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215 蹂躙⑤(神判)

①害悪駆除

巨人ジャイアントの一撃!

③エッジ君、吹っ飛んだー!?

「ごっほ、いってぇ」


 土煙を上げる瓦礫の中から、咳き込む声が上がる。


「巨人族って、やべぇな。あんなの連発されたら、一般人なんぞミンチだぞ」


容易に相手を一撃で屠れる武器もそうだが、当然の如くその防具も、唯の軽装ではない。幾つもの魔法が付与され、魔術が組み込まれた特別仕様だ。

 一定以上の衝撃や魔力などに反応し、魔力が保つ限り障壁を張る効果を持ち、吹き飛ばされた程度では、装着者に傷一つ付かない。


突き破った壁の穴の向こうからは、今も戦闘音が鳴り響いているからだ。救助が間に合っているかは分からないが、何時までもここに居る訳にはいかない。


さてどうしたものかと思案する彼の頭上に、影が差す。


「もう終わりですかな?」

「……ゴトーの旦那か。こんな所に来て、大丈夫なのか?」


何処から現れたのか……吹き飛ばされ倒れ込むエッジを覗き込む様に、ゴトーが話しかけて来る。

書類処理やらサポートが主な仕事だと思っていたため、この様な危険な場所に自ら足を運ぶとは思っていなかった故に出た言葉だったが、ダンマス直属の配下である事を思いだし、常識が通用しない相手の仲間であることを思い出す。


「情けない姿を晒さないでいただきたいですね、その様な体たらくでは、マイロードが動きますよ?」

「そいつは困る。旦那が動いたら、食いカスすら残りそうにねぇからな」


 よっこりゃしょと立ち上がり、先程できた穴から聖堂へと顔を出す。

巨人の力に圧倒されているが、前線が崩れている様子はない。戦闘職では無いのか、新たに表れた人間たちが積極的に動こうとしないこともあり、武具の性能差でどうにか持っている様だ。


「どうなさる心算で?」

「チィときついが、これを使う」


 避難はもう少しで全て終わりそうだが、あんな者と対峙し続ける余裕もない。多少の危険とリソースを払わなければ、代わりに犠牲を払いかねない状況だ。

 ならば、ここで切らなければいつ使うのかと、左腕に装備した白い籠手へと視線を移しながら、その名を呼んだ。


()め、『白竜』」


その言葉に呼応するように、装備した白い籠手の甲に飾り付けられた水晶が輝き、装備者の奥底から、魔力を湯水のごとく吸い出して行く。そしてその魔力が、さながら魔力の衣を纏ったかの様に、全身を覆う形で展開する。


「うっぐ……おらぁ!」


 床を吹き飛ばし、空気を突き破り、真っ直ぐ最奥の祭壇、そこに居る司祭へと突き進む。その速度は先ほどまでとは比べるまでも無く、明らかに人のそれを凌駕する。撒き散らされる魔力も合わさり、流石に危機感を覚えたのか、慌てた様に司祭が腕を掲げ口ずさむ。


「不浄なる者よ! 汝が罪を認め、汚れた血を濯げぇ! 『断罪』!」


 周囲の魔力が収束し、幾つもの光の槍となって浮かび上がると、エッジへと矛先を向け、一斉に降り注ぐ。


(おぞ)ましいもん、おっ立ててんじゃねぇぞ!」


その怒号とは裏腹に無駄な力を抜き、剣へと手を伸ばすと、その攻撃に躊躇いなく飛び込んで行く。


「<抜刀術>、『流麗』」


 聖堂の中腹辺りで起こったその衝突は、静かなものだった。

抜き放った剣で斬るのではなく、剣の腹で受け流す。更に押しのける様に溜を作ると、同様に迫る光の槍を受け流しつつ突き進む。


 エッジへと向かって行った光の槍は、貫くことも無ければ、斬り飛ばされることも無く、、むなしく床へと突き刺さる。


「なんだと!? 止めよ、失敗作!」


司祭の命令に反応し、進行を遮る様に巨人が立ちはだかる。衝突を覚悟し剣へと手を伸ばすが、その剣が抜かれる事は無かった。


「は?」

「何!?」


 立ちはだかっていたはずの巨人の脇を、素通りできてしまった為だ。

予想外の対応に双方共に声を上げる。その視線は、エッジが視界に入っていないのか、ゴトーに釘付けになっていた。


「マイロードの命です。援護程度は致しましょう」

「っは! そりゃ心強い!」


前を向いていた為に、何が起こったか把握できていなかったエッジは、後ろから届く声によって、原理は分からずとも原因を把握する。心配する理由が無くなったことにより、意識を眼前の敵へと集中させ、さらに加速する。


