104 魔道具博覧会
①ちゃんと仕事はしているんですよ?
②魔道具(試作品)完成!
③マッドサイエンティストの被害者
会場に到着する頃には、魔道具の運び込みも終了しており、正に準備万端と言ったところですか。
「魔道具、楽しみですわ!」
「うむ、我等蟻でも使えるものがあれば良いのだが」
「メルルルル、人が使う魔道具とどちらが優秀でしょうな!」
一緒に付いてきたのは、ルナさん、クロスさん、ゴトーさんである。
他の子達は興味が無いか、体格のいい子はコアさんを経由し、他の場所から確認するとの事。ぞろぞろと引き連れて行くのも、狭くなりますしね。気が利く子達である。
そうして俺たちは、発表会の会場へと足を踏み入れた。
「お待たせしました! 早速、何を―――」
「「「来たー!!」」」
「主、見て見て! 面白いのできた!」
「主~~~~、どうしてもできなかったの~~~、何処が悪いのかな!? かな!?」
「小型化ができないの! 何か他に、面白い素材ない!?」
「へー、へーーー!!」
「落ち着け!?」
入って早々、マッドサイエンティスト共に囲まれた。
分かった、分かったから! 後で相談に乗るから、一旦落ち着いて、今は試作品の方を見させてくれないと、話すこともできないですから!?
「ア˝?」
興奮が冷め止まない子達を宥めていると、定位置となった肩車状態で付いてきたルナさんから、ドスの利いた声が上がる。
「ルナさん、何かありました?」
「……クスクス、何でもありませんわ」
「???」
良く分かりませんが……何でもないならいいか。
それよりも、今はこの魔道具ですね! 蜘蛛達が中心になって作った、作品たち! 真剣に見ていかなければ、失礼ってものです!
「どんな効果が有るのでしょう?」
「…ん。担当した奴が、説明していく」
タクミさんの声に合わせて、蜘蛛達を先頭にこちらに向かって来る組が一つ。
震えている奴がいるけど、緊張しているのかな? 差し出されたのは、片手で持てる程度の大きさの立方体の箱。
「………? 説明始める」
「~~~~~~~~~~~」
促されているのは……見たことない奴ですね。蛇ですか。俺の顔~……の、さらに上、ルナさんに視線が固定されている?
「……ん?」(ニッコリ)
「ヒィ!!??」
「……ルナ姉ぇ、<威圧>するの止めてくれない?」
「あら? 私は何もしていませんわよ?」
私が、仲間を威嚇する訳が在りませんわ、ねぇ? と他の子達に話を振っている。ちょっと、わざとらし過ぎませんか、ルナさんや?
まぁ、勝負事でも無ければ、ルナさんがそんな事をする理由は無いですけどね。実際スキルは使っていませんし。
それよりも、今はこの蛇かな?
「別に、取って食べたりしませんから。落ち着いてください」
「~~~~」
何か、すっごい睨まれたんだけど……雑魚がって呟き、聞こえていますからね?
「……は~。下がって、私達で説明する」
結局回復しなかった為、結局蜘蛛さん達の説明を聞く事に成った。何だったんでしょうね、あいつ。
―――
「へー、魔力を流すと、火が付く魔道具ですか」
「うん、小型化を目指すために、シンプルな奴で試してみたんだけど、これ以上小さくすると、不安定になるの」
「素材の限界ですかね? もしくは、小さくした結果歪みが出たか……一度、魔抗石を使ってみて、それで無理だったら加工技術の問題かな?」
「う~~~ん、勿体なくない?」
「検証に使うのは仕方がないですよ、使うとこには使わないと」
「分かった、やってみる!」
「次々!! こっちは凄いよ~!」
「でっか、コンテナ位の大きさはありますね」
「コンテナが何かは分からないけど、内容は凄いよ! スキルの<身体強化>とほぼ同じ! 魔力を流せば、使用者に流している間、ステータスアップだよ!」
「おぉ~~~凄いですね! ……でもそれだと、小型化して装着しないと、使い物にならないのでは?」
「ぐっふぅ。だって~、だって~、魔力の流れを遮断しないと、術式から漏れた魔力が、他の術式に干渉してるのか、誤作動起すんだもん!」
「魔抗石は?」
「無理! 固いから削りにくいし、脆いから失敗するとすぐ砕けちゃうんだ。小型魔道具には向かないよ」
「う~ん。効果は素晴らしいですし、当面の目標は小型化でしょうかね?」
「うん! 次はそれだね!」
「あ、さっきのグループの実験データを聞いてみては?」
「!? 早速行ってみる!」
「あいあい、どの程度なら術式が干渉しないとか、其方のデータも提供してくださいね?」
「「「は~~~い!」」」
「これは?」
「衝撃を加えたら起爆して、周囲の魔力を吹き飛ばす魔道具」
「おぉう、使い捨て魔道具ですか……随分思い切ったモノを作りましたね?」
「不味かった?」
「いやいや、この発想は面白いですよ? 初めに発動に必要な魔力さえ込めれば、後は投擲するだけでしょう? 遠距離からの奇襲に打って付けですね!」
「うん! 後は、<自壊>を込められれば、証拠の隠蔽も完璧!」(フンス!)
