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200 解放奴隷と搬送計画②

①イライラダンマスさん

②人材(魔物)招集決定

③帰還希望者

「ここだ、入るぞ」


 目的の部屋の前に到着すると、扉の向こうに一声かけた後に扉を開け、中へと通される。

 ゼニーさんに案内された部屋には、数人の亜人や獣人が居ましたが、こちらが部屋に入ると同時に全員立ち上がり、迎え入れられた。


「ダン・マス様ですね。此度は、謁見の機会をいただき、恐悦至極」

「そんなに固くならなくても良いですよ。ここに居る皆さんが、帰還所望者と判断して間違いないでしょうか?」

「はい。他にも居ますが、私達は各地の代表とお考え下さい」


 成る程、代表者ですか。それならこの人数も納得です。


「早速ですが、帰還を希望される理由をお聞きしても?」


 堅っ苦しいのは苦手なので、草人さんの挨拶を軽く受け止め、彼等の前に用意されていた椅子に腰を下ろす。ふむ…草人、丘人、兎人に穴人ですか。バリエーション豊かですねぇ。


「た、助けてもらって、申し訳ないのですが……か、家族がいる者も居ますし」

「怪我が酷いものや、精神的に病んでしまっている者も多い。こんな状態では、仕事なんぞ出来やせんわい」


 恐る恐ると言った感じの兎人さんと、頑固そうな穴人さんが、各々理由を口にする。丘人さんはだんまりっと……ふむふむ、コアさん、此奴に<マーキング>。


「それは良いですよ。心残りがある状態で手伝ってもらっても、変なミスに繋がりそうですしね」


 今の所、人手は足りていますからね。仕事が無い訳では無いですが、護衛とかは人を選びますからね~、能力が合わなければ、優秀な人でも使えない。


「因みに、皆さんの目的地は?」

「エスタール帝国です。細かい地域は各々違いますが、帝国領にさえ入れれば、そこからは私達だけで如何にかできます」


 成る程、それなりの伝手はあると言う事ですね。そうなると、国境をどうやって抜けるかが問題になりますね。エスタール帝国の方はともかく、問題なのはカッターナの方なんですよねぇ。


 運ぶこと自体は良いのですが、道中がねぇ。

 ぞろぞろと列を成して進めば、ちょっかいを掛けられるのは間違いないでしょうし、他者の敷地を通る事になる。その時点で、俺の建前的な保護が利かなくなる。


 他の敷地を抜けたとしても、今度はカッターナ側の国境が問題になる。折角こそこそ動けているのですから、ここで強硬手段はとりたくないのですがねぇ。


「全員送り届ける心算か?」


 ゼニーさんが懸念を口にする。

 そりゃぁ…ねぇ。このままほっぽり出す訳にもいかないでしょう? そんな事をしたら、また人攫いの餌食です。


「そうなると……全員を一度に逃がす訳にも行かんな。優先順位を決めるか?」

「いえ、やろうと思えば、手段はいくらでもあるんですがね? 今後の事を考えると、安定且つ安全に運べる環境を確保しておきたいのですよ」


 今後も大いに利用しそうですからね、エスタール帝国にも足を運べるようにしておきたい。カッターナにない物も、エスタール帝国には結構見つかっていますし……ふむ、エスタールに有って、カッターナにない物ですか……。


「ゼニーさんや、ちょっと交渉して来てもらいたいのですが」

「商談でなくて交渉か? ……どこにだ?」

「国境の管理者です」

「国境の管理……門番でも買収する心算か? それは無理だろう」


 門番を? そんなの、何の意味もありませんよ。金取った後に難癖付けて、奴隷にして売ればいいだけでしょう?

 クズな癖に、情報規制とか詐欺とか擦り付けとか、そんなのばっかり上手いんだから。本当、嫌になりますよ。


「人間共なら、容易に想像できるな。そうでないとすると……まさか、いや、流石にそれは」


 ゼニーさんが何かに気が付いたのか、引きつった顔をしながら、されど馬鹿らしいと、その考えを嫌がる様に頭を振り否定する。ですが多分、合っていると思いますよ?


