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209 侵入者

①広告塔投入!

②一組、迷宮へご案内~

③攻略開始!


 迷宮陣営たちが、レイモンドたちの様子を見ながらにやにやしている裏で、とある者達がカッターナの町中で暗躍していた。


 喧噪の絶えない表通りを外れ、薄暗く異臭を放つ入り組んだ裏通りを、頭の天辺から足の先まで、お揃いの真っ白な服と外装を纏った、いかにも怪しいですと言わんばかりの集団が、足早に歩みを進めていた。


 時偶すれ違う者達は気にすることも無く、寧ろ居る事にすら気が付いていないかの如く、いつも通りの日常を繰り広げる。


 その者達は、一切口を開くことなく廃屋の中へと入り、中に居た浮浪者の様な姿をした者を一瞥すらせず、奥の部屋の床に空いた穴から、地下へと続く階段を下へと降りてゆく。


 どれ程下っただろうか……辿り着いたのは、水音が響く異臭が立ち込める広大な地下施設。


 かつて、この地を治めていた者達が作り上げたこの施設は、この国の地下に広く存在し、各所に地上と繋がる道が存在する。

 本来であれば、引いてきた地下水が水路を流れ、各地へと清潔な水を供給していた。

 だが今では、整備が行き届かなくなったことで真面に機能しなくなり、更には地上から掘りぬいたのか、天井には穴が開き、そこから汚物が降り注ぐ。見るも無残な姿に変貌していた。


 そんな悪臭漂う通路を、真っ白な集団が、一切の迷いなく進んで行く。


 幾つも枝分かれした道を進み、曲がり角の先へと視線を向ける彼等の目に、壁が映った。

 本来であれば、この先には彼等の目的地まで道が続いていたはずなのだが、それらしい道が見当たらない。


 近付きよく見れば、真っ平な壁は天井が崩れた訳では無い事を示し、汚れが殆ど見られない事から、ごく最近近設置されたことは明らかである。


 どうなっている、どうするのだと言いたげに顔を見合わせるが、その内の一人が何かに気が付いたのか、天井付近を指さし周囲へ見る様に促す。

 その指し示す先を追うと、天井擦れ擦れに、丁度人一人が通れそうなほどの空間が開いており、そこから光が漏れていた。


 最初に気が付いた者が飛び上がり、壁の縁に手を掛け覗き込む。そこには、今まで彼等が通って来た道とは、全く違う光景が広がっていた。


 薄汚れていた壁は、磨かれたのか汚れ一つなく、建材となっている石材が本来持つ、雪原の如く美しい姿を露にし、淡い光を放つ水晶が等間隔で設置され、明るく照らし、その姿を際立たせる。

 水路を流れる水は、水底を覗けるほどに澄み渡り、心地よい水音を奏でる。

 天井に空いていたはずの穴は、周囲に散った石材をも流用したのか、そこに穴があったとは思えない程に綺麗に修復されていた。


「我々の領域を侵すとは」


 周囲に生き物の気配が無いことを確認すると、後続へと合図を送る。

 次々に壁を乗り越え、足を踏み入れると、警戒など不要と言わんばかりに我が物顔で、目的地に向け足を進める真っ白な集団。


 先ほどの澄み渡った水が、新たに濁りを持ち始めた頃、その歩みが止まった。


 通路の奥、彼等の視線の先には、地上へ向けて広がる円柱状の大きな空間と、その奥には地上へと続く階段が存在していたはずなのだが、代わりに目に映った物は、一本の巨大な大樹だった。


 広場の入り口から中を覗くと、天井擦れ擦れ迄伸びたその大樹は、溝に沿う様に根を張り汚泥を塞き止め、代わりに透明な水が、水路を伝って各通路へと流れて行っているのが見て取れる。

 彼等の目的である、地上へと続く階段が向かいに存在するはずなのだが、今は大樹の陰に隠れて、視認することができない。


 壁に空いた穴からは、変わらず地下水が流れ出しているが、今まで通って来た際に存在した結晶が壁に設置され、大樹の枝葉の裏に隠れているが天井にも巨大な結晶が存在し、地下とは思えない程明るく室内を照らしていた。


