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朝の異文化武術交流

 朝霧が立ち込める中、花屋 の庭には静かな時間が流れていた。

 宿泊客がまだ寝静まる時間、ひとり庭へと出たのは――シャオ。

「パォ~……朝の空気、気持ちいいです~♪」

 深く息を吸い、ゆっくりと構えを取る。

 形意拳けいいけん――シャオが幼い頃から学んできた、中国武術の一種。

 静かに足を踏み出し、拳を突き出す。

 流れるような動きの中に、確かな力強さが宿る。

 大きな動作ではなく、シンプルで洗練された技の連続。

 朝の日差しを浴びながら、シャオは汗を流しつつ、黙々と鍛錬を続けていた。

 その時――

「……なかなか、面白い動きですね」低く落ち着いた声が背後から響いた。

「パォッ!?」

 驚いて振り向くと、そこに立っていたのは 生徒会長・大野博美。

 博美は浴衣姿のまま、腕を組んでじっとシャオの動きを観察している。

「パォ~! 生徒会長さん!? おはようございます~!」

「ええ、おはようございます。早いですね……」

「パォ~! 朝の鍛錬は欠かせません~!」シャオは再び構えを取り、形意拳の動きを披露する。

 それを見た博美は、少し考え込むように目を細めた。「……なるほど、独特な動きですね。力の出し方が興味深い」

「パォ~! 生徒会長さん、武術に興味ありますか~?」シャオが興味津々に尋ねると、博美は少しだけ微笑んで頷いた。

「……ええ、実は私も 空手 をやっていました」

「パォォォ~~!?!? そうなんですか~~!!?」シャオの目が キラキラと輝く。

「パォ~! それなら、試しに一緒にやってみませんか~!?」

「……私が?」

「パォ! せっかくですから、生徒会長さんの空手も見せてください~!」ワクワクしながら手招きするシャオ。

 博美は少し考え込んだ後、静かに頷いた。「……いいでしょう」

 そう言うと、スッと浴衣の袖をまくり、広めの庭の中央へと進む。

「パォ~! 生徒会長さん、どんな技が得意ですか~?」

「そうですね……私は 突きと蹴り の技を中心に磨いてきました」

 そう言いながら、博美は ゆっくりと正確な「突き」の型を披露する。

 その動きは、シャオの形意拳とは違い、まるで 鋭い刀のように洗練されていた。

「パォォォォ! すごいです~! 生徒会長さんの動き、めっちゃカッコいいです~!!」

「ふふ……ありがとうございます」

「パォ~! じゃあ、次は一緒にやりましょう~!!」

「……いいでしょう」

 こうして、朝の庭に 異文化武術交流 の時間が生まれた――。

 旅館の庭に、軽やかな動きが交差する。

 形意拳の独特なステップを踏むシャオ。

 それに対して、空手の基本に忠実な型を繰り出す博美。

 二人は互いに動きを観察しながら、呼吸を合わせるように動きを繰り出していた。

「パォ~! 生徒会長さんの動き、やっぱりすごいです~!」

「あなたの動きも、興味深いですね」博美はシャオの軽やかな動きを見て静かに頷く。

「形意拳は、流れるような動作で相手の力を利用する……まるで川の流れのようですね」

「パォ~! そうなんです~! 力をためて、一気に発するのが特徴です~!」

シャオはその場で素早く動きながら、足の踏み込みと同時に拳を繰り出す。

「こうやって……相手の動きに合わせて、一気に攻撃します~!」

 博美はじっとその動きを観察し、静かに微笑む。「なるほど……それなら、空手の"突き"との違いを比べてみましょう」

 そう言うと、博美は構えを変え、重心を落とす。

ビシィッ!!!

