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18 敵襲

①アルト(栽培じゃ~)

②蟲の王様

③コア「えねみー、せっきんちゅう~」


ベテルボロ・ラッチ


食べる、食べる、食べる、食べる、ひたすら食べる・・・。生まれてから今まで、ただただ食べ続けた。

それ以外のことを知らなかった。見たことがなかった。考えることもなく、考える理由もなかった。

ここでは飢えることがない。それだけでよかった。


もぞもぞ・・・


そんなある時、下から何かを感じた。それを何と表現することもなく、考えることもなく、彼はその気配へと向かって掘り進んだ。その先には小さな空間、そして・・・


(メシ!動くメシ!!)


周りの木を蹴散らし、本能の赴くままに“ソレ”に牙を向けた。今まで一度も狩りをしたことがなく、自分の体では狭すぎる空間。爪は壁にめり込み、牙は引っ掛かり軌道がそれる。


「ムキャァ~~~!!!」


それでも牙は“ソレ”に届いた。だが、一撃で屠れるはずだった攻撃は、“ソレ”に傷を付けるだけに止まった。

・・・彼の運命が決まった瞬間だった。


「ムキューーーー!!!」


攻撃された“ソレ”、ピュア・キャピターは、力の限り鳴き、全力で<糸>を吐き出した。


「!!??」


その糸は口を塞ぎ、牙を絡めとる。突然の反撃、予想だにしていない攻撃に混乱し、絡まる糸を振り解こうとする。爪で払い、酸を吐き出し溶かす。だが、その端から追加される糸糸糸糸・・・。


「~~~っ、~~~~!!」


自分より圧倒的に弱い、そんな存在に翻弄される。そんな状況に、彼は初めて苛立ちという感情を抱く。その苛立ちはすぐに殺意へと変わった。

殺す!エサだと思ったそれは、最早不快なものでしかなかった。無事な前足を振り上げ“ソレ”に振り下ろす


ギーン


が、彼の前足は“ソレ”に届く前に失速する。


「!?」


彼に目に映ったものは、大量の糸が絡まった無事だったはずの前足だった。そして、ようやく彼は気が付いた。壁が動いている。いや、壁一面に“ソレ”がひしめいていたのだ。


ゾク


それが何なのか、今まで安全な場所で生きてきた彼は分からなかった、理解する時間もなかった。

あたり一面から降り注ぐ糸。


糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸糸


「!!??、!!!????」

(ヤバイ・・・、ヤバイヤバイヤバイ!!!)


そして気づく。牙が、足が動かない。少し前までは絡まっていただけだったが、今は固まり、まるで動かない。そこで初めて、彼は危機感を覚えた。



ゆっくりと、ゆっくりと、削り取られるかのように動きが封じられる。

最早、まともに動くのは後ろの方の足だけになっていた。


恐怖。初めての感情に導かれるままに、彼は逃げ出した。

動かない体をあちこちに擦り付けながら、未だに動く後ろ側の足を出鱈目に動かし、元来た穴を駆け上がる・・・が。


「!?」


ぎちぎち、と何かが音を立てながら、動きが止まる。訳が分からないまま混乱する中、彼は目にする。自分の上空に浮かぶ何かを。

その何かは4本2対の足を動かし、こちらを向く。まるで見下すかの様な目線で、自分を見下ろしていた。

よく見ると、浮かんでいる様に見えたそれは、張り巡らされた極細の糸の上を移動していた。

そこで気が付く、自分はその極細の糸に阻まれていることに。本来の状態ならば力任せに引き千切れただろう、体が自由にならない今の状態ではそれすら叶わない。


「・・・・ヘッ」


空気が抜けるかのような鳴き声を上げる。明らかに馬鹿にする様な態度で。


「~~~!!」


恐怖によって薄れていた怒りが再び沸き上がった・・・と同時に


ザシュ!ザシュ!ザシュ!


と小気味よい音と共に、突然の浮遊感が彼を襲い、背から地面へ叩きつけられた。


「!?」


何が起きたか分からない。落ちた?なぜ?現に今も彼の爪は木の壁を掴んでいた。

その爪を見る、そこにはまるで鋭利な刃でくり抜いたかのような、壁だった木がへばり付いていた。


シャキン


その目線のさらに奥には、鋭利な爪をもった細長い体の何かが居た。鋭い爪と抉れた壁、そこで気が付く、落ちたのではない、落とされたのだと。

慌てて起き上がろうとするが、糸によって床と背中がくっ付いて仕舞っていた。さらにそこへ、無事だった後ろ側の足にも糸が降り注ぎ絡みつく。

動けない。体中を固められ、無防備な腹をさらけ出している。もはやまともに動くのは目位しか残っていなかった。

そこへ、新たな何かが近づき、固まった糸の部分を伝って、腹の上へ上がってきた。


「ギ・・・」


明らかな怒気を放ち、見下ろしてくる。そして、牙を大きく開き、叩きつけるように噛みついてきた。・・・が、その攻撃は体に薄い傷跡を付ける程度でしかなかった。

その後も、何度も何度も同じ場所を攻撃してくるも、体液が滲む程度にしかならなかった。


そうだ、こいつらは弱い!結局は自分にダメージを与えることは出来ないのだ。

安堵と共に冷静になる。ならば焦る必要はない、体から酸を出し、糸を溶かす。相手も無限に糸を出せる訳ではないのだ。拘束を解き、こいつらを皆殺しにする。


そこに、さらに何かが近づいてきた。それは噛みついてきているヤツの牙を小さくしたようなヤツだった。そいつらは、透明な何かを持ち、同じように上がってきた。

何をしても無駄だ。そう思い、拘束を解く事に集中する。

そいつらは、透明な何かを腹の上に置いて去っていった。結局何もできないと高を括る。・・・そのすぐ後だった。

何かが吸いだされる様な感覚に襲われる。どんどん吸われていき、段々と力が入らなくなる。最早拘束を解く処ではない。慌ててもがくも、何もできない。

意識が闇に沈んでいくさなか、ふと気が付く。周りの奴らが自分を見る目が、少し前まで自分が相手に向けていた、獲物を見る目と同じものだったことに。


世界樹の迷宮(仮)

LV:2

特性:植物

DP:6,748 DP(15 DP消費)スポナーによる生産に使用


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