秘密のガールズトーク
温泉でたっぷり温まり、美味しい夜食を食べ終えた文化部メンバーたち。
さすがにそろそろ寝る時間――と思いきや、琴美の声が響く。
「よーし! せっかくだから、ガールズトーク するわよ!!!」
「パォォ~!? まだ寝ないんですか~!?」シャオが驚きながら目を丸くする。
「こんな楽しい夜、寝るなんてもったいないでしょ!」
「文化部のメンバーだけじゃなくて、今日は生徒会長もいるし、せっかくだから秘密の女子トークをしちゃおうってわけよ!」琴美はわくわくした顔で拳を握る。
「えへへ~♪ 楽しそうですね~♪」美優がほんわかと微笑む。
「えっ……ちょっと、私はそういうのは……」博美は少し困ったように視線を泳がせるが、萌香がパッと手を挙げた。
「会長! 女子トークは大事ですよ! ここは 生徒会長としての義務 ってことで!!」
「……義務?」博美は怪訝そうに聞き返したが、沙羅がさらっとフォローする。
「まあまあ、たまには肩の力を抜いて、ゆっくり話しましょうよ」
「……わかりました。せっかくの機会ですし、少しだけ」博美は観念したようにため息をつき、座布団に座る。
「よし! じゃあ、テーマを決めましょう!」琴美が意気込むと、萌香が真っ先に提案する。
「まずは 好きなタイプ について!!!」
「パォォォ!? いきなりですか~!?」シャオが両手をブンブン振る。
「いやいや、これは大事でしょ!? こういうときに聞いておかないと!」萌香は目をキラキラ輝かせる。
「えへへ~♪ 確かに気になりますね~♪」美優も嬉しそうに頷く。
「……これは、逃げられないですね」博美が静かに目を閉じ、覚悟を決めたように言う。
それぞれの「好きなタイプ」
萌香:「スポーツができて、頼りがいがあって、でもちょっと可愛いギャップのある人!」
美優:「えへへ~♪ 優しくて、一緒にいて安心できる人がいいですね~♪」
琴美:「昭和のヒーローみたいな人!! つまり、頼れて、面倒見がよくて、でもちょっとドジっ子な人!」
沙羅:「……うーん。真面目だけど、面白い人、かな?」
シャオ:「パォ~!? えっと、私、あんまり考えたことないです~!!!」
博美:「……知的で、落ち着いていて、誠実な人、でしょうか」
「おお~~~!!!」
「生徒会長の答え、まんま生徒会長って感じですね!」琴美がニヤニヤしながらツッコミを入れると、博美は少しムッとした顔になる。
「……それの何が悪いんですか?」
「いやいや、全然悪くないですけど!! でも、会長にもちゃんと好みのタイプがあるってわかって、なんか安心したわ!」
「むしろ、生徒会長に告白するなら、まず知的さが必要 ってことね……メモメモ」萌香が何やらメモを取り始める。
「パォ~!? そんな研究対象みたいにしないでください~!!」シャオが慌てて手を振るが、琴美はニヤニヤを止めない。
「じゃあ、次のテーマは 初恋の話!!」
「パォォォ~!?!?」シャオが今度こそ完全に真っ赤になった。
「な、な、なんですか~!! それはダメです~!!!」
「え? じゃあ、シャオにはそういう話があるってこと?」沙羅が冷静に突っ込むと、シャオはさらに顔を赤くする。
「パォォォォ~~!!!」
「ほう……これは興味深いですね」博美が珍しく興味を示す。
「せ、生徒会長さん、こっちを見ないでください~~!!!」
「シャオのリアクションが可愛すぎる……」美優がほんわか微笑む。
「じゃあ、会長はどうなんですか?」萌香が質問を投げると、博美はふっと目を伏せ、少し考え込んだ。
「……初恋、ですか」
「パォ~!? もしかして 会長の初恋話 ですか~!!?」
「……そんな大した話ではありませんが……」博美はゆっくりと口を開いた。
「私が小学生の頃、年上のいとこがいて……」
「おおっ!!!」みんなが興味津々で身を乗り出す。