 鋭い音を立てながら、正確な突きを空へと放つ。

「パォォォォ!? 生徒会長さん、威力すごいです~!!」

「これは空手の基本の"正拳突き"です。形意拳の攻撃とは、力の発し方が違いますね」

「パォ~! これは……めちゃくちゃ参考になります~!」


 二人が技の応用を試し始めたその時――

「ちょっと待ったぁぁぁぁ!!!!」突如、庭に飛び込んできたのは 琴美 だった。

「なにこれ!? 文化部の朝稽古!? ていうか大野先輩とシャオが戦ってる!?」

「パォ~! これは文化交流です~!」

「いや、ガチの武術対決にしか見えないんだけど!?」

「……軽く動きを見せ合っていただけですよ」博美が冷静に言うが、琴美は 大興奮。

「ちょっと待ってよ!? こんな面白いこと、見逃すわけにはいかない!!」

「パォ~!? じゃあ先輩もやりますか~!?」

「え、いや、私はそんな戦えないけど……」

「では、吉峰さんも鍛錬に参加しますか?」博美がクールに尋ねると、琴美はビクッと肩を震わせる。

「えっ……ま、待って待って!? 私、昭和レトロ愛好家であって、武闘派じゃないんだけど!?!?」

「パォ~! それなら、レトロな昭和の武道をやりましょう~!」

「そんなのあるの!?!?」 琴美のために「昭和の健康体操」実践会が開かれる

  沙羅と美優も巻き込まれ、庭で「ラジオ体操」をすることに最終的に、全員でストレッチをして朝の稽古は終了。

「……これ、もはや武道じゃないわよね」

「パォ~! 文化部らしいじゃないですか~!」

「……まあ、これはこれで楽しいですね」

 朝の武道交流(?)を終えた文化部メンバーは、そのまま温泉へと直行することに。

「パォ~! 朝稽古の後の温泉、最高ですね~!」

「いや、稽古っていうか……結局、ラジオ体操だったじゃない」

 沙羅がため息をつくが、琴美は 「昭和らしい運動だったでしょ!」 と得意げに胸を張る。

「……ラジオ体操、意外と体に効きますね」

 博美は 肩を回しながら、少し新鮮な表情 を浮かべる。

「パォ~! 生徒会長さん、すっかり文化部の一員ですね~!」

「違います」


 そんな会話を交わしながら、彼女たちは 朝風呂へと向かった。

 浴場に入ると、湯気がほのかに立ち上る。まだ朝早いため、貸切状態のようなものだった。

「ふぅ~……朝風呂って、ほんっと贅沢よね~!」琴美が のびのびと湯船に浸かり、至福の表情 を浮かべる。

「パォ~! 温泉に入ると、全身がぽかぽかしますね~!」シャオは ツインテールをほどき、髪をお湯に浮かせながらリラックス 。

「朝風呂って、血行が良くなるから美容にもいいんですよ~♪」美優が ほんわか笑顔で説明 する。

「……なるほど、旅館ならではの楽しみですね」博美は 普段とは違う、少し柔らかい表情 で目を閉じる。

「大野先輩、ちょっとだけリラックスしてる?」沙羅が クスッと笑いながら尋ねる と、博美は 「……そんなことはありません」 とそっぽを向いた。

「パォ~! 生徒会長さん、こういう時くらいは気を抜きましょうよ~!」

「……そうですね」

 博美は 静かに頷き、ゆっくりと湯船に身を沈めた 。

温泉トークで盛り上がる文化部メンバー

琴美:「そういえば、大野先輩って普段どうやってストレス発散してるの?」

博美:「……本を読んだり、茶道をしたりでしょうか」

沙羅:「あら、和の趣味なのね」

シャオ:「パォ~! 私もお茶好きです~! 台湾茶が一番ですけど~!」

美優:「えへへ~、旅館でもお茶を大切にしてますよ~♪」

琴美:「じゃあさ、みんなで"文化部茶道体験"とかやらない?」

博美:「……それは、少し面白いかもしれませんね」

全員:「おおっ!?」

 こうして、文化部の次なる企画が 温泉の中で決まるのだった。

 風呂上がりにさっぱりとしたメンバーは、そのまま 花屋の朝食会場へ 。


旅館の朝食メニュー

炊きたての白ごはん(おひつでおかわり自由!)

焼き魚(鮭 or サバ)

出汁の効いたふわふわのだし巻き卵

具だくさんのお味噌汁

手作りのお漬物&小鉢(ひじき煮、冷や奴、梅干し)

美優特製・昭和風フルーツヨーグルト

「うわぁぁぁ!!! これはもう、昭和の旅館の朝食!!!」琴美が 感動しながら、白ごはんを頬張る 。

「パォ~! ごはんが進みます~!!」シャオは お味噌汁をすすりながら、朝食を満喫 。

「美味しい……」博美は 静かに箸を進めながら、旅館の朝食を堪能 していた。

「……先輩、朝からおかわりしすぎじゃない?」

 沙羅が 驚きながら聞くと 、博美は 「旅館の朝食がこんなに美味しいとは思わなかったので……」 と少し照れながら答えた。

「ふふっ♪ いっぱい食べてくださいね~♪」美優が 優しく微笑みながら、博美のお茶をそっと注ぐ 。

「パォ~! じゃあ生徒会長さん、文化部のイベントもまた来てくれますね~!」

 シャオが ニヤリとしながら尋ねると 、博美は 「……考えておきます」 と冷静に返した。

「もう、それ絶対来るやつじゃん!」

 琴美が 笑いながらツッコミを入れ 、旅館の朝は 笑顔と賑やかさに包まれていった。

 こうして、文化部の 温泉旅館の朝 は 最高の時間 となったのだった


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