どうする旅行代
「あの……」
みんなが台湾旅行の話で盛り上がる中、勇馬が 至極当然な疑問 を投げかける。
「台湾までの往復の交通費ってどれくらいかかるのでしょうか?」
「えっ……?」
「……た、確かに」
「パォ~!? みなさん、そこ気にしてたんですか~?」
「いや、普通気にするだろ!? 台湾行きって、安いもんじゃないぞ!?」
勇馬の指摘に、琴美・真平・沙羅が そろって動揺。
「た、確かに。飛行機代って高いし、宿泊費も考えたら相当な額に……」
「そうよね……学生の旅費にしては、ちょっと大きすぎる額よね……」
しかし――
「パォ~! そんな心配いりませんよ~!」シャオが ニコッと微笑みながら言い放つ。
「……どういうこと?」
「まさか、シャオ……?」
「パォ~! 家のプライベートジェットですから、心配いりません~!!」
「…………え?」
「え?」
「えぇぇぇぇぇぇぇっっ!?!?!?!?」
「ちょ、ちょっと待ってシャオ!? お前、今サラッとやばいこと言わなかった!?!?」
「パォ? 台湾までは 王家財閥のプライベートジェット で移動しますから、交通費は問題ないですよ~!」
「そんなの、映画とか漫画の中だけの話じゃないの!?」
「……プ、プライベートジェットって何?」萌香が 純粋な疑問 を抱えて、隣にいた姉・沙羅に尋ねた。
「え?」
「うん、なんかすごそうなのは分かるけど……普通の飛行機と何が違うの?」
「…………」
「そ、そうね……えーっと、簡単に言うと……」沙羅が 必死に脳内で整理 するも、イメージが浮かばない。
すると――
「パォ~! 萌香さん、つまりですね~!」シャオが 満面の笑顔 で、手を広げながら説明を始めた。
「普通の飛行機は、空港でチケットを買って、みんなで乗るじゃないですか~?」
「うん」
「でも、プライベートジェットは 家の専用飛行機 なんです~!」
「専用飛行機!?」萌香の 目がキラキラと輝く 。
「パォ~! だから、 飛行機の座席全部がうちのもの です~!」
「えっ……つまり、お客さんがシャオたちだけってこと!?」
「パォ! そうです~! だから 空港で長時間並ばなくてもOK だし、 好きな時間に飛べる んです~!」
「えええぇぇぇ!?!? それって超VIPじゃん!!!」
「しかもですね~! 機内には 豪華なソファとベッドもあって、テレビやゲーム機もついてる んです~!」
「マジで空飛ぶホテルじゃん!!!」
「パォ~! そうです~! しかも、 専属のシェフが料理を作ってくれる んです~!」
「ちょ、ちょっと待って!? つまり、機内でお好み焼きとかも作ってくれるの!?」
「パォ~! それは……食材があれば可能です~!」
「夢が広がりすぎる!!!!!」
「……いや、待て待て待て!!!」沙羅が 必死に冷静さを取り戻しながら ツッコミを入れる 。
「シャオ、それってつまり、飛行機丸ごと貸し切りってことでしょ!?」
「パォ! そうですよ~!」
「いや、そんなの普通の高校生が体験することじゃないから!!!」
「パォ~!? そうなんですか~??」
「そうだぞ、普通の高校生は飛行機の座席を エコノミークラス で予約するものだぞ!!!」
いつも冷静な勇馬が やや興奮気味に指摘 すると――
「パォ? えこ……のみ……?」シャオが 本気で意味が分かっていない顔 をする。
「えっ……シャオ、まさか…… エコノミークラスに乗ったことない のか……?」
「パォ? もちろんです~! いつも ファーストクラスかプライベートジェット ですから~♪」
「ぐぅぅぅぅっっ!!!??」
「でもでも! みんなで のんびり旅ができるから 、絶対楽しいですよ~!」
「確かに……それはすごいかも……!」
「……な、なんなのこのスケールの違いは……」
「普通に海外旅行の話してたのに、いきなり財閥のプライベートジェットって……」博美はあっけにとられる。
「そ、そうよ! そもそも高校生が "飛行機の座席全部がうちのものです~" なんて言うことある!?」巫鈴が 若干泣きそうな顔 になりながらツッコミを入れる。
「パォ~!? そんなに驚くことですか~?」シャオは 本気で不思議そう に首をかしげる。
「いや、驚くに決まってるだろ!?!」
「でもでも! みんなで 台湾の美味しい料理 や 昭和文化 に触れるの、楽しみじゃないですか~?」
「確かに……台湾のレトロ街とか行ってみたいし……」琴美が 少し考え込みながら呟く。
「パォ~! ですよね~! それに、うちの家なら 宿泊代もいりません~!」
「はっ?」
全員、再びフリーズ。
「パォ? うちの家は広いですから、みなさんが泊まるお部屋もちゃんと用意できます~♪」
「……お前の家、ホテルなのか?」真平が 冷静に問いかける。
「パォ~? ホテルじゃないですよ~! でも、庭にプールもありますし、ゲスト用のヴィラもあるので、好きな部屋を選んでください~!」
「ヴィラって……つまり豪華な別荘みたいなやつですよね?」勇馬が 思考を整理しながら確認。
「パォ! そうです~!」シャオが 笑顔で頷く。
「ぐぅぅぅぅ……!!!」
「……なんかもう、色々考えるのが面倒になってきた」琴美が 小さくため息をつく。
「つ、つまり、台湾旅行の 費用はゼロ ってこと?」沙羅が 震える声 で尋ねると――
「パォ! そうです~! 移動も宿泊も全部無料です~!」
「「「「「おおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」
「……よし、行こう!」
「「「おおおおおお!!!!」」」
「でも、空港はどこに行くんだ?」ここで 真平が冷静に疑問を挟む。
「パォ~! それも心配いりませんよ~!」
「えっ?」
「福島空港 から飛びます~!」
「福島空港……って、どうやって行くんだ?」
「パォ~! それも心配いりませんよ~!」
「またかよ!?!」
「美優さんのご実家のワゴン車 で送ってもらうんです~!」
「え、ちょっと待って!? 美優の家、そんな大掛かりな送迎までしてくれるの!?」
「えへへ~♪ お父さんが『せっかくなら便利なほうがいいでしょ~?』って言ってました~♪」
「えっ……何この待遇……」
「これはもう、行くしかない……!!!」




