶対殺す毒、なの!」

「なんてもん作っているんですか!?」


 最近、引きこもる頻度が多いと思ったら、なんて危ない物作っているんですかこの植物は。

 毎日しょげたり、悩んだり、機嫌が良かったりを繰り返すものだから、そろそろ何をしているか確認しようと思い立った矢先、見せられたのがこの兵器です。世界樹さんの中にある部屋の一つで、何かをやっているは知っていましたが、プライベートを尊重して確認を怠ったのがイケなかった。


「なんで怒るなの?」

「人種に限定していますけど、結局は無差別兵器じゃ無いですか!?」

「どうせ使うのはあいつ等にだけなの。その後は封印するなの」

「分かってない。世界樹さんは、人というものを分かっていない!」

「……どういう意味なの?」

「世界樹さんを殺しかけた毒だって、人が作った物でしょ?」

「!?」

「ま、何かを作ったり使ったりする場合は、自分に使われることも考えましょうって事です。世界樹特効薬とか、作られかねないですよ?」


 もし残渣などから、その特性を調べられたりでもしたら、何に利用されることか。大半が碌でも無い事に成りそうですしね。

 そ れ に、復讐するなら禍根も残さず、一度できちっと終わらせたい。毒で遠くから一気に殺しても、実感など持てないでしょう。そうなると人種に対して、いつまでも詰らない感情を燻ぶらせることになる、世界樹さんの長い樹生に、そんなもの邪魔にしかならない。やるなら自らの手で、納得できる形で引導を渡して貰わねば。


「それに、毒で即死させるだけで良いんですか?」

「……それはそれで、あっさりしていて、何かムカつくなの」

「他にも、関係ない人が逃げるくらいの時間は、有った方が良いでしょうし…ね?」

「あ、それもそうなの、関係ないのは巻き込んじゃダメなの。決めたことは貫き通すなの!」

「ですです」


 うんうん、素直な所は世界樹さんの美点です。しっかし、良くこんな短期間で作り上げましたね。その点は普通に尊敬できます……本人に言ったら調子に乗りそうですから、言いませんけど。


「分かって貰えたみたいですから、毒については良いとして、他にも有ったりします? 毒でなくても、薬とか」

「当然、毒・薬・試作品と沢山有るなの。植物の事で私の右に出る奴は居ないなの! それに私には、薬のスペシャリストが仲間に居るなの!」

「スペシャリスト?」

「プルなの! 材料の採取と運搬もして貰ってたなの!」

「へ~……プルさんがね~」


 ―ビク!―


 今現在、俺の腕の中に納まっているプルさんを、ちょっと強めにプニる。

 ははは、どうしたんだいプルさん。いつも以上に弾力があるじゃないですか。なぜに緊張しているんでしょうね~?


(…)ダラダラ

「…」ニコニコ

(…素材を運んだだけで、プルは何も知らないもん)

「う、裏切りなの!?」

(ア、アドバイスだけだもん! 何を作っていたかは知らないもん!)

「方向性は知ってたはずなの! 今更逃げるのは許さないなの!」


 俺の目の前で、醜い争いが繰り広げられる。二人とも仲良しですね、同じ作業をしていると、息が合うのも早いのでしょう。


「兎に角! 二人共自重を覚えてください。ヤバい物でなければ、続けても構いませんから」

「え、良いなの?」

「その代わり、何ができたか報告はして下さいね?」

(は~い)

「なの」


 ま、プルさんが付いているなら、滅多な事にはならないでしょう。何だかんだで、俺の代わりに様子見をしてくれていたみたいですし。


「後、作るなら毒だけでなくて薬もあったら嬉しいです。頼めますか?」

「薬の方? 風呂があるなの」

「あれは風呂ですからね? 薬を作る施設じゃないですからね?」


 全く、何度言えば分かるんでしょうね? それに、あれでは安定した薬の供給は望めませんから、自分の手で作れるならそれに越したことは無い。配合が分かれば、後は材料を用意すればいいだけですし、毒が作れるなら薬も作れるでしょう。


「分かったなの、でも毒と違って時間が掛かると思うなの」

「まぁ、薬効を抑えたり、持続性を上げたり、保存性を高めたり、終わりのない世界ですからね、気長にやっていきましょう?」

「……そっか、そういった方向性も有るなの。血刃草をベースに薬効を抑えて、持続時間を(ぶつぶつ)」


 没頭できることができたのは嬉しいですけど、幼女が毒やら致死量やら呟いている姿は、中々来るものがありますね。いや、うん、提案したのは俺ですけど、他に無かったのだろうか。自分の思考に沈んで、戻ってくる気配がない世界樹さんを見ていると、不安になってくる。薬の方も忘れないでくださいね?


 ―――


「プルさん、プルさん」

(う~、ごめんなさい~)

「その事については良いんです。寧ろアドバイス有難うございます。植物に詳しくても、薬には疎かったんじゃないですか?」

(うん、てきとうに、毒物まぜてた)


 おう、思っていた以上に危険な事していた。

 あれ? やっていることがお風呂と同じ? ……あれはプルさんが管理していますし? うん、何の問題も無いですね!


「これからも、世界樹さんの事を見て上げて下さい。ヤバい物ができたら報告を」

(りょうかい~!)

「しかし、よくこんな短期間で、あれだけ高性能な薬(毒)を作れましたね?」

(材料が良かったし、スキルと魔法で効果の方向性を決められれば、そんなに難しくなかったよ? 難しかったのは、薬に魔法を定着させることだけだったし)


 あ~~~、魔法か……俺も使いたいな~。



迷宮主のメモ帳:迷宮主ダンジョンマスター


ダンジョンコアと契約し、ダンジョン運営をするものを表す。

コアが行えない応用を利かせるために、現状に適合した存在を召喚する。

召喚が発動することは滅多にないが、コアだけでは対処できない場合、後が無いと判断された場合に行われる。


迷宮主ダンジョンマスターが居るダンジョンは、マスターの能力分全体の性能が上がり、外敵に対して適時対応するようになる為、急激に難易度が上昇する。

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