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196 報告

①店舗ゲット!

②お金ゲット!

③犯罪奴隷ゲット!

 

「これが、今日一日での収支になる」

「……これって、儲かっていると考えて良いのですよね?」


 深夜。

 ゼニーさんが持ってきた、下級竜(レッサードラゴン)の肉の販売収支を眺めながら、今後の店舗展開の予定を詰める。う~ん、魔物の肉の値段よりも高い値で売っていましたけど、よく売れるもんですね。予想よりも大分売り上げが良いです。調味料が良かったのかな?


「正直に答えると、本来なら大赤字も良い所だが、元が安価に仕入れた物なうえ、名を売る事が目的だしな。しかし、どれだけあるんだ」

「まだまだありますよ。それこそ倉庫の肥やしです」


 1,000イラでも安いのか。あの量なら、他の魔物の肉なら100イラ程度なはずですけど、かなりの高級食材なのですね。あ、イラはこの国で流通している通貨の単位になる。自分の国の名前を通貨の単位にするとは。


 そう言えば……以前剥ぎ取りしていた、中位竜(トカゲモドキ)共の肉の残りが在りましたね。売れるかな? 後で提案しておきましょうか。


「はぁ……市場が壊れるな」

「カッターナの市場なんぞ、人間(ケルド)に都合がいいだけのものでしょう? 早々に壊してしまいましょう」

「……そうだな、人間以外が購入する時だけ割高になる時点で、商売として破綻している」

「売却価格も、難癖付けて、真面に査定せずに買い叩いているとか聞きましたが?」

「それも本当だな」


 これは、売却だけでなく、買取もした方が良いかも知れませんね。目下の目標は土地の購入なので、後回しになりますが。


「さっさと、塗り潰してしまいましょう。その為の品は、幾らでもありますよ?」

「では、取り敢えずこの回復薬と、レッサードラゴンの肉を追加注文しようか」

「意外と高く売れるなぁ、下級竜(レッサードラゴン)の肉。その他の素材も売って下さいね?」

「勿論だ、その為にも、今回の収益でこの土地の店舗を買いたい。大工達への改装の依頼は、こちらから依頼しておこう。魔道具の方を頼む」

「了解、取り寄せておきます。あ、解放された生産職の方々の様子はどうですか?」

「解放してくれたアンタに感謝していたよ。仕事も安心して寝られる寝床も用意したりと、信用は勝ち取ったと思って構わんだろ」


 ゼニーさん達バラン商会の他にも、当然奴隷だった者は大勢いた。その者達への衣食住の保証と、仕事の斡旋も行っており、大工はその内の一つになる。

 生活スペースを提供した後は、実質ここを管理していた管理職の元奴隷さん達に任せていましたが、良い様にやっている様ですね。上がってきた報告書を見るに、一息は付いた様ですし、しばらく体調の回復に努めて貰った後は、各々自分たちの仕事ができる様に事務所を構えないといけませんね。

 いっその事、何でも屋的なモノでも立ち上げて貰っちゃいましょうか……有りだな。


「後は、噂を聞きつけた者たちの言い掛かり対策だが、あの魔道具達を信用して良いんだな?」

「ま、大概のクレームには対策したと思いますし、効果も上がっていますが……信用なりませんか?」


 クレーム対策の為に、店舗には色々な魔道具を設置している。土地への契約へリンクして発動する、【契約の楔】と銘打った水晶の柱もその一つだ。一応の効果は確認できましたが、まだ不安でしょうかね?


「いや、あれだけ大量の魔道具を見るのが、珍しかっただけだ。あれだけの物資を用意できるアンタが用意したものだ、信用しているさ」


 食料や薬品、魔道具に美術品と、色々出しましたからね~。広場で適当なものを【倉庫】から出した時の、皆さんの引きつった顔はちょっと笑いました。


「……むしろ魔道具目当て窃盗が起きても、おかしくないぞ?」


 頭をボリボリ書きながら、懸念を口にするゼニーさん。う~ん、それこそ、思う存分始末できるでしょう?


「おっかねぇな……裏は任せる」

「任されました。表はお願いしますよ」


 悪戯小僧の様に、ニヤリと口角を上げながら任されたので、任されておく。きっと俺も同じような顔をしているのでしょうね。ふふふ、悪巧みは楽しいですねぇ。


 しかし、今までの表情とは一転し、ゼニーさんの眉間にしわが寄り、悲痛な顔を浮かべる。


「ターニャは……流石にまだ見つからんか」

「……取り敢えず、近隣の奴隷市場には、流れていない事は把握しています。個人で所有している可能性が濃厚ですね」

「み、見つかるよな?」


 震えた声を上げるゼニーさんだが、考え方がズレていますね。


「見つけますよ。それこそ、この腐った国を全て平らげてでもね」


 お孫さんは見つかる、見つけるでは無く見つかる、です。問題はどれだけ早く見つけることができるかだ。


 トコトコと、部屋から出て行くゼニーさんの背中を見送る……ゼニーさんもお孫さんも、どっちも時間が無いな。


「で、そっちはどうでしたか? ミールさん」

(……悪いな、有用な情報はまだ上がってねぇよ。国外に出た形跡がねぇから、たぶんまだこの国に居るとは思うがな)


