勇者育成計画編
ー勇者育成計画編ー
~あらすじ~
アリサは今まで訪れてきた世界に再び訪れ
皆が成長した姿に感嘆としていた
そんな中アリサは新たな仕事を任される
”勇者育成計画”
アリサは新たな仕事にそう名づけた
私は次の世界へ来た
この世界来た覚えがある
私はとある部屋にいた
「久しぶりね!朝倉道夫」
「おっいつぞやの少女じゃないか久しぶり」
彼は白髪に染まっていて結構老けていた
久しぶりと言っても私にとっては数年後の出来事でしかなかった
どうやら世界によって時間の進み具合が違うらしい
彼は前とは随分立派な家に住んでいた
「あれから俺、考えてたんだよ」
道夫は語りだす
「お前の苦しみから逃げているという言葉がずっと頭の中を反響していた」
「・・・・・・」
「”あなたみたいな責任を誰かに丸投げするような人がたくさんいる世界は平和と呼べるのかしら?”そうも言ってたな」
「懐かしいわね、覚えてるわ」
「それで俺、お前の言われた通りボランティアを始めてさ」
「・・・・・・」
「最初は戸惑ってたよ、人間関係にも慣れてなかったし」
「そう、大変だったわね」
「でも次第に慣れてきた、それで楽しくなってきたんだ人と接することが」
「それは良かったわね」
「そこから俺の人生が始まったと言ってもいい、俺は今では”国際事業団”の社長をしている」
「へえ」
「また、国際平和賞と言うのも受賞した」
「それはよかったじゃない!おめでとう」
「全てお前のおかげだよ」
彼はあの時からとても成長した
やはり”ラタルタの予言”に嘘は無いのね
「私は何もしてないわ、あなたが頑張ったおかげよ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ、それより」
彼は視線を私から外して言った
「彼は誰だい?」
「彼は私と一緒に旅をしている仲間よ」
「仲間だなんてそんな、わたくしはアリサ様の忠実な下僕です」
「はあ」
ヘルフェスがまた余計なことを言う
「そう言えばあれから名前を名乗って無かったわね、私はアリサ・レイニード、こっちはヘルフェス」
「俺は朝倉道夫って君、俺の名前を知ってたね」
道夫が苦笑する
ピカーン
花のペンダントが光った
「次の世界へ行かないと」
「ええ?もっといてもいいのに」
「ごめんなさいね、ほかの世界も救うことが私たちの仕事でもあるの」
「そうか、お互い頑張ろうな、世界平和のために」
「ええ、さあヘルフェス、行くわよ」
「はい、アリサ様」
私たちは朝倉道夫がいる世界から旅立った
次の世界
この世界も見覚えがある
南亮太がいる世界だ
彼は今大学生だ
随分と偏差値の高い大学みたいだ
彼もあれから立ち直ったようで
私に感謝の言葉をかけてくれた
将来は医者になりたいそうだ
私も彼が立派に成長してくれて嬉しい
次の世界
この世界も見覚えがある
電子空間がある世界だ
「久しぶりだなあ、アリサ」
「ええ、久しぶり」
マックスが私に声をかける
「お前のおかげであれから電子空間にウイルスが出なくなった」
「それは良かったわね」
「正直、仕事が減って暇でもある」
「そう」
「アリサ、今日のエックスさんかっこよかったよ」
翼がマックスの自慢をする
マックスは今日、強盗を取り押さえていて
翼はその一部始終を見ていたそうだ
「翼、何度も言うがその呼び方はやめろ」
「ええ、いいじゃんミディもそう呼んでるし」
「お前が言うとイラッとくる」
そう言ってマックスは翼に軽いげんこつをする
彼には”エックスさん”というあだ名がついている
理由は額にXマークの傷があるからだ
彼はこの傷を十字架の傷と言っているが
どっからどう見てもXにしか見えない
花のペンダントが光った
「ごめん、次の世界へ行かないと」
「ええ!?もう行くの?」
翼が残念そうに言う
「ごめんなさいね、これが私の役目だから」
「そうかあ、また会えるよね、アリサ」