 首輪をつけた人間と、その奥に監視役だろうか、亜人や獣人、従魔が見て取れる。

 人間たちは、汚泥に潜り底にたまったヘドロを掻き出すと、大樹の元へと休みなく運んでいた。

 他の通路からも、人間が絶え間なく出入りしており、その数の多さを容易に想像できる。


「野蛮人共め」

「なんと罰当たりな」


 憤怒の感情を隠しもせず、監視している者達に対し身勝手な事を口走る。今まで自分たちが行って来た事に比べれば、まだましな対応だと言うのに。


「汚れた異端者共に、天の裁きが在らんことを」


 集団の先頭に立つものが、懐に手を伸ばし、中から何かを取り出そうとする。


「汚れたねぇ、お前らの方がよっぽど汚らわしいと思うがな」

「「「!?」」」


 その後ろから、声が掛けられる。


 彼等が纏っている服は、認識阻害の術式を施されたものであり、周囲にいる者達の認識を誤魔化し、当たり前なもの、気にならないものへと変換する魔武具である。

 故に、彼等に声を掛ける者など居るはずがなく、突如掛けられた声に、驚愕と共に一斉に振り返る真っ白集団。その目には白と黒、二人の亜人が映った。


「自分たちがして来た事を棚に上げて、よくそんな事口にできるよな」

「正気を疑うな。おっと、こいつ等に人らしさを求める方が、余程頭がおかしいか」

「カッカッカ、違いねぇ!」


 愚か者を嘲笑うかのように、クツクツと笑う黒い肌をした谷人と、カラカラと笑い声を上げる白い肌をした草人。

 その態度に怒りを抱きつつも、自分たちが人間である事を理解していないのだろうと、僅かな憐みを抱く。

 だがしかし、自分たちの存在を認識したならば処分しなければならないと、腰に携えた短剣に手を掛けるも、それよりも先に草人が、広場の入り口に向け、片手を上げながら声を掛ける。


「お、流石はゴトーさん、到着が早い」

「ご苦労様です、ミール様、キーク様。ご報告感謝いたします」

「「「!?」」」


 背後を取った二人に意識を向けていた彼等は、

 その行為に、再度広場の方向に振り向けば、草人(ミール)の声掛けに対し優雅に一礼する、異国の服を纏った男の存在に漸く気が付く。

 挟み撃ちの形となり、漸く危機感を覚えた彼等は、一斉に抜刀する。


「お~う、ゴトーさんも、こんな臭い所までご苦労様」

「いえいえ、後はこちらで処理いたしますので、お二人は戻りください」

「お、そうか? うんじゃまぁ、頼んまぁ」

「お任せください」

「逃がさん!」


 背を向け去ろうとする二人を追って、近くに居た者達が踏み込み、確実に相手を殺そうと間合いを詰めようとする。


 だが……


「んぎぃ!?」


 空間が揺らめき、毛皮で覆われた腕が現れる。

 その腕は、間合いを詰めようとした一人の首を逆手で鷲掴みにすると、真上に向けて振り上げ、まるで棍棒でも振るかのように、前を走る人間に向けて振り下ろされる


「オゴ!?」


 真上から叩きつけられ、振り下ろされた人間諸共地面に叩きつけられ、地面に亀裂が入る。振り回された人間に至っては、首は握りつぶされ、全身の骨が砕け散っていた。


「まぁ、こんなもんか。取り敢えず、派手に動かなけりゃ、バレる事は無さそうだな」


 ゴミでも投げ捨てるかのように、死に掛けの人間を放り投げながら、纏っている外装を捲ると、全身を毛皮で覆われた筋骨隆々の亜人の様な姿をした大猿(コンゴ)が姿を現す。


「相変わらず、凄い力」

「ふん、その分、隠密能力はお粗末極まりないがな。これが無ければ、隠密部隊に所属などできん。開発課の連中に感謝だ」


 天井から降ってきた声に対し、外装をひらひらさせながら答える大猿(コンゴ)

 隠密課の中でも戦闘を担当する彼は、普段は後方で待機し、退路の確保と、緊急時の戦闘、救助を主目的としている。

 その分、彼等は他と比べ隠密能力が劣る所を、魔道具によって補っている。魔道具開発課の尽力の賜物である。


 そして、突如現れた謎の存在に困惑する真っ白集団であるが、動きを見せるよりも前に、まるで何かに雁字搦めにされたかの様に、全員その場から動けなくなくなる。


「……取り敢えず、絡まっていても気が付かれることは無さげ?」

「可能な限り細く、軽くして、見つかり難くしたからね」

「その分、強度がねぇ」


 など、雑談でもしているかのような気軽さで会話しながら、天井から複数の蜘蛛(タラント)が下りて来る。


 今まで真っ白集団が通り抜けて来た道には、彼等が張った極細の糸が巡り、一度足を踏み入れれば、その侵入を容易に感知されてしまう。

 そして、無断で侵入しようものなら、今まで巻き込んできた糸を操作し、急激に巻き上げる事で、対象を拘束する罠の役目も果たす。


 彼等は既に終わっていたのだ、この領域に足を踏み入れた時点で。


「実地試験はその辺で良いでしょう? 早く武装解除に移りなさい」

「「「は~い」」」


 追加された糸によってクルクルされ、雁字搦めに拘束された真っ白集団は、抵抗らしい抵抗も出来ず、通路の奥へと一人残らず消えて行った。


ク~ルクル♪ ク~ルクル♪ (本能には逆らえない)


因みに、汚泥攫いをしている人間たちは、全員ダンマスの領域で犯罪行為を行った、犯罪奴隷です。鉱山送りの強制労働みたいなものだと思ってください。



浮浪者の姿をした人は、イラ教側の人間……だった者です。出入口を放置する訳が無いんだよなぁ。


この時点で、

①キークさん、ミールさんコンビ

②出入口の監視員

③暗部達による、地下施設の警備員

④ダンジョンの領域潜入感知


4重でバレて居ました……コレって、バレないで侵入ってできますかねぇ。


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