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文化部、歴史の英雄をプロデュース!?

 夢占いの一件から一夜明けた放課後――。

 ガチャッ!!!

 生徒会室の扉が勢いよく開かれた。

「助けてくれ、会長!!!」

 生徒会長・大野博美が書類整理をしていると、血相を変えた伊勢野真平が全力で駆け込んできた。

「……何?」

 博美は眉をひそめ、静かに視線を向ける。

「文化部が!! 文化部が ‘俺を韓信’ にする気で暴走してるんだ!!!」

「……は?」

 博美は一瞬考えた後、冷静に言った。

「詳細を聞こうじゃない。」

 真平は椅子に座り、息を整えながら語り始めた。

「昨日の夢占いのせいで、文化部のやつらが ‘俺が韓信の生まれ変わり’ みたいな扱いし始めたんだ……。」

「昨日の時点で嫌な予感はしてたけど、予想以上に文化部の暴走が加速してるのね。」

「朝から琴美が『決めた!! 文化部で “韓信伝” の映画を撮るわよ!!』とか言い出して……」

「……映画?」

「そう! で、監督は琴美、アクション指導はシャオ、撮影は勇馬、脚本は沙羅。そして俺が 主演・韓信役 だ!!!」

「……あなた、まんまと ‘主役’ じゃないの。」

「俺も拒否した!! 全力で拒否した!!!」

「なのに?」

「琴美が『真平が主演しないと、文化部全員で “股くぐり土下座” の儀式をする』って脅してきて……。」

「……股くぐり?」

「そう! 『韓信をリスペクトするなら、やらなきゃダメでしょ!』とか言ってさ!! しかもシャオが『パォ~♪ それはとても “歴史的” ですね~!』ってノリノリで……。」

「……もう文化部全員が ‘韓信を讃える会’ みたいになってるじゃない。」

「そうなんだよ!! それに琴美が『どうせやるなら壮大なクライマックスシーンを作るわよ!』とか言い出して、最終的に俺が『洞窟の奥で処刑されるシーン』を再現するらしいんだ!!!」

「……それ、普通に “歴史映画” じゃない。」

「そう!!! だから俺は今、生徒会室に逃げてきた!!!」

ガチャッ!!!

「見っけたぁぁぁ!!! 韓信ー!!!」

「ぎゃぁぁぁ!!! 琴美!!!?」

扉の向こうには、満面の笑みで両腕を広げる吉峰琴美。その後ろには沙羅、勇馬、シャオ、美優まで勢ぞろい。

「逃げたらダメよ! 主演の ‘韓信様’ !!!」

「いや、逃げるだろ普通!!! ってか、お前ら映画撮影のために ‘本物の洞窟ロケ地’ まで探してただろ!? 俺をリアルに処刑するつもりか!?」

「まぁまぁ、歴史の再現だから!」

「歴史の再現って、 ‘俺の未来’ はどうなるんだよ!!!」

バンッ!!!!!!

突如、生徒会室の壁が揺れるほどの 衝撃音 が響いた。

「いい加減にしなさいよ!!!!!」

静かな生徒会室に 怒号 が響き渡る。

「……巫鈴?」

生徒会室の入り口には、鬼のような形相の 中等部生徒会長・伊勢野巫鈴 が立っていた。

「お兄ちゃんを勝手に ‘韓信’ にしないでよ!!!」

文化部メンバーが一斉に硬直する。

「パォ~♪ 巫鈴ちゃんは夢占い、気にならないのですか~?」

「気にしない!!!!!」

巫鈴は力強く即答。文化部メンバーは一斉にたじろぐ。

「夢占いなんて、結局 ‘こうかもしれない’ っていう ‘ふわっとした話’ でしょ!? それを真に受けて、お兄ちゃんを ‘韓信’ にするってどういうことなのよ!?」

「えへへ~♪ でも、真平先輩の夢、すごく ‘歴史的’ でしたよ~♪」

美優がほんわかと微笑む。

「そうです~♪ あんな ‘壮士の最期’ みたいな夢を見るなんて、やっぱり ‘前世の魂の記憶’ かもです~!」

シャオも手を合わせるような仕草でワクワクしながら頷いた。

「それが ‘前世の記憶’ だって、なんで断言できるのよ!!!」

巫鈴の声がさらに大きくなる。

「お兄ちゃんは普通の高校生!! ただの ‘文化部の雑用係’ なの!!!」

「雑用係もひどくね?」

真平がボソッと突っ込む。

「そもそも!! お兄ちゃんは ‘韓信’ じゃないし!!! もし夢占いが本当に当たるなら、お兄ちゃんが ‘現代のラーメン屋の店主になる夢’ を見てたらどうするの!? その場合、お兄ちゃんにラーメン屋を開かせるつもり!?」

「えっ、それはそれで ‘文化部の新しい企画’ になるんじゃ……?」

琴美が真剣に考え始める。

「なるわけないでしょ!!!!!」

バンッ!!!

巫鈴が机を叩いた。その勢いに、文化部メンバーが一斉に背筋を伸ばす。

「……で?」

巫鈴はジト目で琴美たちを睨んだ。

「韓信映画、どうするの?」

しばしの沈黙。

「……撮影……中止……?」

琴美が小さく呟く。

「もう少し盛り上がりたかったです~……。」

シャオが肩を落とす。

「でも ‘股くぐり土下座’ は歴史の再現として有意義な……。」

「やりません!!!」

巫鈴が琴美の肩をガッと掴み、大きく揺さぶる。

「で、でも! 文化部は ‘昭和文化’ を研究する部活よ!? 『韓信伝』 の映画を撮ることで、 ‘昭和の歴史映画の精神’ を学べるし……。」

「それは ‘文化部’ じゃなくて ‘歴史研究部’ の仕事!!!」

「パォ~、巫鈴ちゃんの説得力がすごいですね~!」

「当たり前でしょ!!!」

こうして、文化部の ‘韓信伝映画騒動’ は、巫鈴の 鬼のようなツッコミ により 完全終息 したのだった――。


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