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98 潜伏任務

①今後の予定

②汚物は消毒だ~!!

③防壁迷宮作成決定

「……」


 俺達が持ってきた情報を見て、ギルドマスターが頭を抱えている。


 荒れ地の範囲の確定に、奥地での森の発見(ものっそい速度で拡大中)

 多数の統率が取れた魔物(Dランク程度?)と、複数の危険な魔物(確定Cランク以上?)の存在確認

 更には森の中心に聳え立つ、世界樹の発見(そんな情報が入ってたんだとか)


 何よりも…


「その魔物……危険はないのか?」

「多分?」

「多分じゃねぇよ!? 人の体内に潜り込む魔物なんて、連れて来てんじゃねぇよ!?」

「だから外で待機して、隔離態勢整えて貰ったんじゃねぇか!」


 敵意も無いし、今では立派な相棒じゃい!

 皆にも懐いているし、慣れるとプルプルして、宝石みたいに綺麗で可愛いんだよ。

 スピールも、危険な奴だったら報告するから問題ない……何故か敵対心を抱いている様だけど、聞いても答えないし、何なんだろうな?


 それでも万が一を考えて、ここまで来るまでも、部屋に隔離されてからも、感知系のスキル持ちを多数用意してもらって、監視してもらいながら話しているんだろうに……。


 ― コンコン -


「入れ」

「失礼します、<鑑定>の結果が出ました」

「見せろ!」


 事務員が用紙を持って入室すると、途端にギルマスがそれを掻っ攫う、<鑑定>の迷宮具を使った結果が出た様だ。なんせ新種の魔物、どんな能力を持っているかも不明、危険視して当然だ。

 内容を見て、ギルマスが唸っている。


「ほれ」


 ぞんざいに、内容が掛かれた用紙をこちらに投げ渡してきた。どれどれ?


 名称:浄化粘液(クリーナー)

 氏名:

 分類:半虚現体

 種族:粘液族

 LV: 7 / 10

 HP:100 / 100

 SP: 30 /  30

 MP:350 / 350

 筋力: 28

 耐久: 28

 体力: 28

 俊敏: 28

 器用:170

 思考:170

 魔力:170

 スキル<分裂LV1><融合LV1><吸収LV5><魔力操作LV3><自己再生LV3><HP回復上昇LV2><MP回復上昇LV2><猛毒耐性LV8><猛毒無効LV8><中和LV5><共生LV5>


 称号とかも分かれば良かったんだけどな。流石に、そこまで貴重な迷宮具は置いてなかったか。

 ステータス及びスキルに、特段危険そうなものは見られない……て、耐性含めて、スキルレベル高いな!? レベル5以上が5個もあるぞ。


「……取り敢えず観察だな。監視を付ける、お前たちもおかしな所があったら、すぐに報告しろ」

「了解」

「追加報酬、期待してるわよ~」

「さっさと行け!」


 ギルマスの怒号を後に、部屋を出る。誰かが監視に付いているんだろうけど、全然わかんないな。相当な腕の奴が付いているんだろうね。


「取り敢えず……この後、どうする?」

「「「メシ!!」」」


 行に三日、観察に半日、帰りに二日。その間の食事は、保存食だけだったからね、仕方ないね!


 ―――


 何もない荒野を、音も無く、いや、音を置き去りにしながら走る、一匹の魔物の姿があった。

 その魔物は、まるで宝石の様な黒い塊を抱え、今にも沈みそうな太陽に向かって、一直線に目的地へと突き進む。


 彼の名はゲッコー。現在【世界樹の迷宮】にて、小さく目立たない体躯に、トップクラスの速度と持久力を備えた魔物である。


(う~~~ん、右に2度修正)

「了解!」


 ゲッコーに抱えられた黒い宝石、実際は宝石などではなく、粘液(スライム)の中でも、特に隠密に優れた影粘液(シャドースライム)。さらにその中でも、闇に特化した闇影粘液ダーク・シャドースライムである。


 今までも森の外、領域外を探索することはあったが、これ程離れた場所まで来ることは無かった。迷宮主が許可しなかった為である。

 何処に何があるか分からない現状、無茶な遠征を避けたのだ。


 だが、今回は違った


(おい~~~す)

(おすおす、次の方向は?)

(こっちだぞ~)

(ハイよ。ゲッコー、左3度修正)

「ハッ、ハッ、ハッ、了~解!」


 今から二日前の夕方。とうとう、人種と接触が発生した。

 その際、ダンジョンの領域外の出来事であり、情報の伝達が上手く行かず、初の接触はすれ違いのままに終わって仕舞った。


 だが、それだけで終わる彼等では無かった。近くに居た数体の粘液(スライム)が、秘かに馬車に張り付き、潜入することに成功していたのだ。


 彼等は、一定の間隔で馬車から離脱。スキル<群体>によって、情報をやり取りし、迷宮に居る<群体>のトップ、<一の全>たるプルへと、情報を伝える中継地点を担っていた。


 そして、とうとう今日の朝。潜入していた馬車が人種の巣、彼等には判断できなかったが、街や国と考えられる場所に到達したことが、<群体>を通してプルに、【世界樹の迷宮】へと届けられた。


