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中等部生徒会長怒る

花屋での温泉宿泊、そして夏祭りを楽しみ尽くした文化部メンバーは、名残惜しさを感じつつも学園へと戻ってきた。

「パォ~! 文化部の合宿、最高でしたね~!」

「いや、これ合宿じゃなくて温泉旅行だから!」

「でも楽しかったから結果オーライよ!」

「……まあ、たまにはこういうのもいいですね」

博美も すっかり文化部のペースに巻き込まれた様子 で、どこか穏やかな表情を浮かべていた。

そんなこんなで、車は 学園の寮の前へと到着 する。

「よし、解散――」

そう言いかけた瞬間。

「お兄ちゃん!!!」

「うわっ!?」真平が 反射的に背筋を伸ばす。

学園の門の前で、 腕を組みながら仁王立ちしていたのは……

真平の妹・伊勢野巫鈴いせの みすず中等部生徒会長!!

「ちょ、なんでお前がここにいるんだよ!」真平が 思わず後ずさる 。

「何を言ってるの、お兄ちゃん!! 生徒会長を連れ回すとは何事!? 」

「……え?」博美が 微かに眉を上げる。

「ちょ、ちょっと待て! 別に俺が連れ回したわけじゃないからな!!」真平が 必死に弁明するも、妹の視線は冷たい。

「私がいない間に、 お兄ちゃんが文化部のノリで生徒会長を無理やり連れ出した って噂を聞いたのよ!」

「パォ~!? そ、そんなことしてないです~!!!」シャオが 慌てて否定する。

「……無理やり、というわけではありません。私が自分で行くと決めました」博美が 冷静に補足 すると、巫鈴は ハッとした顔になる。

「……え?」

「温泉に興味があったので、誘われたのをきっかけに参加しました」

「それに、楽しかったですよ」

「……えっ……生徒会長が温泉旅行……?」巫鈴の 優等生脳が一瞬混乱する。

「そうだよ、巫鈴ちゃん! 生徒会長、めっちゃ楽しんでたんだから! 」琴美が 得意げに肩を組もうとするが……

「……ちょっと待って。生徒会長が、文化部と一緒に、温泉旅行……?」

( 二度目の混乱 )

「ええ。非常に良い経験でした」博美は さらりと答えた。

「……そ、そんな……!!」

「巫鈴さんもしかして、会長と遊びたかったんですか?」シャオがカマかけてみる。

「えっ……!? そ、そんなことないわよ!!!」巫鈴は 顔を真っ赤にして、勢いよくシャオを否定。

「パォォ~!? なんか反応が怪しいです~!!」シャオは ニヤニヤしながら、巫鈴の顔を覗き込む。

「……ちょ、ちょっとシャオさん!! 生徒会長が私の憧れの人だからって、変なこと言わないで!!」

「憧れの人って、つまり 会長ともっと仲良くなりたい ってことですよね~?」

「ち、ちが……いや、そうだけど!! そういう意味じゃない!!」

「ふむ……」

そのやり取りを横で静かに聞いていた博美が、顎に手を当てて考え込む。

「巫鈴さん、あなたは私と親しくなりたかったのですね?」

「えっ……!? い、いえ、その……っ」

「お、お、お、お兄ちゃん!! どうにかして!!!」

「はぁ!? なんで俺!?!?」

「もう!! お兄ちゃんが生徒会長を変な世界に引きずり込むから、こんなことになるのよ!!!」

「いや、俺関係ねぇって!! てか、そもそもお前が勝手に騒いでるだけだろ!!」

「騒ぐわよ!!! だって、 あの完璧な生徒会長が、文化部と一緒に浴衣で温泉旅行 なんて……!! そんなの……!! そんなの……!!!」

「……もう、私の知ってる生徒会長じゃない……っ」

「いやいや、そこまでか!?!?」

「パォォ~!? なんか巫鈴さんがバグってます~!!!」

「巫鈴っチ、大丈夫!? しっかりして!!」萌香が駆け寄る。

巫鈴の目は グルグルと回り、膝から崩れ落ちそうになる。

「だったら巫鈴さんも一緒に台湾行きましょ」シャオがさらりととんでもない爆弾を落とした。

「――え?」巫鈴の動きが ピタッと止まる 。

「パォ~! 文化部のみんなで台湾旅行、すっごく楽しいですよ~! 巫鈴さんも一緒にどうですか~?」

シャオが ニコニコしながら提案。

「ちょ、ちょっと待って!? なんで急に話が台湾旅行になってるのよ!?」

「えっ!? 巫鈴さん、生徒会長ともっと仲良くなりたいんじゃないですか~?」

「そ、それはそうだけど……!!」

「パォ~! だったら、一緒に台湾旅行すればいいんですよ~♪」

「ま、待って待って!? そもそも、台湾旅行って何!?!?」

「パォ~! 私の家にみんなを招待するんです~! 台湾の文化も紹介したいし~!」

「ええっ!? そ、そんなの聞いてないわよ!!!」

巫鈴、 情報量が多すぎて完全に処理落ち。「ちょっと、お兄ちゃん! 何とかしなさいよ!!」

「いや、俺も今初めて聞いたんだが!!!」

「ちょ、ちょっと待って!? なんでいきなり台湾旅行!?!?」巫鈴の目がぐるぐる回る 。

「パォ~! せっかくだから、みんなで台湾に行きましょう~! 文化交流ですよ~♪」

シャオが ニコニコと無邪気に提案。

「せ、せっかくだからって……そんな軽いノリで決めることじゃないでしょ!!!」

巫鈴が必死に抵抗するが、琴美が 大きく頷く。

「いいじゃん! 文化部っていうくらいだし、異文化交流にも力を入れていかないと!!」

「……何その都合のいい解釈!?」

「ほら、巫鈴ちゃんも 会長ともっと仲良くなりたいなら 参加するしかないよね?」

「そ、それは……」巫鈴が ぐっと言葉に詰まる。

そこへ博美が 冷静に一言。「……台湾は、行ってみたいですね」

「えっ!? 生徒会長!?」

「学園の生徒として、海外の文化を学ぶのは意義深いことです」

「た、確かにそうですけど……」

「巫鈴さんも、一緒に行きますか?」

博美が 微笑みながら尋ねる。

「…………っ!!」

巫鈴の顔が、一瞬で 真っ赤に染まる。

「お兄ちゃん!!!」

「え、なんで俺!?」

「うーん……どうするの?」美優が ふわりと笑いながら尋ねる。

「…………っ」

そして――

「……わかったわよ!!!」

「えええええっ!?!?!?」真平の 叫びが学園に響き渡った。

「い、いいわよ!! 文化部に入るつもりはないけど……!! でも、生徒会長と一緒なら!!!」

「パォ~! 大歓迎です~!!」

「……ふふ、楽しみですね」


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