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121 トリマー

①考察考察~。

②ダンジョンと迷宮主ダンジョンマスターの関係が明らかに!?

③これぞ、迷宮主の奥義!

 脇に設置した隠し通路を通り、犬っ子獣人を小脇に抱え、地下の風呂場まで落ちてきた。


「おぉーーー……すげぇ」


 犬っ子獣人が感銘の声を上げる。

 ふふん、そうだろう、そうだろう。美しさと機能美を併せ持つ、皆さんと一緒に考えた自慢の施設ですからね。恐怖心すら薄れる、芸術的なできでしょう! 


「服も洗っときますから、脱いだ脱いだ」

「え゛?」


 今までの感動はとこに行ったのか、一気に怯えた出す犬ッ子獣人。一体俺が何を言ったと。


「わ、わたし、こ、子供だよ?」

「知っていますよ?」

「胸だって小さいよ?」

「見りゃ分かりますよ?」

「お、お父さんとお母さんが言ってた、そういう事は、大人にな―――」

「はいはい、寝言をほざく位眠いなら、これで目を覚ましましょうね~」

「ワッフゥ!? キャイン!?」

「キャー!? 水イヤー!?」


 柱に取り付けたコックを捻ると、水がシャワーの如く降り注ぐ。ふふふ、この風呂も、地味に進化を続けているのですよ。

 真っ平だった天井は、アーチを垂直に交差させた、半球にくり抜いた様な形状になり、天井で結露した液体を柱に誘導する形状になっている。

 その水を溜めて、配管等を調整、シャワーとして利用している。意外と好評らしく、利用者も多いらしい。


 今回は不評の様ですがね、どうやら水浴びは御嫌いなご様子。そしてビャクヤさん、貴方もですか……。


「目が覚めましたか? だったらさっさと脱ぐ。子供に欲情する趣味も、溜まってもいないわい。そもそも貴方、女だったんですね」

「えぇ、そこから!?」

「初めて獣人に会いましたからね、見分けが付かないんですよ」


 仕方が無いじゃないですか、全身体毛に覆われて、顔だって犬面なんですもの。体型だって真っ平ですし、性別何て、俺じゃ見分けが付きませんって。


 渋々と言った感じで脱ぎだす犬っ子獣人、改め犬っ娘獣人。

「私だって」とか、「これでも」とか、ぶつぶつ言っているが、気にせず観察する。

 襲われたのは間違いなさそうですね。元気そうだったけど、意外と深い引っ掻き傷やら噛み傷が、体のあちこちにみられる。


「ぬ、脱いだよ!」

「あいあい、取り敢えず、その汚れ洗い流しちゃいましょう、ほい」

「キャー、また水~~~!?」

「傷に汚れが詰まったまま治すと、体の中に残る可能性が出てきますからね、そろそろ諦めなさい。顔は避けてあげますから」


 傷の方は薬湯に浸かれば治るでしょうし、俺はこの子の毛並みを整えることに、全力を尽くしましょう。

 石鹸よーし、トリートメント用の(オイル)よーし。磨くぜ~、磨き上げるぜ~。


 ―――


 わしゃわしゃわしゃ……


「あ~~~、そこそこ~~~」


 泡塗れで、羊の様になった犬っ娘獣人の体中を洗う。

 ふむ、体の構造は殆ど人と同じかな? 専門家では無いので細部までは分かりませんが、違うのは体が体毛で覆われているのと、手足に肉球が付いている程度っと。

 あ、あと頭が犬ね。その割には表情とか結構豊かだから、表情筋とかの構造も違いそうですね。

 耳の後ろもわしゃわしゃ。そして、水だばー。排水は専用の穴が有るので、そちらに流れる。湯舟と洗い場は、ちゃんと分けていますとも。

 粗方洗い終わったので、傷に効く薬湯に移動。


「ふへ~~~……」


 うん、今日も良い湯加減です。俺は夜に入るので、今は足だけで。


「ビャクヤさんも入ったらどうです? 足とか、結構汚れているでしょ?」

「う~~~」

「気持ちいーよ?」


 犬っ娘獣人も大分慣れたのか、すらすら言葉も出る様になった。

 最初は、ビャクヤさんに怯え切って金縛り状態になっていたと言うのに、襲ってこないと分かったからか、今では普通に話しかけますからね。子供の適応能力は凄い。


 ビャクヤさんは、未だに濡れるのがお嫌いのご様子。食わず嫌いならぬ試し嫌いじゃ無ければ、一度試してみればいいのに。雨で濡れるのとは別物ですよ?


