翼の日常編
「心配ですね、エックスさん」
「だからエックスって呼ぶなっての」
エックス……じゃなかったマックスさんが俺の頭に軽いチョップをする
「大丈夫だ、ミディは強い女だからな」
「そうですね」
俺たちは数時間ほど待った
手術中のランプが消える
中から医者が出てきた
「先生!!」
「良かったですね、赤ちゃんが無事生まれてきましたよ」
「本当ですか!?」
俺たちは手術室に案内してもらった
中には嬉しそうに赤ん坊を抱きかかえるミディの姿があった
「ミディ!!」
「マックス!!」
二人は抱き合う
赤ん坊が生まれたようで二人共歓喜に浸っているようだ
「マックスも抱いてみる?」
「あ、ああ」
マックスは赤ん坊を抱いた
その顔は普段のマックスとは違った
警察官の顔じゃなく父親の顔だ
「これが、俺たちの赤ん坊か」
「ええ」
しばらくすると
「翼も抱いてみる?」
ミディがそう言い放った
「別に俺はいいですよ」
「いいの、遠慮しないで」
ミディは無理やり俺に赤ん坊を抱かせた
うーん、何て言えばいいんだろう
赤ん坊に興味がない俺が抱いても
全く嬉しくはない
そう言ったらミディに殺されそうだが
ミディはしばらく安静ということで病院に残ることになった
俺とマックスさんは病院を出る
「俺の……初めての赤ん坊……」
こいつ将来親ばかになりそうだな
「良かったですね、エッ、じゃなかったマックスさん」
俺はつい彼のことをエックスさんと呼びそうになる
気をつけねば
「ああ、本当に良かったよ」
電子特殊警備隊本部についた
中に入ると相変わらずダンコンさんが書類と睨めっこしている
ダンコンさんは俺たちに気がつくと書類から目を離し顔をあげた
「おお、翼、マックス、お帰り」
「ただいま、ダンコンさん」
「それでミディの様子はどうだった」
「無事生まれたんですよ! 赤ん坊が!!」
「本当かね、それは良かった」
ダンコンさんも嬉しいのだろうか
表情がほころぶ
そんなこんなで俺たちは平和な毎日を過ごしている
電子空間に今だウイルスは出てこない
ただその分現実世界の犯罪捜査に手を貸すはめになっているのだが
そういえばアリサは元気かな?
俺はあの時彼女に告白した
彼女はありがとうと言っていたけど
きっと振られたに決まっている
チキンな俺はすぐその場から去ってしまったしな
「赤ちゃん……か」
俺も赤ちゃんが出来たらマックスさんみたいに喜ぶのだろうか?
まあその日はまだまだ先になりそうだけどね
俺はいつもどおり掃除をしながらそんなことを考えるのだった




