表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
191/334

179 人間(汚物)

①獣人さん、冷静に激おこ

②オロロロロロ

③人間?


「う~~~、気持ち悪い……口の中酸っぱい」

「大丈夫なの?」


そんな周囲の混乱など気にも留めず、世界樹さんがとことこと歩み寄ると、こちらの顔を覗き込みながら声を掛けてきた。うん、こっちはいつも通りですね。


「あぁ~…大丈夫。俺の能力? が、過剰反応しただけですから。クロスさんも落ち着きなさい」


他人を見ただけで吐いたのは、久しぶりだな~。成る程、あれが“人間”ね。世界樹さんが不快と言うのも頷けると言うものです。


「マイロードの能力…相手の感情が見えると言う奴ですな?」

「元の世界ではそう思っていましたけど、違うのかな~。何と言いましょうか、その人の本質? が見えると言いましょうか、今まで発した感情が積み重なって、染み付いた姿が見えると言いましょうか。とにかく……汚い人間は嫌いです」


いい人は、普通に見られるんですよ。不快な感覚もしませんし、その場で負の感情さえ向けられなければ、普通に接することくらいはできましたからね……長続きはしませんでしたが。

八方美人的な態度がイケなかったのでしょうかね~、かと言って、特定の相手を贔屓すると、他の方から嫌悪されますし、う~ん、ままならない。

そんなの全く気にしないって人も、世の中に居ない訳じゃ無いでしょうけど、俺には縁がありませんでしたからね~。


「それで、どうするなの?」


 過去の事は良いか、大事なのは今ですからね。で、どうするかですか……


「う~ん、人形で会いましょうか。そっちなら、多少なりとも軽減されますからね」


人形を通して感じ取ると、感覚が鈍くなるのか、ちょっと見難くなるんですよね。イメージ的にはサングラス越しに見る様な感じですかね。

……エディさんに直接会っていたら、本当に浄化されて昇天していたかもしれない。人形で行ってよかった。


「あ、でもちょっと休憩してからで…うっぷ」


行動再開は、昼からでいいかな~。


―――


駆除対象リスト…と言うものがある。これは以前、誘拐される形で出会ったショタ神様に貰ったもので、5000年前に下級神が襲撃してきた際に、この世界にばら撒かれた、この世界の魔物でない、言うなれば外来種の魔物が乗っているリストだ。

他の魔物と区別する為、このダンジョン内では特別に「駆除指定外来種」「邪神の眷属」「邪魔物」などと呼んでいます。


このリストに載っている魔物は、見つけ次第駆除することとなっている。この世界の管理者である、ショタ神様から直々の依頼? 命令? でもある。そうでなくても、このリストに載っている魔物は生理的に受け付けないものが殆どなので、絶滅させるのもやぶさかではい。


今までも、テテレテやドドレド、ベベレベ、スレッチ、ククルガルド、ペペルペルト…と、上げたら限が無いですね。まだ見ぬ魔物も多いですが、それは他の地域や大陸などで発生しているのでしょう。共通して、キモイのしか居ない。


