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210 天の捌き

①天の裁きの捌き

②とにかく拷問だ 拷問に掛けろ!

③因果応報……悪いことは何倍にもなって返ってくる。


……グロが苦手な人は、前話の【閑話】は見ない方が良いかも? です!

「こちらが、侵入者共より聞き出した情報の一覧になります」

「ふ~ん……?」


 ゴトーさんに提出されたのは、厚さ10センチはある紙の束。その紙にはびっしりと、文字の羅列が書かれている。

 何々……【天の裁き】? 報告に上がっていた注意対象の中に、こいつ等の事があった様な~、無かったような~……すぐに出てこない所を見るに、大した連中では無いのでしょう。


「これで全部ですか?」

「メルルル、後、五人分ありますぞ」

「おうふ」


 あいつ等、どんだけゲロったのですか。必死なのは分かりますが、【天の裁き】とか大層な名前しているくせに、暗部が聞いて呆れますね。

 そもそも、よくこれだけの情報を持っていたものです。普通、掴まっても良い様に、重要な情報を持たないものだと思っていました。


 手始めに、パラパラっと軽く中身を見る…………


「な~に、これ?」


 アジトとしている場所や、構成員名簿までは、まぁ、情報としての価値はあるでしょう。後半になると、お勧めの飲み屋とか飯屋とか、どうしろと? 実は、何かしら重要な場所だったりするのでしょうか?


 ……アジトや情報屋の情報が有る所を見るに、隠語などの類にも思えませんねぇ。


「メルルル」


 ゴトーさんを一瞥するも、表情一つ変えずに、できる男の気配を放っていた。こんの、悪魔め。内心にやにやさせよってからに。


「……重要な部分を抜き出したものは?」

「こちらに」

「やっぱ、有るんかい」

「我々が気付かない、何かしらの情報もあるかと思いまして、原文をお持ちいたしました」


 しれっと、何てこと無いと言わんばかりに振る舞いよってからに。まぁ、最終的には全部見ますけどね。<思考加速>と<思考分離>を使えば、さして時間も労力も掛からず確認できますし。


 新たに提出された書類を受け取り、目を通す。三枚って、一気に減りましたね~。


我々(魔物)では気が付かない事がある可能性を考慮し、人族の皆様にも協力して仕分けしております。後に追加の情報が届くかと」

「ふむ、三種類ある様ですが?」

「こちらは、複数の者から上がった内容、二枚目は一部の者が口を割った中で重要と思われる内容、そして最後は、こちらが意図的に聞き出した内容でございます」

「…………こっち(三枚目)が? 他と間違えていません?」

「はい、間違いありません」


 一枚目は、複数の者から上がった、アジトや仲間の名簿などの、当り障りのない普通の情報。

 二枚目は、イラ教の司教や上級? 司祭などから、今までに受けた命令や、不正の情報など。ぱっと見、教皇や枢機卿などの情報はない。は~つっかえ。

 そして問題の三枚目は、人間(ケルド)共の生活、常識。ひと際目を引くのは、イラ教の教義や風習、儀式でしょうか。


「野蛮人とかの次元を、超えているのですが……」

「こんなものが情報として成り立つのか? といった感じでしたので、素だと思われます」


 イラ教は、唯一神イラを信仰する一神教。その教義を簡単に表すならば、人間以外は劣等種、家畜、資源、使い潰してあげるべき存在。来世に上位種である人間(ケルド)になれるように、殺してあげましょう……でしょうか。


 そして、人間(ケルド)になれる可能性を上げるために、獣人は毛皮を剥ぎ、耳や頭蓋を削り取る事で人の骨格に近づけ、亜人は人間でない罪を清める為、汚れた贓物を引きずり出す。

 そうやって、少しでも見た目を人間(ケルド)に近づけてから、来世に人間に転生できますようにと、儀式と称して信者の目の前で執り行う。


 闘技場や、公開処刑など、人が死ぬ様を娯楽の一つとする事は、無くはありませんが、娯楽ではない……いえ、娯楽にもなるのかもしれませんが、教義からして、しなければならない義務に近い。

 人間以外の人族は汚れた下等生物、死ぬ事が救いであり当然。それが、あいつ等の常識。外部に漏れだした感情(瘴気)を感知できる悪魔族が言うのですから、本当に疚しい感情が無いのでしょう。


 だからこそ、奪っても、騙しても、犯しても、殺しても、何とも思わない。だって、当たり前だから。人間以外が見世物の様に虐殺されているのは、人間(ケルド)にとっては、当たり前。情報として話す理由も無い程の常識。


 この世界に生まれ落ちた、この世界の種族ならまだ救いがあったかもしれませんが、あいつ等は外来種。この世界の為にも、管理者のショタ神さんの為にも、ひいては俺達の平穏の為にも、駆除しなければなりませんね。は~、めんど。