「とても聡明で、優しくて、私にいろんなことを教えてくれました。……その人のことを、子供ながらに憧れていたのかもしれません」
「……おぉぉ」
「生徒会長らしい初恋エピソードだ……」
「うーん、知的で落ち着いた人って、会長の好みそのまんまだね!」
「……まぁ、結局、そのいとこは海外に行ってしまいましたし、今となってはいい思い出ですね」博美は少し微笑んだ。
「……なるほどねぇ~!! これは、生徒会長を攻略するにはかなりのハードルが高いぞ……!!」琴美が腕を組んで唸る。
「……攻略、とは?」
「いえいえ、気にしないでください!!!」
こうして、夜遅くまで ガールズトーク は続いていった。温泉宿の一室に響く、笑い声とちょっとした秘密の話。
すると、琴美が ニヤリ と意味深な笑みを浮かべながら、沙羅に目を向けた。
「さてさて~……沙羅の番ね!」
「え? 何が?」沙羅が怪訝そうに眉をひそめる。
「そりゃもう、真平とのことよ!!」
「ぶっっ!!?」思わず、沙羅は 持っていた湯飲みの茶を吹き出しそうになる 。
「ちょ、ちょっと待って!? なんでそうなるのよ!?」
「いやいや、だってさ~、最近めっちゃ仲良くない? 何かとツッコミ入れてるし、一緒にいる時間長いし!」
「そ、そんなのただの幼馴染の延長よ!!」
「でもさ~、なんか違くない?」琴美が 鋭い昭和探偵の目つき で沙羅をジロジロ見る。
「そ、そうよ! ただの腐れ縁みたいなもんで……」
「パォォォ~!? 腐れ縁って言いましたね~~!!」シャオが食いつく 。
「いやいや、そんな意味じゃなくて!!」
「でもでも、なんだかんだ言って、真平のこと気にしてるのは事実でしょ?」琴美が 満面のドヤ顔 で言うと、沙羅は 視線を泳がせた 。
「……まぁ、たしかにアイツは昔からお人好しで、すぐ面倒見ちゃうけど……別に、それがどうとかって話じゃないし」
「ほほ~? じゃあ、真平が他の子と仲良くしてても、気にならない?」琴美が 試しに問いかける 。
「それは……」沙羅の言葉が詰まる。
「……」
「……」
「……まぁ、ちょっとは気になる、かも……?」
「おおおおお!!!」みんなが 大歓声 を上げる。
「えへへ~♪ なんだか、いい感じですね~♪」美優が ほんわか微笑む 。
「パォォォ!? これは、もうフラグ成立 ですか~!!?」シャオが パタパタと手を振る 。
「ちょ、ちょっと!! そんな大げさな話じゃないから!!」沙羅は 真っ赤になって首を振る 。
「でもでも、真平ちゃんって、お姉ちゃんといる時が 一番自然 な感じがするだよね~」萌香が ニヤリと妹視点で分析 する。
琴美が 堂々と胸を張る 。「でもさ、なんだかんだ言って、沙羅が一番真平を理解してる んじゃない?」
「……まぁ、それは……あるかも」沙羅は 少し目を伏せながら、ポツリと呟く 。
「アイツ、不器用なくせに、人のことばっかり気にするから……ほっとけないっていうか」
「それはもう……完全に好きな人のセリフ じゃん!!!」琴美が ビシィィィッと指を指す 。
「ちょっ!? 違うって!!!」
「えへへ~♪ 沙羅さん、なんだか照れてますね~♪」美優が ふふっと笑う 。
「パォ~!! これはもう、真平先輩とデートの約束 ですね~!!」シャオが 無邪気に煽る 。
「だぁぁぁ!! もう、この話終わり!!!」沙羅は 布団にダイブ して、頭から掛布団を被る。
「いや~~、これは良い収穫だったわね♪」琴美は 満足げに頷く 。
「じゃあ、次のテーマは……"もしも文化部メンバーと1日デートするなら" !!」
「パォォォ!? そ、それはまたヤバイ質問です~!!」
「ちょっ!! また私が巻き込まれるパターン!?」
こうして、 文化部のガールズトーク は夜遅くまで続いていった……




