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208 広告塔、投入!

①模擬戦闘訓練

②後衛は脆い

③勝てばよかろうなのだー!


予約ミスしてました! 申し訳ないm(__)m

「あ~~~、まだピリピリしやがる」

「折角貰った装備も、全部取り上げられたしなぁ」

「あの杖、便利だったのだが」

「それを言ったら、あの盾だって!」


 性能試験を兼ねて、試験的に渡していた装備も没収し、元々持って居た装備と道具のみとなっているレイモンドさん一行。回復してすぐに引っ張ってきたこともあって、ぐちぐちと文句が絶えませんが、素直に付いて来る。


 これからして貰う事を考えたら、この時点で装備を渡す事は避けたいですし、装備に関しては少しの間我慢してもらいましょう。


「でっけぇ門」


 石畳で舗装された通路を進むと、ここ最近よく利用する様になった、門部屋に到着する。そこには、何もない広場と、壁に設置された<門>だけのシンプルな部屋です。


 一度設置した<門>は、動かすことができない。

 その代わり、出入り口を設置するのにDPが掛かるだけで、<門>同士の繋がりを自由に変更できるのは、想定外でしたが中々に便利ですね。お陰で、幾つも用意しなくともこれ一つで、他の<門>に自由に行き来できます。


(コアさん、西地下の<門>までお願いします)


 ~ 了解。迷宮【地下遺跡】の西<門>へ接続します ~


 その特性を利用し、【世界樹の迷宮】の門を通って、目的地近くに設置した<門>まで移動する。


<門>が開いた先は、先ほど通ってきた通路と同じような石畳の通路。違う点を上げるのでしたら、光源が無く真っ暗な事と、少々埃っぽいことでしょうか。<門>の機能を知らなければ、ぱっと見は通路の延長か、外へと続く道に見える事でしょう。


「それで? とうとう俺達を追い出すのか?」

「ですね~、元の場所に帰れますよ、やったね!」

「「「「え~~~」」」」


 折角外に出られると言うのに、随分と不満そうですね?


