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128 獣人さん、こんにちは

①獣人さん、ご到着~

②世界樹の女神様 (ドヤァ)

③モフモコフワ豪華三点セット!!

 リリーさんの話の裏取りをしても良いのですが、それよりも先に聞いておきたいことが有りますね。


「なんだ?」

(今後の予定を伺いたいです。いつまでここに居て、どこに向かっていたのですか?)

「いつまで居るかは未定だ。目的地はエスタール帝国になる」


 エスタール帝国ですか。ゴトーさんが活動拠点にしている、貿易都市エンバーがある国ですね。

 あそこは生活水準も高いですし、人種差別も無い。逃げ込み先としては、良いのではないでしょか?


 ただ、獣人全てを受け入れられるかとなると、怪しいですね~。

 今も、森が消えたせいで、仕事が無い人への斡旋や配給で、慌ただしいみたいですし……期待薄でしょうか?


「……だが、俺達にはもう、そこ以外に頼る場所がない。少しでも受け入れて貰えれば、それで良し。ダメならば、南のカッターナへ流れる」

(……そもそも、そこまでの移動手段は有るのですか?)

「……徒歩だが?」

(食料や水は?)

「道中の森で集めれば、何とかなる。今までもそうしてきた」


 あぁ、これは知らない様ですね。


「……森が…無い?」

(皆さんの先ほどの移動速度で、昼夜休まず進んで大体4~5日ほどの距離ですね。団体で移動となると、それ以上。肉体、精神、食料その他諸々、持ちますか?)

「……」


 う~ん、隠し玉でも無ければ、無理そうですね~……仕方がない、もう少し情報を出してみますか。


(森が続いているのは、南のカッターナ王国と、北の竜の谷でしょうか、ここは丁度その中心地点辺りになります)

「北にも無いのか……」


 そう言えば、北と南で分かれていたんでしたっけ。

 ……竜の谷に辿り着いたら、その後はそうするつもりだったのでしょうか?


「あぁ、その後は西への遠征を諦め、東の森に留まるか、一か八かに掛けて西に進む予定だった」


 選択肢が無いのは分かりますが、完全に賭けですね。外敵の襲撃なら抗う事はできますが、食料はどうしようもない。


 竜の谷に向かうのは、選択肢に無いらしい。

 エレンさんみたいな竜族が相手なら、交渉の余地位なら有りそうなもんですが、彼等のイメージでは、ドラゴンと言ったらトカゲモドキ共らしい……うん、あいつ等に近づくとか、無いな。


(直接、カッターナへは行かないのですか?)

「カッターナは中立の連合国らしいのだが、エスタール帝国から見て反対側には、人間至上主義の神聖教を国教とするイラ王国がある。それも有って、イラの人が多く、我々獣人の行方不明が頻発する場所でもあるらしい」


 おぅ、人攫いの溜まり場ですか。

 中立って事は、双方の国にとっての、緩衝地帯の役割も有りそうですね。面倒くさそうなところだな~。黙認とか賄賂とか、蔓延してそう……偏見ですかね?

 まぁ、対応をしていない、又はできていないだけでも、行く気にはならないでしょうね。

 結局、選択肢はエスタール帝国しかなかったのか。


「なぁなぁ、ダンマス」

(ん? 何ですかリリーさん?)

「ここに住んじゃダメか?」

「お前は!? 何を言(いいですよ)てぇ!?」

「え……マジ?」


 リリーさんの問いに応えたら、何故か驚かれた。自分から聞いておいて、その反応は何ですか、まったく。


(あ、でも、贔屓も庇護もしませんよ? 他の魔物と同じです。無茶苦茶な事をしなければ、こちらから必要以上に干渉もしません)


 野生の魔物と同じで、森を焼き払ったり、根こそぎ掻っ攫ったりとか、無茶苦茶な事さえしなければご自由にどうぞ、である。

 ……そんなことをやれば、森の魔物が明確に敵対化するともいう。無事では済まないでしょうね。


「……我々が住み着くと、人間が此処に襲撃する可能性がある。これ以上、迷惑を掛ける訳にはいかない」


 あらまぁ、律儀。でもそれだと、こちらにも理が無いのですよ。それに、折角助けた意味も無くなってしまう。


(ちなみに、人間がダンジョンを見つけたら、どんな行動を起すか分かりますか?)

「……奴らは、ダンジョンを資源としか見ていない。襲撃、虐奪と言ったところか」

(なら、皆さんが居ようが居まいが変わらないのでは?)

