258 アルサーン解放⑪(終幕)
①みんな大好きウォー隊長
②獣王復活! 活躍はカットだ!!
③ヒャッハー! 嫌がらせの時間だー!!
中々の見ものでしたね~。アルベリオンにも、優秀な人材が残っているではありませんか。兵の実力もさることながら、各隊の隊長、副隊長クラスは、中々掘り出し物が眠ってそうですね……。
特に、ビャクヤさん本体に突撃かました方、え~と、何々……エミリー・レナエ・ウォーさん! この方は別格でしたね~。
精神摩耗と体調不良が無ければ、もっと食らい付けたでしょうに……これは是非とも確保しておきたい人材ですね。勧誘しなくっちゃ。ビャクヤさんもウォーさんのこと、気に入ったみたいですし。
てか、ビャクヤさんはどんな成長をしているんですか。一番の激戦だったウォーさん以外にも、散々暴れまくりましたからね。<歌唱魔術>に各種<魔術>に<魔法>、場所によっては分身を使っての<儀式魔法>まで使っていましたからね~。それ意味あるの? ってなりましたよ。
名称:一狼当千
氏名:ビャクヤ
分類:現体
種族:獣族
LV:5/50
HP:13,500/13,500
SP:13,500/13,500
MP:13,500/13,500
筋力:6,000
耐久:6,000
体力:6,500
俊敏:6,500
器用:6,000
思考:6,000
魔力:6,000
適応率:10(Max100)
変異率:10(Max100)
スキル
・肉体
【常在戦場LV1】(肉体強化系統合スキル)
<状態異常耐性LV3><状態異常無効LV3>
<物理耐性LV3><物理無効LV3>
<魔法耐性LV3><魔法無効LV3>
・技術
【国士無双LV1】(武術系統合スキル)
【風林火山LV1】(身体操作系統合スキル)
【百戦錬磨LV1】(技量系統合スキル)
<魔力掌握LV2><気配察知LV5>
<魔力察知LV5><危険察知LV5>
<嵐魔法LV2><光魔法LV8><思考分離LV1>
・技能
<存在強化LV2><突撃LV8><瞬撃LV8><突破LV8><没頭LV8>
<電光石火LV2><自己修復LV7><念話LV5><鑑定LV5>
<瞑想LV5><限界突破LV6>
称号
<迷宮主の愛犬><幹部><足掻く者><死線を越えし者><選定者>
<下剋上><超越者><災害>
<平行思考>のさらに先、<思考分離>を極め、更に変異して、そのスキルが当たり前に所持する存在となって、更に<思考分離>のスキルを習得して初めて至る極地……。
……うん、レベルキャップ解放前のやり込みプレイヤーか何かですか? やりすぎです。あ~分身はあれですね、エディさんが使っていた依り代魔術の応用ですね。完全に技術による賜物です。後で、目一杯褒めて上げなくては。
てか、ビャクヤさんだけでなく、キョクヤさん達も強くなっているご様子で……最後は締まらない感じになっていましたが、あのままあの剣を使われていたら、ウォー隊長さんは死んでいたでしょうから、これもご褒美案件かな? 他にも、ビャクヤさんが分身を操作、維持するのに使っていた魔道具とかを作った技術者達も、監査げふんげふん……視察んん˝! ご褒美の要望を聞きにいかなければ……裏で何作っているか分かったもんじゃねぇからな。
後は獣王さんですね……ありゃ、うん、結構ヤバイレベルでは? 毒さえなければ、アルベリオンに負ける事はなかったのでしょうね~。素で強かったのが、今はそれに輪を掛けて強くなっていますが……。
いやね? 渡した物資は好きに使っていいってことにしていましたがね? ……ホロウさんや、随分と大盤振る舞いしましたね。まさか、【世界樹の結晶命薬】を樽で出すとは……。
肉体、精神、魂、全ての欠損を修復し、最善の状態に戻し、健常者が一定量以上を服用した場合、自身の格を上げる。ただし、限界を超えて服用すると魂が崩壊する劇薬……生きるか死ぬか、限界を超えるかの三択だ。
そして、獣王さんは限界を超え、覚醒した。
魔物が格を上げる場合は進化だが、生物がその存在を上げる事を覚醒と言うらしい。そして覚醒した者は、記録に残っているだけでも数えるほどしかいないので、耳に入って来なくてさっき教えてもらうまで知りませんでした。
そんな劇薬を飲んだのは、獣王さんだけではない。毒によってほぼ死にかけだった獣人のほぼすべてが服用している。
結果は、生き残ったのは2割。その中でも、格が上がった者は1名……獣王さんだけだ。
その2割も、今は逃亡兵を追い立てるのに忙しいようですし……うん。薬の影響でハイになっている様ですから、落ち着くまで好きにさせておきましょう。受け答えはちゃんとできるそうなので、満足してから家に案内するって事で。
国民についてはこちらに任せるって事で契約しているので、信用されていると考えておきましょう。
後は……敗走しているアルベリオンの中に居る気になる人材は、ホロウさん筆頭の暗部の方で回収班を組んだので、無駄な人材損失は可能な限り減らして、保護……捕虜? 済みのアルベリオンの皆さんの信用を得ておきましょう。
どうせ国境線の河は、ケルド如きに越えられる状況では無くしましたし、逃げ場なんて無いんですから、丁度いい隠れ場所を用意しておけば、ゴキブリホイホイよろしく向こうから入って来るでしょう。
……って事で、国境線の近くの領域を回収して、世界樹内の“殺し場”直通の<門>を幾つか用意しておいた。洞窟に偽装しているので、後は勝手に掛かるか、餓死か疲労死か狩り殺されるでしょう。
…………よし、アルサーン方面、これにて一応の終了って事で! お疲れさまでした!