「ふむ……せっかく、ビャクヤさん用の大型ブラシ、用意したのに……」

「ワッフゥ!? 入る~~~!」


 うん、チョロいわ。後で犬ッ娘獣人共々、盛大に梳いてやりましょう。


 さてさて、そろそろ話を聞きましょうかね? 

 先ほどは、洗うのに熱中しすぎて、話を聞くのを失念していましたし、その前は警戒しっぱなしというか、やけくそ感が半端なかったですからね。仕方がない、うん!


「そろそろ、お話しできますか?」

「うん!」

「まずはお名前から」

「リリーだよ」


 ほうほう、リリーさんですか。


「リリーさんは、何であんなところに居たんですか?」

「えっとね~―――」


 子供の話すことな為、何度も脱線するが、その内容だって立派な情報である。獣人の生活も伺えますし、本人も楽しそうに話すので、聞く方も精神的に楽です。聞き返したことにも、はっきり答えてくれますしね。


 狩りをしたり、親の手伝いで料理したり

 時々、他の集落を巡っている人、多分商人ポジションでしょうね、その人と物々交換で、野菜とか薬、道具なんかを交換して貰ったり

 同年代の子と遊んだり……


 そんな穏やかな日常の中、突然ケガをした大人たちが、沢山運ばれてきたらしい。

 何故ケガをしていたとか、規模とかは知りませんでしたけど、その後に直ぐに荷物をまとめて、移動を開始したのだとか。


 相当急いでいたんでしょうね、狩りやら採取やらで、食料や道具を集め、一か月近くサバイバルしながら移動していたらしい、完全に強行軍ですわ。

 二十日間位を東から西へ移動し、森が途切れたら南に移動。そして、ここに辿り着いたと。南下する時に、幾つかのグループに分かれたみたいですけど、大丈夫ですかね?


 特に西の荒野へ移動したグループ。

 何もない荒野で、方角とかどうやって判断するのかと思ったら、リリーさん曰く、そんなの何となく分かるんだとか。獣人半端ないですわ。


 今までの話を聞くに、リリーさんが居た集落は、ここから東北東の位置みたいですね。

 しかも、その集落の北には一帯の森を統べる獣人の国が有り、川を挟んだ南には人間の国があるとの事。


 人間の国について本人は、詳しい事情は知らなかったですが、大体予想はできる。

 つまり人間の国が、リリーさんが住んでいた森の中の集落にまで、進出してきたってところでしょうね。まぁ、そこら辺の事情は、大人の獣人にも聞きましょうか。


 ……東北東の南、つまり、ここから東にある人間の国……ねぇ。こちらとしても、無関係な話では無さそうですね~~~……


 そんでもって、最初に俺と会った時、何故怯えていたか聞いたら、親に散々言われていたらしい。

 殺される、攫われる、犯される……叱りつける時の常套句ってやつですね、いい子にしないと~~~って感じです。かなり内容は過激でしたけど。

 つ ま り は、そいつら…その国のせいで、俺ってか、人間が恐怖と嫌悪の対象になっていると。


 ほうほう、ほうほうほうほうほう……やってくれましたね、ただでさえ少ない交渉要員(迷宮主)が、使えなくなったじゃないですか。事と次第によっては、容赦する理由が消えますね~。

 ……ちょっと、本気で国落としでも考えてみますか。元々、滅ぶのは確定事項でしたし……ねぇ?


噛付かれ拒絶された事に、地味に傷ついていた迷宮主。その原因が人間によるものだと分かった迷宮主は、世界樹さんに任せようと思っていた国落としに参戦を決定?

哀れ人間、元々決まっていた運命でしたが、更に悲惨なものになりそうですね! 

日頃の行いが悪いと、巡り巡って不幸が回ってくるのでしょう。自業自得と言う事で、ここはひとつ諦めて貰いましょう。

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