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ニコラスとミレイナ前編


「きゃああ! 誰か助けてえええええ!!」

「ははは、いいじゃねえか脱げガハッ!?」

「はははくたばりやがれええええ!!」


 私は通りがかった輩数名に襲われていました。

 そこに


「てめえええ」

「オラオラオラァ!」

「ぐはっ!?」

「何だこいついかれてやがる、づらかるぞ」

「いかれてるのはてめえらも同じだろ! 雑魚が!」


 通りかかったいかつい人がいました。

 彼はニコラスと言います。

 これが、彼と私の出会いです。


「女が何でこんなところにほっつき歩いてんだか、女は家で引きこもってたほうが安全だぞ」

「そう……ですね」

「それじゃあな!」

「あの!」

「ん?」

「名前を聞いていいですか?」

「ニコラスだ。じゃあな!」

「あの!!」

「何だまだ用があるのか? 俺は忙しいんだ! じゃあな!」

「あの!!!」

「だから何だよおおおお!!」

「貴方と仲良くなりたいです!」

「はあ!!?」

 

 私は男性というものが嫌いでした。皆私を性的に見る。セクハラやレイプ紛いもありました。そして、私はこの時運悪く治安の悪いところを歩いていました。そんな私が輩に目をつけられるのは当然のことと思います。私は輩数名にレイプされるはずでした。ですが、そこに彼が通りかかったのです!

 彼も最初見た時は怖かったです。ですが、私は彼に惹かれました。命の恩人ということもあるからかもしれませんね。


「別に俺は女に興味はねえし、お前にも用はねえ。忙しいって言ってんだろ」

「それでもです!」

「はああ、イライラする!!」

「ヒャッ!」

「怯えてるじゃねえか! これで俺が怖くなっただろ! 安心しろ、消えるから」

「嫌です! 消えないでください!」

「はあああああ!?」


 そんなこんなで私は彼についていくことになりました。正直、皆様からしたらこんな彼と私の出会いっておかしいですよね。まあそれはいいとして、


「あの……」

「何だ?」

「好きなものは?」

「はあ?」

「ごめんなさい、うるさいですよね」

「いいよ、答えてやるよ」

「はい!」

「俺が好きなものは男だ」

「え……」

「あ、誤解を招いたな。男をボコるのが好きって意味だ」

「ほお」

 

 彼のその答えにビックリしましたが、却って面白いと思いました。それで私はますます彼に惹かれました。


「オラオラオラァ!」

「何だ。こいつやべえ! 逃げるぞ!!」


 彼はいつも路地裏みたいな危険なところばかりうろつき、男ばかり殴っていました。殴らない男もいましたが。


「ああ楽しい!」

「ですね!」

「はあ!?」

「……私の発言、おかしいですか?」

「俺はそれでいいけど、お前がそれ言うのはおかしいだろ?」

「そうですね。ですが、私もおかしな人間です」

「お前意外に面白い人間なんだな」


 それで、私と彼は仲良くなりました。


「ニコラス」

「何だ?」

「私も男を殴りたいです」

「はあ!?」

「おかしいですか?」

「女が男殴っちゃいけないだろ。それにお前か弱いし」

「それでも男を殴りたいです」

「はあ……」


 ニコラスはため息をつき、しばらく考えた後。


「とりあえず、パンチをしてみろ」

「えい! こうですか?」

「それをパンチとは言わない」


 そんなこんなで私の鍛錬はパンチから始まり、ニコラスから体術をどんどん学んでいきました。

 そして、私とニコラスは、只管、男どもをボコボコにしました。

 ただ、先ほども言った通り全ての男をではありません。


「一応、お前も男をボコっていいが、ルールがある」

「ルール……ですか?」

「ああ、逃げてる男や弱そうな男やこちらを攻撃してこない男は殴るな」

「女は殴っていいですか?」

「俺は女に手を出さない主義だが、お前が女を殴りたいなら好きにすればいい」


 皆様、ニコラスが男をただ殴ってると思われているかもしれませんが、彼もちゃんと考えてはいます。まず、彼はいかつい顔で威嚇しながら歩いてます。それを見て怯えてる男は彼は攻撃しません。そして、


「てめえ、何見てやがる!?」

「ああ、やんのかごらあああああ」

「このやろっグハッ!」


 みたいな彼の目を見て、威嚇して襲いかかる男は普通にボコボコにします。


「おりゃ!」

「グハッ!」


 そして、私も次第に男をボコれるようになりました!


