表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
155/334

145 強さ談義

①仲間専用エリア

②地下連絡通路

③魂の叫び


「「ひゅー、ひゅー、ひゅー」」

「漸く限界が来ましたわね、ポテンシャルだけは無駄に高いですわ」

「限……界?」

「あら、まだ言葉を発する余裕がありました? もう少しやります?」

「無…………理」

「くすくす、冗談ですわよ。休憩も立派な訓練ですわ。限界とは(魔石)…魂の限界の事ですわ。肉体は魔力で回復できますが、そのエネルギーを生み出す核には限界がありますからね。それを鍛えるのが、ポテンシャルを伸ばす近道ですわ」


 魔力切れとは違い、本当の意味で限界を迎えた二体の尾を掴み、ずるずると引きずりながら移動する。ぞんざいな扱いだが、文句を言う気力も残って居なかった。


「時間は……間に合いそうですわね」


誰も居なかった連絡通路から外れ脇道に入り暫くすると、チラホラと他の魔物の姿が見られるようになる。その数は進むごとに多くなり、軽い挨拶と共に同じ方向へと進んでいく。


「お、ルナじゃ~ん……何その死にかけ?」

「あら、クロカゲ様、ご機嫌麗しゅう。これは新しく入った仲間ですわ」

「お~、仲間認定されるのなんて、久しぶりじゃねぇ?」

「初期の頃は、定期的に入ってきていましたからね~」

「最近は、妙な考えの奴が居るからな~、しかもバレてないとか思ってる節があるし」

「お父様がその辺りを見極められないはずないと言うのに……」

「いやいや、あれは色々とおかしいから」


そんな他愛のない会話をしながら進むと、程なくして開けた場所へと到達する。そこには大小様々な魔物が、何かを待っているかのように、思い思いの時間を過ごしていた。


「間に合ったか~?」

「おせぇよクロカゲ! って、ルナも一緒か。こんな時間に到着とは珍しいな」

「思いの外これが粘りましたわ」


 ぐったりした二体をほっぽりだし、クロカゲと共に話しかけてきたグループへと入って行く。それと入れ違いで、白いモフモフとした塊が飛来し、ゴドウィンの上に着地する。


「ん? ビャクヤー、キョクヤ居たよー」

「ワフゥ? 本当だ、え~~~と~~~……ゴドウィンも居るね。何処行ってたの?」

「ルナが連れて来たっぽい」

「助けて……」


 白い塊(モフモフ)に続いて現れたビャクヤだが、今にも燃え尽きそうな姿を見ても別段慌てることも無く、自然体で歩み寄り話しかけて来る。ルナと一緒だったと言うだけで、大体の事情を察した為である。


「しごかれてたっぽい? 薬使う?」

「この後はー、動く予定も無いですしー、自然回復で良いですわよー」

「だって~」

「せめて、水……を……」

「はいは~い」


鼻先を腹の下に潜りこませ、掬い上げる様に器用に背に乗せると、近くの壁まで歩み寄る。その壁には円盤状の出っ張りがあり、それを前足で推すと、隣の穴から液体が流れ出し、床の窪みに溜まって行く。


「ハイどうぞ」

「うんぐ、うんぐ……プハァ!! ありがとう、人心地着いたわ」

「これ押すと出るから、飲みたかったら押してね、よいしょっと」


 ついでとばかりに、手足をずるずる引きずりながらゴドウィンも運ぶビャクヤに、お礼を言いながらも周囲を見渡す。球体の真上から円柱を突き刺した様な形の空間、壁面にはいくつもの横穴や、それらを繋ぐ橋やテラスが縦横無尽に広がっていた。

見た限りだけで、それこそビャクヤクラスの化け物がウジャウジャ確認できたのだ、実力が違い過ぎて相手の力を正確に把握できないが、自身が浮いているのは確かだった。


「ここ何処なの? 場違い感が半端ないんだけど……」

(ここは、【世界樹の迷宮】中央エリア・地下一、二、三階層連結型・大広間だよ~)

「主も居ないし、いい機会だから、これから仲間内だけで集会を開くんだ」

「集会?」

「ぶっは!?」


ビャクヤによって、同様に水飲み場まで運ばれ、溺れない様に背中に乗せた状態のまま、頭から水をかぶったゴドウィンも覚醒する。因みにスイッチは尾で押したらしい。


「あ、生き返った」

「し、死ぬかと思った」

「ね! もう少し手加減して欲しかったわ!」


 死ぬかと思う程の鍛錬を積まされたのだから、怒りがこみ上げるのも仕方がない事だろう。ふんすふんすと怒りを露わにするキョクヤの頭の上に、モフモフが華麗に飛び乗り、落ち着かせるように声を掛ける。