「量産性は後の課題として、この発想は見事です! 是非完成品を見せて下さい」
「うん!」
などなど、試作品としては意外と真面なものが揃っていた。
突拍子もないモノは少ないですけど、それだけに、堅実で実用的なものが多いですね。完成すれば、普通に有用そうなものが揃っています。
術式のデータが少ない現状、創れるものは限られますし、それを考慮すれば素晴らしい結果なのでは? 術式が増えたら、もっと面白いのができそうですね!
―――
一通り見て回り終わった後は、他の子達が見て回り始める。意外と魔道具に興味がある子が多かった様だ。中々の賑わいとなった、まるで魔道具の博覧会ですね。
「主々! 主がこれを魔術で発動しようとしたら、どうやってやる?」
そんな中、蜘蛛さん達と魔道具談義をしていると、そんなことを言って来た。
「……魔力のない俺に、魔術について聞きますか。どれどれ?」
魔術を道具の形にしたものが、魔道具ですしね。少しでもヒントが欲しいのでしょう。渡された式は―――
【球】魔力を球体に保持
【炎】魔力を火に変換
【方向】移動方向を一定方向変更
【射出】魔力を飛ばす
である。まんま、ファイヤーボールですね。
「普通に重ねて発動ではだめなのですか?」
「うん、どうしても暴発しちゃうの」
「暴発……ねぇ」
魔力を安定する球状にして、火に変換し飛ばす。他にも細かい制御とか操作とか、方向の指定とか、必要な式はありそうですけど、基本はこれですかね。
……ん? 同時に式が発動すると暴発する?
魔力が安定した球状になる前に、火に変換しているとしたら、式の発動を分ければ良いのでは?
例えば、式を円柱状の上中下に分けて、一つの式に魔力が溜まったら、順次式に魔力が流れるようにして、各々発動する様にしたらどうでしょう?
……と、思った端から言ってみると
「「「それだ~~~!!!」」」
「式の発動タイミング!?」
「……は! 式の順番を変えたら安定したのって、それが理由!?」
「式から漏れた魔力による干渉が、原因じゃ無かった!?」
「え!? でも式を離しただけで、発動が安定したりしたよ?」
「……離した? 式の発動に遅延が発生したとか?」
「「「それだー!!」」」
「いや、決めつけるのは早計だ! 検証するぞ!!」
「「「へーーーーーーー!!!」」」
マッドサイエンティスト共が、魔道具の説明をほっぽりだし、会場を飛び出して行った……そして、辺りに静寂が響く
「……不味ったかな?」
「……見てくる」
「あ~、監督要員早めに見つけるんで、それまでお願いします、タクミさん」
「……」(しくしく)
タクミさんの苦労は、まだまだ続く…………本当に、ごめんなさい。
迷宮主のメモ帳:状態異常<麻痺>
魔力の流れを阻害し、肉体の稼働を妨害する状態異常。
現体に近い程(ハッキリした肉体を持っている程)その影響が大きく出る。
肉体を動かす際に流れる魔力を塞き止め、動きを阻害する。
時間経過、又は魔法やスキルによる浄化によって解除が可能。
適応すれば、影響を抑制する耐性を取得することができる。




