アータ編
目の前に少女がいる。
「君は怖くないのかい? 僕が」
「貴方は私を殺すのかしら?」
「面白いことを言うね君。そんな君を殺すのは勿体無い」
――。
今回の任務は目の前の人を説得すること。危険な人間だけど、私は命を懸けてでもヘブンズワールドを実現してみせる。
「面白いことを言うね。そんな君を殺すのは勿体無い」
「なぜ、殺戮をするの?」
「決まっている。選別さ」
「選別?」
「ああ、愚かな人間共を皆殺しにし、新人類が栄える未来を創る」
「それは傲慢だわ」
「そうやって、綺麗ごとを並べて愚かな人間を栄えさせる気かい? その手には乗らないよ」
「悪人が更生するという考えはないの?」
「ないね。悪人は悪人のまま。愚か者は愚か者のままさ。だから選別するんだ」
「それは偏った考えね。間違った考え。認めるわけにはいかないわ」
「では何をもって悪人が更生すると主張するんだい」
「更生した悪人ならたくさんいる。マルクスだってそう」
「証拠は?」
「証拠……」
マルクスは来世を歩んでいて、今は会えないし、どうしよう。
「少なくとも僕の世界のほとんど大半は悪人だらけだ。また、僕は更生した悪人なんて見たことがない。君は別の世界の住人みたいだね」
「なぜそれを……」
「僕の力を甘く見ているのかい? 僕は神に選ばれた人間なんだよ?」
「そうなの? なぜ神は貴方を選んだのかしら? 謎だわ」
「僕を馬鹿にしてる?」
「ええ」
「なるほど、残念だよ。君は僕の世界の住人に相応しいと思っていたが、見当違いのようだ」
そう言うと、彼は私に急接近してきた。殺しにかかる気だ。
「冥土の土産に教えてやるよ! 僕の名前はアータだ!」
「ヘルフェス!」
「な!?」
彼の大剣をヘルフェスが受け止める。
「アリサ様に敵対するものは何人たりとも許せん」
「ほう、君は面白い者を連れてるね。ただものではないわけだ」
「アータ、降伏しなさい」
「嫌だね!」
そういうと彼はヘルフェスへ襲い掛かる。
「ヘルフェス。補助コマンドを使って」
「はい」
補助コマンドとは、霊界からの補助で、キュアリスがヘルフェスへ戦闘などのアドバイスをいろいろする機能である。
「な!? 僕の攻撃が当たらない!?」
「補助コマンドに頼るとは俺も落ちたものだっ!」
「だが、これなら! な!?」
「アータ、なぜ貴方が私たちに勝てないか分かる?」
「そんな、僕には神がついて「貴方には邪神がついてるからよ」
「邪神だと!? 僕についてるのは!! くっ!」
彼の大剣が弾き飛ぶ。
「勝負あったな。とどめ「ヘルフェス待ちなさい!」
「な!? アリサ様」
数秒の沈黙。
「僕を殺す気かい?」
「いいえ、保護するわ」
「保……護」
彼は眠りに落ちた。




