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192 ヘッドハンティング③(占拠)

①突撃、隣の糞野郎

②奴隷

③満面の笑み(ゲス顔)

「やぁやぁ、キークさんにミールさん。早朝ぶりですね~。やれるもんならな! って事でしたのでやってみましたが、どうでしょう?」

「うぎ」


はっはっは、言質は既に取っているのですよ。今さら逃がしてなるものか。


「今度は、ちゃんと話してくれますか?」

「あぁもう! 何なんだよお前は!?」

「ふっふっふ、それは秘密って事で。うちで働いてくれるなら、【契約書】有りになりますが、お話ししますよ?」

「はん!」


どかっと、近くの椅子に腰かけるミールさん。

キークさんは、ゆっくりとその隣の席に座る。これは、深く考えるのを放棄していますね、どうにでもな~れって感じです。安堵しているともとれるかな? まぁ、真面に会話できるのなら、構いませんけどね。会話担当はミールさんっぽいし。


「因みに、ここって何をやっているんですか?」

「奴隷商だよ」

「正規の契約で奴隷になった方は?」

「居ると思うか?」


でっすよね~。人攫いに冤罪に詐欺による借金……ってところでしょうかね。内容は書類を見れば一目瞭然でしょうし、それを見てから、あの肉塊の処遇を決めましょうか。それまではこのまま書類を書くだけの機械です。


それよりも、今後の予定です。奴隷が手に入るのは有り難いですが、この段階で大量に手に入るのは、扱いに困りますね。


「はぁ……後で、解放の手続きと雇用の斡旋。親元、故郷への輸送とその護衛。有能な人のスカウトに、カウンセリングと、検診と……あぁ、こりゃ俺一人じゃ無理ですね。仕方がない、時機を見て手伝い呼ぶか」


 先ずは、邪魔なこの屋敷に居る従業員、奴隷でないケルドをとっ捕まえる事から始めますか。


(捕まえるの~?)

(そうですね、外にバレない様に、営業時間が過ぎたら行動開始です。一晩で掌握しますが、お願いできますか?)

(は~い、お任せあれ~)


 プルさんがバックアップに居れば、どうにかなるでしょう。後は、ゴトーさんの暗部の方で片付けて~、必要があれば情報を絞り出して~、まだ表に出ない方が良いから、ケルドを前面に出すとして~、その為に使えそうな奴は利用して~……


「……なんですか?」

「解放って聞こえたんだか……奴隷をか?」


 今後の予定を思考していたら、ミールさんとキークさんが、怪訝な表情でこちらを見て来るので尋ねると、当たり前な事を聞いてきた。

冤罪で捕まっているのですから、解放するのは当然でしょう? あ、放り出すのは責任放棄なので、ちゃんとアフターケアもしますよ? 協力してくれる人材も欲しいですしね、優秀な方は大歓迎ですよ~。


「なので、キークさんとミールさんも、うちで働きませんか? 給金は弾みますよ?」

「はぁぁぁああああああ! わぁったよ! キークも良いな!?」

「はぁ、分かった、ここで断っても、仕事が無くなるだけだろうしな」

「俺らの人生、何だったんだって話だよ」


キークさんが投げやりに、ミールさんが何かを諦めたかのように了承してくれた。ふっふっふ、これで、表(人族社会の裏)からの情報取得経路を確保ですよ~。


「あ~、後、こいつ等も解放してやってくんねぇか?」

「護衛の方々ですか、襲ってきたりしません?」

「「ないない」」


 ま、感情を見るに、かなりの期待と感謝、意気込みが見て取れますし、これなら敵対は無いか。

コアさんにお願いして、数人<マーキング>して貰ってから、肉塊に命令させて護衛さん方を自由にして貰う。


自由(じにゅう)にしゅぺよひ」

「死ね!」

「おっと」


 肉塊の解放宣言に合わせて、護衛の一人が飛び出すも、他の護衛達によって取り押さえられる。


「落ち着け、やるならこいつの作業が終わってからだ!」


 うむうむ、なかなか気が利くではありませんか、これは優良物件ですね~。是非とも、奴隷状態から解放した後も雇用したいですね、引き抜かなきゃ。


「表に出す事もあるかもしれないので、暫くは生かしますが、要らなくなったら皆さんに差し上げますので、それまで辛抱して下さい」

「ほら、新しい雇い主様もこう言ってる」

「そうそう。それに、抜け駆けなんてずりーじゃねぇか。俺らにも分けろ」

「ふー、ふー、ふー……わりぃ」


 とりあえずは納得してくれたのか、剣を握っていた手から力を抜いて、抵抗を止める護衛の草人さん。うん、冷静になりましたね。


「すまん、此奴も悪い奴じゃ無いんだ。許してやってくれ」

「構いませんよ。ここに居る者なら、怒る権利くらいあっていいでしょう」


 むしろ、ここに居る全員が殺しに行っても、俺は怒らなかったと思いますよ、止めはしましたが。


「理解が有る雇い主さんで助かる。俺はエッジ、しがない傭兵団のリーダーをやっていた。ここに居る奴の大半は顔見知りだから、何かあったら言ってくれ」


くたびれた感じの、無精ひげを生やした金髪のおじさまが、腰の剣の柄をトントンと叩きながら話しかけてきた。エッジさんですか、こんな環境の中に居たと言うのに、中々タフですね。


