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237 事後報告

①復活! ダンマス復活!

②殺人タックルは愛情の証

③報告会、開始

「それでは、報告させていただきます……初めに申しますと、相当に酷い結果となっております」

「ほむほ、む?」


 貰った資料をペラペラ捲り、内容を軽く確認していたら、クロスさんから不穏な言葉が飛んで来た。あ~、え~、うん。よし。バッチ来い!


「先ずは、ケルドと邪魔物の存在を暴露。それに伴い、人族を本格的にこちら側に引き込み完了致しました。その際、エスタール帝国にも情報を放流させたので、何かしらの対処はするかと思われます」


 まぁ、そろそろ頃合いだとは思っていましたから、それは問題なしですね。予定よりもちょっと早まったぐらいです。

 ケルドの情報については、まぁ良いか。こちらがダンジョンである事がバレていなきゃ問題なし。てか、ケルドの存在が露見した時点で、もうバレても問題ない。ぶっちゃけ、隠す方が面倒な段階に来ていますからね~。そろそろ強気に出ても良い時期かもしれません。


「次に、領域内へケルドを引き込んでの駆除活動を行いました。やり方については、ケルドなら勝手に嵌るだろうと言う事で人族の方々に一任。人族側も積極的に狩猟に取り組んだ結果、予想以上の効果を上げています……上げてしまっています」


 え~と? うっは、こりゃ酷い。やっている事は全く悪いことじゃないのに、食料危機に陥っているカッターナからしたら、明らかな敵対行為になっているのが尚質悪い。


 数十年分の恨み辛みですからね~。勝手に滅ぶよりも、自分達の手で滅ぼしたい気持ちは分からなくも無い。現状を見ないと何とも言えないですが……歯止め掛けないとヤバいなこりゃ。特にこの真っ白装備の方々は、程々でケア入れないと引き返せなくなりそうですね~。てか誰だ、この装備作って渡したの。後で問い質す必要がありますね~。


「また、引き込みに掛からなかったケルドにつきましては、流出及び被害が拡大しない様に辺境にて駆除。被検体として回収を行いました」


 あ~、そりゃ有り難い。隔離できるなら、それに越したことはないですからね~……て、こりゃまた酷い。昼は野生の魔物に扮して、夜はホロウさん率いる隠密課の皆さんによる完全封鎖ですか。こりゃ、ケルドでは抜けるのは無理なんじゃなかろうか。


「次に、物資の搬入量の操作による、物価の意図的な操作と食料枯渇。それによる資金の回収と、それを用いた奴隷と土地の購入を、バラン商会主導の元に行いました。こちらがやった事は、道中の護衛と物資の運搬程度ですが、効果はあったでしょう」


 うっへ、この二つ同時並行でやったんですか。然もやり方がエグイですね~。こりゃアカン、マジでアカン。何がアカンて、領域の拡張速度が想定を大幅に超えてしまっている。

 一体どれだけもぎ取……これ国土の三割近く分捕っていません? って、え? 一カ月で、こんだけやったん?

 やべぇ、この子達の能力もそうだけど、交渉とか販路確保とか、この世界の人族の処理能力をちょっと舐めていました。優秀なのは判っていましたが、ゼニーさん率いるバラン商会が本気過ぎる。優秀過ぎるのも考え物ですね~。


「物資の流入関係でもう一つ……イラ教の物資搬入通路への攻撃案でしたが、流石にこの段階で刺激するべきでは無いと、阻止いたしました」


 おう、それは不味い、マジで不味い。それをやられると、諸々の処理に無理が出かねない。

 命綱であるイラ教からの支援すら遮断してしまっては、ケルド共が自暴自棄になって何を仕出かすか分かったもんじゃ無いですし、イラはイラで下手に刺激して飛び出すなり、そこから逃げられでもしたら面倒な事になりかねない。あそこは後回しにして、外堀を埋めてから潰した方がいいでしょう。クロスさんグッジョブです。


「大まかな出来事となりますと、この辺りになるかと……後は細々したこととなりますので、お手元の資料を参照ください。また、直近の出来事につきましては、現場に居たゴトーの方が詳しいでしょう。後に報告が上がると思いますので、帰還をお待ちください」


 ほいほい了解です。


 竜の谷のドラゴンも、何回か来ているのですね。体にたまった瘴気は抜けたのでしょうかね~……あ、レイモンドさん達も、【結晶渓谷】から抜け出したんですね。持ち出した魔道具やら魔武具やら素材やらが流出したようですが、う~ん、これは、想定より効果が薄いかな? まぁ、この状態じゃ仕方がないか。


 さて、俺が居なかった間の変化はこんな所でしょうか。皆さん頑張ったんですね~。その点は素直に称賛しましょう。なにせ先ほどから、褒めて~褒めて~オーラが、ジリジリと肌を焼いていますからね。うむ、評価はちゃんと伝えましょう。


