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サイドカーと猫

 豪華な台湾観光から帰り、部室でみっちり宿題の残りも片付けた真平は、自分の部屋でのんびりと録画しておいたTV番組を見ながら、巫鈴のお土産うなぎパイを味わっていた。

(あいつお茶の淹れ方うまくなったなぁ…美優にはまだまだだけど…)

 スマホにライン着信がなり見てみると、沙羅から(すぐに来て)とだけ。無意識に支度をする真平。

「じゃーん!! 見て見て! 私の ‘相棒’ !」

沙羅が誇らしげに指さしたのは、ピカピカに輝く クラシックスタイルのサイドカー付きバイク だった。

「……えっ、マジで買ったの?」

真平は目を丸くしながら、バイクとサイドカーをじっくり観察する。

「うん! バイト代をコツコツ貯めて、ついにゲットしたんだよ! かっこいいでしょう?」

「いや、かっこいいけど……これって、乗るの俺?」

「当然!」

沙羅は満面の笑みでヘルメットを手渡す。

「いやいや、俺、乗る気なかったんだけど……」

「真平は ‘文化部’ なんだから、昭和の乗り物も体験しないと!ほんじゃちょっくら宇都宮までツーリングと行きますか!!」


「おおぉ……風、めっちゃ気持ちいい……」

真平はサイドカーに身を沈めながら、爽やかな風を感じていた。

「でしょー? やっぱり ‘バイク旅’ って最高だよね!」

沙羅はアクセルを少し回しながら、楽しそうに笑う。

「しかし、なんでサイドカーにこだわったんだ?」

「んー、昔の映画で見て、ずっと ‘これで旅したい’ って思ってたんだよね。」

「へぇ……沙羅らしいな。」

「でしょ? しかもこれ、 カフェレーサースタイル にカスタムしようと思ってるんだ!」

「どこまで本気なんだよ……」

「もちろん ‘本気’ だよ! 真平も ‘カスタム計画’ 手伝ってね!」

「いや、俺、メカには詳しくないから……」

「じゃあ、 ‘乗る専門’ で!」

「……まぁ、それなら。」

(—— なんか、これからも付き合わされる気がする……)

 そして沙羅が宇都宮で目指した場所は猫カフェ

「ふふふ……ついに! 念願の ‘猫カフェ’ へ来たぞー!」

沙羅は嬉しそうに腕を組み、目の前のガラス張りのカフェを見つめている。

「……なあ、本当に ‘俺も’ 入る必要ある?」

入り口で立ち尽くす真平は、露骨に嫌そうな顔をしていた。

「もちろん! ‘文化部’ なら、こういう ‘昭和っぽい’ 雰囲気のカフェも体験しないとね!」

「どこが ‘昭和’ だよ……普通に ‘猫カフェ’ じゃん……」

「いやいや、ここ ‘レトロ喫茶風’ の内装なんだよ! しかも ‘看板猫’ の名前が ‘タマ’ だし!」

「いや、それだけで ‘昭和文化’ って言い張るの無理あるだろ……」

「ほらほら、入るよ!」

「……うっ……」

カランカラン♪

ドアを開けた瞬間、ふわふわの猫たちがのんびりとくつろぐ空間が広がった。

「うわぁぁぁっ!! かわいいぃぃぃ!!」

沙羅は目をキラキラさせながら、一気に猫ゾーンへ突入。

「……うぅ……」

真平は明らかに警戒して、壁際に張り付く。

「ほらほら! この ‘白猫’ めっちゃ綺麗!」

「いや、いい、俺はいい……」

「こっちの ‘茶トラ’ も人懐っこいよ! 真平、撫でてみなよ!」

「いや、俺…… ‘猫’ 無理なんだって……」

「は? え、なんで?」

「……なんか ‘動き’ 怖くない?」

「えぇぇ!? ‘猫の動き’ が ‘怖い’ !??」

「だってさ、急に ‘ぴょん!’ って飛んでくるし、 ‘しっぽ’ いきなり ‘バサッ!’ ってなるし……」

「いやいや、それ ‘普通の猫の動き’ だよね?」

「…… ‘普通’ が怖いんだよ……」

「……おや?」

ふと、猫たちが真平のほうをじっと見つめる。

「えっ……なんで ‘こっち’ 見てる?」

「ふふっ、 ‘猫は怖がってる人’ に興味持つんだよ~?」

「……嘘だろ……?」

ズンズン……

じりじりと近づく猫たち。

「……っ!?」

真平、微妙に後ずさる。

「おっ、 ‘タマ’ が来た! 真平、 ‘膝の上’ に乗せてみる?」

「やめろぉぉぉぉ!!!」

ダッ!!!

真平、 カフェの端に猛ダッシュ!

