表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/334

105 迷宮の魔物内情

①説明会。

②蛇「ガクブルガクブル・・・・・・」

③不注意な発言は、気を付けましょう。

 迷宮主が蜘蛛(タラント)達と魔導談義をしている頃、とある魔物が暗躍していた。

 彼の名はゴトー。この迷宮の<幹部(ボス)>である。


「やめ、放せ!?」

「まったく、主様も詰めが甘い。こんな不穏分子を放置しておくとは」


 頭をワシ掴みにされながら、ずるずると引きずられ、とある一室に投げ捨てられる魔物。

 パンパンと手についた汚れを払う様に叩くその姿は、ごみを運び終わった後の様。

 部屋に集められたのは、体格も種類もバラバラな魔物たち。


 どんなに上手く隠していたとしても、彼の目にはハッキリと彼らの欲が見えていた。

 自身の主に対する嘲り、侮蔑……殺意。

 それが、彼らがゴトーに捉えられた理由だった。


「ふむ、あの会場で見かけた不穏分子は、これで全てですかな?」

「お、俺たちが何をしたって言うんだ!」

「そうだ! こんな横暴、許されると思ってるのか!?」

「さて、マイロードの目に、汚らしい物を曝す訳にもいきませんからな。ここは、速やかに処分して仕舞いましょう」


 相手の話を全く聞く様子も無く、魔力の籠った腕を振り上げる。

 その込められた魔力を見て、集められた魔物たちは絶望する。その一撃は、とても耐えられるモノでは無かった為である。

 逃げようにも入り口は一つ、その入り口も、今まさに彼等を殺そうとしている魔物(ゴトー)によって遮られている。

 そもそも、彼に掴まれてから、彼らは全く動くことができないでいた。でなければ、彼が他の魔物を捕まえに出ている内に、逃げ出している事だろう。


 そして、持ち上げられた兇刃が振り下ろされる―――途中で、ハタと止まる。


「……ただ殺して処理すると、私めの糧になると言う事であり、独り占めになって仕舞います。他の者に分ける必要もありますかね? 特に、戦闘に従事していない者のレベルが、以前より問題視されて……」


 ぶつぶつと、残った手で顎の髭を弄りながら、独り言を繰り返す。そんな中でも、込めた魔力は一切揺るがない。

 まるで、ギロチンに掛けられたまま、いつ落とされるか分からない様な状況が続く。そんな中―――


「ならば、その手を下げてくれないか?」

「ん? クロス様ですか」


 現れたのは、同じく会場に居た虫型の魔物。この迷宮の<幹部(ボス)>、クロスである。


「何故ですかな? 私めは不穏分子の処理をしているだけですよ?」

「それは、主様の命令か?」

「貴方の様な、指示待ち人形では無いのですよ。命令される前に行動してこそ、本物の従者と言うものでしょう?」


 やれやれと、わざとらしく、馬鹿にするような態度を取るゴトー。

 そんな、明らかな挑発に対し、クロスの感情は全く動く気配が無い。

 隠している訳でも、逆に見下すわけでもなく、“全く動かない“のだ。彼にとって、これ程面白く無いものはない。


「主様がこ奴らの存在に気付いていないと、本当にお思いか? にも関わらず、そ奴らが存命であったことが全てだ」

「こいつ等は我らがロード、この迷宮の主を、愚かにも狙った者たちですよ? このような奴ら、百害あって一利なし、早々に処分すべきなのですよ」


 その後も、一言二言会話するもすれ違うばかり、しかもゴトーは攻撃的な姿勢を解く事が無い。そんな状態にクロスは、頭を掻きながら諦めた様に口を開く。


「はぁ、言わないで済めば良かったのだがな……これは、主様からの命だ」

「は?」

「主様からの御言葉だ、『気遣いと独断専行は違いますよ?』だそうだ」

「!?」


 睨みつけていた瞳が、驚愕に見開かれる。自分の行動を読まれていたとは思っても居なかったのだろう。

 そして、無意識に顎髭へ手を伸ばし、彼等を生かす利点を考える……が、思いつかないのか、諦め山羊頭を左右に振る。


「何故、どうしてこんな奴らまで、庇護するのだ……」

「庇護? そこから間違えているのだよ。思い返してみろ、主様が一度でも、こ奴らを仲間扱いしていたか?」

「……? ……!?」

「仲間になれば戦力に、死ねば資源に、そのままならエネルギー(DP)に。つまり、こいつ等がどうなろうと、構わないのだよ」


 クロスの言葉に、ゴトーと拘束された他の魔物たちは、驚愕の表情を浮かべる。

 特に、仲間として迎い容れられていると……侵入していたと思っていた彼らの衝撃は、どれ程のものだった事か。


「……もしこいつ等が、この迷宮に仇なすことが有れば、被害なしではすみませんよ?」

「我らが、いや、この迷宮が、その程度の奴らが徒党を組んだ程度で、崩れる様な軟な存在とお思いか?  むしろ、我らはその様な存在でなければならないのだよ。でなければ、あの方の配下などと、名乗る資格は無い」