「矢面に立ったのは亜人族の方々、特にバラン商会の方々ですが、連携、後方支援共にお見事です。」

(((「「「わーい!」」」)))

「但し、やりすぎです」

(((「「「わ~い?」」」)))

「こんな土地増やしちゃって~、管理し切れないでしょうにも~う」

(((「「「うぇーい!?」」」)))


 ケルドの管理は、邪魔物共に任せればよかったものを……被検体の確保ができなくなったらどうしたモノか。外からの干渉に反応して【変異】を起こすので、魂の構造を見られるかも知れない、とても良い被検体なのに。


 それに、過剰に刺激して、裏に居るであろうイラ共が動き出したら、面倒になり兼ねません。向かって来るならまだしも、知らない所で逃げられでもしていたら、目も当てられません。


 じっくり緩やかに、変化を変化と感じない速度で、異変を異変と思わない規模で、原因とこちらを結び付けられない方法で……相手が行動を起す前に決着を付けたかったのですが、こりゃ無理かな~?


「……やはり、現状のままでは危険ですか?」


 ですね~。魔物とか野生動物とかなら大丈夫だったかもしれませんが、人は基本弱い生き物です。そして、強い生き物です。

 組織化された人は、唯の群れなど容易に凌駕します。その組織が追い詰められれば、何が起きるか分からない。ケルドなら尚の事でしょう。能力はともかく、共食いとかして変な邪魔物になったりとかしそうですし、緩やかに消えて行ってくれるのが理想だったんですがね~。


 まぁ、結論から言うと……


「奴隷の確保すらできなくなったカッターナは、ほぼ詰んでいるって事ですね」


 放置さえしておけば勝手に滅ぶと思っていたのですが……何か起こる前に、潰す方にシフトした方が良いかも知れない。


 その為にも、現状の把握と安定を最優先ですね。


「……ってことで、管理できてない土地はどんな感じですか? ゴトーさんや」

「メル……」


 後ろから<神出鬼没>で現れたゴトーさんに問いかける……いや、うん。不意打ちが効かなくなって寂しいのは判りますけど、そんなしょげないで下さいよ。


「……はぁ。相当荒れております。一部においては共食いも確認されており、危険と判断しバラン商会の方々は一部避難。それも有って物資不足が加速し、余計に状況は悪化しております」


 うっわ共食いって、もう起きちゃっているんですか? それって末期状態じゃなかったです? 思っていた以上に進んじゃっているじゃ無いですか~も~う。


 嫌ですよ~、合体してスーパーなケルドとか成らないでしょうね? ただでさえ滅茶苦茶気持ち悪いんですから。もう近づきたくもないんですよ、管理だなんてとんでもない。


 管理、管理か~……管理ができて、ケルド共に対抗できるだけの能力と財力と権力があって、友好的な方……って、いたりしませんか?


「メルル! 勿論、居りますとも。マイロードもご存じの方でございます」


 ふ~ん。こんな状況でも生きて居られる方ですか……想定よりも優秀な方だったようですね。もともとゴトーさんが目を付けるだけの……目を付けられたんでしたっけ? どっちでもいいですが、ゴトーさんがお勧めするなら確かですね。


「取り次いでいただけますか?」

「勿論でございます。すぐにでも予定を組みましょう」


 ではその間俺は、皆さんがやらかした出来事の確認と、調整作業でもしていましょうかね~。


「それと、幾つかお耳に入れておきたい情報が……」

「ん?」

「一部でございますが、貴族や大商人が所有する土地の回収に手間取っています」

「あ~、そりゃバランス感覚のいいケルドや亜人も居ますよね~」


 ピンチはチャンスと言いますが、そこで生き残れる能力があれば、逆に財を溜め込むことに成功した方も居る事でしょう。

 財と権力を持ち、目利きと先見の明のある方々と言ったところでしょうか……早めに処分したいですね。その方々のリストって有りますか? 有りますか。後で見せて下さい。


「それと、……【破壊者(クラッシャー)】に遭遇しました」

「……接近したんですか?」

「いえ、カッターナに入国したと噂は聞いておりましたが、(わたくしめ)も完全に補足しておらず、偶然遭遇致しました。私見でありますが、紳士的であり豪快。少々戦闘狂な面が見られましたが、無意味に襲い掛かる様な事もなく、話し合いの余地があるとみております」


 それなら良いですが……危ない橋は渡らないで下さいね? てかなんでカッターナなんて何もない国に来ているんですか。え、こっち来るの? 勘弁してほしいんですけど……。


「それともう一つ、獣人方の諜報員方からの情報が」

「まだあるのですか~?」


 これが最後ですと前置きを入れ、ゴトーさんが口を開く。


「獣人の国、王都アルサーンが落ちました」


 あら~ららららら……あーーーもう! 休ませろやコンチクショウ!?


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