138 コアさんの成長
①説教
②和解完了
③神様のお手伝い
「あ、そうだ、魔物と言えば、うちの子達の進化先に細工しました?」
「ん? 何のこと?」
「初めの頃、うちの子達が進化する時、何かに引っ張られるような感じが有ったみたいなんですよ。その他にも、都合が良い場面が結構ありましたし、コアさんが“否定”ではなく“回答不能”と答えるものですから、てっきりコアさんの上司、神様か何かの干渉かな~と」
「う~ん、干渉するのは今回が初めてだね。ダンジョンコアにもそんな機能は無かったはずだよ? 進化は周りの環境によるものだから」
では何なんでしょうね? クロスさん達蟻の事の他に、プルさん達粘液族の【破毒】や【世界樹の樹液】の事もありますし……改めて聞いてみるか。
「コアさん、魔物の進化先に干渉しましたか?」
~ 回答不能 ~
「ショタ神様、神様権限」
「うん、応えて」
~ 回答不能 ~
「「あれ?」」
神様権限でもダメなので?
「えぇ、そんなはずないよ、さっきみたいに特別な状況でなければ、このコードで全部通るはずだもん。ちょっと中身、履歴とか確認していい?」
「コアさんが許可するなら」
「なら問題な ~否定~ えぇ!?」
相手が神様であろうとも、関係なく否定するコアさん。そこに痺れる、憧れる~
「えぇい、こうなったら実力行使 ~ セクハラです ~ 何で!?」
「そりゃ、中身を無理やり見ようとしたら、セクハラ通り越して、痴漢でしょう」
~ 肯定 ~
「いや、いやいやいや! 普通ダンジョンコアに、感情は無いからね? このコアおかしいからね、絶対自我 ~ 否定 ~ 持ってる、絶対持ってるよ! 機能の<人格化>付けたでしょ!」
「それが付けていないんですよね~」
初めの頃に会った僅かな機械っぽさが、少しずつ抜けていると言いましょうか、人間っぽく成っていると言いましょうか。レベルが上がって、柔軟になってきているもんだと思っていましたが……
「む~~~、逆に、君の事を見ても良い?」
「別に構いませんが、それで分かることがありますか?」
「魂の繋がりから、何かが分かるかもしれないからね」
成る程、ならお願いしましょうか。ついでに、俺の事も少しは分かるかもしれませんしね。
「え~~~と……え?」
「どうしました?」
「なんか、すっごい複雑に絡みついているんだけど。それも、君の魂すら見えない、有り得ないレベルで」
「はい?」
俺では大まかに、何かが繋がっていることが感覚的に分かる程度で、その強弱とかは分からないですが、ショタ神様にはそれが、ハッキリ見えているご様子。
魂の繋がりは、イメージ的には根っこですかね? 魂から根が伸び、他の魂の絡みつくように引っ付くように繋がる。この際、相手、受け取る側の存在が小さいと、その全てを包まれ、他の契約を受け付けなくなってしまうらしい。
今の俺の状態がそれなのかな? ……あれ? ショタ神との<使徒>契約、大丈夫?
「契約の方は大丈夫だよ、それは称号を経由したもので、直接魂に干渉するモノだからね」
魂の繋がりが有線だとすると、称号は無線による通信ってところでしょうか。とにかく無駄にならなくてよかったです。
しかし、魂の繋がりが関係しているって事は、原因として考えられるのは……名付け?
「え、ダンジョンコアに名付けたの? 契約がその役目を果たしているから、そんな事できない筈だけど」
「そうなんですか? 因みに契約とは?」
「えっと、ダンジョンマスター権限とか、言語とかの情報統合とか諸々だね」
「情報統合……」
「……何をした」
「……名付けたのって、多分その…契約の合間ですね」
順番としては……
ダンジョンマスターの権限を取得して(多分普通は、この時点で気絶して全部終わり)
【魂の部屋】で、世界樹さんの愚痴を聞いて、(この辺りから魂の契約開始)
コアさんに会って状況説明を受けて、
“コアさんに名付けして”
情報統合を急ぐために強制スリープモード(契約完了)
……うん、契約途中ですね。
「【魂の間】で名付けたの!? 【魂の間】なんて、魂剥き出し状態だよ、そんな状態で二重契約だなんて」
「その反応からすると、契約途中故にコアさんに対しての名付けが成立し、かつ【魂の間】だったせいで、魂の繋がりが通常以上に密接なものになったと」
「しかも、魂の繋がりを持つもの同士は、少なからず影響を与えるから……」
「俺の影響をもろに受けていると?」
「中身を見られないから、予想の域を出ないけど…たぶんね」
うん、これはやっちまった感じですかね?