―――
アルサーン王都での戦争とも呼べない戦争が終わって、数日が経過した。
この世界の情報伝達速度は、それ程でも無い。魔伝などの通信用魔道具も存在するが、性能は余り良くはない。
魔力を用い、<念話>の要領で通信を行う為、勘の良い者であれば気が付くし、暗号化も通信妨害もされていない内容など、すぐに傍受することができる。最悪、聞く者によっては、大声で叫んでいるのと変わらない。
それ等の問題点を排除したものが、迷宮から産出する、通信の迷宮道具になる。
<念話>の要領で通信を行うのは変わらないが、生身の生き物では感じ取れない様、隠蔽、暗号化された通信を行う事ができる……が、これにも欠点がある。迷宮道具があれば、他人であっても傍受できてしまうのだ。これは違うダンジョンから産出されたものでも変わらない。
これは、ダンジョンの生成過程と元が同じだからだ。所詮はエサとして撒かれただけであり、いちいち分ける必要も無い。
だが、元々の産出量が少ないこともあり、今も人族の間では最先端の通信魔道具として重宝されている。
まぁ、何が言いたいかと言うと……
「アルベリオン側はどんな感じですか~?」
「う~ん、内容からして、敗走したのは気付いているっぽいですよ~」
「負債を回収しようと、属国への徴税が爆上がりしてるっぽいで~す」
「なんか、敗走原因として裏切り者が居たとか、その親族の処刑をするとか? ちょっと曖昧ですけど、その内正式に公表するんじゃ無いですか~?」
「あと、なんか人探してるっぽい? 誰かは分かんないです~」
傍受し放題、情報抜き放題。ダンジョンである【世界樹の迷宮】からすれば、完全に筒抜けなのである。
潜入しなくても、魔道具を持って街の外周程度まで近づけば、飛び交う情報を盗み聞くことくらい、簡単にできてしまうのだ。隠蔽した状態で魔道具を置いておけば、近くに居る必要もない。
「ではいつも通り、内容をまとめ上へ報告をしてくれ」
「了解です!」
通信用の魔道具がずらりと並んだ室内には、盗聴した内容がどんどん流れ、データとして蓄積されていく。その中から使えそうな内容をピックアップし、情報として報告をあげ、それを元に、ダンマスが今後の方針を決めるのだ。
更に、カッターナから侵入した諜報員からの情報もあり……裏も表も、アルベリオンの社会情勢は丸裸である。
―――
盗聴内容を読みつつ、ふむふむ……アルベリオン王国も、アルサーン王国に負けた事は知ったようで、相当荒れているようですね。
捕らぬ狸の皮算用とはこの事か……毒で勝てると高を括っていたらしく、兵糧に毒にと、資源と資金を相当注ぎ込んで、現在国の財政は火の車。その皺寄せは国民に属国にと押し付けられ、不平不満が更に高まる負のスパイラルに突入している。
これは、放って置いても自滅するのでは? と、思わなくも無いですが……それじゃダメなんですよね~。
他の国は、どうなろうと構いませんが、アルベリオン王国だけは、俺等の手で、エマさんの手で潰さなければならない。
それは、エマさんが定めた目標を達成する為であり、エマさんのトラウマを払拭する為である。後顧の憂いは完全に断たなければならない。たとえ、本当の原因が別に居るとしても、黒幕がアルベリオン王国を利用していただけだとしても、これだけは譲れない。その為に、今まで散々周囲の外堀を埋めて来たんですからね。
南西のカッターナ連合国は、既に手中に収めたと言って良いですし、南の森人と山脈の穴人も引き込みました。
北東のアルサーン王国も、今回の一件でこっち側に引き込めましたし、北の竜の谷は、完全な協力関係のお友達。
後は、西一帯を統べるエスタール帝国さえ納得させられれば、外堀埋めは完了ですね。
アルベリオン王国を潰した後に、変な言い掛かりや誤解で、無駄な争いになるのも馬鹿らしいですからね。争いの火種は、徹底的に潰さなければ。
後は……潰した後の片付けの準備ですね。アルベリオン王国を潰した後の管理をして貰う人材を確保しなくては。
その為にも、旗印となる手駒が欲しいんですよね~……今の所、候補となっているのは、エミリー・レナエ・ウォー隊長さんかな?
今は検査と治療の最中なので、報告を待ってお話ししましょうか。まぁ、以前に同様の症状になったエレナさんと違って、肉体が物質寄りな分軽症らしいので、そんなに時間はかからないでしょう。
その間、何しましょうかね~……もう一つの方の情報が、全く掴めていないのが、何とも不気味なのですが、そろそろそっちも、本腰入れて動いた方が良いでしょうかね?
「半森人ね~……」
エルフ繋がりで、エイブリーさんにも聞いてみましたが、全く情報を持ってなかったですし、南の森人の里には、集団でちょっかいを駆ける様なやつは居ないとか言っていましたけど、ほんと何処に行ったんでしょうね?
残っている場所は、イラ王国とアルベリオン王国、後はエステール帝国ぐらいなモノなんですがね~……。
「……ちょっと、釣り出すか」
カッターナの情勢も安定してきましたからね~、例の計画実行に合わせて、餌でもばら撒くか。
これにて、獣人の国、アルサーン王国は一旦終了となります。
未だ主舞台はカッターナですので、今しばらく裏での悪巧みもとい、裏工作が続きます。




