第八話「クリスマスイヴ」
この後、前回言っていた刃太郎の異世界の話を投稿しようと思います。
最後の確認などを済ませてからなので、若干遅れると思います。
今日はクリスマスイヴ。
クリスマスの前とはいえ、すごい盛り上がりようだ。すでに、街中では今を楽しんでいる人達で溢れている。
見た感じ男女のペアが多いな。
やっぱりそういうイベントだからな……。明日のクリスマスになれば、子供達も大喜びなんだろうが。クリスマスになれば、サンタが子供達にプレゼントをって感じで。
「そういえば、今年はまだ雪が降っていないな」
気温はかなり低くなってきているが、まだ雪を見ていない。
他のところだと、ちらほらと雪が降っているとニュースでやっていたけど。
「あれ?」
さっきも言ったが、今日はクリスマスイヴ。
なので、前から約束していた通り、リリーと一緒に明日のクリスマスにあるプレゼント交換に向けてプレゼントを一緒に選ぶことになっている。
遅れるとリリーに悪いので、十分ぐらい前に集合場所に到着したつもりだったんだが。
そこにはすでにリリーが立っていた。
なにやら落ち着きのない様子で周りを見渡しながら、スマホを操作している。誰かに連絡を取っているんだろうか。
「おはよう、リリー。随分と早いな。俺も早く来たつもりだったんだが」
「ひゃうっ!? じじじ、刃太郎さん!?」
「お、おう。そうだけど、そんなにびっくりさせちゃったか?」
俺としては普通に近づいて声をかけたつもりだったんだけど。かなり驚いていたようで、スマホを落としてしまう。
が、俺が素早くキャッチし、リリーに渡した。
「いいいいえ!! そんなことはないです!! えへへ」
「……」
「あ、あの。なにか?」
俺は、首を傾げるリリーの頬にそっと触れた。
「わひゃっ!?」
「冷たいな。いつから待ってたんだ?」
リリーは元々肌が白い。しかし、若干の違和感に気づき、俺はリリーの頬に触れ理解した。これは十分よりももっと長く。
三十分か? それぐらいは待っていたであろうほど、冷えていた。
「え、えっと……三十分ぐらい、前ですかね。遅れちゃだめだと思って」
小さく笑う彼女を見て俺は、まったくと眉を顰め、近くにあった自動販売機から温かいココアを買ってリリーに渡した。
「近くにあったんだから、これを飲みながら待っていてもよかったんだぞ。風邪を引いたら、どうするんだ」
「す、すみません……」
あー、なんだかお説教みたいになっちゃったな。リリーのことを心配しての言葉だったのに。とりあえず、早く店に向かわないとな。
ココアでなんとか体は温まるだろうけど。
冷たい風にいつまでも晒されていちゃ、また冷えてしまう。いくら、防寒着を着ているとはいえ。
「それで、さっき誰かと連絡をとっていたようだけど。いいのか?」
「あっ!? ……っと、はい。大丈夫です。そ、それよりも早くお店に向かいましょう! 今頃他の人達も明日のクリスマスに向けてプレゼントを選んでいる頃ですから!」
「そうだな。明日のクリスマスは、皆を驚かせるようなプレゼントを選ぶとするか」
「はい!!」
リリーと集合した俺は、二人並んでプレゼントを買う店へと向かっていく。
が、俺はすぐ足を止める。
そして、周りを見渡し首を傾げる。
「どう、したんですか?」
「いや、さっき有奈や華燐の気配を感じたような気がしたんだけど」
「え!?」
だが、すぐにそれは消えた。
しかも今日はいつも以上に人が多い。色んな気配が混ざっていて、俺の索敵能力じゃ正確な場所までは探れない。
まあ、有奈達もプレゼントを買いに行くって言っていたし、この辺りの店にいるんだろう。
「いや、気のせいだったみたいだ」
「そ、そうですか」
二人はどんなプレゼントを買っているんだろうな。
そういえば、出かける前にリリーとの買い物楽しんできてね! って言われたけど。
なんだったんだろうか。