「ミレイナ、すげえな。最初はパンチすら出来なかったのに」

「エッヘン、私もすごいのです!」


 そして、私達は次第に有名になりました。簡単に説明すると路地裏にやべえ男と女がいるみたいな感じです。しかし、それが仇になりました。


「死ね! ニコラス!」

「二コラス! 危ない!」


 ニコラスは体術はすごいです。だからナイフを持って襲いかかってる輩はあまり、問題はありません。ですが、この時ニコラスは初めて銃で狙われたのです。私達としてもそれは想定外でした。そして、ニコラスが銃で狙われてることに気づいた私は咄嗟にニコラスを守りました。


「ミレイナ!? てめええええ!!」

「速っ!? グハッ」


 その声が聞こえた後、銃声が鳴りました。多分、ニコラスが銃を持っている男から銃を奪って、その銃でその男を撃ったんだと思います。ニコラスはボコってはいましたが、逃げてる奴は追わないし、殺しはしない人間です。ですが、この時ニコラスは初めて男を殺しました。


「うううう」

「ミレイナ!! 待ってろ! 今助けてやる!」


 そこから私の意識は途絶えました。


ーーーー。


 そして、気が付くと私は病院のベッドの上にいました。

 目の前には私の手を握って、うな垂れているニコラス。


「ううう」

「ミレイナ!」

「……ニコラス」

「ミレイナ! 良かった……良かった……!」


 後で、ニコラスに聞いたのですが、私はこめかみから大量に出血しており、一歩遅ければ死んでいたと医者が言ってたのだそう。しかし、彼があの場所から私を抱えて病院に運んだことを考えるとすごいなと思います。

 そして、私の入院生活が始まりました。


「ち、お金どうするかなあ」

「ニコラス、すいません。私のせいで」

「いや、お前は気にするな。入院代は何とか稼ぐから」


 ニコラスは残念ながら頭はよくありません。自分を馬鹿だと思っている私よりも馬鹿だと思えるくらいにです。なので、お金を稼ぐ仕事に就くのは難しいでしょう。お金は私が支援したり、ニコラスがボコった輩から奪ってたりしてましたが、私もお金持ちではないですし、輩から奪えるお金もたかがしれてますから、そんな私達が高額な入院代を払うのは難しいことは容易に想像出来るかと思います。

 そして、次のお見舞いにニコラスが来た時に、ニコラスは私にこう言いました。


「ミレイナ。俺、ヤクザになった」

「ヤクザっですか?」

「ああ、一応考えたんだぜ? 最初は通りすがりの裕福そうな人間からお金を搔っ攫おうと思ったが、俺はあまりそんなことをしたくないし、治安がある場所だと察が厄介で難しい。ヤクザならある程度権力があるし、同じヤクザから金を奪ったり、また頭から報酬を貰えるだろう? だからそっちのほうがまだ現実的だと思ってな」

「ですが、ニコラス」

「ああ、危険だ。だから退院したらお前はもう俺に関わるな」

「嫌です! 嫌です!!」

「だから俺にはもう関わるな! じゃあな!」


 それ以来、ニコラスは私に会いに来ませんでした。勿論、入院代は出してくれたので、私は普通に退院出来ました。ですが、私はニコラスを諦められませんでした。ニコラスがヤクザになったという情報から探り、私もヤクザになりました。私もニコラスと同じ強い人間にはなれているし、ニコラスの次に有名でもあったので、ヤクザになるのは難しくはありませんでした。ただ、ヤクザもたくさんいるとは思うので、これは命も危険ですし賭けにもなるわけです。ですが、運命ってすごいですよね。


「ニコラス」

「はい頭……え」

「紹介しよう今日からお前とチームを組むことになったミレイナ・アマリリスだ。女だが強いぞ」

「ミレイナ……」

「ニコラス!」

 

 ニコラスと再び会えたのです!