「ええ、会えると思うわ、ミディによろしく伝えておいてね」
私はそう言い残しこの世界を旅立った
最近前来たことがある世界を行ったり来たりしてることが多い
これも何か意味があるのかしら
次の世界は・・・・
「懐かしい・・・・」
私の世界だ
私はアマリアの屋敷を訪れた
「アリサ様、お久しぶりです」
屋敷のメイドが挨拶してきた
私はアマリアを呼ぶよう催促した
「アリサ!!!!」
アマリアは私を見るなり抱きついた
久しぶりの再会だ
とても嬉しいのだろう
私もアマリアに会えて嬉しい
彼女と過ごす期間は長かったからだ
「アリサ」
「何?」
「そっちの彼は誰かしら?」
「彼はヘルフェス、私の仲間よ」
「仲間じゃなくて下僕です」
ヘルフェスが私の言葉を訂正するかのように言う
「そ、そう」
私たちは他愛のない会話をしていた
久しぶりの会話は盛り上がった
「それじゃあ、アマリアこの辺で」
「もう行ってしまうのか」
「ええ、他にも見て回りたいところがあるから」
「そうか、また会えるよな」
「もちろんよ、それじゃあね」
私はアマリアと別れた
私たちは思い入れのある場所へ行った
まずは自分の家がある場所
残念だけど私の家は取り壊されて店らしきものがあった
「私は親不孝だな」
私は家を出て以来一度も両親に会わなかった
両親はさぞかし私とお兄様を心配していただろう
次の思い入れのある場所へ向かう
クレメンスさんの家だ
彼の家は今でも取り壊されることなく残っている
良かった
やはり思い入れのある場所は残ってると嬉しいのだ
そして最後にお花畑に向かった
いつもお兄様とよく来ていたところだ
「ヘルフェス」
「はい?」
俺たちは花畑に来ていた
「ここで花摘みをしましょう」
「ええ、構いません」
アリサ様は花を摘みながら昔話を聞かせてくれた
”兄と冒険したこと”
”このペンダントはアリサ様たちが助けた人からもらったこと”
”数名の輩に襲われたとき兄が助けてくれたこと”
”クレメンスさんは優しくていい人だったけど怒ると怖かったこと”など
花を摘みながら昔の話をしているアリサは生き生きとしていた
普段の凛々しさが微塵も感じられない
俺たちはある程度花を摘み終えた
「ヘルフェス、後ろを見ていてちょうだい」
「あ、はい、アリサ様」
しばらく待つ
アリサ様は俺の後ろで何かしている様子だった
「もういいわよ」
俺は後ろを振り返る
「これあげる」
それは花で出来ていた腕輪だった
「いいんですか?」
「ええ、あなたにはとても感謝しているわ、こんなものしか渡せないけど」
「いえ、とても嬉しいです」
俺は歓喜に浸っていた
アリサ様からの初めてのプレゼントだ
とても嬉しかった
私は花の腕輪をヘルフェスにプレゼントした
彼は大層喜んていた
彼の喜びようを見ると私まで嬉しくなる
ふと私はある衝動に駆られた
何かお祈りをしたくなったのだ
辺りを見渡す
近くには木が立っていた
ヘルフェスとはこれからも一緒に世界を救う旅をすることになるだろう
私はこれからの事も含めて木の前に立ち願い事をした
「神様、どうかこの世界が幸福で満たされた平和な世界になりますように」と
「あれ?」
私はある場所にいた
ここも見覚えがある
天国だ
「アリサ?」
「お兄様!?」
目の前にはお兄様がいた
「久しぶりだなあ」
「ええ、久しぶり!」
私たちは再会のハグを交わした
その場でお兄様と少し話をしていた
お兄様は今も迷える魂を救う仕事をしているらしい
皆最初は聞く耳を持たないが
徐々に更生してくようだ
そのありようを見るのが楽しいと言うのだ
「ラタルタ様に会いに行こうか」
「そうね」
私たちは教会の中に入る
「お帰りミハエル、そしておめでとうアリサ」
「え?何??」
私は戸惑った
突然おめでとうなんて言われたから
嫌な予感がした
「まさか、私、死んでないでしょうね?」
「君は死んだよ」
え?え?