・・・☆・・・
「さすがに、リリーも緊張してるね」
「うん。まだ四十分も前なのに集合場所に着ちゃってるし」
有奈と華燐は、リリーのことが心配になり着いてきてしまった。とはいえ、リリーにも頼まれたのだ。やっぱり一人だと不安だから、近くで見ていてくれ。
困った時にアドバイスを! と。
「あ、さっそく連絡がきた」
それは、残り二十分ぐらいになってからであった。もう少しで、刃太郎が到着する。やばい! と思ったのだろう。
スマホを手に取り、リリーからの連絡を目にする。
《や、やばい! すごく緊張しちゃって時間間違えちゃったよぉ!》
遠目からでも、わかる。
スマホを手にすごく挙動不審だということに。
華燐は、スマホを操作し返信する。
《落ち着いて、リリー。あんまり挙動不審だと、怪しい人みたいに見えちゃうよ》
《本当に近くにいるんだよね? いるんだよね!?》
《いるから安心して。でも、あんまり近いと刃太郎さんに気づかれちゃうから。集合したら、かなり距離を空けなくちゃならないから、ずっと行動を監視するのは難しくなるかも》
《ふええ!?》
《普通の人ならともかく、相手は刃太郎さんなんだよ? 索敵が苦手だって言っていても、あんまり近いと普通に気づかれるかもなの》
ちなみに、現在二人が連絡を取り合っているのはスマホ専用連絡アプリLINKで作った臨時のグループ。なので、有奈も連絡することができる。
《さっきお兄ちゃんに連絡入れたけど、後十分ぐらいで到着するって!》
《あわわ!? ね、寝癖とかないかな? スカートとか短くないかな? エッチな子だって思われないかな!?》
《お、落ち着いてリリーちゃん。どこもおかしくなよ。うん、可愛いから自信もって!》
そう返信して、満面な笑顔のスタンプを続けて送る有奈。
ちなみに、有奈達はリリーが豆粒ほどの大きさに見えるほど離れている。人が多いほうが気配を探り難いと思い、リリーには悪いが建物の中にいた。
《あ、ありがとうぉ! 有奈ぁ!!》
《それにしても、リリー。寒くない? 近くに自動販売機があるから、温かい飲み物を買ったほうがいいんじゃない?》
さすがに今の気温の中、防寒着を着ているとはいえ、相当堪えるはずだ。近くに自動販売機があるので、刃太郎が来るまで温かい飲み物でと提案したのだが。
《で、でも刃太郎さんに失礼じゃないかな?》
《別に失礼にはならないと思うけど……》
有奈も華燐も知っている。その程度じゃ、刃太郎は気にしないと。むしろ、この寒い中、温かい飲み物や食べ物を摂取せずに待っていたことを心配しそうだ。
そんなことを思っていると、刃太郎本人が登場した。
集合場所にすでにいるリリーを見て、一度足を止める刃太郎。
「やっぱり、お兄ちゃん驚いてる」
「刃太郎さんからしたら、自分のほうが先に来てリリーを待つはずだったろうね」
《ね、ねえ? そろそろだけど》
《ねえ? どうしちゃったの? 華燐! 有奈ー!》
あっと気づきスマホに視線を向けたが、それと同時に刃太郎がリリーに話しかけた。びっくりしたリリーはスマホを落としてしまうが、それを刃太郎がキャッチ。
案の定、リリーがどれだけ先に待っていたのかに気づき、近くの自動販売機で温かいココアを買った。
「そろそろ動くみたいだね」
「うん。私達も気づかれないように、追いかけよう!」
入っていた喫茶店から出て行く。
しかし、ちょっと出ただけで、刃太郎は自分達の気配に気づいたらしく、立ち止まって振り返った。
「バック! バック!!」
「えええ!?」
慌てて、華燐は喫茶店の中に戻るように伝え後ろへと下がっていく。店員はもちろんのこと、近くにいた他の客達も何事だ? と不思議そうに見ていた。
恥ずかしい。
とても恥ずかしい。しかし、それに堪えて、刃太郎達が歩き出したところで、お騒がせしました! と頭を下げてから追跡を開始するのだった。