「まぁまぁ。ルナも悪気は無かったと思うよ、テンションは上がっていたかもしれないけど」

(でなきゃ、こんな時間まで面倒見たりしないもんね~)

「え、もしかして私達、才能有るの?」

「多分ね」


 プルプルとモフモフの思いがけない発言に気分を良くしたのか、尾がフサフサと揺れ動く。ゴドウィンの方は、それ程興味が無いらしい。あろうが無かろうが、やるしか無いのだからと、意志の籠った瞳をさせながらぶっ倒れていた。


「ここに居るのって全員<幹部(ボス)>なの?」

「違うのも居るよ。ここに居るのは、御主人が仲間と認めた個体しか入れないけど、それ以外の制限は特にないから」

(生産特化の子とか、戦闘以外に特化した子も多いから、舐めて掛かるとひどい目に合うよ?)

「う、気を付けるわ」

「俺も質問良いだろうか。ここに居る以外にも、<幹部>は居るのか?」


 意識は覚醒したが、真面に動けないゴドウィンが、ぶっ倒れた体勢のまま声を掛ける。


「居るよ? 流石に全員一か所に集まる訳にもいかないし、屋外で活動していて、迷宮内に入らない子も多いし」

「皆強いのか?」

「う~ん、相性とかもあるから、何とも言えないけど……僕と同じぐらいって思っとけばいいんじゃないかな?」

「ビャクヤと同レベルが複数……」

「因みに、ビャクヤ殿は、全体で言えばどれ位の位置に居るのだ?」

「モフモフ、どれくらいかな?」

「う~~~~~~~~ん? 多分……真ん中辺り? ビャクヤって万能型寄りの遊撃タイプでしょ? 真正面きっての戦闘となると、それ位じゃない?」


 絶句。特に、戦った事のあるキョクヤの衝撃は、ゴドウィンの比では無かった。


「ち……因みにトップは?」

「一対一なら、ルナだね」

(あの子は色々とおかしいから~)

