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75 竜と蟻の戦士①

①勘違い男の最後

②本当の竜族!

③試合開始!

「ガーーーーーー!!!!」


まずは小手調べ! 姿勢を低くし首を伸ばし、前方にブレスを放つ。ブレスと言っても、様々な種類がある。


魔力を圧縮し、炸裂する魔力の塊を放つ“吹き飛ばし”

魔力を絞り、魔力を照射し続け焼き切る“焼き切り”

そして私ができるのは、圧縮されていない魔力をそのまま吐き出す、“焼き払い”

威力が低い代わりに、広範囲を焼くことができる。雑魚一掃用のブレスだが、無視できる威力じゃ無い、どうする!?


上へ逃げるなら、魔法で撃ち落とす。左右に避けるなら、爪で引き裂く!

……そんな私の思惑は、早々に覆される。


― ドン! ―


地面が爆ぜる音と共に、猛スピードで突っ込んで来る影が視界に入る。

放たれたブレスの下を潜り抜け、矢の如く真っ直ぐこっちへ向かって来る! マッズ!?

前足で跳ね上げ、咄嗟に上半身を後ろに下げる。首があった場所を、魔力を纏った爪が通り抜けた。

その軌道を見れば、急所である魔力袋があった場所だ、一撃で仕留めに来やがった!?

しかも止まらねぇ! そのままの速度で今度は、体が浮いて露になった、装甲の薄い腹に向け噛みついてくる。この牙…マズイ!!


進行方向を潰す為に、上から爪を振るう。ただ放ったのではこの速度だ、恐らく躱される。逃げざるを得ない範囲で押しつぶす!

体内で圧縮され、肉体の強度を上げている魔力を、手から放出することで無理やり攻撃範囲を広げる! 技術もへったくれも無い、魔力を吐き出すだけの、ただただ力任せの一撃。本当は魔力を操作することで、爪の切れ味と間合いを伸ばす技なんだけど、今回はこれでいい!


「!? チィ!!」


またも地面が爆ぜる音と共に、コクガ殿が真横へと避ける。そう、距離を取らざるを得ないでしょう!?


― バゴーン! ―


手が地面に触れると同時に、地面が弾け飛び、衝撃と礫が辺りへ飛び散る。こちらもダメージを受ける、完全な自爆だが、間合いを確保できた。しかも!


「逃・が・す・かーーー!!」


その距離は私の間合いだ! 自爆によるダメージを無視し、尾で薙ぎ払う!

迫る尾に対して、相手は瞬時に迎え撃つ体制を整える。チィ、やはり間に合わないか。私の尾と、相手の爪と牙が衝突する。


― ギーーーーーー ―


魔力が擦れる音が響く。流石に真正面から受ける様な真似はしないか。わずかな抵抗感を感じたが、尾は簡単に振り切れる。どうやら受け流されたらしい。

しかも後ろに跳んで、衝撃も殺された様だ。私の力も利用して超低空を飛び、壁際まで距離を取られる。

少しでも力の逸らし方を間違えれば、圧し潰されるか、上空へ吹っ飛んでいたでしょうに。足が付くギリギリを飛ぶなんて、器用な事をする。お陰で追撃に動けなかった。


お互い一息つく。まさか初手から突っ込んで来るとは、逆にこっちがビックリしたわ。あの糞虫共と戦っていたんだっけ。ブレスは経験済みって訳か。

魔力に身体能力、基本スペックは私が圧倒している。だけど、悔しいことに技量は向こうが上か。


― ドン! ―


また、爆ぜる音と共にこちらに向かって来る。今度も直進……してくることは無かった。


― ドン! ドン! ドン! ドン! ―


連続で響く炸裂音に、あちこちから上がる土煙。高速で動きながら、急旋回を繰り返して間合いを縮めて来る。

直進でなくても、元々の速度が速度だ。どんどん間合いが詰められる。どんな移動方法だよ!? これじゃ狙いが付けられない、だったら!


魔力袋に魔力を込める。向こうもこちらが、ブレスを用意していることに気が付いた様だ。

この距離では阻止できないと考えたのだろう。無理に近づいてくることはせず、一定の距離で旋回し、私の側面へと回り込もうとする。

幾ら速いからと言っても、向きを変えるだけの私の方が速い。とにかく、彼を視界から外さない様に動く。

そして、最初にブレスを吐き出したタイミングで首を伸ばせば、彼は軌道上から外れる様に、大きく距離を取る。


クフ、引っ掛かった! そんな彼を放置し、魔力を溜め続ける。


「ナ!? クッソ!」


クフフ、威力調整ができない半端者と同じ対応をしたな? 本物の竜を舐めないで欲しい、撃ち分け位できる!


今度は最短距離を、真っ直ぐ進んでくる。そうだよね~、突っ込んで来るしかないよね~。此方が、どれ程溜める事ができるか分からないんだから。

もしかしたら、この部屋一面を焼ける程の規模の可能性だってあるんだ。一刻も早く止めるか誘発させないと、大ダメージは必至。必ず止めに入る! 遠距離攻撃が来ることも考えたけど、この場になっても出さないって事は、攻撃手段が無いと思っていい?

ま、撃って来たとしても、無視して溜めるつもりだったけどな。

だけど、これで向こうは、私がブレスの威力を調節できることを把握したことになる。二度目は恐らく引っ掛からない。これで決める!


「ガーーーーーー!!!!」


前回と違い、今回は地面を焼き払う様に吐き出す! こっちも焼けるけど、これなら避けようがないだろ!?

炎に呑まれ、彼の姿が視界から消える……が!


(跳んだわね!?)


炎に耐えられなかった為か、上空へ飛び上がる気配を察知した。この瞬間を待っていた!!

高威力のブレスと魔法を同時に処理することは、私にはできない。でも、一度作った魔術の術式を、維持するだけならできる! ブレスを止め、維持していた術式に魔力を流し、起動する!


「『ファイヤーボール』!」


火の玉が3つ生まれ、気配へと飛翔する。そして、コクガ殿と思われる気配を……“すり抜けた”。


迷宮主のメモ帳:鳥族


羽毛(翼)、かぎ爪、嘴などの特徴を持つ魔物全般を表す種族。


(地中、水中、空中問わず)飛ぶことが得意な種が多く、飛行時に魔法を使用する為、魔法適性が高い種が多い。

物理面では、硬い嘴や鋭い爪などに注意が必要な反面、物理防御は弱い傾向がある。


魔法防御が高く、飛行により接近も難しい為、弓や礫など、物理遠距離攻撃で狙うのがセオリー。


素材としては、羽毛が寝具や衣服、かぎ爪や嘴が薬や武具道具等に使われる。


地球で言うと鳥類の大半がこれ。

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