95 冒険者とダンジョン④
①<幹部>「通りまーす」
②冒険者「撤退!」「「異議なし!」」
③冒険者&蟻「・・・え?」
「こいつは!?」
ゴッコと魔物の目線が交差する。あれは、森の前に居た黒い虫族の魔物? ここまで穴を掘っていたのか。まさか、奇襲・・・なのか? 何時から、バレ―――
「キキ!!??」
―――ていた訳では無さそうだな。すぐさま穴に引き返していった。
「なんだったんだ、いったい」
「・・・・・・とにかくここから離れよう。スピールが少しずつ離れて行ってるぞ」
「んな!? あの駄従魔!」
「待って居てやっているだろう!? 早くしろ!」
全員が車に乗り込む姿を見届ける。奴らに見つかって仕舞ったんだ、あの化け物達が来るかもしれない。
そうなると全滅は確実、それだけは許されない。情報が無いまま行動を起したら、尋常じゃない被害になる。
「スピール、出ろ!」
「貴様如きが、命令するな!!」
何だかんだで、あいつは俺以外の命令を聞かないからな。逃げてはくれるだろうけど、ちゃんとエンバーまで運んでくれるだろうか・・・・・・超が付くほどのビビりだから、最後まで走り抜けるだろう。このまま、何も起きなければ・・・・・・
― ・・・~~~~プルプルプルプルプルプルルルルーーーーー!!! -
「どおーーー!?」
「なんだ、コイツ!?」
「ヒッグ、グズ・・・『鑑定』! ・・・・・・鑑定失敗!?」
・・・・・・虫族の魔物が開けた穴から、半透明な何かが大量に噴き出し、広がって行く。
他の場所にも穴があったのだろう、まるで水が溜まって行くように、至る所からどんどん溢れ出し、あっと言う間に大地を埋め尽くしていく。
何だこれ? 魔物なのか?
皆の方を見る。・・・・・・警戒しているのか、スピールと車には一定の距離を取っている。これなら、やり方次第で切り抜けられるかもしれない。
だけど、こっちには警戒する素振りも無く接近してくる。見るからに死にかけだからな、獲物として見られたか。
そしてそのまま、俺は全身を覆いつくすように、半透明のプルプルした魔物に飲み込まれた。
俺を食う気なのか、溶けた足から、体液を吸い出される様な感覚がする。もう何もできないから抵抗しないけど、今の俺なんか食ったら、腹壊す程度じゃすまないぞ?
そんな、俺の考えなんてお構いなしに、どんどん体液を吸い出される。これは・・・・・・毒で死ぬ前に干物になるかな。
「ション・・・・・・」
遠くから、スチーナの声が聞こえた気がする。現実なのか、幻聴なのか、もう判断できない。けど、最後に聞くのがあいつの声なら、悪くないかな?
じゃぁね、皆。お前らは・・・生き延びろ・・・よ・・・・・・
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・?
???
!!??
!!!???
「うぉおーーーー!!!???」
はぁ!? 生きてる!? 何で!!?? ・・・・・・いや、マジで何で!!??
理解不能な事態に跳ね起きる。その勢いに乗って、半透明の魔物はプルンプルンとバウンドする・・・・・・って、動ける!?
手や体を動かしてみるも、痛みも違和感も無くなっている。まるで、毒に侵されたのが嘘の様に、回復している。切り落とされた足を見ると、半透明な魔物が引っ付き、中で何かが流動していることが見て取れた。
一瞬で足が融けだす程の猛毒、そんなものに侵された俺を吸収して、平気なのか?
毒が主食の魔物も居るって聞いた事は有るけど、コイツがそうなのか?
毒で死にかけて、虫が穴掘って出てきて、その穴から半透明の魔物が大量に出てきて、そいつに飲み込まれて食われて、回復した?
情報を羅列してみたが・・・何この状況? つまりは全部こいつのせい・・・いや、コイツの御蔭で回復したって事か?
だけど、俺の体内にある毒を食ったとしても、俺自体が回復してる説明にならない・・・・・・
「・・・・・・だーーー!! 情報が足りねー!!??」
訳が分からくなり、頭を掻き毟る。スチーナに<鑑定>して貰うか? あ、でも、鑑定できなかったんだっけ? 意識が朦朧としてたから、聞き間違いかもしれないけど。て、その前に移動しないと、置いて行かれたら、回復した意味がな―――
― スパン! -
そんな混乱する俺に対して、一本の矢が眉間に向かって飛んで来た。
「うおぉ!!?? 危ねぇ!?」
「クソ! 躱したか!?」
飛んで来た方向を確認すれば、次の矢を構えるベズの姿が見えた。
「ちょ!? ベズ待って!?」
「黙れ! そいつの体で喋るな!」
今度は一度に3本も飛んで来た。あの野郎、技まで使ってきやがった! さっき無理やり回避したせいで、態勢が悪い。全部回避は無理、なら<連撃>で叩き落とす!