「ちょ、めっちゃ ‘逃げる’ じゃん!!」

「無理無理無理無理!! ‘乗る’ のは ‘バイク’ だけでいい!!!」

「……ん?」

真平がコーヒーを飲んでいると、足元に 一匹の猫 がちょこんと座っていた。

「……お、おい、こっち来んな……」

真平は警戒しながら後ずさる。

「おっ? ‘タマ’ が真平に興味持ってるね!」

沙羅はニヤニヤしながら猫の様子を見ている。

「いや、こいつ、なんか ‘俺’ じゃなくて ‘俺のポケット’ を狙ってるんだけど……?」

猫は小さな前足を真平のポケットにちょんちょんと乗せる。

クンクン……

「……おい、まさか……」

ガサゴソ。

真平がポケットを探ると、そこから 「マグロセロ」(おつまみ用のスティック状のマグロジャーキー)が出てきた。

「はぁ!? なんでそんなもん持ってるの!?」

沙羅が思わずツッコミを入れる。

「いや、琴美が部室に持ち込んだんだよ! こんなとこで役に立つとは……!」

「てか、今その ‘役に立つ’ って、 ‘猫に餌付け’ する気!??」

真平はマグロセロを取り出し、猫の前で軽く振る。

猫の目が キラーン

「……おい、これやるから ‘向こう’ 行ってくれ……」

スッ……

そっとマグロセロを差し出す真平。

「ニャァ~~~♡」

猫は幸せそうにマグロセロを咥え、そのまま スキップするように別の場所へ移動 していった。

「……よし。」

「いや、何その ‘交渉成立’ みたいな空気!??」

「俺は ‘猫と共存’ する気はない。 ‘和解’ するだけだ。」

「いや、十分 ‘猫カフェ’ 満喫してるじゃん!!」

沙羅はふわふわの白猫をそっと抱き上げ、そのまま真平の方へゆっくりと近づいた。

「おい真平、こんなに ‘かわいいぼく’ をどうして嫌うの?」

猫を抱えながら、沙羅がふざけて猫のセリフを代弁する。

猫の つぶらな瞳 がキラキラと輝き、まるで「撫でてよ」とでも言いたげだった。

「いやいや、 ‘ぼく’ じゃないだろ……!」

真平は引きつった笑顔で ジリジリと後ずさる。

「ほら~ ‘モフモフ’ だよ? ほっぺすりすりすると気持ちいいよ?」

沙羅は猫のフワフワの毛並みを見せつけるように、そっと頬にすりすりする。

「……お前、マジで ‘猫’ になりきるのやめろ……!」

「いいから ‘撫でてみなよ’! ほら、 ‘ぼく’ の ‘おてて’ かわいいでしょ?」

猫の肉球をぷにぷにと押しながら、沙羅は楽しそうに笑う。

「いや……それは認めるけど……」

「じゃあ ‘触ってみる’?」

「……いや、それはちょっと……」

猫の瞳が じぃぃぃっ…… と真平を見つめる。

真平、 完全にロックオンされている。

「お、おい、なんか ‘こっち’ じっと見てるんだけど……!?」

「ふふっ、タマも ‘真平に撫でてもらいたい’ んじゃない?」

「……俺の ‘ポケットの中身’ を狙ってるんだろ……」

「まだ ‘マグロセロ’ 持ってるの?」

「……一本、残ってる。」

「よし、じゃあ ‘これ’ を使って仲良くなろう!」

沙羅は真平のポケットからマグロセロをスッと取り出し、猫の目の前にちらつかせた。

「ニャァァ……♡」

猫の目が ハンターのように輝く。

「うわっ、マジで ‘狙ってる’ じゃん……!」

「はい、真平! ‘この手から’ あげてみよう!」

「……え、直接?」

「そう! ‘猫との信頼関係’ を築くには ‘手渡し’ が一番だよ!」

「……くっ……」

真平、 恐る恐る 手を差し出す。

「……ほ、ほら、これやるから……おとなしく……」

猫、そっと前足で真平の手をぽふっと触る。

「うぅ……っ!!」

(—— ‘猫の肉球’ ……!!! 思ってたより柔らかい……!?)

「ニャ~ン♡」

猫は優しくマグロセロを咥え、そのまま満足そうにパクパク食べ始めた。

「……あれ?」

「おっ、やったね! 『真平と猫、ついに和解』 の瞬間です!!」

「……まぁ、 ‘この距離感’ なら、許す……」

(—— いや、 ‘猫’ ってもっと ‘ガブッ!’ ってくると思ってたけど、 意外と優しく食べるんだな……)

「どう? ‘ちょっとだけ’ 猫のこと好きになったんじゃない?」

沙羅はにやにやしながら、真平を覗き込む。

「……いや、 ‘好き’ ってわけじゃないけど…… ‘思ってたより’ 怖くなかった……かも……」

「はい、 ‘それはもう好き認定’ !」

「おい、違うって!」

「ふふっ、じゃあまた ‘猫カフェ’ 行こうね!」

「いや、だから ‘好きじゃない’ ってば!!」

(—— しかし、沙羅は確信していた。

次に来た時、真平は 自然とポケットにマグロセロを忍ばせる ということを……)



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