191 ヘッドハンティング②(肉塊)
①白黒、覚醒
②イラ国は敵
③マーキングしたった
夜、あっちこっち動き回るキークさんとミールさんをマップで確認しながら、待つことしばし、漸く一か所に留まったのを観測する。ここが、彼等の拠点ですかね?
「ゴトーさんや、この位置に見覚えはありますか?」
「メルル、その位置は……奴隷商ですな。それも、かなり偏屈で有名な方ですな」
「偏屈?」
「自分の周りを、全て奴隷で固めているそうです」
「う~ん、他人を信用して無いのかな? ……因みにケルド?」
「ケルドですな」
だったら別に良いや。いや、全て奴隷で固めている程に他人を信用できないならば、その縛りもかなり固そうですね。トップさえ押さえれば、終わるんじゃね?
これは、追いかけさせた隠密班の仕事が、無くなるかもしれませんね~。
暫くじっとした後、軽く上へと移動したのを観測。ちょっと大きめの家の中を移動した感じですね。その後少し待ってみましたが……完全に動きが止まりましたね。
「コアさん、<マーキング>ポイントを領域化。半径2m程度で良いかな」
~ 了解、領域化を開始します~
~ 指定ポイントは他者の領域です、5000DPを使用します ~
「高」
いや、まあ、予想はしていましたけどね? ちょっと高すぎやしませんかね~。ま、必要経費とでもしておきましょうか。今までならいざ知らず、今はDP確保源が沢山ありますからね、どんどん使って行きましょう。
ってことで、さくっと領域化してもらい、マップの<カメラ>で確認……そこにはミールさんとキークさんが、土下座している姿が確認できた。あ、なんか飛んで来て、ミールさんの頭にぶつかった。どうやら、彼等の所有者が近くに居そうですね。
「うん、行きましょうか。ゴトーさんもお願いしますね」
「メルルルル、承知いたしました」
ゴトーさんと一緒に、<神出鬼没>で現地へと移動する。
「よっと、お邪魔しますね~」
「な、お前!?」
ミールさんとキークさんの間に、華麗に登場。コアさんの能力は流石ですね、床との距離が完璧です。
隣で驚くキークさんを余所に、部屋の様子を窺う。
真っ赤な絨毯に金ぴかの机と椅子、絵画や像、照明などが、統一性皆無で揃えられていた。趣味悪いですね~、俺でもセンスが無いのが分かるぞ。
壁際には護衛でしょうか、帯刀した人が数人待機している。突然登場したこちらを見て固まっている…のではなく動けない感じですかね? 進んで動く気も話す気も無い様子ですし、今は放置で。そして……
「なにぃもにょだ、きちゃば!」
「うっわ~」
目の前では、ごてごての服にジャラジャラと装飾品を付けた、テカテカした肉の塊が、唾を撒き散らしながらまくし立てて来た。てか、肉のせいで呂律が回っていない。「何者だ、貴様」って言ったのかな?
「おみゃいら、こいぴゅら「は何も問題ない」もんだいむにゃい?」
<神出鬼没>で、肉塊の背後に移動したゴトーさんが、耳元で囁く。そうすると、肉塊の言葉に前へ出ようとしていた人達の動きが止まる。おう、中々良い動きですね、ゴトーさんの<誘導>が遅かったら、斬られていましたね。
「何も問題ない…そうですな?」
「そう……びゃ、なにゅも、もんにゃいにゃい。さぎゃれ」
「「「は…い」」」
肉塊の言葉に、元居た場所に元の姿勢で待機する。おうおう、皆さん動揺が半端ないですね。感情と目が泳ぎまくっています。
「絶対命令ってところでしょうか。愚かですね~、馬鹿ですね~、そんなの、トップを潰すだけで終わるって事じゃないですか。殺してくださいって言っているのと同じでしょうに」
「もしくは洗脳ですな!」
「これだけで、ここの全権を掌握ですか……あほらしい」
<精神魔法><幻覚魔法>に対する対策も無し、護衛も自動で行動できないのでは、無いのと同じ。<空間魔法>や<隠密>関係での侵入への対策は……この部屋にはしていない感じでしょうか、流石に入り口とかには、何かしらの対策はしていますかね?
「前へ」
「うみゅ」
ゴトーさんが、肉塊さんを俺の前まで移動させる…………転がした方が速いのではなかろうか?
「メルルルル、マイロード、どうぞお納めください」
「ありがとございます、ゴトーさん」
さてと、領域内に入りましたし、先ずは<鑑定>から行きますか。
名称:ケルド(ケルド、草人)
氏名:プププ・ブブブ・ドドレド
分類:現体(物質:魔力=75:25)
種族:人族(イラ神聖国所属)
LV:28 (最大レベル30 進化適性無)
HP:853
SP:826
MP:25
筋力:30
耐久:410
体力:410
俊敏:30
器用:30
思考:10
魔力:10
適応率:75(Max100)
変異率:75(Max100)
スキル(残り容量/最大容量 10/50)
・肉体:<過食LV2>
・技術:
・技能:
称号<狂信者><愚者>
ケルド
・ケルド98
・草人2
「うっわ、何このゴミステータス」
最大レベルを見るに、成長の余地すらねぇ。てか、ケルドの割合高ッ。90%以上初めて見ましたよ。もしかしてこれって、一世代目じゃね? そしてイラ国所属の<狂信者>って事は……
「やっぱり、ケルドってイラ国から来ているのか」
あ~やだやだ。イラも消毒しないと。
「ここのトップはお前か?」
「ぷあぃ」
「お前の上司は何処だ?」
「上司? いみゃせん」
ほうほう? これは、これは、理想的ではありませんか。つまりこれは、個人実業家って事でしょう? やりたい放題じゃないですか!
