表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/334

74 竜の調査隊、迷宮に潜る⑤

①生き地獄

②手合わせ決定!

③【創造】竜族登場!

「お前はダメだ!」


 ルナと名乗った幼竜の発言を、コクガ殿が一蹴する。


「何故ですの!?」

「お前ついさっき、こいつのどてっ腹に大穴開けて、殺しかけたばっかりだろ!?」

「そ、その事については申し訳なかったと思っていますわ! でも、仕方がないでは無いですか! 余りにも情けない姿にイラっと来たんですわ!」

「言いたいことは分かるがな……見るのも修行と思え、な?」

「む~……分かりましたわ。エレン様でしたわね、勉強させていただきますわ!」

「え、えぇ」


 そう言って、元居た高台……には戻らず、途中で方向転換し、シスタの方へと飛んで行った……綺麗に飛ぶわね。

 話し相手になってくれるなら有り難いわ、少しでも気晴らしになれば良いのだけど……あんな可愛い子となんて、ちょっと羨ましいわね。


「まさか、竜族まで居るなんて、でも見たことのない種類ね、何竜かしら?」

「ルナは、主が創った竜だからな。今はまだ、世界に一匹だけなんじゃねぇか?」


 ここの異常さは散々見てきた。今更驚くだけ無駄ね! ははは……はは…はぁ~。


「エレン? ……エレン! エレン!!」


 音の発信源を向くと、情けない姿のまま、恐怖と怯えに濁った眼で、糞虫がこっちを見ていた。戦闘に向けて上がっていた興奮が、冷めていくのが分かる。心が冷え、全身を不快感が支配する。


「エレン! 何してやがる、助けろ!」


 糞虫が、出鱈目に暴れながらこっちへ向かって来る。情けない、を通り越して醜いわね。本当に糞だわ、コイツ。

 おぉ、周りに居る魔物たちは、完全に間合いを把握して避けている。見事ね、掠りもしない。しかも


「遅い」


 糞虫の横を、影が通り過ぎたかと思えば、手足から血が噴き出しながら糞虫が倒れ伏す。

 確か、マンティアでしたっけ? あの一瞬で手足の腱を切った様だ。


「ガーーーーーー!!!!????」

「やっぱ弱ぇな、こいつ。これ位避けろよ……」

「エレン! エレンエレンエレン!! お、お前は! 俺の“番”になる女だろが!?さっさと助けろ! 愚図がーーー!!」

「……ア˝ァ˝?」


 体中の不快感が、スッと引いたと思ったら、頭の中で弾け思考が停止する。


「へ?」


 気付けば私は、その不愉快極まりない顔を、全力で殴り飛ばしていた。

 骨が砕ける音と共に、牙が数本宙を舞う。私は、妙に冷静になった頭で、キレた自分を観察していた。


「エ˝、エベラ……なんべ?」

「……退け、糞虫」

「くぞ……!?」

「おーいタラント~、ビールト~、こいつ持っててくれ~」


 糸で雁字搦めにされながら糞虫は、元腰巾着たちの元へと引きずられて行った。


 ―――


「片付いたし、早速やろうか!」

「……えぇ」


 あー、モヤモヤする! 何もかも、あいつのせいだ! 何が番よ!? 未だに寒気がががが!!!


「始める前にさ~、これ飲むと良いよ~♪」


 クロカゲ殿が運んで来たプルプルした宝石の様なものが、これまた宝石の様な球体を吐き出してきた。これは?


「スライムボールって言って、スライム達の体内にある物が詰まってる。ちなみに中身は回復薬ね~♪」

「スライム……これも魔物だったのですね」

「やるからには、お互い全力を出してもらいたいからね~♪」


 全力……か。竜の谷では、誰かと戦うなんてことしませんからね。

 周りに居る生き物は、私達の姿を見れば逃げ出すだけ、狩りをしても、戦うことは殆どない。同じ竜族では、上位の竜の立ち合いが無ければ戦闘は禁止されている。周りの地形が変わってもおかしくないからだ。

 その為、結界等で周りに影響が出ないようにする必要がある。最近の竜族は経験が圧倒的に不足している理由の一つね。あの糞虫共がいい例だ。

 ……他にも理由は有るけど、本当に最近の竜族の堕落ぶりは目に余るのよね。

 だからこそこの私闘は、私としても望むところだったのだ。戦闘経験を積むことができるうえ、相手の実力も肌で感じることができ、一石二鳥だ!


 渡されたスライムボール? を、迷いなく飲み込む。今更、彼らを疑う気はない……あら、美味しい。


 飲んですぐ、体の奥から力が、魔力が溢れ、体の隅々にまで満ちていくのが分かる。

 凄いわね、この薬!? 普段以上に調子が良い気がする!


 ― ドクン ―


 殺気とも、敵意とも違う何かを向けられる


「準備はいいかぁ!? あんなゴミじゃねぇ! 本物の竜族の力、見せてもらうぞ!!」


 ……あぁ、これは覇気か。あぁ、ヤバイ。自然に口角が上がってしまう。こんな感覚、久しぶりだ!


「……クフ。私が、竜族の代表をするのもどうかと思いますが……」


 炉(体内の魔石)に火を入れる。

 魔力を生み出し、頭の先から、爪の先、翼から尾の先に至るまで、魔力回路を開き、体の端まで巡らせる。

 体の中で魔力を回す、回し回し回し続け、一段階、二段階、と圧を限界まで上げていく……そして、限界まで達した時、全身の魔孔を開き、体に滾る力を吐き出す!


「ガーーーーーー!!!!」

「!?」


 これが竜族の戦闘形態。体内の魔力圧が高いほど身体能力が、噴き出す魔力量が多ければ魔法への抵抗力が跳ね上がる。


 竜気法


 これができて、初めて竜は本当の竜を名乗れる。それ以外はただの蜥蜴だ!


「私だって、竜族の端くれだ! 見せてやるよ、本物の竜の姿をなぁ!!」


 私だって竜だ! こんな覇気(モノ)向けられて、抑えられる訳無いじゃない!? 手加減なんて考え、簡単に吹き飛んだわ!


「ククク! アッハハハハハハ!! そっちが素か? 良いね、あんた! 最ッ高だー!」

「来い!」

「行くぞ! おらぁ!!」


 その頃には、不快感も、原因の糞虫の事も、頭の中から消えていた。今は目の前に居る戦士に、全力を出す事のみ!

 此方も試させてもらうぞ!? そちらの実力と、今の私の全力をなぁ!!

迷宮主のメモ帳:魚族


泳ぎ、潜ることに特化した魔物を表す種族。(空中、水中、地中問わず)


素早い、又は潜むことが得意な上、移動手段に大半が魔法を使う為、魔法適性が高い種が多い。


小型は隠密や群れによる感知外からの奇襲と、大型になると大規模魔法や、純粋な物理攻撃に注意が必要。


地中や水中等、物理的に干渉することが難しい事が多いので、魔法等で相手の移動時の魔法を乱し、引きずり出す。それができない場合は、純粋に技術で対処する。


素材としては、鱗や骨、牙等が武具や道具に、瞳や内臓等が薬に使われる。


地球で言うと魚類の大半がこれ。ちなみに、一般的に水竜と言われる種もこの分類になる。

(竜族なら、水中や地中でも練習すれば活動が可能な為)




4/18修正(投降内容を間違えていました、報告して頂いた方々に感謝!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