「……自分で言っといて何だが、ミールとキークは雇うらしいが、俺達も雇ってくれるって事で良いのか?」

「こちらから、お願いしようと思っていた所です。そこの肉塊の作業が終わるまで時間が掛かりますが、奴隷契約も解除しますので、少々お待ちください」

「「「おー!」」」


 うむうむ、やる気が有って大変よろしい。


「それで旦那、俺らは何をすることになるんだ? 言っておくが、俺らはこれしか能が無いぞ?」


 そう言うと、腰の剣を半分ほど抜き、中の刃を見せて来る。傭兵ですからね、頼るのでしたらそっち方面でしょうね。


「では、休息していて下さい」

「……休憩かよ。ふ、了解した! 万全の体調で仕事に掛からせてもらうぜ」


これが仕事人の顔ってやつですかね? にかっと清々しい笑顔を見せ、他の者を引き連れて部屋から出て行った。一応休憩室は有るみたいですね。

切り替えの早さも相まって、表手向きの護衛としては十分に信頼を置けそうです。戦闘面でも使えるか、後で<鑑定>させて貰いましょう。


本人が望むなら、トレーナーの紹介も辞さない。ノーマル(モフモフさん)ハード(ビャクヤさん)ベリーハード(コクガさん)エクストラ(フワフワさん)ヘル(ルナさん)エクストリーム(プルさん)と、色々取り揃えていますよ~。


「マイロード。私めは如何致しましょう」

「あ~~~、ゴトーさんは通常勤務に戻ってください。後、ここの監視と護衛の配置、キークさんとミールさんもお願いします」

「承知いたしました」


この世界では、明かりの確保はそこまで発達していないので、夜は大体の店は閉める事になる。行動を再開するのはそれからなので、一旦家に戻りましょうかね~。


あ~~~、久しぶりに外に出て疲れた。帰ってのんびりしましょ、果報は寝て待てってね。コアさんに頼み、<神出鬼没>で帰宅する。

通勤時間、脅威の1秒。超立地ならぬ、コアさん特急が便利すぎる。


「よっと、ただいま戻りました」

「お疲れ様です、主様!」

「「「(((お疲れ様~~~)))」」」


う~ん、こうやって迎えられると、帰ってきたって実感が湧きますね。ささっと、人形から本体に意識を戻す。目を開けると、視界一杯に世界樹さんの顔が映し出された。何しているんで?


「お帰りなの。人間、沢山なの?」

「あ~~~ただいま。まぁ、外には沢山でしたね……そんな目で見てもダメです、迷宮に来ている方だけで、我慢しなさい」

「む~~~」


 媚びる様な目で見て来る世界樹さんを避け、体を起こす。欲張りさんめ、有る分だけで我慢しなさい。


「戦闘職とそれ以外との違いも、見て見たかったなの」


 あ、それは確かに有るかも……世界樹さんが、ちらちらこちらを見て来る。ぐぬぬ……悔しいが、有用なのは確か!


「な~のなのなのなのなの、勝利なの!」


結局、押し負けて承認してしまった。何故でしょう、物凄く悔しい!


……いつまでも引きずってはいられない、気持ちを切り替えて行きましょう。逆に考えるんだ、世界樹さんが楽しそうだから良いんだと考えるんだ。


「はぁ……クロスさん、第一拠点の方は順調ですか?」

「ハ! 拠点の清掃、及び警備網の設営、共に終了しております。地下通路の開設にも着手しておりますので、開通次第お知らせいたします!」


流石はクロスさん達ですね、仕事が早い。

因みに、拠点に無断で入ってきた奴らって……あ、やっぱり全部ケルドだった? 奴隷じゃないのが大半ですか、雇われである事は想像に難くないですね。

カッターナでは、ケルドは何かと優遇されているって、報告書にもありましたっけ。人間(ケルド)は優秀、他は無能ってのが、あの国での認識らしい……アホクサ。


その為、人間の奴隷はかなり少ないらしい。人間が奴隷落ちしそうな場合、その原因が他の人族に擦り付けられるとか。うん……クソが。


その為、仕事を持って居るのは大半が人間だ。

全部奴隷で固めていた、あの肉塊が珍しいのでしょうかね。個人営業でしたし、人間含め、周りを全く信用していなかったのでしょうか……ま、興味もありませんが、最大限利用だけはさせていただきましょう。


「主様の方は、敵対勢力の制圧との事でしたが、順調でありましょうか?」

「問題ないですよ~。寧ろ順調すぎるくらいですね~。拠点が増えてしまいました」

「おぉ! 第三フェイズまで進んでしまうとは、主様には敵いませんな!」

「運が良かったですね」


他人の敷地に無断で侵入せず、且つ自身の能力を生かした情報収集能力を持つ、ケルドでない二人。そして雇い主が、個人経営の糞野郎(ケルド)と来たもんです。そりゃもう捗る、捗る。遠慮の必要が皆無ですからね。


「資金集めの第二フェイズが肝でしたからね~。奴隷商とは言え、元が商いなだけあって、資金が動いてもある程度なら誤魔化しが利きます。何より奴隷を余所から調達しても、暫くは怪しまれることは無いでしょう」

「では、第四フェイズに移行致しますか?」

「そうですね、人材を確保出来次第、移行しましょう」

「ハ! こちらで周知いたします!」

「よろしくお願いします」


その日の夜、新たに得た拠点にて、死体と達磨が量産されることになりましたが……別に語る事でもありませんね。


第一フェイズ:拠点設営と物資搬入

第二フェイズ:物資の換金による資金確保

第三フェイズ:土地の購入、及び領域拡張

第四フェイズ:???

第五フェイズ:???


第五フェイズが終わる時が、カッターナ編が終わる時です。だいたい……20話位掛かりそうな予定(予定は未定)です。

終われば、今までの迷宮サイドに一旦視点を戻します。



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