 この国はかなり特殊だ。土地の所有権を、個人が占有でき、国が税金を徴収することも無い。その代わり公共施設も、自分たちで全て整備する必要がありますが。

 そんな中、国が管理し財源としている施設が国境の関所になる。つまり……


「おいやめろ、そこから先を言「王族」あーーー!?」


 国境の所持者は王国、つまりお相手は王様ですよ~。


「だいたい、一週間も有れば話は付きますかね?」

「んな訳有るか!? 腐っても、一国の王だぞ!? どんな感覚で言っているんだ。根回しだけでも、何カ月もかかるわ!」


 え~? そうなると、皆さんをその間どうしましょうかねぇ。肉体的にも精神的にも、参っている人も多いですし、養生していて貰いましょうかね。無理することは無い。


「いえ、我が儘を言っている自覚はあるので……寧ろ、何もしなくても良いので?」

「その代わり、しっかり休んで、他の方の面倒を見て下さい。いざ行動となった時に動けないのでは、こちらも困りますので」

「そういう事でしたら……お前たちもそれで良いか?」

「強きお方が良いのでしたら、ぼ、僕はそれでいいよ」

「ワシも構わん!」

「……うん」


 草人さんの言葉に、他の方々も同調する。うん、問題が無いのであればそのように…と言う事で、はい、解散。


「勝手に進めるでないわ! そもそもだ、どうやって話を付けるってんだ!」

「えぇ? う~~~ん……ゴトーさん、ここから一番近い国境線を所持している国は何処ですか?」

「メルルル、ベルノンド王国ですな」

「趣味・嗜好」

「女好きの、自堕落な性格ですね」


 少し前から、背後でタイミングをうかがっていたゴトーさんに話を振れば、すぐさま答えが返ってきた。ちょっと残念な感情が漏れていますが、そう何度も驚かされてたまるもんですか。


「では、これですね」


 ゴトーさんの答えを元に、【倉庫】から目的の物を取り出し、机の上に置く。


「……ゴトーがいつ入って来たかは置いておくとして、これは?」

「性力増強薬です」


 プルさんと世界樹さん共同開発の、世界樹印の安心安全なオクスリです。

 不眠不休で活動できるようになる覚醒効果と、回復能力を飛躍的に向上させる体力増強効果、更に反動を抑え、無理なく体調を整える瘴気調整効果などが盛り込まれた逸品です。

 容器も拘って、高級感を醸し出しています。これは受けるでしょう。


「それと、え~っと、ベルノンド、ベルノンド……はい、これですね」


 更に、【倉庫】から書類の束を取り出し、瓶の横に同じように置く。その紙束の表紙をみて、ゼニーさんの顔が引きつる。


「こ……これは?」

「国境の衛兵が行っている、横流しと横領の証拠、ここ数年分ですね」


 とうとうゼニーさんが、頭を抱えだした。現実逃避しても、目の前の結果は変わりませんよ?


「なんで、そんなモノまである!?」

「普通に仕訳されていたらしいですよ? さも当然のように、棚に堂々と置かれていたと、報告では聞きましたね」


 奴隷や、その者達が持っていたであろう物資の売却金額が、普通に集計、決算されていたらしい。恐らく、犯罪行為と思っていないのでしょう。国境に来た奴を奴隷にするのが、彼等が思う仕事なのでしょうね。


「はぁ……つまり、その薬を献上し、そのデータをもとに、国境のやつらを排斥してもらう様に懇願するって寸法か?」

「う~ん、半分正解」


 懇願? はっはっは、有り得ねぇ。

 格下相手に頭を下げる理由なんて、在りはしませんよ。敬意を払える相手ならいざ知らず、この国の現状を見て、それは…ねぇ?


「実はこの商品、エスタールでしか手に入らない物が使われているのですよ」

「……つまり、エスタールとの国交が正常に行えなければ、今後提供できないと言う事……おい、それってつまり」

「はい…脅して来い」(ニッコリ)

「おふ」


 ゼニーさんから、変な声が漏れ出した。

 大~丈夫、大丈夫、人間(ケルド)でも誑かされたのです、しかもその子孫の腑抜けと来たら、ゼニーさんなら余裕余裕。


「わ、分かっているのか!? 王族に直訴だぞ!? その場で首を刎ねられても、文句が言えないのだぞ!?」

「あぁ、ゼニーさんを失うのは困りますね」

「だったら「そうなったら、処分するか」」

「「「…………え?」」」


 容易に扱えるならまだしも、使うたびに危険が伴うなら、頭を付け替えた方が、扱いやすいでしょう。

 国が混乱? はっはっは、この国がどうなろうと知ったこっちゃないですし、元々の国の体制が狂っているんですから、これ以上酷くもなりませんって。


 さて、護衛はどなたにお願いしましょうかねぇ。今ゼニーさんに亡くなられるのは、本当に困るので、プルさんは確定で良いかな?

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