101 経過報告
①サブマスターは優秀の人が多い
②バレていますよ、ゴトーさん!?
③八方美人で感情が旨い!
― カポーン -
「ふへ~~~……」
ゴトーさんを送り出した日の深夜。今日も日課の風呂まで、足を運んでいる。
体は殆ど汚れないけど、やっぱり一日一回は入らないと、気分的に落ち着かなくなってしまった。これでも、元日本人ですからね。焦ることも無いですし、のんびりしていきましょう。
それに、折角作ったのだから利用したい気持ちもありますし、ここを住処にしている、プルさん本体に会う理由にもなる。
<群体>下の粘液経由で話はしますけど、一日一回くらいは本体に会っておきたいですしね。
(パパ~~~)
「どうしました?」
(なんでもな~い……えへへ~~~)
クッソ、あざと可愛いな!
まぁ、こんな感じで、会いに来ると嬉しそうにするんですもん。これがこの子の素なのだから末恐ろしい。癒しの少ないこの世界、貴重なほっこり成分を逃すことは無いでしょう。
(ムム!! でんぱじゅしんちゅう! でんぱじゅしんちゅう!)
「おや、こんな時間にですか?」
(う~~~ん、はっしんもと、ごとー、ごとー!)
「え、ゴトーさん?」
潜入している闇影粘液 とプルさんを経由し、街の情報を流してもらう予定でしたが、初日から来ましたか。
(おぉ、マイロード! お時間宜しいですかな!? 早速、今日得られた情報を報告致したいのですが!)
……妙にテンション高いですね。何か良い事でもあったのでしょうか?
―――
適度に相槌を打ちながら、いつも以上に饒舌なゴトーさんの話に耳を傾ける。
直接人から話を聞けるのは、かなりのアドバンテージですね。お陰で、粘液達からの報告では、ハッキリしなかった部分が、見えてきた
中世的な雰囲気な割に、治安はかなり良いらしい。兵士や自警団も巡回し、犯罪や喧嘩が発生したら、即座に急行する様だ。スキルが有るから、感知するのも現場に到着するのも相当早い。俺が居た世界より、治安良いかも……
害虫による人側の被害も、知ることができた。この街…エンバーまでにあった村とか町とか、かなりの数が消えてらしい。どんな災害だよ、スタンピード怖いな~。
逆に言えば、あの程度の奴らを捌き切ることができなかったって事でもある。
……辛辣過ぎるか。こっちには迷宮が在りましたからね、侵入経路と、戦闘範囲を絞り、各個撃破できました。
人側は、防壁が在ったとは言え、開けた場所であの規模を捌いたのか。脇をすり抜ける奴とかいなかったのかな?
しかし、友好関係を築けるかが、怪しくなってきました。なにせこっちには、魔物しか居ませんからね、全面戦争も覚悟しておいた方が良さそうだ。
そんな事で、人側に危険な奴が居ないか聞いてみと、出て来た名前が『破壊者』、Sランク冒険者だとか。
まだ直接会っていない様ですけど……聞いた限りだと、超が付くほどの危険人物ですね。行動パターンを聞くに、高確率でこっちに来そうだ。
ゴトーさんには、近づかない様に言っておいた。そんな危険人物に目を付けられて、得なんて無いですからね!
……で、ゴトーさんや、何故に冒険者なんぞに成っとるん? 情報収集? 確かに簡単に入れる上に、国を跨ぐ巨大組織みたいですし、情報の最先端を行ってそうですけど……危なくないですか?
…………黙らないで下さいよ。
やめる気が無いのは分かりましたから、危なくなる前に逃げるんですよ?
実際、有益な情報も多いですしね。危険を冒すだけの価値はある…か。
まぁ、ゴトーさんが楽しそうなのが、一番の理由ですけどね。人間社会は、ゴトーさんにとって、とても居心地の良いもののご様子。
粘液経由ですから、雰囲気は分からないですけど、口調や言葉選びがイキイキしている。てか、プルさんの演技が上手い、最初本人の声がそのまま届いているかと勘違いしましたよ。
ゴトーさんの収穫は色々ありますが、人種や魔物のステータスと、それによるランク分けを知れたことでしょうか。世間から見て、こちらの危険度が知れたのは良いですね。
う~~~ん。ステータスだけを見れば、うちの子達はBランク前後ってところですか。中々なのではないでしょうか?
