日ノ本文化部 昭和のゲーム事情を知る
それから文化部のメンバーは、基弘おじさんから昭和の“生の体験談”をたっぷりと聞くことになった。
「昔はなぁ、テレビゲームが今みたいに家にあるのが当たり前じゃなくてな、友達の家に集まって遊ぶのが普通だったんだよ」と基弘おじさんは懐かしそうに語る。「俺も当時はファミコンが欲しくてな……親に頼み込んでやっと買ってもらった時は、それはもう嬉しくて、友達と交代で一晩中マリオをやってたっけな」
「へぇ~! じゃあ、おじさんも『友達の家にカセット持って集合』とかしてたんですか?」真平が興味津々で尋ねる。
「おぉ、よく知ってるな! そうそう、ソフトを持ち寄って、お互いの家で遊んだもんだ」と基弘おじさんは満足げに頷く。「でもな、当時のゲームってセーブ機能がないのが普通だったから、やり直しが大変だったんだよ。パスワードを紙に書いて保存したり、電源を切らずに一晩中放置してたりな」
「パォ~!? そんなに大変だったんですか~?」シャオが驚いた表情を浮かべる。「今はオートセーブが当たり前なのに!」
「それが ‘昔のゲームの醍醐味’ だったんだよ」と基弘おじさんは笑う。
「あのこれ御存じですか?」と勇馬は台湾で購入したチェリコのクリエイトビジョンを基弘に見せた。
基弘おじさんは勇馬が差し出したチェリコのクリエイトビジョンをじっと見つめた後、「おぉぉぉ!! これはレアものじゃねぇか!!!」と目を輝かせた。
「まさか台湾で ‘クリエイトビジョン’ を見つけるとはな……! こいつは日本ではほとんど見かけねぇ、知る人ぞ知るレトロゲーム機だぞ!」
勇馬は静かに頷きながら、「はい、台湾旅行のときにゲームショップで見つけました。おじさんなら知ってるかなと思って」と言うと、基弘おじさんは感動したように勇馬の肩をバシッと叩いた。
「お前、なかなか分かってるな!! しかしまぁ、見事に ‘ファミコンの陰’ に隠れちまった悲運のハードよ……!」
「へぇ~、ファミコンに負けちゃったんですね?」美優がほわほわとお茶を飲みながら聞く。
「そうなんだよ!」基弘おじさんは力強く頷いた。「スペック自体はそこまで悪くなかったんだが、ファミコンと違って ‘カセットが高い’ のと ‘ゲームのラインナップが微妙’ でな……日本では全然売れず、台湾と東南アジア向けに細々と展開してたんだ。でもな、これは ‘レトロゲーマー’ にとっては ‘幻の機種’ って言われるぐらい貴重なんだぞ!」
「パォ~! そんなに珍しいゲーム機なんですね~!」シャオは興味津々で勇馬の手元を覗き込む。
「ちなみに、これソフトはあるのか?」基弘おじさんが尋ねると、勇馬は「一応『ドンキーコングのコピー版』みたいなゲームが一本だけ」と言って、ゲームカセットを取り出した。
「うぉぉ! これはまさしく ‘パチモン’ っぽいデザインだな……!」
真平は興味深そうに見ながら、「パチモンって、つまり ‘偽物’ ってことですよね?」と確認する。
「まぁ ‘非公認の移植作品’ ってところだな!」基弘おじさんは笑いながら説明する。「台湾では昔から ‘海外のゲームを独自にアレンジして出す’ 文化があってな、クリエイトビジョンにはこういう ‘見たことあるけど、どこか違う’ みたいなゲームがけっこうあるんだよ!」
「つまり ‘大人の事情’ が絡んでるんですね……」博美が冷静にまとめると、基弘おじさんは「まぁ、そんなところだな!」と笑った。
琴美は腕を組みながら、「でもさ、こういう ‘消えたゲーム機’ って、今だからこそ価値があるよね!」と真剣な表情で言った。
「その通り!」基弘おじさんは嬉しそうに琴美を指差した。「こういう ‘マイナーなゲーム機’ はな、当時は売れなくても、今になって ‘歴史的価値’ が評価されることがあるんだ。文化ってのは、そういう ‘埋もれたもの’ を掘り起こすことで新しい価値が生まれるんだよ!」
「つまり……文化部の活動として ‘レトロゲーム機の歴史を研究する’ のもアリってことですね!」美鈴が真面目に提案すると、琴美は「それいいじゃん!! 文化部の ‘新しい研究テーマ’ にしよう!」とノリノリになった。
「なんだ姫、倉庫にあるゲーム機まだだしてないのか?」
基弘おじさんの一言に、琴美はハッとしたように目を見開いた。
「えっ……まだ出してないやつ?」琴美は考え込むように腕を組む。「確かに倉庫には他にもレトロなゲーム機が眠ってるけど……そんなの、出したらみんな驚くと思うよ?」
「何があるんだ?」と真平が興味津々に尋ねる。
基弘おじさんはにやりと笑い、「例えば……あの『カセットビジョン』とか、他にも『ぴゅう太』っていうマイナー機種もあるぞ。お前、あれで『昭和のゲーム大会』とかやったら盛り上がるんじゃないか?」と提案した。
「ぴゅう太!? なんか聞いたことあるけど、そんなの本当に動くの?」沙羅が驚いた顔をする。
「もちろん! ちゃんと倉庫で保管してあるし、基板も掃除してるから大丈夫!」琴美は胸を張る。
「えへへ~♪ それってレアなんですか?」美優は首をかしげながら尋ねる。
基弘おじさんは「当たり前だ!」と得意げに語り始めた。「『ぴゅう太』はな、1980年代に発売された日本初の教育用パソコン兼ゲーム機なんだ。でもな、当時はパソコンとしても中途半端で、ゲームとしてもイマイチだったもんだから、すぐに市場から姿を消してしまったんだよ。だから今ではなかなかお目にかかれない代物だ!」
「それは……すごいお宝ですね!」シャオが目を輝かせる。
「よし決めた!」琴美は勢いよくテーブルを叩いた。「次回の文化部活動は『レトロゲーム機祭り』! 倉庫のレトロゲームを全部引っ張り出して、みんなで昭和のゲーム文化を体験しましょう!」
「いいね、それ!」勇馬は嬉しそうに頷く。「僕もチェリコのクリエイトビジョンを持ってくるし、みんなでゲーム大会しよう!」
「じゃあ、昭和のゲームをテーマにしたミニ大会とか、レトロゲームの歴史紹介なんかも面白そうですね!」博美は文化的な視点を提案した。
「……いや、盛り上がるのはいいけど、これ絶対琴美の昭和愛がさらに爆発するやつじゃん」と真平が呆れた顔をする。
「まぁまぁ、文化部なんだから文化を学ぶのは正しいことだろ?」基弘おじさんがニヤリと笑うと、琴美も大きく頷いた。
こうして、日ノ本文化部の次なる活動は『レトロゲーム機祭り』に決定した。昭和のゲーム文化を体験しながら、文化部のメンバーたちは新たな文化の楽しみ方を発見していくことになるのだった。




