176 感想
①くまさんの連続攻撃! しかし逸らされてしまった!
②勝者、ハンターチーム!
③逃がさねぇよ?
― ワイワイ・ガヤガヤ -
日が沈み、星が輝きだす時間帯。
ダンジョンの領域に侵入者が居なく成ったのを確認した後、集まった皆さんで、意見交換会と相成った訳ですが……
「大丈夫ですか?」
「いや…うむ。我々、この様なものが居る森に棲んでいたのか?」
「あ~、皆さんが住んでいる所は、【魔吸石】の量が多いので、あのレベルはチョット奥まで行かないと、会いませんね」
皆さんが居るところが、ダンジョン内で一番魔力濃度が薄いんですよね。
あの付近に、重点的に迷宮を設置しましたからね。周囲の魔力を吸って稼働して、入り口付近の魔力濃度を下げる関係で、【魔吸石】が設置されまくりましたから。
「なので、安心してください」
「うむ、チェットよ、気にするだけ無駄じゃ。ここはこうゆうところじゃ。そしてこ奴は、こうゆう奴じゃ」
「うむ」
「こうゆう奴って何ですか? そしてチェットさん、何で納得しているんですか?」
失礼しちゃいますね、もう。ま、いいや。落ち着いたなら、話を先に進めましょうか。
「さてと~、さてさて…皆さんの感想を聞かせいただけますか?」
「取り敢えず、あいつ等……何もできなかったね」
「でも、殴打熊には勝ってたよ?」
「搦手に弱い感じ?」
そう、そこなんですよね~。
搦手は、ハマると一方的になり易いですが、真正面から挑んでいくパワーファイタータイプには、初見で対処できていたんですよね。近いタイプの魔物を、経験していたのかもしれませんね。
「そこらへんどうなんですか? ゴトーさん」
「メルルル、お見事です。カッターナの周辺の魔物は、ロードがおっしゃった様に脳筋が殆どだったそうですよ」
あ~やっぱり? いくら何でも、警戒心が薄すぎると思ったんですよ。真正面から襲ってくる相手としか、戦った事が無かったんでしょうね~。
でも、練度自体はそんなに低くない気がするんですよね~。特に、殴打熊と遭遇したチーム。素人目ですが、あそこの盾使いのパリィは見事だと思うんですよ。
「確かに初見の相手、それも同格以上の攻撃を逸らせるのは、見事でしたわ」
「あ、ルナさんもそう思います?」
「ふむ…では我は、剣士の方を押しましょう。攻撃が通じないと分かるや、すぐに離れた潔さ、<火魔法>によってできた弱点へ真っ先に攻撃したその目敏さ、お見事でした」
おや、クロスさんからも思った以上の高評価をいただきました。蟻はよく訓練していますしね、他の子達より実感が有るのでしょう。
「あれが人の能力ですね。ステータスやスキルだけでなく、磨き抜かれた技術は、ポテンシャル以上の能力を発揮します」
「うむ、我等も一層の鍛錬に励みましょうぞ!」
「そんな事しなくても、僕なら全部の飲み込めるけどねー」
「ふむ…我は如何すればよいか…迷いますな」
フワフワさんやホロウさんの様な一点突破型には、確かに当てはまらないか。寧ろ小手先の技術を身に着けるより、特技を伸ばす方が良いパターンも有る…よね? 戦闘素人は、こういう時困る。
「……まぁ、フワフワさんみたいに、対処しようがない特殊能力や特化能力を、悪いとは言いませんけどね。その場合は、チームを組んで弱点をカバーできると、能力を生かしやすいでしょうね、彼等を見ていたら何となく想像できませんか?」
防御特化の盾持ちと、臨機応変に行動するサポート特化の剣士、魔法による火力特化に、弓による遠距離…どちらかと言うと索敵特化……かな?
それらが集まると、格上が相手でも相手取る事ができる、良い例になったでしょう。やっぱり、役割分担って大事ですね。
「殴打熊レベルが、他の侵入者が戦った魔物と戦えば、まぁ勝てるでしょうな」
「気狂い鳥の群れ何て、蹴散らされるもんね。幻覚とか<狂気化>使っちゃえば、ほぼ無効だし」
「相性の問題?」
「それも有るでしょうが、この場合は耐性の問題でしょうな」
<精神>耐性や<幻覚>耐性、各種<毒>に対する耐性を持って居れば、侵入者側の勝利者も出ていたかもしれない。それだけ、能力に対する耐性は、勝敗を左右する。
そして人は、その耐性を技術でカバーできます……状態異常に耐性を持たせる魔道具とか、有りますよね?
