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あなたが拾ったのは普通の女騎士ですか? それともゴミクズ系女騎士ですか?  作者: 溝上 良
第三章 血みどろ勇者編

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第85話 親方ぁ!

 










 きええええええええええええええええ!?

 親方ぁ! 空から女の子が!!


 普通ではありえない現象に、俺はひどく混乱していた。

 しかも、それが死んでいるはずの人間ならば、なおさらである。


 先日殺した奴が目の前にいいい!?

 お、お化け!? 化けて出たのか!?


 こ、この野郎。俺はちゃんと敵であるお前を埋葬してやったというのに、なんて恩知らずな……。

 いや、そもそも殺したの俺だけど。


 でも、いきなり襲われたのは俺の方だし、完全に正当防衛だし。

 そんなことよりも、どうして死んだはずの奴がここに!?


 あれかな、俺の幻覚だったりするのかな?

 ほら、思い込みでそういうのを見ちゃう人っているらしいし。


 殺しちゃった罪悪感から、被害者の幻覚を見る殺人犯とか。

 ……俺、全然罪悪感とか持っていなかったんだけど。


 おっかしいな。

 いや、あれだろ。そっくりさんだろ。


「て、れしあ……?」


 えー。やっぱり勇者なの?

 降り立った少女を見て呆然と呟く、俺に敵意を向けていた男。


 そんなバカな……。

 ただ、最期に見た勇者とはまた姿が変わっている。


 大人のダイナマイトボディも縮み、最初に出会った時のような子供貧相ボディになっているし。

 全身から噴き出していた血もないし。


 銀髪も比較的艶が戻っているし。

 なるほどなるほど。


 つまり、こういうことだろ?

 か、完全復活して俺に復讐しに来やがった……!


 ……あれ? でも、なんだか肌が浅黒くなってない?

 ろくに日に当たっていないのではないかと思うほどの色白さであったが、今の彼女の肌は浅黒い。


 ルーナの褐色肌とはまた違う色だ。

 日焼けしたの?


「は、はは……勇者か! そうか、生きていたか!!」


 笑い声をあげるのは、何か見当違いな人質をとっているおっさんだった。

 いや、子供を盾にするのは人間的にどうかと思うぞ?


 俺も、本当に必要に迫られた時くらいしかやらないだろうし。

 そんな男は、勇者を見て嬉々としていた。


 お化けを見て、よくそんなに喜べるものだ。気持ち悪い。


「よし、ならば、さっさとそこの騎士を殺せ。化物としての力を、私のために役立ててみせろ。化物同士、殺しあうのがお似合いだ」


 お前……それ、助けてもらうやつの言葉じゃねえだろ……。

 そんな言い方をされて、誰が助けてやろうなんて思うのだろうか?


 とはいえ、勇者はめちゃくちゃ甘い。

 敵である魔族のことでさえも、助けていたくらいだ。


 だから、こんなクソみたいなことを言っている奴にも従うんだろうなあ。

 ちくしょう。またあんな地獄みたいな殺し合いをしないといけないのか。


 い、嫌すぎる。

 鎧さんでさえも手を余した特記戦力だぞ。


 マジで相手したくないんだけど。

 俺が戦々恐々としていると、勇者は俺ではなく叫ぶおっさんの方を見る。


「……? おい、どっちを向いている。貴様の敵は、あっち――――――」


 不思議そうな顔をしたおっさん。

 その表情のまま、首がスパーンと飛んだ。


 …………え?

 おっさんも意味が分からないまま死んだだろうが、俺も……いや、ここにいるすべての奴が分からないだろう。


 というか、子供にこんな凄惨な光景を見せてもいいものか。

 ……と思っていたら、気絶していた。


 そりゃそうか。

 人質にされて、刃物を突き付けられて、鎧さんににらまれるんだもんな。


【地獄から戻ってきたと思えば、まだ頭が狂っているようだな】


 クソ、バーサーカーか。

 だれかれ構わず殺しに来る奴にジョブチェンジしたらしい。


 仕方ない。

 ここは、他の人間をいけにえに捧げて、俺はこっそりと……。


「……失礼ですね、あなたは」


 しかし、意外にも理知的な返事が返ってくる。

 あれ?


 こちらを見る目に理性の色が宿っているぞ?

 俺と戦った時の、壊れた機械みたいな目をしていないぞ?


