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ぴゅう太レトロゲーム探訪

 翌日、日ノ本文化部の部室に入ると、すでに琴美が部屋の中央に座り込み、目の前には古びたゲーム機が鎮座していた。

「おいおい……マジで持ってきたのか?」

真平が呆れたように言うと、琴美は誇らしげにぴゅう太の本体を撫でた。

「当たり前でしょ! 文化部の『昭和ゲーム文化研究』の第一歩よ!」

琴美は満面の笑みを浮かべながら、誇らしげに箱を開けた。「さぁ、みんな! これが ぴゅう太 !!」

 机の上には、ぴゅう太本体、ゲームソフト数本、古びた取扱説明書、そして見慣れないコントローラーが並んでいる。

「パォ~♪ なんか ‘レトロ’ っていうより ‘骨董品’ みたいですね!」

シャオは興味津々でぴゅう太を覗き込みながら、そのレトロなデザインに目を輝かせる。

「えへへ~♪ かわいいですね~」

美優はソフトのパッケージを手に取り、懐かしさを感じるように微笑んだ。

「……というか、これ動くの?」沙羅は腕を組みながら、半信半疑な表情で琴美を見た。

「もちろん! 昨晩、家でちゃんとテストプレイしたからね!」

琴美はドヤ顔でぴゅう太をセットし、電源を入れる。軽快なBGMが響き、ブラウン管モニターにシンプルな画面が映し出された。

「おぉ!? ちゃんと動いた!」真平は驚きながら画面を覗き込んだ。

「ほら、これが『ぴゅう太』のゲーム画面よ!」琴美は勢いよくカセットをセットし、一本目のゲームを起動させた。

「で、何のゲームやるんだ?」勇馬が静かに尋ねると、琴美は嬉しそうにソフトの箱を並べた。

「まずはこれ! 『ボンブマン』!」

琴美はカセットを挿入し、ゲームをスタートさせる。しかし、画面に映し出されたのはシンプルなドットキャラクターと無音のタイトル画面だった。

「……なんか地味だな」真平がポツリと呟く。

「いやいや、これが ‘昭和のゲーム’ なのよ!」琴美はコントローラーを握りしめ、キャラクターを操作する。が、数秒後——

琴美は得意げに『ボンブマン』のカセットをセットし、スイッチを入れた。軽快なBGMが流れ、ブラウン管の画面にはシンプルなドット絵のキャラクターが表示された。

「おお~、ちゃんと映るじゃん!」真平が画面を覗き込む。

「パォ~♪ なんか、キャラクターが ‘消防士’ みたいですね!」

シャオが不思議そうに言うと、琴美は勢いよく頷いた。

「そうそう! このゲームは ‘爆弾魔’ が投げてくる爆弾を、プレイヤーが ‘消火器’ で消していくゲームなのよ!」

「へぇ、爆弾を ‘消す’ んだな……普通 ‘爆弾ゲーム’ っていったら ‘爆発させる’ 方でしょ?」沙羅が首をかしげる。

「そこが ‘ぴゅう太’ なのよ!!!」琴美はドヤ顔でコントローラーを握る。

ゲーム開始!

主人公の消防士らしきキャラクターが画面の前面に立ち、塀をはさんだ反対側にはニヤついた顔の ‘爆弾魔’ がいる。爆弾魔は次々と爆弾を投げ、それを琴美が操作するキャラがしばらく水をかけてで消していく。

「おっ、ちゃんと水がかからないと消えないのね」琴美は慎重に水をかけて爆弾を消していく。時々爆弾に手足の生えたような敵キャラが出てくる以外なんの変化もない。

「……なぁ、琴美」真平がじっと画面を見つめながら、眉をひそめた。

「なんか、地味じゃね?」

「パォ~!? 本当にこれ ‘爆弾ゲーム’ ですか~?」シャオも首をかしげる。

「いやいや、これが ‘昭和のゲーム’ なのよ! じっくりプレイするのが大事なの!」

琴美はムキになりながら、コントローラーを握りしめる。

消防士らしきキャラが爆弾に向かってしばらく水をかけ続けると、ようやく爆弾は消えた。

「おぉ! 成功!」

琴美はガッツポーズを決めたが、画面上では爆弾魔が同じペースでまた新たな爆弾を投げてきた。

「え……これ、終わりあるの?」沙羅が腕を組みながら尋ねる。

時間が経つにつれて爆弾の投げるスピードと数が加速してきた。

「えっ、速くない!? えっ、ちょっと待って!? こんなんムリムリムリ!!!」

琴美はボタンを連打するが、ついに爆弾の消化が間に合わず。

「ドッカーン!!」

画面が閃光に包まれ、消防士は爆風に巻き込まれて画面外へと吹き飛んだ。

「えぇぇぇぇ!?!? いきなり爆発エンド!?」

琴美がコントローラーを持ったまま絶叫する。

「……あれ? これ ‘爆弾消すゲーム’ っていうより、ただの ‘耐久ゲーム’ なんじゃ?」

真平が冷静に画面を見つめながら分析する。

「パォ~♪ つまり、最終的には ‘爆弾魔が勝つ’ ゲームなんですか~?」

シャオが不思議そうに首を傾げる。

「……なんか、納得いかない……」

琴美は肩を落としながら、カセットを取り出した。

「次のゲーム行こう……」

琴美は気を取り直し、次のカセットを取り出した。「よし! 気を取り直して、次は『スクランブル』よ!」

彼女は意気揚々とカセットを挿入し、スイッチを入れる。画面には、横スクロールのシンプルな戦闘機が表示された。

「お、今度は ‘シューティングゲーム’ っぽいですね」勇馬がじっと画面を見つめる。

「パォ~♪ なんだか ‘宇宙戦争’ みたいですね!」シャオは興奮気味にモニターを覗き込む。

「これは1981年にコナミから発売された ‘元祖横スクロールシューティング’ の一つなの!」琴美が得意げに説明する。

「ほぉ~、でも ‘ぴゅう太’ 版ってことは……なんか ‘アレンジ’ されてるんじゃ?」

沙羅が眉をひそめながら尋ねる。

「まぁまぁ、とにかくプレイしてみましょ!」

琴美はスタートボタンを押し、ゲームが開始された。

BGMが軽快に流れ、戦闘機が右へスクロールしていく。画面の端から敵の砲台やミサイルが迫ってくる。

「おぉ! ちゃんと動くじゃん!」真平が感心する。

「いくわよー!!」琴美はコントローラーを握りしめ、機体を操作する。

Aボタンで機銃、Bボタンで爆弾。

敵の砲台を狙い、爆弾を落としながら前進する。

「おっ、意外と操作しやすいな!」琴美は順調に敵を撃破していく。

「えへへ~♪ すごいですね~♪」美優がほわほわと見守る中、琴美の戦闘機はどんどん進んでいく。

「もぉ~コントローラーは操作しづらいし、画面はカクカクでタイミングが取りづらい」琴美はコントローラーを放り出した。

「くっ……でも、これは ‘ゲームの歴史’ を知る上で大事な資料なのよ……」

琴美は悔しそうにカセットを取り出した。

「次こそは ‘まともな’ ゲームにする!!!」


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