「役立たずが!」

「死ねや、クズ野郎!」

「せ、『聖壁』!」


 詠唱を破棄しつつ、呪文を発動させる。間近に迫るエッジとの間を遮る様に光の壁が展開し、進路を妨害する。

それに対し、エッジは衝突の寸前で足を突き出し、踏み付ける様に衝撃を無理やり殺す。その衝撃は無視できるものでは無いはずだが、その光の壁はびくともしない。


「は~、は~…ふはははは! 貴様程度の力では、この神聖なる壁を打ち破ることなど叶わん! 所詮は下賤なる下等生物よ。何もできずに「ぶっ壊せ」」


 光の壁に右手を叩きつつ、黒い籠手へと向けて言葉を放つ。そのエッジの言葉に反応し、黒い籠手の甲に飾り付けられた水晶が唸りを上げ、耳を劈く様な高音を響かせる。


「貴様、何を!?」

「『黒破』!」


その言葉と共に水晶から上がっていた唸りが止み、光の壁にひびが走る。二人を隔てていた光の壁は、硝子が割れたような音と共に呆気なく崩壊する。


「な!?」


降り注ぐ光の残滓を浴びながら、壁へと掛けていた体重のままに前へと倒れ込むと、そのまま鞘に収めた剣へと手を伸ばし、一気に距離を詰める。


「<抜刀術>、『瞬き』」


 身体能力に物を言わせた突撃と共に、散々鞘に溜め込んだ魔力を元に、その効果を発動する。弾丸の如く弾け抜かれその刃は、相手の腹を切り飛ばし、返す手で首を狙うも、軌道がズレ頭上を掠めるに留める。


「がぁあ!?」

(クソ、首を取り損ねた! イヤそれ以上に、こいつクソ硬ぇ!?)


予想以上の抵抗に軌道が逸れ仕留め損ねるも、そのまま手首を返し逆手に持ち直すと、鞘口へと直接切っ先を差し込み、すぐさま納刀状態に持って行く。


「<抜刀―――」

「不浄なるものを退け、我らが神威を示せ、『破邪』!」


司祭を中心に光の衝撃波が発生し、間近に居たエッジを吹き飛ばすと、間髪入れずに立て続けに詠唱に入る。

<呪術>の連続使用。最早、なりふり構っていられなくなっていた。


「不浄なる愚者共よ! 我等が神の威光を前に等しくひれ伏し、汝が愚行を悔い改めよ! 『天罰』!」


周囲へと魔力が迸り、聖堂内を漂う魔力を巻き込みながら降り注ぎ、周囲に居る者たちを無差別に、圧し潰すように拘束する。


「クッソ、動け、ねぇ」

「司祭様。このままでは、我らも動けません。ど、如何か、ご配慮を」

「はー! はー! はー! ……おぉ神よ! 我等に逆らいし愚か者共に、神の言葉を届けたもう―――」

「司祭様!?」

「司祭様、お待ち下さい! このままでは我々も動けません! どうか、どうか、天罰の解除を!!」


周囲から掛けられる仲間の声を無視し、生唾を飲み込みつつ息を整えると、司祭は、残った体内の魔力を搾り出すように言葉を紡ぐ。

その一節を聞いた人間(ケルド)達は、今までの様子から豹変する。その表情は、ギロチンにでも掛けられたかの様に、恐怖と焦りで歪み、動かない体で必死にもがき、司祭に向け声を荒げつつ懇願する。


だが、司祭の詠唱が止まる事は無い。崇める様に両の手を掲げ、祈る様に言葉を紡ぎ続ける。


「―――謳え! 崇めよ! 湛えよ! 愚劣なる者共よ、不浄なる汝を清め、血を濯ぎ、肉を捧げよ! 至高なる神の御前に等しく平伏し、過分なる栄誉をその身に受けよ 『神判』!」



 厳かな(汚らわしい)光が、視界を塗りつぶした。

白竜の手甲:魂(魔石)から魔力を強制徴収し、水晶体に魔力を蓄積させる。その魔力を使用し疑似竜気法を発動、一定時間身体能力を大幅に強化する。

因みに、強化される能力は身体能力だけな為、スキルなどは強化されない。<踏ん張り>などのレベルが低いと、地面が吹っ飛んで、真面に動けなくなる可能性あり。(大体は地面の方が吹っ飛びます)


黒破の籠手:接触した対象に魔力を根の様に浸透させ、発動と同時に物質化、膨張し対象を破壊する。その性質上硬質な対象に対し高い効果を発揮する反面、流動的なモノには効果が著しく低下する。


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