表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/334

171 わんわんお!

①いらっしゃ~い

②単独行動は死亡フラグ(集団を含む)

③観戦、観戦♪

「おいおい、大丈夫なのかよ」

「なにビビってんだよ、どうせ出て来てもラッチ程度だろうし、そうでなくても、森の魔物なんて、どうとでもなるだろ」

「そうだけどよぅ、ギルドから何言われるか、わかんねじゃん」

「結果出せばいいんだよ、お前は黙って付いてこい」


 ダンジョンの中に入った事に全く気が付いていない一行は、通い慣れた道を進む様に、自然体で森の中に足を踏み入れる。


「なんも居ねぇな」

「有るのはでけぇ木だけか」

「ま、燃料には最適だろうよ」


 ペシペシと木の幹を叩きながら、雑談に興じる一行。木の根が張り巡らされた不安定な足場を、苦にせず進む姿は流石と言えなくはないが、警戒心が無いのは如何なものか。


「雑草ばっかだな、薬草の姿が見当たらねぇ」

「なんの草だこれ?」

「知るか、それよりも魔物だ、護衛だけじゃ大した稼ぎにならねぇんだから、しっかり呼び込め」

「へいへい、しっかしこんだけ音立ててんだから、そろそろ何匹か来ても良い頃なんだがな」

「そもそも、ギルドもケチだよな。あんな金額じゃ、飲み代にしかならねぇぜ」

「その分、この依頼期間中は飯出るけどな。他は碌な依頼も無いし」


 どうやら、音をたてていたのはわざとだったらしい。彼等の狙いは魔物の素材であり、ギルドから支払われる低い報酬を、少しでも補おうとした結果の独断先行だったようだ。他の場所でも同じような愚痴をこぼしているグループが居る為、間違いないだろう。


「しかたねぇな。もう少し奥まで行ってみるか、そうすれば、獲物もばらけるだろうよ」

「他の連中に取られても、面白くないしな!」


 魔物の数だって限られる、同時に同じ場所から入れば、尚の事である。

 彼等が先に入ったのも、素材を確実に手に入れる為、他のチームに横槍を入れられトラブルになる事や、そもそも横取りをされないようにする為であった。

 カッターナのハンターにとっての一番の敵は、魔物でも自然でも無く、同業者のハンターなのは彼等の常識である。


 勘の鋭いものや、引き際を弁えている一部の者達は、この時点で引き返していた。

 そうでない者達は、奥へ奥へと進んでいく。


 森の外に居る者達の視界から完全に消え、気配も木々の騒めきによって掻き消える。距離を離し行動している、他のグループからも同様である。


 つまり彼等が望んだ、横槍が入らない状態が完成したこととなる。それはハンターだけでなく、魔物側にも言える事であった。


 ― ガサガサ -


「お?」

「ようやく来たか」

「この感じは…中型だな、ぺプリオンか?」

「うっしゃ、今晩の飯が豪華になるな!」


 進行方向の茂みが揺れ、枝葉が擦れ合う。

 今までの経験から、彼等は近づいてくる魔物の正体を予測する。今まで散々狩って来た魔物、相手の行動も弱点も、完全に把握している。故に、余裕な態度を崩さない。


 既に倒した後の事を考えている一同だが、彼等は理解していなかった。


 此処が、今まで彼らが狩り場としていた森と、全く違う事を。

 今まで彼等が戦って来た魔物と、根本的に違う事を。

 本能のままに食らいついてくる、単調な存在でないことを。


「……んぁ? 出て来ねぇな。勘違いだったか? …………おい、何で黙っ」


 先頭に立っていた者が、返答が無い事を不審に思い振り返る。


 そんな彼の視界に入るのは、全身を真っ黒な毛で覆われた、見たことも無い四足歩行の魔物と、喉元にその鋭い牙を突き立てられ、地面へと引きずり倒された仲間の姿。


「なにをじギョッ!?」


 驚愕と共に口から飛び出た言葉も、途中から意味のない音へと変わり果て、背後から気配を消し近づいて来た何者かによって、仲間と同様に引きずり倒される。


 喉を潰され、気道を塞がれ、呼吸ができず血の流れも止まる。


 混乱する頭とは異なり、体は反射的に動き出す。必死に視線を動かすと、視界の端に僅かに黒い影が映る。

 その陰に対して、持っていた剣を突き立てようと、腕を動かそうとするも、爪だろうか、硬い何かが腕の肉に食い込み、上から押さえつけられたように動きを封じられる。

 ならばと、もう一方の腕を腰に携えた短刀に伸ばすも、木の影から何かが急速に迫って来たかと思うと、彼の腕に激痛が走った。

 鋭利で硬質な何かが腕の肉に突き刺さり、腕を引き千切らんばかりに、無茶苦茶に振り回されられる。

 激痛の為か、腕の機能が失われた為か、持っていた短刀を、最後の希望を手放してしまう。


「~~~! ~~~! ~~~~~~!!」


 両腕を塞がれ、身動きが取れない。声も出せず、呼吸もできない。

 彼が最後に見たものは、痛みと苦しみと、絶望に濁り染まった瞳をした、赤紫色に変色した仲間の顔と、そんな仲間の頭に前足を乗せ、地面へと固定する様押し付ける真っ黒な魔物が、


 ゴキッ


 首を捻り、その首をへし折った瞬間だった。


「「「へへへ、ワッフゥ!」」」


 ―――


「よっわなの」

「こいつ等、警戒心無さすぎんだろ」

名称:上級影狼(シャドー・ハイウルグ)

氏名:

分類:現体

種族:獣族

LV:1~25

HP:300 ~1500

SP:300 ~1500

MP:170 ~1400

筋力:110 ~610 D

耐久:130 ~740 D+

体力:130 ~740 D+

俊敏:130 ~740 D+

器用:100 ~480 D-

思考:85 ~430 E+

魔力:75 ~675 D+(職業特性:3ランクアップ)

適応率:10

変異率:10

スキル

・肉体:<爪><牙><毛皮><影潜り>

・技術:<身体操作><見切り><急所突き><隠密><跳躍><疾走><気配感知>

<闇魔法><団結>

・技能:<身体強化><連撃><全力攻撃><集中><高速移動><威圧>


(ウルグ)順当進化種(ハイウルグ)

常に集団で行動し、5~10体ほどの群れをつくる。その数は、統率するリーダーの能力に左右される。

待ち伏せや囮を使っての奇襲、数の利を生かして囲んで<威圧>し消耗を狙うなど、正面から戦う事は稀。

特に(シャドー)は魔法への親和性と隠密性が高い為、奇襲による急所への一撃必殺がメインになる。

夜になるとその特性をさらに生かし、影に紛れながの奇襲だけでなく、一撃で仕留められないと判断した場合、夜通しヒット&アウェイを繰返して消耗を狙い、相手が疲弊するまで何日も執拗に追いかける。

対処できないのであれば、彼等が追って来ない範囲まで逃げ出すことを推奨する。その先に、何が居るかまでは保証できないが。


更に上位種に進化すると、群れを持ったリーダー格すら配下に加える為、その規模が爆発的に増加する。その為、群れを倒すことができたならば、すぐさまその場を離れた方が良い。もしその群れが、どこかの上位種の配下に入っていた場合、苛烈な報復が待って居る事だろう。それ程に、彼等は仲間思いなのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