 私はニコラスに駆け寄り、彼を思いっきり抱きしめました。


「何だお前ら知り合いか?」

「あ、ええ」

「ニコラス! ニコラス!!」


 こうして私はニコラスと再開しました。

 その後、二人きりで話をしました。


「何でお前がここに来るんだよ!」


 ニコラスはすごい剣幕で怒りました。


「何でニコラスは私から逃げるんですか!?」

「はあ!?」

「男からは逃げない癖に」

「それは関係ないだろ!」


 ニコラスは怒り続けましたが、それでも私が聞かないので、


「はあ、仕方ねえな。だが、お前はぜってえ死なせねえ、だから俺からは片時も離れるな」

「はい!!」

「はあ、面倒くせえ。お前を守る分俺はさらに苦労するんだが」

「今の私が強いことは知ってるでしょう?」

「まあ、それはそうだが」


 こうして私達はチームを組んでヤクザをやり始めたわけです。確かに、路地裏をたむろっているよりは危険でした。ですが、私達はあの時より遥かに強いし、連携も出来上がっているので、これもあまり問題はありませんでした。しかし、ヤクザも一応法には触れます。次第に警察とも抗争することになりました。


「ニコラス、ミレイナ次からは厄介なミッションになる」

「何ですか?」

「わしらは警察にも目を付けられた」

「え」

「ただ、わしにも考えはある。金があるからロボットを導入しようと思っている」

「ロボット……ですか?」

「ああ、お主らは優秀だからロボットも扱えるだろう」

「俺はいいですが「はい、私達にやらせてください!」「ミレイナ!」「いいじゃないですか! 私とニコラスならどんな敵でも楽勝です!」「はあ……」


 こうして、私達はロボットを任せられました。しかし、ニコラスは


「ミレイナ」

「はい?」

「逃げよう」

「え?」

「さすがに俺達でも察は相手に出来ねえ、俺はまだいいがお前だけは死なせるわけには行けない」

「ですが、頭たちは?」

「いいんだよそれは」

「しかし」

「お前が助かればそれでいいんだよ」

「分かりました。しかし、二コラス」

「何だ?」

「私を一人にはしないで下さいね。それだけは約束してください」

「はあ、分かったよ」


 こうして、私達はロボットを使って誰もいない森の中に逃げました。話を続ける前に皆様、ヘブンズワールドのクリス編は読んでいるでしょうか? ニコラスは単なる野郎から赤いロボットを乗りこなす”一人小隊”にまで成り上りました。そこまで、続けてみます。

 森の中は安全でした。獣はいましたが、私達の強さなら問題はないですし、却って獣が食料になって食いつなげました。私達は森の中でいろいろ技術も磨き、小屋を建てたり、これから先の生活について考えるようになりました。


「二コラス、ここまで来てしまいましたね」

「ああ、そうだな」

「私怖いです」

「俺もだ」

「でも楽しいです」

「え?」

「怖くて楽しいです」

「何だそりゃ」


 私としてはここでゴールなのですが、ここでの生活を一年してニコラスがこう切り出しました。


「なあ、ミレイナ」

「何ですか?」

「俺さ、ここでお前と生活してて何か少し考えたというか」

「考えた?」

「今、俺と生活してて楽しいか?」

「楽しいですよ」

「でも、最近のお前は楽しそうに見えない」

「え?」


 確かに、ニコラスの言ってることは当たってました。最初はゴールと思って楽しかったのですが、次第にマンネリというかつまらない気持ちになっていました。それをニコラスは察していました。


「大丈夫です。楽しいです」

「だから、俺には楽しそうに見えないの!」


 そして、ニコラスは


「俺がお前に新しい友達を紹介する」

「友達……ですか?」

「目をつけた奴がいる」

「男……ですか?」

「男だが、男にしては良い奴だ」

「分かり……ました」


 最初、私は男と聞いて怯えました(今、強い私が怯えるってのもおかしいですね)が、ニコラスが紹介する人なので、良い人だと信じようと思いました。


「よっ! ミレイナ」

「ニコラス、お帰りなさい。そちらの方は」


 ニコラスが男性を連れてきました。


「ミレイナさんだね?」

「はい、ニコラスが紹介するという友人の方ですよね?」

「ああ、そうだ。初めまして」


 その人は温厚な顔でした。ちなみに性的な感じもない紳士的で優しそうな人でしたから、性に敏感な私でも抵抗はありませんでした。ニコラスは本当にいい友人を私に紹介してくれたのです。

 そして、私達は三人で楽しく過ごすことになりました。ちなみにその友人はロベットと言います。彼との思い出も少し紹介しましょう。

 まず、彼は私と二人きりになろうとはしませんでした。ニコラスから私が男性に抵抗があると聞かされて配慮してくれたのでしょう。本当に良い人です。で、何か見覚えのある顔だとも思いました。


