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132 神様、ストップを掛ける

①お話中断

②迷宮主拉致られる

③迷宮主はおかしい?

「思いついたとしても、それをできるかは別なんだよ、例えばね―――」


 あ、それって長くなります? 残してきた子達が気になるんですけど。


「ん? あぁ、大丈夫だよ。ここは僕が作った空間だからね。ここでどれだけ時間が経とうが、向こうでは誤差みたいなものだよ。だけど、此処に呼ぶまでに結構手間がかるんだ。向こうに戻ったときは数日経過しているとは思うけど」


 ここで急いだとしても、戻れる時間は変わらないって事ですね。なら、のんびり行きましょうか。折角神様とお話しできるんですから、色々聞きたいですしね~、ふふふ。


 ……なんでそんなに引いているんですか。俺が聞きたいこと位、もうすでに知っていると思っていましたけど、違うんですかね?

 先ほどから、俺ほとんど口きいてないですし、人の心を読めるものだとばかり。


「それかい? 読んでいるわけでは無いよ。ここは魂の世界、肉体が無いから、慣れないと自身の思考を周囲に垂れ流す事になるんだよ」


 なるほど、なるほど。ここでは頭で考えると、話しているのと同じような物なんですね。例えるなら、常時<念話>状態ですか。


 う~む、頭で考文章を考えるのでは無くて、感情や本能的な部分で考え事をすれば、外に漏れないのかな?


 ………………だから

 こんな感じで…………、

 子供みた…………、

 ………………、

 ショ…………

 ………

 ……






 こんな感じですかね?


「なんで、一発でできる様になるかな!? 僕ができる様になるのに、何世紀掛かったと思うのさ! てか、子供って言ったね!? ショって何? ショタって言おうとした!? あぁ、あぁ、そうだよ! 他の神格から見たら、僕なんて生まれたての子供だよ!」

「何故かこう言った事、昔から得意なんですよね。それと、見た目や年齢はどうしようもないですって」


 だから、そんなにむくれないで下さいよ~。ほらほら、クッキーでもどうぞ。


「また、子供扱いし…それ、何処から出したの?」

「え? 創りましたけど?」

「どうやって?」

「ここって【魂の部屋】、つまり魔力の代わりに(DP)で満ちた空間でしょう? なら、【生産】と同じで、DPを物質化する感覚でイメージしたらできましたよ?」


 今の自分の体も、同じように作れましたしね。疑わなければ、そこまで難しい事ではないでしょう?


 現実世界では、コアさんクラスでなければ、本物にすることはできないでしょうけど、イメージを固める位は俺にもできます。魔法の応用みたいなものですね。違いは、扱うのが魔力か(DP)か位です。


「……もういい。君が異常なのは、よ~く分かった」

「そんなに変ですかね?」

「言っておくと、それ、魔法の奥義みたいなものだからね?」


 そうなのですか。でも悲しいかな、俺はコアさんを通じなければ、魔法を一切使えないのです。


「心底、君が魔法を使えなくて良かったと思うよ。君が本気で魔法を使うと、やり方次第で、世界そのものに影響が出かねないからね」


 それ程ですか、自分の意外な才能が明らかになりましたね。使えたとしても、そんなことしませんがね。神様を敵にしたくないですし。


 取り敢えず、俺の事は後で良いでしょう、話を戻しましょうか。


 立っぱなしもあれですね。先ずは、場を整えましょうか。

 椅子と机を創って~、お茶請けも創って~、お茶は~……最高級、世界樹の葉の緑茶で良いかな?

 後は、この何もない空間も寂しいですね~。適当に石レンガの地面を作って、柱と天井も創って~、外に風景も作って~……こんなもんかな?


(ひと)の空間を、勝手に弄るな~~~!?」

「ダメでした? 創っても何も言ってこないので、大丈夫なものとばかり……元に戻します?」

「……いや、もうこのままでいいよ。とっとと再開しよう」


 溜息をつきながら席に座る、ショタ神様。

 なんで、ちょっと悔しそうなん? 泣きそうなん? 突っ込んだらまた拗ねそうですね。止めておきましょう。

 お互い椅子に座り、お茶請けボリボリ。お茶をズズズ。うん、美味い。


「ふぅ……簡単に言えば、君が作った術式検査技術は、オーバーテクノロジーなんだよ」


 ショタ神様が話し始める。オーバーテクノロジーですか、簡単に出来ましたけどね~。


「それは、ダンジョンの能力を使ったからだよ。魔抗石は脆く、とてもじゃ無いけど、今の人類の技術じゃ加工できないんだ。そもそも、魔抗石は希少物質だし、あれ程の大きさのものは、天然ではまず無いしね」


 あぁ、成る程。アイディアがあっても、それを実現できる技術が無いのか。


「あの検査機までたどり着くには、技術革命が後2~3回位起きないと無理だろうね。魔抗石の採掘技術、次に加工技術、最後に魔抗石自体を作る生産技術。最低でもここまで行かないと、話にならない」


 あれだ、人工ダイヤモンドみたいなもんか。その生産と加工段階を、コアさんがやってくれた訳ですね。難しいのは分かりました。しかし、その技術が流出するのが、何故ダメなんでしょうか?