 そのまま馬車に潜み、巣の中まで潜入しようとした彼らに対して、迷宮主より、プルを経由して指示が入る。即座に離脱し、周囲に潜伏する様に……と。感知能力の高い存在や、魔道具を警戒しての判断だった。


 そして、即座に派遣されたのが彼等である。粘液(スライム)達によって道中の安全と、距離を把握できたのも、派遣を決定した要因の一つだ。

 彼等が……ゲッコーが闇影粘液ダーク・シャドースライムを運んでいる目的は、<群体>から離れ、人と<共生>関係になった粘液(スライム)から、情報を提供してもらうためである。


 もし、闇影粘液ダーク・シャドースライムが発見される様であれば、全員撤退。迷宮側の警戒レベルが数段上昇することになるだろう。


(そんな調子でダイジョブか?)

「ハッ、ハッ、ハッ、ペース配分は間違ってねぇよ。後続で援護も来てるから、余裕があるぐらいだ」


 途中途中の粘液(スライム)達を目印に、ゲッコーは一切速度を落とすことなく突き進む。

 そして、完全に日が沈んだ頃……彼らの目に、石の壁が映った。


「バレんなよ?」

(おう!)


 途端に急停止。闇影粘液ダーク・シャドースライムを、慣性のままに地面擦れ擦れに放ち、すぐさま元来た道を引き返していく。その一切の無駄のない行動に、離れた防壁で警戒をしていた人種は、気付くことができなかった。


 既に日も落ちた何もない平地、その中の小石や窪みにできた影に、闇影粘液ダーク・シャドースライムは潜り込み、影から影へと移動する。姿も音も気配も魔力さえも、完全に影に闇に溶け込んだ彼に、気付く者は居ない。

 そして、とうとう石壁に辿り着く。魔道具を警戒して入り口を避け、壁にできた僅かな隙間を通り、内側へ……エンバーへと侵入を果たした。


 ―――


 闇影粘液ダーク・シャドースライムは、人の巣を観察しながら、同族の気配のする方へと進んでいく。光を避け、より強い影に身を寄せる、時には人の影に潜り込みながらも、目的地へとたどり着く。彼が人の営みを知っていれば、ここが宿屋だと分かっただろう。


 建物の中へと入り気配のする方、2階へと上る。そして、目的の粘液(スライム)を発見する。

 近くで警戒をしている人の監視網を掻い潜り、影の中から接触する。<群体>は途切れているが、接触して仕舞えば、会話は可能だ。


(ん?)

(おう、元気にしてたか?)

(おぉ!? はっやーい、もう来たの~?)


 見つかれば、戦闘になってもおかしくない状況下で、呑気に再開を喜び合う浄化粘液(クリーナー)闇影粘液ダーク・シャドースライム


(情報の提供を主からお願いされてるんだけど……どうする?)

(どうするって?)

(そのまま人側に着くなら、協力しなくて良いってさ)

(……マジで?)

(マジで)


 困惑する浄化粘液(クリーナー)

 付いて行った後に、情報提供を求められることは予想していたが、協力しなくとも良いと言われるとは、思っていなかったのだ。


(その人とずっと一緒に居たいなら、好きにするといい。その代わり、支援はできない…ってさ)

(うん、分かってる)

(それとな……新しいお友達と仲良くする様に…愛想が尽きたら、いつでも帰って来いだとさ)

(あはは……当然♪ 居心地良いからね、ここ)


 心底楽しそうに答える。覚悟は決まっている様だった。


(でも、情報提供はするよ? 僕だって【世界樹の迷宮】の魔物だもん。話し相手も欲しいしね)

(おう、じゃぁ早速やるか)

(うん)


((<融合>))


 浄化粘液(クリーナー)闇影粘液ダーク・シャドースライム。緑と黒の宝石が混ざり合う。


 ―――


(……ん?)


 冒険者『スピール』ションの従魔となった魔物、浄化粘液(クリーナー)を監視していた一人が、その対象の気配が弱くなったのを捕らえていた。


(やっと休眠したか……)


 魔物が休む時、その気配が通常よりも弱くなる為、彼はそう判断した。


 実際は情報を統合する為に、一時的に“半<融合>”した事で、上位種の闇影粘液ダーク・シャドースライムが強く出て仕舞い、気配が隠れてしまっただけである。


 監視役がこの僅かな違いを、違和感を重く捉えていたならば、結果は変わっていたかもしれない。

 内と外。情報戦に置いて、人側は完全に後れを取る形となった。


迷宮主のメモ帳:気脈


世界に流れる、大きな魔力の流れ。

主に地中や遥か上空に流れており、世界をめぐっている。

その流れに接触したモノは削り取られ、劣化し存在が不安定になった物質を、魔力へと変換する。

(固体は地中に流れる気脈に、気体は上空に流れる気脈によって削られる)


そこから溢れた魔力は、物質へと再変換され、世界に還元される。長い時間を掛けて物質化する為、瞬間的に物質化する魔法と違い、安定した物質となる。

(この現象を人工的に起す技術が、魔術となる)

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