「うむ、あるぞ」
「熟練した者であれば、魔法で即座に対処できるであろうが、魔道具による無効化もあるのう。相手に合わせた装備で挑まれたら……まぁ、流石に勝てんのでは無かろうかのう」
この世界の住人である、鼠人さん達に話を振ってみると、当たり前とばかりに肯定し、エルフ爺さんが補足してくれた。
侵入者達と魔物のステータスは、そこまで変わらない。環境にあったスキルと装備……心構えの違いが、勝敗として出たのでしょう。
……特化しないと、生きていけない環境とも言えますけどね。まぁ、そこは弱肉強食って事で。万能型に成れれば言う事無いですが、大半は器用貧乏で終わりますからね~、そんなんじゃ生き残れませんわ。
「エレンさんはどうですか?」
「あ~…うん。一つ聞きたいのだけど…あれでダンジョンの表層、つまりは迷宮で言いうところの1階層レベルよね?」
「ん~? まぁそうなるんですかね?」
「いくら何でも、難易度高すぎない? それに、あの魔物って野生の魔物よね。襲われたら、危なくないの?」
それを聞いた皆さんは、顔を見合わせた後に……
「「「経験値じゃん」」」
「あ、食料にもなるね」
「素材にもなるよ」
「適当に痛めつければ、その内誰も襲ってこなくなるし」
「あ~、殺さなければ学習するのか。毎回皆殺しにしてたわ」
事もなげに言い放った。
うん、そうなる様に、野生として解き放ちましたけどね? 資源と食料回収の為に、育つ環境を目指しましたけどね? 地力強化の為に、経験値と戦闘経験を積めるように、狩猟はやり過ぎなければ、自由にしていますけどね?
……我ながら殺伐とした環境になっているな~。
「は…ははは、そりゃ強くなるわ」
「エレンさん達も、利用してかまいませんよ? 命の保証はしませんが」
「むぅ…ちょっと魅力的かも」
「体が治ってからにして下さいね?」
預かって置いて、死なせましたでは目覚めが悪すぎます。
しかし、何気にエレンさんって戦闘狂ですよね。シスタさんが、その辺り舵取りしてそうですけど。
「オッホン! それでは、お父様に纏めて頂きましょう」
「ちょ、ルナさん無茶ぶり!?」
前にもあった気がするぞ、このパターン! なに? みんな俺に無茶ぶりするのが趣味なんですか? そんな期待した目で提案しないでください!
……あ~、うん。分かりましたよ、だからそんな、集中しなくていいですから、リラックスして下さいな。
ざわつきが一瞬で消え失せるのって、何気に怖いですよね。その中心が自分となれば、尚の事です
「ん、ん! まぁ、この結果を見て最初に言いたいのは……人を舐めるな、ですかね?」
今回来たのは、前情報も持たないハンター。事前情報ありきで、特定の獲物を狩る事に特化した集団です。ある意味、この結果は当然のものでしょう。
ですが、もしこちらの情報が洩れれば、必ず相手は対処してきます。じわじわこちらの手札を暴き、削り、少しずつ、それこそ世代を重ねながら、こちらを暴き喰らう。それが文明を持つ人という存在です。
「情報を得た人を舐めてはいけません。必ず対処して来ます。同じ個体であろうとも、装備が一新すれば別人です。そして一度得た情報はすぐに拡散し、抹消することはまず無理でしょう。それこそ、相手側が隠蔽するかしないとね」
根絶やしするなら別ですけどね、そうなれば全面戦争待ったなしです。そんな面倒な事する気も無いです、楽しくありません。
世界樹さんへの娯楽として、人ほど多種多様な存在も居ないでしょう。ゴドウィンさんを見て、他者に興味を持つようになりましたし、人は絶対受けると思うんですよ。
……不快に感じるものが何なのかとか、不安要素もありますけどね。そこら辺は、ゆっくり解決していきましょう。サンプルは今まさにこっちに来ていますしね。
「では、外に居る者達は如何致しましょうか? 放置ですかな?」
「う~ん、ずっと監視しているのも面倒ですけど、挑んで来るなら、観察を続けるのもありですかね? 向こうの対処方法を見られるのもそうですが、ラインさえ越えて来なければ、こちらに被害は無いですし。娯楽にはぴったりかと」
外周は、言って仕舞えば素材や経験値の生産所ですからね、あの程度削られたところで、痛手にはならない。そもそも、こっちの方が食っているくらいですし、精々どんな戦い方をするか、観察させていただきましょう。見るのも修行です。
「承知いたしました」
「メルルル、それでは私めは、情報収集に戻りましょう」
「あ、国の情報はカッターナを中心に、小まめにお願いします。動きが有れば報告を」
ゴトーさんは、今までと同じく情報収集に勤しんでもらいましょう。
しかし、はぁ……このままだと、人を舐めかねませんね、少し頑張ってもらいたい所である……皆さんが、本物の化け物に遭遇する前にね。