「そ…そうだな」


 まぁ、世界樹さんに対する対応を見れば、そんな気はしますよね~。


 ……おっと、位置的にほぼ確定でしょうけど、まだ証拠が無かったですね、危ない危ない。

 これからの事を考えると、勘違いでしたでは済まされないですからね。慎重に行きましょう。


「水に食料、材木に素材……ここに住めると言うのなら、是非も無い。だが、今の俺達は何もない」

(気にしないでください……は無理でしょうね。なら、条件を付けましょう)

「……言ってくれ」


 緊張した面持ちで、こちらの提案に耳を傾けるチェットさん。周りの方も、静かに聞き耳を立てている。そんなに強張る程の内容では、無いんですがね~。


(“継続的な情報の提供”、これをお願いします)

「……そんなので、良いのか?」


 信用の置ける、生の情報。これ程価値のあるものはない。

 しかも、ここに住むと言うのであれば、このダンジョンの崩壊が仲間の命に直結することになる。偽の情報を意図的に流したりもしないでしょう。何よりも、人種との繋がりを持てるのが大きい。


「それは……問題ない。他に有るか?」

(あるにはありますが、そちらの要望次第ですかね? 何かあるのであれば、その対価として、こちらも要求しましょう。無茶な事は言いませんから、ご安心を)

「むぅ……」


 衣食住が揃いましたからね、今までの状況を考えれば、咄嗟には要求は出ませんか。

 かと言って、どちらか一方に恩が傾くと、碌な事にならない。お金も、恩義も、貸し借り無しが一番あと腐れないですからね。借金、ダメ絶対。


 しっかし、こんなに簡単に信用していいんですかね~。いや、いろいろしましたけどね? リリーさんを保護しましたし、症状を聞いて薬も提供したし、送迎もした。だとしても、何か企みが有るとか思わないのでしょうか?

 そこら辺を、それとな~く、リリーさんに聞いてみる。


「ん? そんなことしなくても、簡単に殺せるだろ?」


 あぁ、まぁ……できるでしょうね。ここまで来るまでに、獣人さん方の大体のステータスは把握しましたし、スキルもチートクラスでなければ、対応策は組めることでしょう。

 何よりも、ビャクヤさんを見て撤退を決断していました。つまり、戦闘面では既に諦めているか、避ける方針で間違いない。強いですもんね、ビャクヤさん。


「それに、私が散々ダンマスの事、良い奴だって話したからな! 薬も効果あったし……って、あれ本当にすごいな! 皆びっくりしてたぞ!? ……そんで、ばあちゃんにめっちゃ怒られた」(キュ~ン)

(あぁ、御婆様は元気になりましたか)

「うん! あそこにいるぞ」


 獣人達が集まっている所に居る、犬人の(多分)若い女性を指す。ここに居るって事は、結構な地位の方でしょうか?

 ……御婆様では無かったのですか? はきはきとして、見た感じとても若々しく見えるのですが。


「あの薬を飲んだら、ああなった! 若返りの薬とか本当に有るんだな!」

(原液で飲ませましたね!?)


 配合表はどうしたんですか、ただ希釈するだけでしょうに!


「信用できないものを飲ませる訳にはいかないから、死にかけの自分で証明するってさ」

(だからって、原液を飲む事無いでしょうに……)

「原液の効果が、一番分かりやすいし凄いから、証明には打って付けって言ってた」


 あぁ~まぁ、確かに。薄めると、疲労回復や治療薬程度まで、効果が落ちますしね。

 それでは、そこら辺の薬とほとんど変わらない。だったら、騙すことが難しい、原液の効果で確認したほうが確実って訳ですか。

 もし希釈して、回復薬として仲間内で使用した場合、そこに遅効性の毒でも含まれていたとしたら終わりですしね。これなら、被害者は一人ですむ。


「こんなすごいものを、ポンっと渡すぐらい凄いんだから、今更私達程度、眼中に無いんじゃ無いかって」


 これで、騙すようならすぐに逃げ出すし、もし本当に、そんな霊薬を出せるなら、騙すまでも無いだろうって事らしい。

 それこそ、獣人方全員を殺したとしても、世間ではその霊薬の方が、価値が高いんだとか。一般的な価値観から言うと、国宝級の品らしい。


 ……それ、在庫がそれこそ池程有るんです。普通に、栄養ドリンク感覚で、皆さん飲んでいるんです。


 やばい、外との価値観がズレまくっている。これは、早々に修正しませんと。いつか、取り返しのつかないミスをしかねないですね。


 因みに、リリーさんの御婆さんは、現犬人の族長でした。リリーさん、トップの孫かよ。


迷宮主、情報源とDP源をゲット! 冷静に振舞っていますが、内心は結構テンションが上がって居たり……

そして、漸く周辺諸国の情報もゲット!

エンバ―でも集めていましたが、流石に森と山と人間至上主義国を挟んだ反対側の情報は、容易に収取できなかったので、これには迷宮主もニッコリ。

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