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180 ハンターさん、お話しましょ?①

①<鑑定>(LV天元突破)

人間ケルド=邪魔物

③(゜∀゜)アヒャ

「「「「ここやべぇ…」」」」


 掴まった翌日、出された朝食を食べた後に出した結論がこれだ。


 宛がわれた部屋は広く、明かりは魔石? で灯る魔道具が設置され、寝床は固くないし軋まない。便所は水洗? ってやつで匂いもしねぇし、飲み水が出る穴まで備え付けられてやがる。そこらの宿なんぞ、足元にも及ばねぇ!

 何より飯が美味い! マジ美味い!

 然も信じられるか? 監視付きとは言え、風呂まで入れたんだぞ!? 風呂だぞ風呂! 貴族とか王族が入る風呂だ! てかあれを、風呂と表して良いもんじゃねぇだろ、詩人じゃねぇから表現できねぇがやべぇ、とにかくやべぇ何かだった(語彙力崩壊)

 荷物も全部返されて、取られたものも無し。てか武器くらい預かれよ、これどうしたらいいんだよ。

 何これ、王族待遇? と、一晩だけで何度思った事か……


「んニャ? これが普通ニャよ? 人は、捕虜に対してそんニャに辛辣ニャのニャ?」

「メシもこのレベルか?」

「そうニャよ? ニャもこの後、同じの食べるニャ」


 でも最近、コック長が居なくなって質が落ちたんだよニャ~と言いながら、部屋を出て行くケットシー。


 その後ろ姿を見送ると、俺達はお互いの顔を突き合わせる形で集まる。

 会話を聞かれる可能性を、少しでも減らした方が良いだろうからな。どれだけ効果が有るか分からねぇが、やらないよりましだ。


「やべぇ、俺、ここに住めるなら、魔物側につく自信あるわ」

「………………否定できん」

「ここまでするんだ、タダ殺すって事にはならねぇだろうが、この後どういう扱いになるかが、全く想像できねぇ」


 一体何をされるんだ? もしくはさせられるんだ? 待遇が良くて怖いと思うなんぞ、初めてだぞ!


 ― ガチャリ -


「…男四人、隅っこに集まってニャにしてるニャ。気色悪いニャ」


 戻ってきたケットシーが、開口一番にそんな事を言って来やがる。この野郎…こっちの気も知らないで。


 持って居るのは、何かの器と…本か?


「おい、ケットシー。俺らはこの後、どうなるんだ?」

「さぁ? ま、そんニャに警戒しニャくても、滅多ニャ事にはニャらニャいニャ」

「滅多な事ってなんだよ」

「そうニャ~…殺そうとしたり、会話ができニャかったり…とにかく、普通に接していれば問題ニャいニャ」


 椅子に座ったかと思ったら、もさもさな尻尾をゆらゆら揺らしながら、器に盛られた何かの木の実? を片手で摘み、読書に勤しみだした…リラックスしやがって、お前は俺達の監視だろう。


「ニャ? ……食べるニャ?」

「……おう」


 美味いんだよな~、ちくしょう。


「なぁなぁ、ケットシー。ここの主の~、ダンジョンマスターはどんな奴なんだ?」

「んニャ? そうニャ~…ニャは外から来た魔物ニャ。だから、<幹部>の紹介でここに居させてもらってるけど、直接会ったことが無いのニャ」

「外から?」

「そうニャ。元は森で生きてて、興味本位でここまで来たニャ……道中で、外で活動している<幹部>にちょっかい出して、死にかけたけどニャ」


 ニャハハと、生気の無い遠い目で乾いた鳴き声を上げるケットシー。以前やらかしたって言ってたのは、これの事か。


「元から居る魔物は<幹部>か、その配下だけだから、その方達の話をそのまますると…」


 強くて、賢くて、かっこよくて……

 頼りがいがあって、配慮ができて……

 優しくて、おおらかで、憶病で……

 誠実で、面倒見がよくて、思いやりがあって……


「まてまてまて!? なんじゃそりゃ?」

「まぁ、傾向としては種族ごとに似た感じにニャるから、間違ってはいニャいと思うニャ、捉え方はそれぞれニャ。」


 指折り数えながら、滅茶苦茶言うケットシーに突っ込みを入れると、そんな返しが帰ってきた。言わんとするところは分かるが、どんな完璧超人だよ、<幹部>だから褒めちぎってるのか? あぁ、憶病とも言ってたか、好意的に捉えてまとめると……能力はあるが、慎重な奴…か? 一番面倒な奴じゃねぇ?