「いや、ここ住み心地良いしよ~」

「風呂~」

「メシ!」

「訓練相手!」

「「「「帰りたくねぇ!!!」」」」


 ちょっと、染まり過ぎではありません? まぁ、それだけ、ここの環境が良かったという事なのでしょう。整えた側としては、悪い気はしませんがね。


 それに、一生戻って来るなと言う訳でもありません。依頼さえ完遂して頂ければ、いつ来ても構いませんよ。


「成る程、遠征って考えれば良いか」

「いや、ここは貴方達の家ではありませんからね?」

「じゃ、ここに家買うわ!」

「お、それ良いな!」


 あぁ……うん。なら、それも報酬の一つにでもしましょうか。生活施設の近くに部屋を設ける位、別段手間でもありませんからね。


「よし! 何をすれば良い?」

「現金なんですから……やる気が上がる分には良いですがね。はい、到着です」


<門>を潜ってすぐに道はぷっつりと途切れ、その代わりに真っ暗、且つ広大な空間が目の前に広がっていた。


「ここがか?」

「暗いな」

「上下左右、奥行きも広い……穴、いや、剥き出しの谷?」


 俺が居る事と、周囲に生き物の気配が無いこともあって、穴を覗き込んだり、外側の壁面を触ったりと、油断していますね。


「こんな所に案内して、何させる心算だよ」

「なに、簡単な事ですよ」


 ― トン -


「「「「え?」」」」


 穴を覗き込んでいた4人を、後ろから突き飛ばす。

 警戒しておらず、突然のことで反応できなかったのか、こちらに振り向いた顔は呆気にとられていた。

 地面を求めむなしく伸ばされる手足を余所に、ひらひらと手を振りながら彼等の出発を見送る。


「頑張って脱出してくださいね~」

「「「「ふっざけんなーーー あーーー ぁーーー!?」」」」


 何もない空間に叫び声が木霊する中、四人は常闇の谷底へと落ちて行った。


「「「「へぶ」」」」


 まぁ、すぐ下に足場はありますけどね。


 ―――


 真っ暗闇の中、クッキーが発動した火の玉がボウっと浮かび上がり、周囲を照らし出す。


「あ、あの野郎……」

「たまにだが、ノリで行動するよな。あのダンジョンマスター」


 余裕そうに振舞うが、その表情には緊張がありありと浮かんでいた。


「……広くて落ち着かねぇ」


 耳鳴りがするほどの静寂、灯は手元の火球のみ、身を隠す障害物も無い。奇襲されようものなら、一気に壊滅の危険性が出て来る。


「如何する? 俺なら明かりが無くても見えない事は無いが」

「やめとけ。もしここが、あの糞ったれなダンジョンマスターの領域なら、出て来るのが普通の魔物とは思えねぇ」

「一人になった途端、襲われるかもな」


 暗闇の中でも、ある程度視界を確保できる<夜目>系スキル。狩人だけあり、さらに上の中位スキル<暗視>を持つメメントが斥候をかって出るが、引き留められる。


 此処が何処か分からない、どれ程深いか分からない、地上までの道が有るかもわからない、そして何よりも……何が出て来るか分からない。


 ない、無い、ナイ、の分からない尽くし。早急に対処したいが、不用意に動けない。最大限に警戒し、お互いにカバーしながらじりじりと移動する。


「お、壁に横穴があるぞ」

「でかしたメメント。先導頼む」


 はやる気持ちを抑え、ゆっくり、可能な限り気配を消しながら、メメントが見つけた横穴へ入る。


「は~~~、人心地着いた」

「取り敢えず…今度会った時、あのすまし顔に一発ぶち込む」

「「「異議なし」」」


 一息つき、結束を新たにする4人。

 踏み込んだ横穴は洞窟などでは無く、先ほど通った通路と同じく、石畳で作られた人工の道だった。


「先ずは状況整理だ、悪いがメメント警戒頼む」

「あぁ」

「クッキーは灯と探知結界。土の中から襲われたら、堪ったもんじゃねぇ」

「おう」


 入り口付近では、外から急襲される可能性がある。奥へと進み、警戒態勢を整える。

 メメントが入り口を警戒し、クッキーが火球を放つことで視界を確保しつつ、地面に両手をつくと、侵入者を感知する結界を張る。


 そうして一段落付くと、頭を突き合わせる三人。メメントも、外を警戒しつつ耳を傾ける。


「それで? 俺らは何すればいいんだよ、説明も無く突き飛ばしやがって」

「そもそも突き落とす意味が無いだろ!?」


 開口一番、不満を口にするブラウとクッキー。どうやら相当根に持っている様だ。

 特にクッキーの苛立ちは相当なものの様で、警戒態勢を整えてあるとはいえ、未知のエリアで声を荒げている。


「落ち着け、突き落とすのは俺もどうかと思うが、理由はちゃんと有ったと思うぞ」

「どういう意味だ?」

「あれだ、説明とかをしたくなかったんだろう。【真偽看破】の魔道具とか有るだろ?」

「あ~、成る程。知らなけりゃ、嘘はつけねぇ」


 レイモンドが荒れるクッキーを諫める様に同意の言葉を発しながらも、可能性を口にすると、それに対しブラウが納得したとばかりに頷き、補足する。


 この世界には、相手の嘘を見破る魔道具やスキルが存在する。だが、それはあくまで本人が嘘だと自覚した上で回答しない限り、偽りを言っていると判断できない。つまり、元から知らなければ、嘘など付けない。


「だが、ここを出てどうする? 迷宮の事を話してはならないと、契約していたはずだが?」

「それは勘違いだな、契約書には、「【世界樹の迷宮】について」だ。世界樹の事を話しても良し、【世界樹の迷宮】以外の迷宮は契約対象外だ……で、ここは何処だ?」

「少なくとも、木の中じゃねぇな」

「もしくは他の迷宮か、【世界樹の迷宮】の一部か……あくまで憶測(・・)だけどな?」


 つまり、真偽は定かではない、あくまで憶測。これならば、帰還した後に問い詰められたとしても、嘘をつかずに回答することが可能だ。

 世界樹に関する事を問われでもしない限り、問題にはならないだろう。


「兎に角、俺達がやるべきことは、ここから脱出することだ。それが、あいつの目的に繋がるんだろうよ」


 これから脱出を試みるここについての情報は、別段規制されていない。今までいた場所の情報を話せないのであれば、ここの情報を外に放つことが、ダンマスの狙いなのだろうと、レイモンドが締めくくる。そしてその考えは、粗方当たっていた。


「うんじゃ行くか。メメントとクッキーは後から付いて来てくれ、余裕がある俺が先頭を行く。ブラウは二人を中心に防衛な」

「「「おう」」」


 そうして脱出を開始する4人。彼等が地上へと抜けるのは、まだ先の事である。


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