 光もちゃんとあるし……。


「私はまともです。一度死んだからか、薬の効果もリセットされていますし」


 淡々と話す勇者。

 やっぱり蘇っているじゃないか。


 黄泉の国から舞い戻ってきているじゃないか。

 恐ろしいよ……。


 そんなに俺に報復したかったのか……。

 ただただ怖い。


「勘違いされているようですが、別に私はあなたを殺そうだなんて、もう思っていませんよ」


 感謝……!

 圧倒的、感謝……!


 こちらを呆れたように見る勇者も許してやろう。

 じゃあ、なんで地獄からわざわざ戻ってきたのだろうか?


 天国ではないだろう?

 だって、無実の俺をぶっ殺そうとしていたわけだし。


 地獄の業火に焼かれているはずでは……?


【なぜだ? 私は今から再戦してやっても構わないぞ。貴様は面白い】


 無駄に好戦的な鎧さんの言葉に、俺は鼻水を垂らしそうになる。

 なに生意気言ってんだ鎧風情がよぉ! ああん!?


 勇者様が見逃してくださるって言っているんだ!

 大人しく従っとけや、ボケがぁ!


 ちっ。

 へへっ、すいやせん勇者さん。


 こいつ、随分と調子に乗っているみたいでして。

 あっしが後でしつけておきます。


「……私は、あなたに執着しすぎていました。憎悪だけではなく、それ以外にも不思議な……その、好意的な感情も混じっていたのかもしれません。私と対等、それ以上の存在は、あなたしかいませんでしたから」


 ……好意的な感情を持っていたのに、あんなに全力で殺しに来ていたの?

 ヤンデレ?


 デレがなかったんですけど?


「ですが、二度も敗北したあなたに、これ以上執着はしません」

【ほう、残念だ】


 残念でいいんだよ!

 しかし、俺を見る勇者の目は、理知的で殺しに来ていた時とは明らかに違う。


 どうやら、彼女の言っていることは本当らしい。

 まあ、信頼はしないけどな。


 一度命を狙いに来た相手を信頼するほど、俺はお人よしでも能天気でもない。


「それに……」


 何やらもじもじとしながら俺を見上げてくる。


「私のことを、最期を、看取ってくれましたから。あれのおかげで、私は一人で死なずにすみ、さみしくありませんでした。だ、だから……」


 頬を赤らめて、そっぽを向く。


「あ、あなたには、少しだけ感謝してあげています」


 あ、そっすか。

 化けて出られないようにと看取ったことが、まさかこんないい影響を生むとは。


 情けは人の為ならず。

 素晴らしい言葉ですね。


 そもそも、化けて出てきているのは想定外なのだが。


「て、テレシア! 俺だ、レーリオだ!」

「……レーリオ? 懐かしいですね」


 俺に殺意マシマシだった男を、驚いたように見る勇者。

 二人は知り合いらしい。


 あー……だから、俺にあれほど敵意を向けてきていたのか。

 とばっちりを受けていた俺に、なんてことを……。


 許せませんよ、これは……。


「お前、いったい……」

「私、アンデッドになったみたいです。魔族ですね」

「――――――」


 あっけらかんという勇者に、男は白目をむく。

 俺も驚愕していた。


 あ、アンデッド!? 勇者が!?

 これ、とんでもないことだろ、人間にとって。


 しかし、アンデッドか……。

 何かしらこの世界に強い執着を抱いていたらなりやすいと聞いたことはあるが、あの時こいつは満足して死んでそうだったのになあ。


 何か、別の要因か?

 アンデッドが生まれる自然発生は、先ほど考えた通りだ。


 じゃあ、人為的に発生させるのであれば?

 それは、儀式やらなにやらで無理やりこの世界に引きずり戻すこともできると聞いたが……。


 ここで、俺はハッとひらめく。

 ……あいつか!


 俺の脳裏に思い浮かぶのは、無表情の冷徹魔族繁栄させるウーマン。

 ルーナの野郎、埋葬場所を聞いてきたのは、これが目的か!


 すげえな。無理やり地獄から引き戻してアンデッドにするとか……人道ってものを捨て去ってやがる。

 魔族だから人道もくそもないけど。


「私は魔族に従って人類を滅ぼすつもりは毛頭ありませんが……あなたたちのような人は別です」


 勇者はそう言って、騒ぎを聞きつけて集まっていた傭兵たちを見据える。


「皆殺しです」


 その後、なぜだか知らんが集まって村を略奪していた集団は、ごく一部を除いて皆殺しにされたのは、言うまでもないだろう。




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