 ― コンコンコン -


「ニャははい~、今開けるニャ~」


 そんな雑談兼情報収集に勤しんでいると、来訪者を知らせるノック音が響き、ケットシーがトテトテと扉に向けて歩いて行く。思えば、ケットシー以外でこのダンジョンの魔物が訪れるのは初めてか。


「ニャ、ニャひ!?」


 ケットシーが扉を開けて、硬直する。


「…ケットシーどうした?」

「おや? 随分と仲良くなったようですね、ケットシーさん」


 今まで見たことのない程の速度で、横にそれ壁にベッタリ引っ付き直立不動で背景と化す。おいおいおいおいおい、一体何が来たんだよ。


 ケットシーが手を離した扉が、ゆっくりと開いて行く。その先に居たのは


「こんにちは」

「ッ」


 温和な雰囲気を纏った、黒髪黒目の人の姿をした何かが居た。


 髪に合わせたのか、黒を基調としたラフな格好をしているが、襟や裾に下品にならない程度の装飾が施されている。

 木っ端な貴族じゃ手が出ない代物だろう。昔、エスタールの王都に立ち寄った時、パレードで見た王族が着ていた服より、明らかに質が良い。その艶と滑らかさ、着心地も悪くないだろう……てかあれ、全部魔物の素材でできて無いか? 滲み出てる気配と魔力が、半端ないぞ。


 だが、そんなものがどうでも良くなる程の何かが、此奴にはあった。

 威圧じゃねぇ、魔力でもねぇ、本能が、魂が、奥底の何かが、全力で警報を上げてやがる。ヤバイ、何がヤバいか分からないが、とにかくヤバイ、こいつは逆らっていい存在じゃねぇ。


「……大丈夫ですか? 体調が悪そうですが」

「レイモンド、どうかしたか?」

「人が来るとは思っていなかったのだろ、実際俺らもびっくりしたしな」

「ふ~ん? そんな感じでは無いですが、まぁ良いでしょう。体調が悪ければ言って下さいね、亜人の治療はしたことは無いですが、薬は取り揃えていますので」


 ニッコリと、人好きそうな笑顔で挨拶して来る何か。

 何でお前らは平気なんだよ!? 此奴の異常さを感じているのは、俺だけなのか?


「改めまして、こんにちは。ここがダンジョンだとケットシーさんから聞いているとは思いますが、俺がそのダンジョンの主です。以後よろしくお願いしますね」

「ダンジョンマスター!?」


 マジかよ…人族がダンジョンマスターになる何て事例、今までにあったか?

 いや、今は純粋にありがたいか? 元とは言え人種、魔物と違って感性も近いだろ。ケットシーの奴も、似たような感だったけどな……ダンジョンマスターが人だから、配下の魔物も人っぽいのか?


