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157 竜王とダンマス①(ごちゃごちゃ)

①死にかけエレンさん

②おっきな魔道具

③竜王とダンマス。最悪な顔合わせ

「はい、口開けて~」

「…んあ……うふぇらら!?」


 どぼどぼと、瓶から薬を口内に流しながら、【倉庫】から取り出した丸薬と飲み薬を、どんどん放り込む。口内に腕を突っ込んでいるので、口を閉じる事ができずもがいているが、体と存在が大きいから薬の量が多くなるのは、仕方がないのです。


 ― ゴックン ―


 素直に飲み込んでくれるでところを見るに、警戒はしていないのでしょうけど、先ほどの薬を見た時の警戒は、何だったんでしょね?


 エレンさんの恨めしそうな視線を適当に受け流し、今度は止血効果のある塗り薬を、腕の傷口に塗って行く。これ以上、肉体に負担を掛けたくありませんし、体力が落ちている今、流血状態は避けたいですからね。腕を治すのは、体力が回復してからです。


 ……本当は相当染みるはずなんですが、エレンさんの様子を見るに、我慢している様には見られない。

 う~ん、エレンさんが我慢強いからでは無く、痛覚が馬鹿になっているんでしょうね。それも有って、自身の状態を把握できていないのでしょう。本当に、死ぬ一歩手前なんですがね~。


 ― ドドドドドド、ド! ―


(((とうちゃくー)))


 通路から現れ、目の前に整列する一団。

 機動力と治療能力に優れた、第一衛生兵(メディック)部隊が到着した。


 種族に拘らず、優れた能力を持った者のみで構成されている、所謂エリート。回復能力は当然として、粘液(スライム)等の足の遅い種族は、運搬(ポーター)係が運ぶことでその機動力を確保している。魔道具や薬も同様に運んでいる為、動く病院と言っても過言ではない。


 そんな中、一体の(アルト)が前に出て来た。


「第一衛生兵(メディック)部隊、只今到着いたしました!」


 ビシッ! と見事な敬礼をしながら、到着の報告をする(アルト)。クロスさんの教育が、こんな所にまで垣間見えますね。どちらかと言うと、クロスさんがではなく、(アルト)種だからと言った方が合っていそうですけど。


 ……だから竜王様や、そんな感心した様な視線を向けないで下さい。この子達の性格なのです、性質なのです、性癖なのです、家はそんな厳しい環境じゃ無いのです。うちの子と、そちらの竜族を交互に見比べないであげて下さい。すっごい肩身が狭そうです。


「お勤めご苦労様です。早速お願いします」

「「「ハ!」」」


 今回は時間が無い為頼りましたが、本来はダンジョン外での活動を想定した部隊、物資が潤沢なダンジョン内では、そのポテンシャルを遺憾なく発揮してくれることでしょう。


 さて、俺がエレンさんにできる事はここまで、後は皆さんに任せれば問題ないでしょう。

 竜王様の方へと向き直ると、お互いの視線が交差する。さてと、本来の役目に戻りましょうかね~。


「改めまして、ようこそおいで下さいました。俺がこのダンジョンの迷宮主、ダンマスとでもお呼び下さい。此度の訪問を歓迎いたします」

「はは、ではこちらも改めて、私が竜王、エゼルディアだ。突然の訪問だったが、歓迎感謝するよ……その歓迎に泥を塗って仕舞ったがね」


 威風堂々と名乗りを上げる、竜王ことエゼルディアさん。最後の方が、申し訳なさそうでいたけど。


 嫌味に感じないのは、態度と立場、それに彼自身の心持にズレが無いからでしょうね。取り敢えず、あのトカゲモドキが口走った様な、敵対の意思は無いですね。寧ろちょっと気まずそうではありますが。


「これはどうも。あぁ、席も用意せず申し訳ありません。何分、人型で訪れるとは想定していなかったもので、屋外ですが、このままこの場所でよろしいですか?」

「あはは! 確かに竜が来ると言われて、人が座る席を用意はしないか。気にする必要はないさ。場所も問題ない、中々良い眺めだしね」


 お許しも出ましたし、取り敢えず二人分の椅子を、【倉庫】から取り出す。

 確か同じ型の、そこそこ豪華な椅子が在った筈。コアさん、【倉庫】から椅子を検索して下さい。


 ~ 了解、検索結果を表示致します ~


 え~と…ん?


【魔王の玉座】new

【天空の玉座】new


【倉庫】の項目の一番上に、見慣れない名前の椅子? が二つ……一番上と言う事は、最も新しく【倉庫】に入れられた事を表す。

 項目だけで、どんな見た目なのか分からないのですが……成る程、成る程。このタイミングと言う事は、つまりこれを使えと言いたいのですね? 


(((どきどき・わくわく!)))


<念話>が漏れていますよ、皆さん……使わないと、いじけるんでしょうね~、言葉にならないアピールが凄い。そしてプルさん、そこまで中継しなくても良いですから。

 ……仕方がない、変な物だったら謝ろう。意を決し二つの椅子…玉座をこの場に並べて設置する。


 現れたのは、黒を基調に所々に金と赤で装飾された、闇と炎を模したであろう玉座。

 もう一方は、白を基調に水の流れの様な流線型をした、水と雲を模したであろう玉座。


 どちらも匠の技が光る、見事な一品と言えるでしょう! ……自分が座るのでは無ければね!?

 竜王様なら、立場的にも見た目的にも映えるでしょうが、俺が座ると、場違い感が半端ないですよ、何この罰ゲーム!?


