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230 虚無の中に潜む者

①ピ~ヨ、ピヨピぴよぴよぴあwせdrftgyふじこlp

②ドッカン!

③蜥蜴族は料理好き?

 

 100年ほど昔、カッターナ王国がカッターナ地域と呼ばれていた頃。南北に延びる山脈に沿う様に、深い森が広がっていた時代。

 森には獣人や森人(エルフ)の集落が多数点在し、少ない平地には草人の小さな国を作り、山脈には穴人ドワーフが穴を掘り住み、お互いに緩やかに交流していた。


 そんな環境が、山脈の向こうからやって来たイラ教によって一変する事となる。


 突如山を越え現れたイラ教は、イナゴの群れの様に住処の森を荒らし、殺戮と略奪の限りを尽くした。そんな非人道的な進軍は、森を抜けた先のエスタール帝国にも知られることとなる。

 当然の事、カッターナ地域を抜ければ次はエスタール帝国に来るのは容易に想像できる。多民族国家のエスタール帝国と、人間至上主義のイラ教……相性は最悪と言っていい。


 他者の領域を跨いでの軍事行動を避けた事もあるが、面と向かって戦うなど、面倒かつ無駄な事を避けた当時のエスタール帝国は、カッターナ地域に住む住民を矢面に立たせた。


 名目は、友好関係の構築と、技術支援。侵略者であるイラ教には明言せず、資源と技術が提供され、防壁ができ道ができ街ができ国ができ、カッターナ地域がカッターナ王国と呼ばれるようになるまで、そう時間はかからなかった。


 イラ側も予想外だったのだろう。戦況は途端に膠着状態に縺れ込み泥沼化。

 力を付け続けるカッターナ王国と、山脈を超えて軍を動かさなければならないイラ教。進軍通路の開拓に、穴人(ドワーフ)の穴を避けてのトンネル開通など、軍費を掛け続けたことが仇となったのか、数年で撤退することとなる。


 そして、イラ教が撤退してから数十年。戦争による疲弊の癒しと、急激な環境変化に適応するために時間を費やしたのだが……その間に異物が潜り込んだ。

 元の成り立ちが成り立ちなだけに、横との繋がりが緩いカッターナは徐々に浸食される事となり、今のケルドだらけのカッターナとなってしまったのだ。


 ケルドの性質と能力では、国など維持できない。見た目()だけは亜人のそれの為、質が悪い事この上ない。

 詐欺、脅迫、殺人、途端に治安は悪くなり、その皺寄せは住人たちに向かう事となる。


 そして、限界は訪れる。


「前に来たのはこの辺りか」

「だな。今日はもっと奥に行こう」


 鬱蒼と茂る木々の間を縫う様に進む、5体のケルド達。


 食料が高騰し金が足りず、親切な商人(・・・・・)のお陰で持っていた奴隷も法外な値段で売り払う事ができたが、その資金もすぐに底を尽き、彼等ケルドは一攫千金を夢見てこの森へと赴いた。


 奴隷狩りは、彼らに取ってポピュラーな職業だ。略奪品を戦利品と称し、食料や売買品を片っ端から奪いとる。そして人族が居なくなった森の木は、燃料として全て切り倒され、穴人(ドワーフ)の住む山へ運ばれ、拓かれた土地を占拠する。


 イラ教の進軍を塞き止めていた時代には、【世界樹の迷宮】が第二拠点を設置している町は存在せず、元を辿れば彼等獣人達の住む森だ。


 そんな事も有り、周辺には未だに深い森が広がっている。龍脈(魔力の通り道)から外れている事もあって魔力濃度は高くはないが、それでも木々は茂り、季節に合わせて薬効の高い草花が生える、生き物が生きていくのに欠かせない場所である。


「しかし、鬱陶しい木だな、クソが」

「狭いし足場は悪いし……全くだ」

「その内ここも均さないとな!」

「違いねぇ!」


 4体のケルドは、我が物顔で踏み荒らす。


 だがしかし、そこで疑問が上がる。

【世界樹の迷宮】に居た獣人の奴隷たちも、彼等の様な奴隷狩りの被害者だったのだが、その能力差を考えれば、とてもではないがケルドでは獣人の戦士たちには勝つことなどできない。


「最後まで役に立たなかったな、あの無能共」

「売れたのは良かったけどよ、結局それ買ったら元手がぱぁだ」

「な~に、これさえあれば幾らでも元は取れる」


 その答えは、彼等が持って居る小瓶が原因だ。


 容器が割れると途端に内容液が霧状に拡散し、周囲へと撒き散らされる。体の自由を奪い激痛を引き起こし、だが決して命を奪わない、凶悪極まりない<猛毒>……ケルドでも他の人族を捕らえることができたのは、この毒の御蔭だった。


「あいつ等、コレ撒くだけで動けなくなるからな!」

「本当、楽な商売だぜ!」


 ゲラゲラと下種な笑い声を上げる2体のケルド。


 集落の外から投げ込めば、それで終わり。毒が引く頃を見計らって運び屋を連れてもどり、動けなくなった者達を攫えばいい。後は奴隷商の仕事。拷問や脅迫を経て、一方的な契約を結ばせるのだ。最悪死んだら素材や食料として売ればよいので、その行為に容赦などない。