「な! スキルまで!?」
「待って!? 死んで無いから! 操られても居ないから!!」
今度は、魔力まで込めだしやがった! 全く信じてねぇ!?
いや、分からなくも無いよ? さっきまで死んだと思ってた奴が、魔物に飲まれて動きだしたら、乗っ取られを警戒するわな!
誤解を解く方法・・・方法・・・・・・そうだ!
「スチーナ、<鑑定>して! ゴッコはそいつ止めてー!!」
「ベズ、落ち着けって。スチーナも、放心してないで確認してくれ」
「ふー、ふー・・・」
「ハッ! そ、そうね・・・・・・『鑑定』」
これで、何とかなるかな?
―――
― ガタゴト、ガタゴト ―
スピールが引く車に乗って、荒野を爆走している。怖いのか、帰りまでの距離が分かっているからなのか、スピールが今までに見せた事が無い程の速度で走っているのだ。
・・・・・・今まで、怠けてやがったな、コイツ。
「本ッッッッ当~に、すまない!」
「いや、あれはしゃぁ無いって、うん。もういいから、頭上げて、な?」
そんな中、ベズが床に頭を擦り付けるかの様に下げ、謝罪を繰り返してくる。
自分の性格を知っているからなのか、いつも冷静でいる様に努めてるけど、反動で一度キレると抑えが効かなくなるんだよね。こんな簡単にキレるのは、初めてだけど。
「・・・・・・お前が死んだと思ったんだよ」
視線を逸らしなが、理由を呟く。・・・・・・男がそんな仕草をしても、可愛くないぞ?
「でよ、問題は無いのか?」
「体に違和感はないね、寧ろいつもより調子がいい程だよ。<鑑定>でも、変な所は無かったんだよね?」
「うん、こんな感じ」
名称:草人
氏名:ション
分類:現体
種族:亜人族
LV:26
HP:200 / 1000
SP:350 / 1000
MP: 20 / 150
筋力:300
耐久:300
体力:500
俊敏:300
器用:250
思考:350
魔力: 50
スキル<身体操作LV2><身体強化LV4><連撃LV2><全力攻撃LV4><見切りLV4><集中LV2><隠密LV4><剣術LV4><気配感知LV4><偽装LV2><解体LV4><料理LV1><工作LV2><指揮LV3><団結LV6><伝達LV2>―――
共有スキル: ???? <自己再生LV3><HP回復上昇LV2><MP回復上昇LV2><猛毒耐性LV8><猛毒無効LV8><中和LV5>
鑑定結果の書き出しを見せて貰ったけど、変な所は見られない。あるとしたら、この共有スキルってところか。
「なんだ、この共有スキルって?」
「こいつしか無いだろうね」
俺は切られた足を突き出し、切断面に引っ付いたままの半透明の魔物を見せる。
(プルプル)
「<鑑定>できたか?」
「いいえ、スキルが少し見られたぐらいで、殆ど何も分からないわ。でも、多分だけど、この<共生>ってスキルが原因じゃないかしら?」
「<共生>・・・・・・ねぇ」
名称:???
氏名:???
分類:???
種族:???
LV:??? / ???
HP:??? / ???
SP:??? / ???
MP:??? / ???
筋力:???
耐久:???
体力:???
俊敏:???
器用:???
思考:???
魔力:???
スキル<共生LV5><猛毒――L――><―化LV4><中和LV5><――LV5><融―LV5><吸収LV8><治――V5>
ガチで何もわかんないな。そんな奴が体の中に居るって言うのも・・・・・・
「・・・・・・命の恩人だし、悪意は感じないから、とりあえずは良いか」
「軽!?」
「情報が無いんだから、しょうがないでしょ?」
「ギルドに戻って、報告と一緒に、<鑑定>の迷宮具を使わせてもらいましょう?」
「・・・・・・それしか無いか~」
ガタゴトと揺れる馬車の中から、何もない荒野を眺める。この速度なら、2日位で着くかな?
迷宮主のメモ帳:従魔
他種類の存在の従者となった魔物を表し、基本人種が連れる魔物が対象(同種が相手の場合は、普通に配下)
魔術によって、対象の行動を縛る事で従魔とする、強制型。
特定の条件の下、魔法で契約を結ぶことで力を借りる、契約型。
とても珍しいが、理性的な魔物が自主的に行動を共にする、友情型。
この三つに、大まかに分けられる。
強制型は知能が低い、消耗品となる魔物に良く使われる。
契約型は、理性的な存在と、お互いの利害の元に結ばれるが、契約内容以外の効果を持たない。中には大精霊など、上位の存在と契約すことで、膨大な力を得る事ができるかもしれない。
友情型は、唯の友達。お互いに強制力は存在しない為、暴走する可能性がある。(注意しましょう)