「「「おぉ!」」」

「ほう、見事なものだ」


 この手の物が好きなのか、一部の竜族が感嘆の声を上げ、竜王様は指で【天空の玉座】を撫でる。触り心地を確かめている様だ。そして、こちらに視線を向ける竜王様。その目は、座らないのか? と言っていた。


 あぁもう、座りますよ! 座れば良いのでしょう!? 用意した俺が座らないと、竜王様も座われませんもんね!

 反対側に設置した【魔王の玉座】に腰を下ろす…あ、この椅子、硬くも無く柔らかすぎず、凄い座り心地良い。


「「ふぅ…」」


 ようやく一息付けた。想定外のトラブルが起き過ぎなのですよ。竜王様は色んな意味でめちゃくちゃだし、エレンさんは死にかけだし、トカゲモドキが暴れているし、何よりも、職人(オタク)共が無駄に凝るし、何ですか全く、服装何て失礼じゃない程度でいいではないですか! しかも、選んでくる服が完全に趣味なんですもん。何ですか、魔王装備一式とか。俺をどうしたいのか……もしかして、この玉座とセットなのでしょうか? まぁ、着ませんけどね!


 そんなこんな色々有って遅れたし、余計に疲れた。


「遅れて仕舞って申し訳ありません。なにぶん、正式に客人を迎えるのは、これが初めてなもので、何か問題は起こっていませんか?」

「取り敢えず、目の前で起こっているね」


 ― ガリリリリ ―


 目の前の障壁に、何度も爪を突き立て引っ掻く、トカゲモドキが居た。


「あれは何でしょうか?」

「……一応、私達の仲間だったんだが…何を思ってか、突然勝手な行動を起してね」


 ふーん、元の場所では、それなりに大人しかったのでしょうかね? それがここに来て、本性を現したと? 何か暴れる条件でも、揃ったのでしょうかね?


「それで…早速で悪いが、話す前に頼みたい事がある」

「なんでしょうか?」

「あいつ等を、出して貰えないかい?」

「……あのトカゲモドキをですか?」

「ト…トカゲモドキ」

「…ブプ!!」

「おい、わ…笑うな…~~~」


 周りの竜族から、笑い声が聞こえてくる。どうやらあのトカゲモドキは、余り好かれていなかったようですね。

 言った本人が言うのもあれですが、本来なら多少不快に思うところも、対象がアレではね~。日頃の行いが出たのでしょう。


「あ~~~、うん。あれはそのままでいい、他の者達だけ出せないかい?」

「まぁ、障壁を解除するなり、通路を開放するなりすればできますが、あれも出て来て仕舞いますしね~、そちらで抑えられませんか?」

「あれでも、実力だけ見ればこちらのNo2でね、抑えきれるか判断に困る」


 へぇ、あれで…ですか。竜族の実力低下は、本当に深刻のようですね。竜王様のレベルと比べると、良く分かります。てか、竜王様が強すぎるんですよ。


「貴方でも難しいので?」

「恥ずかしい事に、この姿は本体では無くてね、戦闘はからっきしなのさ」


 コンコンと、玉座に立て掛けられた銀色の鱗を叩く竜王様。


「それに、この触媒が壊されれば、今の私は消えて仕舞う。弱点が剥き出しなのさ」

「それで弱いとか……本体が、その依り代を操作しているので?」

「いや、流石に距離が有るからね、記憶と人格を移した、分身みたいなものさ」


 本人では無く、簡単に壊すことができる触媒で作った分身であり、自身(ゴドバルト)は竜族の中で、竜王を除いて最も強い……ふむ


「つまり、触媒となっている鱗を破壊し、他の方の口を塞げば、情報が伝わる事は無いという事ですね? 何があったと問われれば、ダンジョンのせいにして仕舞えば、問題ありませんし」

「「「!?」」」

「あぁ……あいつが行動を起したのは、その為か」


 竜王様が、ごみを見る様な目でトカゲモドキの方を見る。呆れかえって言葉も無いと言った感じでしょうか。


「ふん、我を捕らえられるとも思わんがな」

「セスティアさんは、お速いですからね……だからこそ、ダンジョンと意図的に敵対し、そのどさくさに紛れて、厄介な奴を潰そうとしたのかもしれません。周りを巻き込んでこちらと敵対する様に、誘導しようとしていた様ですし」

「むぅ…」

「さらに言えば、竜王様の本体まで魔物を引き付けて、竜王様を排除しようとかも考えていたりしそうですね。例えば、本体をこちらに寄こして、共倒れを狙ったり?」


 周りから、「うわぁ」と言った感じの声が聞こえてくる。

 それは、俺の考え方に対してなのか、トカゲモドキの行動の可能性に対してなのか。心までは読めませんからね~、どっちか分がんね。悪い方向で無い事を祈りましょう。


「そんな事、よく思いつくね?」

「まぁ、人ですから」


 こんなことを考えるのは、人位のものでしょうしね~。

 はぁ…これだから人は面倒なんですよね、自分がそうだから、余計にそう感じますよ。

迷宮主のメモ帳:スキル、<~術>(武術)系


重心移動などの体捌きに、適応した武具への魔力の浸透率や変換率に補正を掛けるスキル。

武器種は作成者の意識によって決定する。(見た目が大剣でも、巨人族用に作成した短剣ならば、<短剣術>が適応される)


下位<武術>:戦闘行為に当たる行動に修正を掛ける。(使用武器や行為によって、下記スキルを重複して習得可能)

<大剣術><剣術><短剣術><槍術><棍術><槌術><斧術><鞭術><弓術><盾術><体術><捕縛術><投擲術>等々


中位<上位~術>


上位:<超位~術>


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 勝手に格上に対して自爆特攻してその責任を他グループのボスになすりつけて逆ギレをして、そのボス直々に治療してもらったのにも関わらず感謝が全く見えない龍ってやばくないですか?そもそも龍王は…
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