「あの、僕もその話、参加して良いですか!?」

「あ、俺も俺も」


そんな話をしていると、周りの者達も興味を持ったのか、ワイワイと会話に参加して来る。その様子を見て更に他の子も集まり、ここだけ一気に密度が上昇する。


そして、強さ談義が加速する。


「先ずはあれだ、<幹部(ボス)>と<眷属>は分けて考えるか?」

「初期メンバーでも、<幹部>じゃない方は居るからな」

「実力だけ考えるなら、考慮しなくていいんじゃねぇ?」

「だな。真正面から戦ったら、フサフサ様がやっぱりバランス良いんじゃねえか?」

「それ言ったら、ビャクヤ様とそこまで変わらないんじゃない?」

「おい馬鹿、ビャクヤ様と比較するな。食い殺されるぞ」

「あの方戦闘狂なうえ、プライド高いですからね~。ビャクヤ様に負けた事を引きずっていそうですね」

「じゃぁ、フサフサ様の<幹部>であるモフモフ様は?」

「僕を戦闘能力にカウントしないでよ!?」

「だ、そうだけど?」

「それなら同じく、セフィ(植物族)様も除外ですね」

「ゴトー様も無しだな……なしだよな? 実は滅茶苦茶強いとか無いよな?」

「じゃぁ、今どこにいるか分からない、精霊族のシンラとバンショウも除外で良いか」

「良く分かんないもんね~」

「あ~~~じゃぁ、テラ様! あの方は強いよ!」

「強いと言うか、デカいだな。タフだけど他の方に比べたら、流石に見劣りする気がする」

「戦闘要員でなくて、環境管理担当だしね~」

「<幹部>で防御力トップといいたら、モコモコ様一択だろ!」

「いやいや、防御と言ったらマダラ様は外せないね。あの方耐性ガン積みで、攻撃も状態異常も通る気がしない!」

「でも、マダラ様は、環境管理、担当、だろ? カウントして、良いもん、なのか?」

「移動力がネックだよな~、あの方本当に足遅いから……」

「機動力と言えば、ゲッコー様だよな」

「「「あぁ、あの変態軌道」」」

「あれどうなってんだろうな。トップスピードから急停止したかと思ったら、次の瞬間には同じ速度で走ってんだぜ?」

「俺なんて、180度。慣性無視して真逆に急旋回して走ってるとこ見たぞ」

「あれに攻撃当てるとか、範囲攻撃以外方法あるか?」

「それも、到着する前に範囲外に逃げ出しそうだけどな~」

「範囲攻撃か……そうなると、フワフワ様の<変形>と<異界>のコンボが凶悪過ぎるだろ」

「あれね~、<異界>の中に取り込まれると、ほぼ詰みだもんな」

「おれ、あの中で10日近く彷徨ったことあるけど、出口なし休みなし、足を止めると察知不可の魔法攻撃が、諦めるまで延々と飛んでくるんだ~、ははは」

「「「うわぁ」」」

「しかも雲に擬態してるから、掴まったことに気が付かないんだよね~」

「あの世界樹様を覆ってる雲ね、確かあれって、フワフワ様の眷属の浮遊樹と霧貝が張ってるんだっけ?」

テンテン(浮遊樹)様とトバリ(霧貝)様ですね。風と水の魔法とか、結界とか色々使ってるらしいですが……」

「テンテン様が雲に根を張って、そこにトバリ様が住んでるんだっけ?」

「あの方たちは、環境管理担当だから、それよりもその中を泳いでいるナガレ様はどう?」

「ナガレ様か~、あの方も環境管理担当じゃないかしら。魔力の循環が仕事でしょう?」

「一度進行方向に出て仕舞って吹っ飛ばされたことあるが、管理担当の威力では無かったぞ?」

「空に行ける奴にしか分かんねーよ」

「地獄なのは理解した」

「止まり木としては、かなり居心地良いのよ?」

「空中なら……ホロウ様は? 暗殺、奇襲って点なら、トップじゃないかと思うんだけど」

「あの方が本当にすごいのは、その忍耐力だよ。あの方、獲物を決めたら何日でも追いかけて、延々と奇襲を仕掛けるから」

「でも、正面切っての戦闘となると……微妙になるかな~」

「気が付かれると、短期決戦には向かないよね」

「……ホロウ様の眷属って居たっけ?」

「確か、魚族のマリン様と軟体族のヒラヒラ様でしたっけ?」

「普段表に出てくる方では無いからな。知らなくても仕方が無いだろう」

「何してんの?」

「マリン様は、世界樹様の真下に存在している地底湖エリアで、真下からの奇襲を警戒している探知特化。ヒラヒラ様はその護衛と、何かやっているとは聞いたことあるが、そこまでは知らん」

「ちょっと視点を変えて見ないか? 例えば群れで考えるなら、やっぱりクロス様とアリス様が率いる、虫族部隊だろ」

「眷属のコクガ様率いる騎士団とか、クロカゲ様の魔法部隊とか、同時に動いたらどうしたらいいの? ってなるよね」

「そこにミツルギ様とかカブト様とか、他にも幹部や眷属じゃ無いけど、配下が加わるんだろ?」

(バタリー)はヤバイ」

「いやいや、一番やばいのは、アンコ様率いる隠密班だろ」

「「「あ」」」

「気が付いたら急所に爪突き付けられているんだぜ? 生きた心地しねぇよ!!」

「うん、涙拭けよ」

「群れならプル様じゃ無いの?」

「「「プル様はカウント外だろ」」」

「あの方をカウントするとか、いろんな基準がぶっ壊れるわい!!」

「……スライムと言えば、貴方の仲間を要所要所で見掛けるけど、地上で会ったプル様と色が違うし、貴方はその方の眷属なの? お、プルプルして病みつきなりそうな見事な触り心地ね」(ツンツン)

「「「!!!???」」」

「うわぁ……」(ひそひそ)

「マジか、あの新入り……」(ひそひそ)

「あいつ死んだんじゃねぇか?」(ひそひそ)

「え? 何? 私、何かやらかした?」

「あ~~~…キョクヤさんでしたね。その方々はプル様でございますよ」

「え…………まじ? んん? 方々?」

「因みに、プル様はこの迷宮の<幹部>で言えば最古参ですわ。お父様とお母様の次に偉い方ですから、失礼のない様になさい。でなければ、(わたくし)が直接手を下しますわよ?」

「え゛?」

(よろしくね~)

「ひ、ひゃい!」


 会話だけ書くの、凄い楽だ(笑)

 次の話も動きが無いので、いっその事会話だけにしようかと……たまにはそんな回があっても良いですよね!(びくびく)


 取り合えず、登場予定の魔物の名前は一体を除き全部出しました。多分これ以上、【世界樹の迷宮】に名前付きの魔物は出ないと思います。

 それぞれ能力を生かせる場面を作りたいですねぇ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