「さてと……この辺に在りそうなもんだけど、どう思うよ?」


 以前の大収穫もあって、ここには多くのケルドが奴隷狩りを目的に集まっている。

 迷宮の干渉が無ければ、これからも森への侵略は続いていただろう。ある意味、ケルドの流出が最小限に抑えられたともいえる。


 ダンマスの徹底した情報規制が、警戒心を抱く隙すら与えなかった。だからこそ、ケルド共は無警戒に、いつもと同じように行動する。行動パターンが分かっていれば、嵌める事も処分することも容易なのだから。


「おい、なぁ! ……あれ?」


 一人声を上げるケルドは、返答が帰って来ない事に苛立ち振り返るが、その先には誰もいない。


「おい……何処行った!?」


 取り残されたケルドは辺りに目をやるも、仲間の姿は見当たらない。周りには元から誰も居なかったかの様に静まり返っていた。


 何処に行ったのか皆目見当が付かない。痕跡も消えた時の気配すらなく、忽然と消えてしまった仲間を探して右往左往するケルド。


 森の奥まで入らないようにすること、ケルドの流出を止めることが目的であり、ケルドを捕まえることが目的ではない。あくまでついでに捕獲しているだけに過ぎない。


 ケルドは、現実を突き付けなければ理解しないのだ。脅し遠ざけるなどと回りくどいやり方などするくらいなら、その都度処分したほうが確実、且つ安全であり簡単だ。


「ふざけてんじゃねぇぞ、おい、おい! おーーー」


 一瞬の出来事。


 ケルドの背後の空間が僅かに歪むと、そこから鉤爪が滲む様に現れ頭を鷲掴みにし、唸り声を上げる隙すらも無く捻り折り、認識する暇さえ与えず、音も無く歪みの中へと引きずり込む。


 その次の集団も、その次も、そのまた次も……森の奥へと進む者たちは、例外なく排除され、その場には木々の騒めきだけが残された。


 ―――


 名称:次元梟(ディメンションホー)暗殺者(アサシン)

 氏名:ホロウ

 分類:半虚現体

 種族:鳥族

 LV:25/25(MAX:進化待ち)

 HP:2,000/2,000

 SP:2,000/2,000

 MP:6,000/6,000

 筋力:650

 耐久:450

 体力:900

 俊敏:4500

 器用:3500

 思考:4000

 魔力:3000

 適応率:10(Max100)

 変異率:10(Max100)

 スキル

 ・肉体:<硬爪LV8><硬嘴LV8><状態異常耐性LV8><状態異常無効LV8>

<蓄魔LV9><枯渇耐性LV9>

 ・技術:<空間魔法LV8><風魔法LV8><闇魔法LV8><光魔法LV2>

<回復魔法LV8><強化魔法LV5><精神魔法LV5><幻覚魔法LV6>

<結界魔法LV9><自然魔法LV9>

<武術LV8><暗殺術LV9>

<飛翔LV9><滞空LV9><空間機動LV4><隠密LV10>save

<隠蔽LV10>save<回避LV10>save<急所抜きLV10>save

<魔力掌握LV2>

<魔力察知LV8><属性察知LV8><気配察知LV8>

<存在察知LV8><動体察知LV8><危険察知LV8>

 ・技能:<存在強化LV2><突撃LV2><瞬撃LV6><突破LV7><没頭LV6>

<自己修復LV2><念話LV5><鑑定LV8><瞑想LV5><限界突破LV4>

<捕食回復LV2>

 称 号:<虚無の中に潜む者><狭間の王><幹部(ボス)><完璧主義者>

<足掻く者><死線を越えし者><選定者><下剋上>



【世界樹の迷宮】所属、実行部隠密課 <幹部> ホロウ


 闇の中に潜み、空間に溶け込み、次元の狭間を飛翔する暗殺のスペシャリスト。相手に一切気が付かれる事無く、相手を一撃で仕留める事に特化している。


 素の攻撃力は低いが、攻撃の際に魔力で強化することで、爆発的に攻撃力を上げ、その差を埋めている。隠密状態のホロウを捉えることは困難を極め、悠々と魔力を練る事ができ、一瞬の隙をついて放たれる攻撃は感知することも躱す事も不可能に近い。


<空間魔法>による移動と隠密まで持ち合わせており、<隠密>系のスキルと合わせて使う事で、圧倒的な隠密性と奇襲性を併せ持つ。


 対策としては、ホロウが放つ一撃に耐えるか、襲われる前に見つけ出すかだろうか。


 耐えたとしても直ぐに隠れてしまうので、捕らえることができるかは別であり、彼等を見つけ出さなければ、いつまでも狙われ続ける事となる。

 それこそ何時間でも、何日でも、何年でも……狙った得物は必ず仕留める。対象は碌に休むことも隙を見せる事も許されなくなるだろう。


 また、空間に隠れていると思い対策を立てたとしても、彼等を捉えられるかは別である。何故ならその者が生まれつき持っている能力は、<鑑定>では見ることはできないのだから……


完璧主義のホロウさんによる、無言の仕事風景でした。


また、ちょっとした諸事情で、進化を先送りにしている<幹部>クラスの皆さん。


スキルを習得できる容量の関係で、上位スキルへの昇格を止めているスキル(save)が幾つか存在しているのが悩みの種。

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