 ― コンコン ―


 うだうだと、憂鬱な気分になりながら天井を見上げていると、戸をノックする音が部屋に響いた。お客さんとは、珍しいですね。


「どうぞ~」

「失礼します。ダン様、ゴトー様、集計が終わりましたので、書類をお持ちいたしました」


 居住まいを正し迎え入れると、森人(エルフ)の青年が、書類を持って入室してきた。

 集計? あぁ、人族にも仕訳を頼んでいたと言っていましたっけ。ご苦労様ですと労いつつ書類を受け取り、中身を確認する。


「……おぅふ」


 あ~~~うん、マジか~~~。成る程ねぇ、これは、雑多な魔物達では気が付かなかったかもしれませんね。


「マイロード?」


 ゴトーさんに、読み終わった端から書類を渡しながら、今後の事を考える。


「これは……傾向? ……あぁ、成る程」


 種族、年齢、性別ごとに、奴隷が流れている場所の違い。それも、イラ教限定で見た場合のデータ。ご丁寧に、今まで奴隷として流され行方不明になった人数や、名簿と照らし合わせたものとセットだ。


 未確認の為、予想を多分に含んだ考察も含まれていますが、あながち間違いでは無いでしょう。何せ、最後に行方を確認した者達がいた奴隷商が、軒並みイラ教の息がかかっていたことが、今回の尋問で発覚しています。


 その事を鑑みるに、元奴隷たちの身内など、現在地を把握できていない者達の8割が、イラ教の支部に流れているらしい。


 そして、ここまでならうちの子達(魔物)でも気が付いたでしょうが、問題なのがその傾向です。

 特定の場所に、明らかに偏った配置が見られる。特にこの辺りで一番大きな教会には、若い女性ばかりが集まっている。人間(ケルド)の特性を考えるに、嫌な想像しか浮かばねぇ。


 こんな事を知ったら、近くのイラ教の教会に襲撃する人が出てもおかしくないでしょう。ゴトーさんもその事に思い至ったのか、書類を持ってきた青年を一瞥する。


「中身を見ましたかな?」

「いえ、私は届ける様に頼まれただけですので、内容までは……唯、中身を見るなと念押しされましたが」


 いい判断です。これは、安易に見ない方が良い。

 集計した人たちも、暴走する者が出ることを懸念して、先ずはこちらに情報を寄こしたのでしょう。


 ならば、こっちで処理したほうが良いか? だが、当事者たちを除者にするのも気が引ける。だがしかし予想するに、この状況に直面すると、普通の感性だと平静を保てるか分からない……ですが、今後の事を考えると、知って置いて貰った方が良いか?

 汚いものに蓋をして、平穏に過ごして貰うのも一つの手ですが、隠し続けるのは無理でしょう。精神面が強い方を前面に出し、何とかするか。エッジさん辺りは決定ですね。


 そんな事を考えながら、つらつらと名簿に目を通し続けていると、とある名前が目に付いた。


「うっわ、ここかよ」


 いやね? 予想はしていたんですよ? ですがイラ教の教会は、魔道具による警戒網とかがぎっちぎちに仕掛けられていて、不用意にちょっかい出せなかったせいで、今まで後回しにしていたんですよね。


 下手に手を出して警戒されると、後々他に手を出すときに面倒になりそうなので、やるなら一気に、同時襲撃する心算でしたが……これはもう、やるしかないか~。


「この情報って、何処まで回っているのでしょうか?」

「メル、集計を頼んだのは、丘人と森人の情報処理が得意な者達と、経営関係を考え、バラン商会の者達の一部に」

「情報封鎖……は、もう無理っぽいですね~、はぁ」


 直ぐに情報が回るのを止めようとするも、もうすでに遅いことを悟る。扉の奥から、廊下をドタバタと走る者達の足音が、こちらに向かっているからだ。


 は~~~、ヤバイ。


 ― ダン! ―


「ターニャ! ターニャが見つかったのか!?」

「落ち着いて下さい、ゼニーさん。まだ可能性です」


 蹴破る勢いで扉が開け放たれて、そこから、バラン商会の皆さんを引き連れたゼニーさんが顔を出す。

 ですよね~、集計を手伝ったなら、お孫さん(ターニャ)の名前がある事は、伝わっちゃいますよね~。然も、後ろから後続がぞろぞろと……他の方々にも、身内が居ましたか。多すぎて部屋に入りきらないじゃ無いですか。


「ラ、イラの連中に!? ターニャが、タ、ヒヒュ、ヒュ」

「あ~もう、落ち着て、ほら深呼吸、深呼吸」


 あら~、ヤバいですわ~、心が死にそうですわ~。席を立って背中をさすってみますけど、気休めにもならない。ここでゼニーさんを失うのは痛すぎます……仕方がない、やるか。


「イラの教会だぞ!? どうすると言うのだ! 話など聞くはずない!」

「襲撃します」


 可能性が出た以上手を出さない理由がない、他の方法でどうにかなるのでしたら良かったのですが、そんな事をしていては、ゼニーさんの方が先に壊れる。

 売られてから時間も経っている。居るかどうかわからない状態で動くことはできませんでしたが、これだけ分かっているなら……理由としては十分だ。


「プルさん。身内に対し、全チャンネル解放」

(は~い)

「ゴトーさん、戦闘、治療、運搬、封鎖、いつでも対応できるように連絡」

「は!」


 すぐに動きたいところだが、後方支援や戦闘などのサポート要員の配置には時間が掛かる。指定した範囲に点在するイラ教の教会の数を考えるに、全員の配置が終わるのは……今晩か。

さぁさぁ、カッターナ編最後となる襲撃回の始まりです! ダーク要素です。グロ要素です。胸糞要素満載です! 読者が離れて仕舞わないか心配です!


ですがケルドの性質上、胸糞グロは避けられないのです……これが終われば、ほのぼの成分の補給に入るので、ご容赦ください!



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