「……それは、ロードの御言葉か?」

「いや? 我の考えだが?」

「メル、メルルルルルル~~~~!!」


 いつの間にか、手に込められていた魔力も霧散し、自身の膝を叩いて大笑いするゴトー。


「ル~。こんなに笑ったのは久しぶりですね」

「むぅ……そんなに可笑しな事だっただろうか?」

「えぇ、えぇ、おかしいですね。狂気染みて居るとも言う。そんな事を、さも当然の様に、全く感情の揺らぎも無く言えるのですからね!?」


 暗に狂っていると言うゴトーに対して、クロスは理解できないと首を傾けるだけである。そんなクロスに対し、ゴトーはとても興味深そうな視線を向ける。


「迷い、苦悩、不安。昔のあなたはとても魅力的だった。だが、最近の貴方は悩みも無く、とても詰らない存在になったと思っていましたが……どうやら見誤って居た様だ。実に、実に興味深い! 貴方の欲、いや、狂気はどれ程深いのか。私め、気になりますぞ!」

「「「ブハー!?」」」


 放置されていた魔物たちが、拘束を解かれるかの様に、一斉に動き出す。


「ロードの命令とあっては、従う以外に在りませんな。自由にして良いですぞ?」

「存在を許されていると言っても、身勝手な行為が許されるわけでは無い。肝に銘じておけ」


 許された、生き残った。部屋を出て行こうとする二体の化け物を見ながら、その場にいた者たちが、一斉に安堵の溜息を漏らす。


「待ってくれ!」


 ようやく解放されたと思った矢先、今の自分の状況を理解していないのか、愚かにも彼等を呼び止める魔物がいた。

 他の魔物は、驚愕や忌々しいものを見る様な視線を向けるが、そんな事を気にすることも無く、そもそも気が付くことも無く、話を続ける。


「あんたら程の力が有りながら、何であんな雑魚に従ってるんだ!? アンタたちこそ王に相応しい、そうだろう!? 今からでも遅くねぇ、殺せない理由が有るなら、俺が代わり―――」


 周りが止めるよりも早く、ゴトーが魔力を込めだすよりも早く、一瞬で距離を詰めたクロスの爪が、無慈悲に、一切の躊躇いも無く、ゴミを処理するが如く、その魔物の体を縦にかち割った。


「「「……」」」


 一連のやり取りを見て、他の魔物、ゴトーまでもが呆気にとられる。


「我は言ったはずだ、存在を許されているだけだと」


 汚れを掃うかのように、前足に付いた血を払い、水魔法で作った水で洗い流す。


「分かっていると思うが、今回の一件で自分の愚かさを理解したことだろう。だが、機会が何度も与えられるわけでは無い。なによりも、その様な戯言を口走る愚者、主様の慈悲を蔑ろにする者など、生きる価値すらない。明確に敵として行動を示したならば、即刻処分する」


 それだけ言うと、クロスは元の道を引き返し部屋を出ていき、ゴトーが(すこぶ)る面白いものを見る様に、その後に続く。

 他の魔物たちは、その後ろ姿を無言で見つめ、送り出す事しかできなかった。


迷宮主のメモ帳:状態異常<睡眠>


魔力の流れを遮断し、肉体と精神の繋がりを一時的に停止させる状態異常。

現体に近い程(ハッキリした肉体を持っている程)その影響が大きく出る。


肉体と精神の活動を遮断し、活動停止に追い込む。


時間経過、又は魔法やスキルによる浄化、外部からの強い衝撃によって解除が可能。

適応すれば、影響を抑制する耐性を取得することができる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 伏線なのかもしれないけど、本当にダンジョンマスター個人の能力(ステータス)は育ててないのかな? DPでどうとでもできるんじゃなかったっけ? まあ、性格的にしてないだけかな?
2021/10/14 03:07 退会済み
管理
[気になる点] 結局不穏分子を見逃すメリットは何も説明してないね。理解できない
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