まぁ、尖った能力の子が多いから、ステータスだけのランク分けだと、参考程度が精一杯ですね。
……ステータスなんて関係なくなるような、とんでもスキルとか、普通に有りそうですけどね! 【創造】でも、創れますしね! 絶対ありますよね!?
ダンジョンでその手のスキル、チートレベルのスキルを意図的に利用しようとすると、とんでもないDP掛かるので、殆ど使い物にならないんですよね~。スキルの内容を理解して無いと、【創造】するなんてもっての外だ。
【創造】する場合、無理な部分は魔力やDPでカバーできるが、所詮は誤魔化し。構造の理解、素材、無理のない設計、これを無視すると多大なDPを消費する。
逆に無理が無ければ、その分性能を上げられますし、安定する……これが難しいんですよね、お陰で殆ど検証が進まない。
蜘蛛達、職人集団が行っている魔術の研究が進めば、少しは使い物になるかな? あれって魔石(魔物の核)とか使えば、スキルにも応用できるみたいですからね。
あぁ、スキルと言えば、現役の冒険者が持っているスキルを知れたら、結構変わると思うんですが……流石に直接<鑑定>を仕掛ける訳にも行かないですね。
バレない<鑑定>が在れば…そんなものを使われたら、こちらも面倒になりますね、ままならないな~。ゴトーさんの情報収集に期待ですね。
後は何かありましたか? え、<隠蔽>覚えた? それって確か中位のスキルですよね? ……早すぎません?
他のスキルも聞いてみましたが、軒並み上昇していた。今までの伸び悩みが嘘の様ですね。
やっぱり野生の魔物や仲間内じゃ、限界がありますか。
ゴトーさんのスキルは、騙したりするものが多いですから、相手が人の方が経験に成るのでしょう。
実際に使って経験してみないと、成長は見込めない…か。どっかで機会を作らないとな~、いきなり強者と戦うのは危険すぎる。
さて、今日はこんなもんですかね? ……了解しました。夜更かししないで、早めに休むんですよ~。
…………無言で抗議するの、やめてくれません? 禁止するわけでは無いので、怪しまれない様に程度を見て行動してください。
では、また明日、同じ時間に……
―――
「ふへ~~~……どうしてこう、斜め上の行動取りますかね?」
初日から冒険者になるとか、行動が速すぎますよ。馴染んでいるみたいですから良いですけど。
多分、初めての人里に、テンション上がっちゃたんでしょうね~……御上りさんかな?
傾向として、体が魔力に近い程、感情的になり易いみたいなんですよね。
虚体の精霊族とかが、最たるものだ。特に受肉して無い子が、超が付くほど自由なんですよ、あれは感情だけで生きていますわ。
半虚現体の悪魔族も、その例に漏れない。魔力(虚体)寄りの子が多いから、興味のあることに一直線、ある意味分かりやすい子達だ。
(おはなし、おわり~?)
「終わりましたよ~。中継有難うございます、プルさん。明日もお願いしますね?」
(えへへ~、まかせて~)
ぷかぷかと水面に浮くプルさんに、体重を掛ける。
あ~~~……火照った体に、プルさんのヒンヤリしたプルプルボディが心地よい……プルさんも、適度な圧迫感が気持ち良いらしい。
明日も同じ時間に報告を聞くとなると、また風呂時に連絡が来そうですね。これは、習慣に成りそうな予感……
迷宮主のメモ帳:世界樹
世界の柱。大地の基礎。全生命の揺り籠。
その大きさは、この世界で最も巨大な存在と言われており、信仰の対象とする種族も多い。
また、天まで届くその巨躯によって、大地と天空に流れる気脈を繋ぎ、世界の魔力の循環の一端を担っている。
大地よりくみ上げた魔力を、周囲に放出するので、世界樹が存在す地域は、他と比べ魔力濃度が高くなる。その為、周囲は生命に溢れ、強力な魔物が多くなる。
周囲への影響力がとてつもなく大きく、消失すると魔力の流れが狂い、周囲の環境が劇的に変化する。