そんな唐突に言われても
「前にも言ったと思うが」
「新しい仕事?」
「ああ、君にはこれからそれをやってもらう」
「ちょっと待ってちょうだい」
私はヘルフェスのことが気にかかっていた
私は天国から彼を見つめる
彼は倒れている私を抱きかかえながら泣き喚いていた
「ヘルフェスはどうするのよ!!」
「彼には彼の役目がある」
「なによ・・・・それ・・・・・」
私は少しの間唖然として
こう言い放った
「私のときもフリンクの時もそうだけどあなた私たちから大切な人を奪って心が痛まないの?」
「君はレコーディアの望む世界がいいのかい?」
唐突に聞かれた
「いえ、彼の世界は間違っていると思うわ」
「なら今の君には分かるだろう」
「何がよ?」
「人は苦しみと悲しみを乗り越え成長し、その先に本当の幸せがあることが」
「・・・・・・」
私は間を置いてこう言い放った
「でもあなたのやり方酷過ぎよ」
「そういう苦しみも必要だ」
「あなたには悲しみというのがないの?」
「アリサ!!」
お兄様が私に少し声を荒げて言う
「ラタルタ様だって苦しいんだ悲しいんだ」
「でも・・・・・・」
「彼は君よりも辛い体験をしてきている」
「・・・・・・・・」
「彼を悪く言うのは関心しないな」
「もういい、ミハエル、彼女の言うことも一理あるのだ」
ラタルタはミハエルを制して言う
「アリサ君、私は君の気持ちも痛いほど分かってるつもりだよ」
「あなたの口調からそれを感じ取ることはできないけどね」
「それは私がそういう性格だからだ、私は感情をあまり表に出さない」
「・・・・・・」
「それで良く人から誤解されるよ、お前には血も涙もないのかって」
そう言うと、彼の目から少量の涙が溢れた
「だが私だって一人の人間だ、悲しむことや苦しむことだってある」
「・・・・・・」
「どうか分かってほしい」
ラタルタは私に懇願するかのような口調で言った
「もういいわ、私もいろんな苦しみを経験してあなたに似てきたようなもんだし」
「・・・・・・」
「それで、私の仕事は何かしら?」
「付いてきなさい、案内するよ」
「僕は出かけるね救わないといけない魂があるから」
そう言ってミハエルは出て行った
私はラタルタについていく
「ここだよ」
私は神殿みたいな場所に連れてこられた
中に入る
「あらラタルタ様」
「キュアリス、アリサ君を連れてきたよ」
「お久しぶりですアリサさん」
「久しぶりね」
キュアリス
前にどこかの世界で会ったことがある人物だ
「アリサ、言っておくが彼女は神だ」
「え?」
どうやらキュアリスはその利他性が強いためか
神に抜擢されたらしい
「ラタルタ様、そんな風に言わないでください、私が神になるなんてとても恐れ多いことだから」
「いや、妥当だろう、君は生前も良く人を癒していた」
「私はただ皆の笑顔がみたいだけです」
キュアリスはそう言った
確かに彼女の発言にはカリスマ性を感じるし
神に抜擢されるのもありえるかもしれない
「それで私の仕事は何かしら?」
私は単刀直入に聞く
「ええ、私たちの仕事は各世界から勇者を選別することです」
「え?」
何それ
「勇者を集めてどうするの?」
「それは私にも分かりません」
「神にも何か考えがあるのだろう」
ラタルタが口を挟む
「それであなたには勇者を選別、育成するのに協力して欲しいのです」
「そう」
「不服ですか?」
「ちょっとね」
私は今まで世界を救うために旅をしてきた
ヘルフェスとのこともある
それを放ったらかしにして別の仕事をやれと言われても困るのだ
「私の仕事、そんなに嫌ですか?」
キュアリスが今にも泣きそうな口調で言う
「その前にヘルフェスに会うことは出来るかしら?」
「残念ながら今はそれができない」
ラタルタが言う
「そう、彼も苦しむ必要があるのね」
「ああ、彼は君のおかげで罪をある程度消すことが出来た、しかし」
「しかし?」
「彼は君に依存しすぎている、全然成長出来ていないのだ」
「・・・・・・」
「彼にもこれからは成長しながら苦難の道を歩んでもらう、君みたいにね」
「そう」
私は納得した
確かに彼は私に依存しすぎている
「アリサさん、何とかこの仕事、受けてもらえませんか?」
キュアリスが懇願するような口調と目で私に話しかける
ここまでされたら断りにくい
「え、ええ構わないわ」
「あ、有難うございます!!」
キュアリスは天使のような笑顔で微笑んだ
「これからよろしくお願いしますね、アリサさん」
「ええ、こちらこそ」
私たちはお互いに握手を交わした
「さて、そろそろ私は戻るよ」
「ラタルタ様もお疲れ様です」
キュアリスがラタルタに労いの言葉をかける
「ああ、君たちも頑張ってくれたまえ」
ラタルタはそう言うと神殿から出て行った
「新しい仕事か」
私は少量の悔いを残しつつも新しい仕事にワクワクしていた
神と共に仕事をするのだ
そりゃ気分も上々になるだろう
”勇者育成計画”
私は自分の中でその仕事にそう命名した
ー勇者育成計画編ー
完
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「ヘブンズワールドー勇者育成計画ー」を見ておくことをお勧めします!