 ストンと、天井からミールさんとキークさんが下りて来る。人族の情報網でも、流石に一晩では何もわからないか。


「では、引き続き調査をお願いします。話は変わりますが、お店の評価はどんな感じでしたか?」

「やべぇな、噂が飛び交ってやがる。ちょっと高いが、味と希少性が相まって、とんでもない事になってやがるぞ。明日はもっと来るな」

「ほうほう、それは僥倖。収支もまずまずですし、このまま独占と行きましょうか。土地を買おうにも、買える土地が無いとどうしようもないですからね。周囲の店には、早々に立ち退いて貰いませんと」

「悪い顔してんな」


 そんな顔していますかね? ……ふふふ。


「うんで? その中で人間以外の店も把握しろってか?」

「流石ミールさん。分かっていらっしゃる」


 人間(ケルド)を処分する為に、他の方を犠牲にする必要はありませんからね。土地の所有者への資金供給を断ち、所有権を掻っ攫う。何よりも、こんな環境の中でも生き残っている方達ですよ? 引き込んで損は無いでしょう。

 その為にも、上に鎮座している連中が蓄えている財を、吐き出させないといけませんからね。


「報酬は弾めよ?」

「勿論。それと、情報収集に掛かった金額も報告してくださいね、後で報酬と別途で支払いますので」

「マジか!?」

「当然でしょう? 経費なんですから。あ、晩御飯食べて行きますか?」

「「喰う!」」


 キークさん……こんな時だけ喋るんだから。次に出店するレストランのメニューらしいですから、ちゃんと感想言ってくださいね?


「「うめぇ!?」」


 ……これを、感想と言ってよいのでしょうか。


「お~い、旦那。この剣、ヤバくねぇ…って、なんか旨そうな匂いがするな?」


 くたびれた金髪おじ様のエッジさんが、部屋に入ってきて早々に話を切り出す。報告を聞きたくて呼び出しましたけど、ノック位してくれませんかね~?


「良いじゃねぇか。呼んだのはそっちだろ? でよ、おっさんの分は無いのか?」


 その言葉に、ミールさんとキークさんが全身を使って、自分に宛がわれた料理をカバーする。二人共、食い意地張り過ぎでしょ。


「食える時に食う。じゃねぇと、餓死するのがこの国だからな。他人の物に手を付けなかっただけ、こいつ等は真っ当だ」

「情報には躊躇しないで手を付けていますけどね」

「そう言ってやるなって、うっっっしょっと」


 元傭兵団のリーダーだったエッジさんは、今ではバラン商会のお抱え護衛のリーダーに就職し、今日も店頭に立って睨みを利かせていた。

 その報告をして貰いたかったのですが……奴隷として、肉塊の護衛をさせられていた時よりも顔色は良くなりましたが、まだ体調が戻っていないのか、ただ椅子に座るだけの動作がぎこちない。


「別に、休んでも大丈夫なのですよ?」

「いやいや、漸く自由に動けるようになったんだぜ? リハビリよ、リハビリ。凝り固まった体を解さねぇとな。それよりも剣だよ! とんでもねぇな、これ」

「剣と言うよりも棍棒ですがね。エッジさんでもダメでしたか?」


 癖なのか、剣の柄をトントン叩きながら、無精ひげを摩り唸り声を上げる。


 エッジさんが持って居るのは、抜刀時の速度を底上げする、木刀【旋風(つむじかぜ)】。普通に抜いても、居合の達人レベルの速度で振るわれる一刀は、正に一撃必殺と言っても過言ではない一撃となる。


「使えねぇことは無いが、振り回されてるって感じだな。振るった後の隙がどうしてもデカい。コレ、扱いきれるかねぇ」

「敏感に設定しすぎましたかねぇ?」


 なんせ、作った子達も目安がない中作りましたからね。機能だけで、出力の調整にまで手が回って居ないんですよね。それに、今まで参考にしていたのは、肉体面が優秀な獣人さん方ですから、草人であるエッジさんには、少々オーバースペックだったかもしれませんね。


「加速が速過ぎるのでしたら、調整を依頼しますが?」

「……いや、扱って見せるさ」

「それは頼もしい限りで。他の武器や他の方達の感想はどうでしたか?」


 当然ながら、他の戦闘職の方達にも武具を支給している。武器の種類は無難な所を、あるだけ提供したので、各々自分に合った得物を見つけてくれていると思いますが。


「概ね好評だな。軽くて動きやすい。武器は木製か骨製の打撃武器が殆どだが、癖が無くて扱いやすいとよ。しかも、それが魔武器となりゃ、不満なんて早々出ねぇさ。ただ、やっぱり馴染みの相棒じゃ無きゃしっくりこないってやつは、一定数居るな」

「それは仕方がないですね。回収出来たらお渡ししますので、聞き取りしてもらっても良いですか?」

「マジか!? いや~、旦那は太っ腹だな! 俺らみたいな傭兵は、普通使い捨てだってぇのに、良い主人に巡り合えたもんだぜ」

「使い捨てだなんてとんでも無い。そんな勿体ない事なんてしませんよ。最後までこき使いますからね」

「…………あれ? んん? 良い雇い主……だよな?」

「エッジのおっさん。こいつが良い奴とか、無いから」

「うんうん」


 良い奴かどうかを判断するのは、貴方ですからねぇ。俺は知らん。

キークさん(草人):隠密 … 情報収集

ミールさん(谷人):上記と同じ

ゼニーさん(丘人):商人 … 資金稼ぎ

エッジさん(草人):傭兵 … 護衛


ここでの主要登場者はこんな感じです。カッターナ王国では、他はモブとなります。

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