「ミレイナ」

「はい、ニコラス」

「ロベットは医者だ」

「医者?」

「分かるだろ? お前が入院していた病院」

「ああ!」


 そうです。ロベットは私の入院していた病院の院長先生だったのです。その時は、顔を少し見た程度ですし、名前も知らないのであまり意識はしてませんでしたが、記憶には残っていました。


「正直、最初君達を見た時はビックリしたよ。急に男性が一人でこめかみから大量に出血している女性を抱えて、私の病院に駆け込んで来たのだから」

「あの時はすいません」

「いいよ。あれから君達にも興味が湧いてはいたよ」

「しかし、どうしてここに?」

「本当は私も医者という立ち位置だし、君達がどういう人達かは一応知ってはいたから最初は断ったのだがニコラスがどうしてもって頼むもんだから、私の身分を保証するという条件でオーケーを出したんだ」

「へえ」

「まあ、そういうことだ。これからはこの三人で過ごそうぜ」

「だが、ニコラス。私は医者としての仕事があるからここにはたまにしか顔は出せないよ?」

「ああ、それでもいい。ただ、ミレイナに手を出したら許さないからな」

「じゃあ、何故私をここに連れてきた?」

「ああ、それは……」

「ハハ……ハハハハハハ!!」


 私は彼らのその会話を聞いて、笑い声を上げました。人生で一番笑ったのかもしれません。そして、三人での生活が始まりました。楽しかったです。しかし、その生活も長くは続きませんでした。

 その日はニコラスとロベットが電話をしていました。


「ニコラス、まずい」

「どうした?」

「感づかれた」

「え?」

「私がうっかり、口を滑ってしまった」

「はあ!?」

「すまない。君達はこのまま隠れていてくれ。私は自首する」

「はあ!? 俺とミレイナはどうするんだ!?」

「君たちはまた二人で幸せに暮らしてくれ」

「はあ!? 何のために俺がお前を呼んだと思ってるんだよ!?」

「しかし」

「どこにいる?」

「しかし」

「話は後だ。どこだ!?」

「今、私の病院の近くの路地裏で電話をかけている」

「俺がロボットで迎えに行くから待ってろ」

「……ああ」


 ニコラスが電話を切った。


「ちょっと出かけてくる」

「どこへ?」

「どこだっていいだろ」

「ニコラス」

「ん?」

「その顔とその言葉で察しました。危険を冒すのでしょう?」

「……それは」

「電話の相手はロベットさんでしょうか?」

「何故、それを?」

「だってニコラスが電話をするのはロベットさんだけですもん」

「ハハハハ、確かにそれはそうだな」

「私も行きます」

「ダメだ!」「ニコラスが危険を冒すのに一人で待っているのは出来ません。ロベットさんも心配ですし、ロボットも一機よりは二機のほうが戦力になります。嫌と言っても行きますからね!」

「はあ、分かったよ。とにかく急ぐぞ!」


 そして、私達は出撃しました。思ったよりロベットの救出は楽でした。ロベットはすぐ見つかり、ニコラスの機体に乗り、私達は帰還しました。


「これから、どうするか……」

「……」

「うーむ」


 これからの生活について私達はいろいろ話し合いました。私とニコラスは問題ありません。二人でもここで生活してましたから、ただロベットさんはそうはいきませんでした。私達の生活に馴染めるような人ではないのです。清潔な豪邸に住んでましたし、高級料理を食べます。ニコラスはそれぐらい我慢しろと言いましたが、彼もそこは譲りませんでした。それで、ニコラスが稼ぐという話になったのです。私も行くといいましたが、ニコラスがお前はロベットの世話をしてくれと頼まれましたので、仕方なくそれを受け入れました。しかし、稼ぐと言っても簡単ではありませんよね。私達は犯罪者です。普通の仕事すらさせてもらえません。そこからです。彼が”一人小隊”という傭兵になることになったのは……。


 とりあえず、私達のこれからの生活はロベットさんが考えてくれました。彼は病院の院長先生というだけあって、頭も良いですしさらにびっくりしたのがロボットにも詳しいのです。彼がいろいろ考え、私達もそれを勉強しつつ、物資の入手や力仕事は私とニコラスが担当しました。

 

 続く。

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