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63 冒険者とハンター①

「これにて、登録は終了となります。改めまして、ようこそハンターギルドへ」


にっこりと微笑みながら祝福してくれる、美人の受付お姉さん。

初めてギルドに入った時は驚いたけど(緊張じゃねぇぞ!?)、この人が対応してくれるなら、逆にやる気が出るってもんだ。頑張るぞー!


「こちらが証明書になります。再発行には審査とランクによって発行料が発生しますので、気をつけてくださいね」

「あざぁっす!!」


これで俺も一端のハンターだ! ・・・・・・ランク最低のHだけど。


しっかし、田舎から出てきたと思ったら、まさかスタンピードに出くわすなんて。もう少しエンバーを出るのが速かったら、俺も危なかった。

その代わりに、紹介してもらっていた出稼ぎ先は消滅。路銀も尽きてしまった為、こうしてハンターギルドへ入会した訳だ。

すぐに雇われ先なんて見つかる訳も無いし、だからと言って田舎に戻れても、生活していけない。選択肢はそう多くなかった。田舎だっただけあって、採取や狩猟は一通りできる。日金程度なら何とかなるはずだ!


ギルドの入会も、書類を提出する程度で終わって時間もある。早速依頼を受けよう! やっぱり、ハンターって言ったら討伐依頼だろ! ゴブリン程度なら、どうとでもなる。


「早速依頼を受けるのですか? では、隣の建物に受注窓口が在りますので、そちらへお願いしたします」


・・・・・・あれ? お姉さんが対応するんじゃ無いの?


言われた通り、隣の建物へと向かう。建物同士が繋がっていたから、迷うことも無くすぐに着いた。

そこは、簡素な受付に、幾つもの紙が貼りつけられたボード。奥の方には食事処が設置され、昼間っから酒を煽って管を巻く一団が見られる。

・・・・・・あれには近づかないようにしよう。


確か、依頼を受けるにはポートに張り出された依頼から、自分が受ける依頼を選んで受付に持って行くんだっけ。

おぉ? ランクに分けて張り出されているのか、これは見やすい。えーと、Hランクの依頼はっと。


「・・・・・・あれ?」


荷物の運搬に清掃と、雑用ばかり。討伐依頼どころか収集依頼すら無いぞ!?

しかも、達成料金が酷過ぎる。こんなの、宿代とか考えたら、その日暮らしが精いっぱいじゃねーか!? 食事の保証がされてる分、奴隷の方がましだぞ?


「おーい、坊主。な~に固まってんだ~?」

「ワップ!? ・・・酒臭!?」


突然後ろから肩を組まれ、体重を掛けてくる。クッソ最悪だ! 絡まれない様に気を使ってたのに。

こんな真っ昼間から飲んでるなんて、碌な奴じゃねぇ。どうにかして逃げねぇと。


「ん~~~~~? 随分嫌そうだな~~~、え~~~?」

「い、いや。そんなことは・・・・・・」

「・・・・・・イヤな時はハッキリ言ったほうがいいぞ。舐められたら、終わりの稼業だからな」

「・・・・・・」


妙な気迫に何も言えなくなってしまった。

酒臭いのは変わらないけど、揺らいでいた目も安定し、真面目な顔になる。まるで一瞬で酔いが抜けたみたいだ。なんだよ、このおっさん。


「お前、新人だろ?」

「・・・・・・だったら、何だよ?」

「こっち来い! 一杯奢ってやる」

「いや、俺は・・・・・・」

「ただ飯が食えるとでも思え、な!?」


返事を聞く前に小脇に抱えられ、席まで運ばれる。びくともしねぇ! 力強いな、おっさん!?


―――


「まずは食え!」


目の前に並べられた摘みと酒。二人分と考えたら十分な量だ。


「どうした? 食わねぇのか?」

「俺に奢って、あんたに何の得が在るんだよ」

「カカカ、ただ飲み仲間が欲しかっただけだ。それ以外何も要求したりしねぇから安心しろ」


そう言いながら、酒が入ったコップを空にし、追加を注文する。

酔っぱらいの考えなんて、分かる訳も無いか。本当に話し相手が欲しかっただけかもしれないし、全く意味も無い可能性だってある。警戒するだけ無駄かな。摘みに手を付ける。


「それで? 改めて聞くが、お前さん新人だろ? いつ入った?」

「今日だよ。今日ハンターになったんだ」

「うぉ、ガチ新人かよ。・・・・・・なんでハンターに成りたいと思ったんだ?」

「・・・・・・」


誤魔化すように酒に口を付ける。が、逃がしてはくれない様だ。理由は・・・・・・ある。仕事とか、金とか、生活とか・・・・・・けど、そんな事よりも・・・・・・


「仕事が無かったって理由も有るけど。一番はその、あれだ、凄いなって思ってさ・・・・・・『破壊者クラッシャー』」

「分かる、分かるぞ! その気持ち。俺もあの人の戦いは見てたからな!」

「だ、だよな!」


馬鹿にされると思っていた分、共感されてちょっとテンションが上がっちまった。


「お前も、あの人みたいに成りたいのか?」

「憧れるだけだよ、夢と現実の区別ぐらい付く。・・・・・・いける所までは行くけどな」

「・・・・・・そうか。だったら良いんだ」


俺の返答に納得したのか、ニヤリと笑みを浮かべるおっさん。いや、何が良いんだよ? 意味わかんないんだけど!?


「英雄に憧れて、無茶する新人は多い。自分の限界を把握できるのが、優秀なハンターであり、受けた依頼を達成するのが、有能なハンターだ。お前は、そういった意味では優秀だよ」

「むぐぅ」


そんな気持ちが顔に出てたのか、苦笑いを浮かべながら答えてくれた。まさか称賛の言葉が出るとは思っていなかった為、言葉に詰まる。

なんて言えばいいのか分からず、その場を繋ぐため残りの酒を飲み干す。すると、すぐさまお代わりが届く。いつ注文したんだよ・・・・・・。


「カカカ、照れるな、照れるな。称賛は素直に受取って置け。大物に成れねぇぞ?」

「うるせぇ」

「ククク、そういえばお前、早速依頼を受けるつもりか?」


話題逸らしか、おっさんに掴まった時の話に移る。いや、話題が変わるのは正直有り難いが、素直に感謝できねぇ。したり顔が何かムカつく! って、そうだ! 依頼だ!


「そうだよ! なんだよあれ、碌な依頼が無いぞ?」

「カカカ、そりゃそうだ! ランクHに、まともな仕事なんてねぇよ」


心底愉快そうに笑いながら、肉に齧り付く。


「酷過ぎないか? こんなのじゃ、生活できねーよ」

「(ゴックン)当然だ、まだ試験は終わってねぇからな」


にやにやと嫌らしい笑みを浮かべながら、摘みに手を付ける。


「試験が終わってないって、どうゆう意味だ? 審査は通ったぞ? ちゃんと証明書だってある」

「そうだな~・・・・・・お前はハンターと冒険者、違いが分かるか?」

「?」

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