「魔道具の生産は、君のいた世界で言うと、電子顕微鏡で原子の構造を確認して、更にその構造を操作(原子操作)できるレベルの技術になるんだよ」


 ……あれ? 【生産】で魔道具を作ることができるので、あまり気にしていなかったのですが。それって、かなり高度な技術じゃないですか?


「そうだよ? やり方と術式の組み合わせ次第で、世界を巻き込んで自爆、何てことも有り得るね。科学と違って、魔力は意思に反応するから、神の領域に踏み入ろうとして暴走。そのまま文明リセットとか、ざらだよ?」


 でもそれなら、検査技術だけ知られないようにすれば良いのでは? 魔道具もダメなんでしょうか?

 そもそも、作る技術が無ければ、知れ渡っても直接的な被害は無いでしょうし、検査機が作れるまでに技術が発展すれば、勝手に辿り着くでしょう?


「そこまで発展する前に、自爆する可能性が一番高いんだよ。君たちが作った魔道具は、術式がそのまま見えるだろう? 簡単に模倣できてしまうんだ。そこから式を抜き取って、適当に組み合わせて発動、なんてことになったら危険でね」


 こっちは検査機から効果を見つけていますから、式の効果を理解していますけど、魔道具から式を抜き出すと、その効果は発動させないと分からない。


「普通なら、途中で式の体を成していないものが入って不発か、負荷が発生して式全体が崩れるけど、全部意味のある式だとそれが起きにくくてね。効果はともかく、発動まで行ってしまうんだ。そこに、意思の影響が出ると、途端に暴走の可能性が出てくるのさ」


 それは、うん、危険ですね。式の組み合わせの中に、自爆コードが紛れているようなもんですか。

 うちの職人たちが作った物は、無駄を極限まで削ることも目指しているから、式はまる解り、それを解析して式を知ったら、発動の可能性が一気に上がると。


 でも、そんなに頻繁に発生するのかな? とも思いましたが、天文学的確率の様で、まずは有り得ないとのこと。ですが、神様の感覚からしたら頻繁に起きている感覚らしく、可能なら潰しておきたいのだとか。


 神格にとって、人の一生は、俺たちにとっての微生物の一生の様な感覚なのでしょう。

 シャーレに菌を培養していたら、幾つか全滅していたみたいな。国と世界では、見ている規模が違いますね。


「なので、その技術と魔道具は封印。いいね?」

「了解です。ですが、そうなるとダンジョンで作れる魔道具は、大丈夫なのですか?」

「そっちは、暗号化されているから問題ないよ。その暗号が解析できるなら、扱えるレベルと言っても良いしね……そこから無茶して、大体の文明が崩壊するんだけど」


 へ~、そう、成る程。暗号化されているんですか。


「そうですか、なら安心ですね! でも、せっかく作った道具が日の目を見ないのは、悲しいですね。うちの職人たちも、やる事が無くなりますし、どうしたものか……」

「それ位なら、融通するよ? 元々ダンジョンにある機能だしね、暗号化処置できるように、項目に追加しておくね」

「本当ですか? いやー、流石は神様、太っ腹ですね!」


 こんな機会、今後有るかも分からないですからね。他にも、注意事項が無いか聞いておきましょう。気が付いてないだけで、危ない事とかしているかもしれないですしね。


 もしあったら、神様にも申し訳ない事になる。ここで粗方確認してもらいましょう。何かあってからは遅いですからね。きっと解決策や、機能を授けてくれることでしょう。なんせ、世界の存亡が掛かっているんですから! この程度の可能性でも止めに入る神様なら、分かってくれることでしょう、うん……ふふふ。


 ……おっと、喜びの余り思考が漏れて仕舞ったかな?


「クッ! これだから、下界の住人は……上位世界でも変わらない」


 ……上位世界……ねぇ。どうやらこのショタ神様は、つい最近見つけたと言っておきながら、俺の境遇を既に知っているみたいですね~。


魔道具の術式暗号化


ダンジョンから産出された魔道具は他と区別し迷宮具と呼ばれる。その特徴は、施されている術式が難解且つ解読不能、何処までが術式かわからない物を言う。

正確には、ダンジョンの【生産】機能に自動的に施される、暗号化処理を受けた魔道具のことを指す。


上から何重にも術式を書き込んだかのようなものや、常に術式の形が流動し、把握できない物。

ブラックボックスの様に、開封不能。又は開封と共に喪失するモノなど、暗号化の内容は様々。


迷宮主は、一度も【生産】で魔道具を作った事が無かった為、その存在に気が付いていませんでした。


「だって、高いんだもん」by迷宮主



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