「では、これからは俺がお前の上司です」
「???」
おう、言葉の意味を理解していない感じですね。自分の上に誰かが立つことが、意識に全く無いようですね。自分がトップで当たり前って訳ですか。
これはゴトーさんでも<誘導>できないでしょう。無いものは、どうしようもない。ゴトーさんも困り顔だ…こんな顔、初めて見たかも。良いものが見られました。
ま、<誘導>自体は効いているので、全く問題なし。やり様はいくらでもありますとも。
「では、ここの権利書などはありますか?」
「ぷあぃ」
「持って来い」
「なんぺ「意味は必要ない」ぷあぃ」
ゴトーさんが、追加の<誘導>と<精神魔法>で疑問を塗りつぶすと、ひょこひょこと作業机に向けて歩きだす。
周りに居る護衛達から視線が突き刺さりますが、知りませんね、ケルドに容赦する気はありません。てかこいつ等は、生物と言って良いかも怪しいんですよね~。早く研究結果が出ればはっきりするのですが、流石に始めたばかりでまだまだですしね~。
「この箱ですかな?」
「ぷあぃ」
あまりに移動が遅いので、結局ゴトーさんが書類の入った箱を持って此方に渡してきた。その中を見ると、書類や契約書が乱雑、且つ仕分けされていない状態で入っていた。
「……整理してねぇな、こいつ」
これは、本人があると思っているだけで、入っていない可能性さえあるぞ?
「はぁ……ん?」
憂鬱な気分になりながら、箱の中を軽く漁ると、金色の金属の輪で止められた、巻かれた契約書を発見した。これだけ妙に豪華ですね、試しに輪を外そうとするも外れない。
「これ、開けて下さい」
「ぷあぃ」
肉塊が金の輪を引っ張ると、簡単に契約書から抜けた。特定の人にしか外せない様になっているんですね。
ボケッとしている肉塊から、契約書を取り中身を見る……うん土地の権利書ですね。国じゃ無いから、所有権書って言ったほうが良いのかな?
「ゴトーさん、ここに書かれている住所って、ここで合っていますか?」
「メル……合っています。それと他の土地のも含まれていますな」
お、儲けもんですね。内容を確認しながら、【倉庫】から無地の契約書を取り出す。元の内容を参考に、適当な制約をガチガチに載せてっと。
「はい、ここに名前を書いて下さい」
「ぷあぃ」
そうしてできた契約書に、肉塊の手でサインさせると、僅かに発光し契約が成立したことを知らせる。うむ、これでこの肉塊が持っていた土地は、俺達のモノになりましたね。
「コアさん、領域化できますか?」
~ 肯定。【契約書】を元に、現地を検索します ~
~ 検索完了。領域化を執行します ~
~ 目的地点は、マスターの所有領域です ~
~ 領域を【世界樹の迷宮】の領域へと統合いたします ~
よしよし、このままどんどん権利を書き替えてしまいましょう。ほら肉塊、さっさとサインして下さい。あ、先にこいつに奴隷契約でも組ませますか。ゴトーさんをこんな奴の為に拘束させるのは、可哀想ですし勿体ないですからね。
思い立ったが吉日。契約書をさらさら~と。
「はい、次」
「ぷあぃ」
「はい首輪」
「ぷあぃ」
首の肉にめり込ませながら、無理やり首に巻き付ける。これで奴隷化完了っと。
あ、首輪は以前保護した獣人さんが付けていた内の一つです。契約主のハンターが死亡して契約が切れたのか、簡単に外せましたからね、再利用です。
「ご苦労様でした、ゴトーさん。もう大丈夫ですよ」
「メル、ありがとうございます、マイロード。付きっきりになるかと、冷や冷やしておりました」
「ん?」
ゴトーさんの<誘導>が切れたのか、正気を取り戻す肉塊。
「お…おみゃいら!? なにゅ「黙れ」!? …! …………!!??」
「お前が持っている契約書と権利書を、他人に移す様に書き変えろ。名前部分は空白な。それ以外の生理現象を除くすべての行動は禁止する」
書類を探すのも面倒なので、全部丸投げする。これで、此奴が把握している全ての書類は、手に入る事になる。
契約の内容を簡単に説明すると、解除の要件が載って居ない絶対服従かつ、絶対命令権。生殺与奪権も含む、人を物として扱う悪魔の契約ですね。その為、生理現象を制限から除かないと、呼吸すらできなくなる。ここのさじ加減は間違えないようにしませんと。
酷い? こいつは普通に使っていましたよ? 周りの護衛さん方がいい例ですね。
黙々と書類を書く肉塊を横目に、領域化が完了した中を移動する。
「ミールさぁ~~~ん、キークさぁ~~~ん、午前中のお話は覚えていますかぁ~~~?」
「「……」」
満面の笑みで話しかけたら、凄い嫌そうな顔をされた。解せぬ。
【契約書】は、契約者同士で決まりや条件を決めるもので、拘束力の低い下級のモノでは、それ程拘束力はありません。せいぜいは契約内容を破ったと、お互いに自覚させる程度です。
その為、拘束力を強制的に上げるために造られたのが【奴隷の首輪】です。【契約書】の内容に抵触した場合、それに反応し【奴隷の首輪】に付与された効果が発動、装着者を拘束します。
その内容は、契約内容と【奴隷の首輪】に込められた効果によります。軽い者であれば<幻覚魔法>などによる、装着者に痛み(幻痛)を与えるものから、重い物であれば<精神魔法>による人格の上書き、精神崩壊、肉体の制御剥奪など、内容は様々です。
実質、奴隷を縛って居るのは【奴隷の首輪】の方になるので、それさえ解除して仕舞えば、【契約書】は無視しても、バレはしますが実害がなかったりします。(高位の契約書は除く)