で、なんで今になって、こんな事を言うかと言うと…


「あ゛ぁ? なんだテメェは。何で人間がここに居るんだよ」


この、人間(汚物)が問題になった為だ。

体調が戻った為、お昼に改めて会いに来たのだが、その頃には目が覚めていた。今回は人形越しの為、何とか見られますね。あ~臭い臭い。

ついでとばかりに同行した世界樹さんも、しかめっ面だ。


「そう言えば、どんな風に見えているなの?」

「そうですね~、腐肉と糞尿でできた体から、常に屁を撒き散らして「あ、うん、もういいなの」……そうですか?」


この感覚を、共有してもらいたかったのですがね~。世界樹さんも不快に思っていましたが、感じ方は違うようですね。


「よく、そんなモノの近くに居られるワン」


話しかけてきたのは、二足歩行する柴犬みたいな姿をした、妖精族の【クー・シー】さん。

この汚物の、世話係として配属された子ですね。もう一組の方は【ケット・シー】さんが見ている。


「はっはっは、俺が居た世界じゃ、それが日常でしたからね~」

「「「……」」」


この程度なら、どうともありませんとも、直接見た時は不意打ちで耐えられませんでしたが。人形越しなら、元の世界に居た人間レベルにまでは抑えられるみたいですしね。


「無視してんじゃねぇぞ! あぁ゛!?」


がしゃんと、檻を蹴りつけて威嚇して来る汚物。う~ん、随分と態度がデカいですね。自分の立場を分かっているのでしょうかね? もう片方のチームは大人しいと言うのに、ギャップが激しいですね~。


「クー・シーさん、起きてからずっとこんな感じですか?」

「ですワン。態度はデカい、話は聞かない、意味ある事を口にすれば罵倒に恫喝…手の施しようがないワン」

「「「うわぁ」」」


あっちは、昨日から大人しく“情報収集”に勤しんでいると言うのに……得られる情報の質も変わらないでしょうし、残すならあっちか。


「世界樹さんや、左から2,1,4,3番くらいで、不快じゃないですか?」

「なの、分かるなの!?」


見え方が、そんな感じで酷いですからね。俺の感じ方と、世界樹さんの不快感は同じと考えて良さそうかな? ならば俺としても、駆除するのもやぶさかではありませんね。


「取り敢えず、こいつらを解析してみますか。って事でコアさんや、一番酷くて煩いこれに対して“全力”で<鑑定>をお願いします」

「テメェ、いい加減にしねえとぶち殺す ~ 承知しました ~ ズォロロロロロ!!??」


うっわ、汚!? こいつ吐きやがった!


「な、何しやがった、テメェ」

「<鑑定>しただけですよ」


コアさんの全力の<鑑定>は、生き物が使う<鑑定LV10>なんて比では無い性能ですからね、相手が受ける反動も、半端ないのでしょう。情報過多だから、表示するデータは絞る必要が出るくらいですもん。受け入れて仕舞えば、反動も小さいのですがね~。

表示された<鑑定>結果を見る…………ふ~ん? これはこれは、面白い結果が出ましたね~~~。


「俺らはハンターだぞ! 俺らに手を出したら、ハンターが敵になるんだよ、少し頭を使えば分かるだろうが!」

「ただで済むとは思うなよ、ズタボロにして、道中引き回して晒し者にしてやる」

「よく見れば、顔も悪くねぇ。物好きな貴族の玩具になるかもな~」

「そのガキもだ、こんなバカと一緒に居るせいで…恨むならその無能を恨むんだな」

「へへ…高く売れるだろうな~」


話になりませんね、情報を引き出すのは、やっぱりもう片方で良いか。取り敢えずこいつ等は、バラした後処分で良さそうですね、解析係に用意をお願いしましょうか。

しかし、ハンターが敵にね~……。


「ゴトーさんや、聞いていましたか? これは本当ですか?」


そう問いかけると、他の場所でこちらの様子を伺っていたゴトーさんが、<神出鬼没>でこちらにやって来た。


「んな!? 何もんだ、てめぇ! 獣人か?」

「メル、有り得ませんな。この程度のゴミハンターが幾ら死のうと、あのハンターギルドは動きませんぞ。そもそも。独断専行した捨て石、戻ってこないことが前提の作戦でしょう」

「優秀なハンターが戻らないと、危険とみなされて奥まで来なくなるかもしれないし、雑魚だと捨て石扱いで、死ぬのが前提……う~ん、吊り上げるにはエサとして弱いか。残念」


取り敢えずサンプルが欲しいです。どんどん引き込んで、解析していきましょう。その為にも、エサは必要か、迷宮と魔道具辺りで良いかな?