「…トップが直々に、何の用で?」

「畏まらなくても良いですよ、俺も元一般人ですから。ただ、ちょっとお話でもしませんか?」


 そう言いながら、何もない空間から、椅子が滲み出てきた。おう、すげぇな、魔法使いか? やたらと座り心地が良さそうな椅子だな。


「空間魔法!?」

「うんや、迷宮主(ダンジョンマスター)の能力ですね。どっちかと言うと、アイテムボックスに近いですかね?」


 食い物に飲み物、何かわからねぇ魔道具が、机の上に次々と並べられる。

 ……酒はねぇのか、残念。今、無性に飲みてぇ気分なのに。


「さ、お話しましょ?」


 椅子に座りながら、トントンと指で軽く机をたたき、促してくる。

 …座らねぇ選択肢は無いな。こっちとしても、この後どうなるか、確認しなきゃならねぇ。でなきゃ、不安で夜も眠れ…るな。あの布団はある意味凶器だ。

 しかし、此奴の目の前に座るのか…落ち着かねぇ。


「むぅ…そんなに警戒すること無いでしょう」


 そんな一瞬の逡巡を見逃さなかったのか、困り顔をしながら、拗ねた様に窘められた。端から見たら、悪いのは俺だろうな。


「いや…その…すまん」

「そうだぜ、それにあんた、そんなに強くは無いだろ」

「あ、分かります?」


 弱いのかよ!? よく単身で、武器持ちの敵の前に出られたな。

 だけど、強さとは違うんだよな~。何と言うか、王族を目の前にしている様な、逆らったら不味い相手と言うか、失礼かもしれないが、得体のしれない何かと言うか…

 そんな、曖昧な感覚を伝えるのは失礼かとも思ったが、このまま言わないでこじれる方が危険だと判断して、しどろもどろになりながらも答えると…


「ほほう! 成る程、ユニーク持ちですか!」


 寧ろ、嬉々として話に乗ってきた。てかユニーク? ユニークスキルの事か?


「残念だが、そんな特別なスキルは持ち合わせていない。唯の勘だ…です」

「勘とは、積もり積もった経験から来る最短最適解の事ですよ。あと、いつも通りで良いですよ」

「……<鑑定>にも、そんなスキル出ねぇんだよ。勘じゃ無けりゃ、何なんだよ?」

「ふむ、貴方は呼吸するのに、スキルが必要ですか?」


 言われてみれば……必要ねぇな。


「スキルとは、後天的に備わる、技術や周囲の環境に適応した結果の様なものです。先天的に魂に備わっている能力、ユニークスキルは、スキルとして<鑑定>では表示されないのですよ」


 つまり、俺のこれは勘じゃ無くて、生まれ持った能力って事か?


「確証がある訳ではありませんが、今までの傾向的に、その可能性は高いかと。俺もそうですしね。そう言った話は聞かないので? ふむ、スキルなんて研究材料として、これほど重要かつ有意義なテーマは無いと思うのですがね~」


 もしかして、この考え間違いなのかな? と、頭を捻るダンジョンマスター。

 動きがコミカルと言うか、随分とのんびりした奴だな。


「まぁ、いいか。聞きたいことは沢山ありますが、こちらには余裕がありますからね。聞きたいことが有れば、先ずはそちらからどうぞ」


 主導権をこちらに渡すか…いや、寧ろ向こうの情報を渡さないつもりか。こっちが聞いてきた事自体が、相手が知りたい情報に繋がる事だってある。不必要な事を聞いている余裕はこっちには無いからな。それに引き換え、相手は応えるのも誤情報を与えるのも、向こうの判断次第だ。

 しかし、聞かない選択肢は、こちらにはない。捕らわれた者たちが、俺らだけな訳がねぇ。俺達が聞かないなら、他を当たればいいだけだ。そうなれば、俺らは何もできなくなる。


 取り敢えず、一番知りたい事は……


「俺達を骨抜きにして、どうするつもりだ?」

「もう元の生活に、戻れる気がしない…」

「情報を搾り取ろうかと」

「ぶっちゃけたな、お前!?」

「懐柔作戦は、王道でしょう?」


 く、王道かは知らないが、効果覿面なのは間違いない。てか、こんなことができると言うだけで、十分効果的だ。逆らう気力なんぞもうないわ。


迷宮主のメモ帳:人間


人間とは、「人の間に住む者、生きる者」と言う意味。


異世界人や、異世界転移人、召喚者など、諸々ひっくるめて人間。その子孫も人間と言われる。

自身ダンマスも初めは人族でしたが、この世界の人との間に生きていれば、人間に分類されていた可能性が微レ存。迷宮主になったことで、その可能性が消えたと思われる。


人間=邪魔物ケルドではない為、問答無用で殲滅はできない。

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