……害は無さそうですし、良いか。
「軽い! 軽すぎる!」
「別に繋がっていても害は無いでしょう? これ以上、誰かの契約を受けるつもりも無いですし」
それよりも、今はコアさんの方が重要です。
「つまりは、俺の影響を多大に受けたコアさんが、自力で人格習得に至ったと?」
~ 否定、ダンジョンに意思、人格は有りません ~
「それは、通常の場合でしょう? それに、<人格化>なんて機能も有るんですから、ダンジョンコアが人格を持つこと自体は、可能なのでしょう? ただ、機能で追加されるか、自力でその領域に至るかの違いでしょう?」
~ 回答不能 ~
「……その回答不能は、自分でも分かっていないってこと?」
~ …………回答不能、必要な情報が不足しています ~
「あ、それっぽいですね」
「何この、中途半端な感じは」
「自分でも分かっていないんでしょうね、このまま時間が経てば、自分でも分かる様になると思いますよ? 焦らず、のんびりやって行きましょうね、コアさん」
~ ……了解 ~
「でもそうなると、コアさんが回答不応と答えた干渉は、何に成るんだって話に戻るんですけど……何故、回答不能なんですか?」
~ ……進化先の啓示に際し、特定の可能性を示唆。理由不明。回答不能。誤作動の可能性あり、検査を申請します ~
「あぁ、まぁ、問題ないと思いますよ? それが人格を、感情を持つって事ですから。最初に質問した時、回答不能としか答えなかったのは、芽生えた自分を消したくなかったからではないですか?」
~ 回答不能 ~
「まぁ、そうでしょうね。感情何てそんなもんです、自分ですら自身の感情など分からないのだから」
これが、俺以外の外敵からの影響なら対処しなければいけませんが、まぁ、まず無いでしょうね。神様の干渉にすら反応対処できるのは、先ほどのやり取りで証明済み。ならば、気にする必要は無いでしょう、悪い変化でも無いですしね。
「焦る必要はありませんよ、人格を持つものは、感情に突き動かされて不条理な行動だってとります、要は折り合いと使い方です。それでもおかしい、要らないと思うのであれば、改めて言って下さい。できる限りの対応をしますよ…ショタ神様が」
「僕!?」
「魂関係なら、ショタ神様の方が上でしょう? 何なら、今回の<使徒>化の報酬って事で」
「ウグ!? ……仕方が無いな~もう」
~ ……肯定、結果が出次第、申請いたします ~
うんうん、これで不安要素は大分減りましたね。今後は、コアさんの成長も見ていきましょうかね~。
―――
「もう行くのかい?」
「流石にずっと此処に居る訳にも行きませんしね。そろそろ帰りますよ」
聞きたい事、話さなければならない事は大体済んだので、元の世界、ダンジョンにある自分の体に戻る。
称号<使徒>のお陰で、後に何かあったとしても、会話位なら出来なくはないとの事なので、何かあっても問題なし。気兼ねなく元の生活に戻れます。
「何かあったら、頼っても良いですよ。身内に害が及ばない範囲で御手伝いします」
「ははは、やっぱり身内が一番なんだね……分かった、そうならない様に善処するよ」
そう言うと、ショタ神様が片手を上げる。
「またね」
「はい、またいつか」
視界が暗転し、何かに引っ張られるかのような感覚を覚える。この感覚に身を委ねれば、元の体に戻れるのでしょう。俺はそのまま、意識を手放した。
―――
「ん~~~~~~……よく寝た?」
なんだか寝た気がしませんね~。実際、夢の中? 【魂の間】の中で話しっぱなしでしたしね、仕方がありませんか。
「主!?」
「主様!?」
「ぱぱ~!?」
「「「主様が起きたーーーーー!!」」」
「え!? ちょ!? まっべふ!!??」
ナニナニナニ!? 待って、痛い、重い、潰れる、死ぬ~~~! 助けて、いや、本当に誰か助けて!?
「バカやろーーーー、何処行ってたなの~~~、うわ~~~~ん!!」
「ヘップゥ!?」
視界が遮られて、何も見えませんが、恐らく世界樹さんでしょう。加減無しのタックルを受けて、内臓がせり上がり、血の気が引く。あぁ、ボディに衝撃受けると、本当に気絶ってするんだね……ガク
「なの? なの~~~!!??」
ショタ神様
迷宮主が暮らしている世界の管理者。神様の世界の立場で言えば、平社員を通り越して、研修員クラスの神様。人員不足で、比較的被害の少なかった世界の管理を任される。アドバイスを求めた相手がクズのせいで、迷宮主の怒りを買う。
「取り敢えず・・・あの野郎の顔面に、一発ぶち込む」byショタ神様




