38 害虫駆除(蟻)
①蜂・蝶編
②害虫駆除
③薬ダメ絶対!
チッ、出遅れたか。奥の方に居たせいで、気配を感知するのも外に出るのにも手間取った。
そのせいで、一番気配が濃い場所はすでに埋まってしまった。空いていたとしても、あんな危険地帯に突っ込む気にもなれん。同族になんぞに食われてたまるか。
他より気配は薄いが、近くにある他の穴からも気配は漂って来ている。仕方がない、そこから向かうか。
気配に向かって突き進む、幾つも枝分かれした穴の中で最も気配が濃い所を選んで進み、それなりの広さの空間にでた。
「キ!」
目の前に見たことも無い生き物が陣取っていた・・・なんだ、こいつらは?
見た限りそこまで強いわけでは無い。だがしかし、先に来ていた奴らが突破できていない様だ。何故だ?
ここで焦ってはいけない、突っ込んで死んでいった奴は嫌と言うほど見てきた。自分はそんな馬鹿どもとは違う。観察し弱点を見極める。そうやって生きてきたのだ。
ふむ、前方に陣取っている奴らが押し返してるのか、倒せない訳ではないが、倒し切る前に上から攻撃され、逆に仕留められているのか? 動かなくなった同族は敵の裏へと引きずり込まれていく。死んだとみていいか。
チッ! 然も相手は、弱り切る前に交代してしまうので隙が見つからない。
― ボン! ―
「ゲギャ~~~~!!??」
辺りから、同族たちの叫び声が響き渡る。これは、火? 魔法だと!? こんなことができる奴は、外でも見たこと無いぞ!!
更に上から火の玉が降り注ぐ。クソ! 今度はこっちか!? すぐさま同族の腹の下に潜りこむ。
また、火の球が破裂する音と、同族たちの叫び声が上がる。この威力、直撃はマズイ!
以前魔法を見たのは、ここに来る前に人間共が使っている所だったか。昔の事で忘れてしまった。今はそんな事よりも、この場をどう突破す――
― ドス! ―
・・・え? これ・・・は、何・・・・・・だ?
―――
蟻
「キ!(全軍、配置につきました!)」
うむ、間に合ったな、隊列も問題ない。日頃の訓練の賜物だな。
採掘によって出た、不要な土を排出する為の穴が幾つか在るが、数はそれ程でも無い。その代わり、道が枝分かれするように多数ある。
そこで、敵を各個撃破する為、合流地点の小部屋に陣取り、迎え撃つ体制を取っている。
― ドドドドドドドドド ―
来たか、ここは主様の元までヘの最短距離にあたる最重要地点。そんな場所を任されるとは、失敗は許されない。
「キ!(来るぞ、シールド構え! ここから先は一歩も通すな!)」
「「「キキ!!!」」」
「ゲギャ~~~~」
牙と顔面が盾の様に、固く大きくなった盾蟻が害虫の衝突を防ぐ。
よし! 事前の検証通り、シールドならば、樹液がなくとも2~3発なら耐えられる! その間に仕留める!
「キ!(アーチャー、放て!!)」
盾蟻の背に乗り狙いを定めていた弓蟻が攻撃を開始する。外殻を避け、目や外殻の隙間、噛みつこうとして開けた口を狙う。一撃で倒せずとも、相手の攻撃を止められ、足を潰せば動きそのものを封じられる。
そうなればこちらのものだ。引きずり込み、集団で叩いて止めを刺す。粘液方も居るので、火力については問題ない。
無理やり隊列の隙間に体をねじ込んでくる相手も、隊列の間に控えている槍蟻によって押し返す。
一度攻撃を受けた者は交代し、後方で治療を受ける。交代と治療の間隔は問題ないな。
しかし、予想外だったのが壁や天井を伝って来るものが居ない事だな。対策を取っていたのだが無駄になってしまった。お陰で殲滅速度が遅くなり、処理が滞っている。ならば!
「キ!(第1ファイヤー隊、ファイヤーボール用意! 群がっている害虫を焼き払ってやれ!)」
後方で待機していた火魔法蟻が集まり、集団魔法を実行する。
集団魔法は、一体では行えない規模の魔法を複数人で行う方法だ。欠点として、その場で動けなくなる上に、習得には高度な魔力操作が要求されるらしい・・・他の種族の者が苦戦する中、何故か練習一度目から成功したらしいが。
― ボン! ―
「ゲギャ~~~~!!??」
相変わらずふざけた威力だな。予定では、集団魔法は使わず、壁や天井を伝ってきた害虫を落とすための魔法蟻隊だったのだが、このまま殲滅に使用しても良さそうだ。様子を見ながら使って行こう。
~経験値を取得しました。LV3からLV4になりました~
~<指揮LV5>が<指揮LV6>になりました~
~<団結LV5>が<団結LV6>になりました~
~<念話LV2>が<念話LV3>になりました~
む? 直接戦わなくても、経験値は得られるのか。ならば、後方支援を担当している者たちも得られている事だろう。処理後の功績処理の手間が省けたな。
さて、余裕も出来て来たな。ここまで来るとほぼ作業だ。相手の動きが全く変わらないのだ、火で焼き払っても後続は変わらず突っ込んで来るのみ。指示を出すことが無くなってしまった。
ならば、先ほどからこちらを覗うだけで何もして来ない臆病者、いや卑怯者の処理をしておくか。
「キ(土魔法蟻、あれを狙え)」
土魔法は発動までが遅く、発動場所を変更できないものが多い。動いている相手を狙うのは難しいが、動いていないなら問題ない。
― ドス! ―
腹と頭を土の槍が貫き、卑怯者は呆気なく絶命する。どれ程観察し考えようと、行動に移せないならば意味は無い。何より、怯え震える位なら戦場に立つべきでは無かったな。
~経験値を取得しました。LV4からLV5になりました~
~<観察LV2>が<観察LV3>になりました~
~<感知LV2>が<感知LV3>になりました~
さぁ、狩りを続けようか。
世界樹の迷宮(仮)
LV:2
特性:植物・水
DP: 16 DP (計量中)