わざわざこちらから出向く必要はありませんからね~。他にも領域を広げられる場所はありますし、そっちに広げながら、誘い込んでみましょうか。


「処分するなの?」

「ばらして解析してからですがね。あ、クー・シーさん、こいつ等を解体場まで運ぶ手続きをお願いします」

「分かりましたワン」


色々調べないといけないことが出てきましたからね~、どんどん引き込むつもりですし、つまみ食いするぐらいは許容しましょうか。


「調べる事? <鑑定>結果は、どんなのだったなの?」


あ、皆さんには見せていませんでしたね。コアさん、お願いします。


~ 了解。<鑑定>結果を表示します。 ~


名称:人間(ケルド、草人、森人、その他)

氏名:ガバ

分類:現体(物質:魔力=87:13)

種族:人族(カッターナ王国所属)

LV:28 (最大レベル37 進化適性無し)

HP:2821 /2821

SP:2859 /2859

MP:914 /914

筋力:1028

耐久:495

体力:1381

俊敏:628

器用:988

思考:988

魔力:410

スキル (残り容量/最大容量 90/150)

・肉体:ナシ

・技術:<身体操作LV2><見切りLV1><剣術LV4><解体術LV1><料理術LV1>

<動体感知LV1>

・技能:<身体強化LV4><連撃LV4><全力攻撃LV5>

称号:ナシ


人間

ケルド 75%

草人  12%

森人   3%

その他 小数点


【ケルド】

他生物を選ばず犯し、強制的に孕ませ繁殖する、邪神(名称不明)が解き放った魔物。

苗床となった生物は、出産と同時に食料となり死亡する。低確率で苗床にした生物に酷似した個体が生まれ、苗床となった存在の群れに紛れ積極的に種をばら撒く。上位種の命令と共に覚醒し、元の姿に変異する。その際、潜伏先の群れを壊滅させる。


「「「うっわ」」」


ちょ、コアさんや、リストに載っているからといって、わざわざ映像付きで見せてくれなくていいですから。


「き、気色悪いなの」


画面に表示されたのは、全身をぬめぬめドロドロした触手で覆われた、人の頭部の様な~…なんだ、うん、どう表現したら良いか分からない魔物が表示される。何これ、説明文と合わさって、生理的に受け付けないわ。


あぁもう、全く、誰だよこんな気色悪い魔物を持ち込んだのは、邪神だよ本当にありがとうございます死ね糞が。


「人間は、邪神が持ち込んだ魔物が、この世界の人族を無理やり孕ませて繁殖した、邪神の眷属って事ですね」


~ 了解、駆除対象リストに、人間(ケルド)を追加いたします ~


あ………………まぁいいか。元々、世界樹さんの復讐対象として殲滅する心算でしたし、その規模が国から世界に変わっただけの事ですね。

ケルド以外の人間も居ますよね? あぁもう、選別の仕事が増えた!


「これから、もっと捕まえるなの?」

「そうですね、サンプルは多いに越したことないですしね」

「なら、一、二体貰っても良いなの?」


……憂さ晴らしでしょうかね? まぁ世界樹さんから見たら、殺されかけた相手の同類な訳ですし、何も思わない訳無いですもんね。今も相当我慢していますし、ここらで発散できるなら構わないか。趣味趣向と実感をしっかり掴む、良い機会でしょう。


「そうですね、また捕まえればいいだけですし。良いですよ、好きなようにやっちゃってください」

「アヒャ♪」

「後悔が残らない様に、色々試すんですよ~。ついでに、解析の手伝いもお願いできますか?」

「ハ~イなの!」


ドナドナされる汚物と、ルンルン気分で後を付いて行く世界樹さん。うむ、気晴らしになると良いですね。

その間に、俺はもう片方と会っておきましょうか。あっちは大人しいですし、ケルドの割合が低いのかな?


暗黒微笑の世界樹さん。これを切っ掛けに、色々な遊びを覚えるかも?


そしてここに来て、迷宮主の参戦する正当な理由ができました。

人を人とも思わない迷宮主ですが、倫理観は日本人のそれです。人間社会で生きていく為に、その辺りはしっかりしています。

では、相手が人種でない、しかも外来種の害虫となれば……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